治安の悪い地域に住む小児の喘息管理は家族関係が鍵?

治安の悪い地域に住む喘息持ちの小児では、家族関係が良好であれば喘息の症状が緩和される可能性があることが、新たな研究で明らかにされた。論文の筆頭著者である米ノースウェスタン大学ウェインバーグ総合学院心理学教授のEdith Chen氏は、「近隣環境と家族関係の質との間には有意な相互作用が認められ、これにより小児喘息患者の臨床転帰を予測できることが分かった」と述べている。研究の詳細は、「Pediatrics718日オンライン版に掲載された。

 汚染物質やアレルゲンなど近隣の環境因子が、喘息を持つ小児の喘鳴や呼吸に影響を与えることは以前から知られていたが、家族関係などの社会的条件が与える影響については、これまであまり分かっていなかった。

 そこで、Chen氏らは、シカゴのさまざまな地区に住む、917歳の小児喘息患者308人を対象に、近隣環境が悪い地域に住む小児の喘息に良好な家族関係が及ぼす影響を調べた。同氏らはGoogleストリートビューを使ってそれぞれ住環境の状況を調べ、落書き、捨てられた車、鉄格子の付いた窓やドア、廃屋や板を打ち付けた家などを治安の悪さや危険の指標とした。

 その結果、近隣環境と家族関係との間には有意な相互作用が認められ、危険が多い地域や治安の悪い地域に小児が住んでいる場合、家族関係が良好であるほど、小児の喘息の症状や活動制限が少なく、肺機能も良好であることが明らかになった。一方、危険が少ない地域や秩序の保たれた地域に小児が住んでいる場合では、喘息症状、活動制限および肺機能は概して良好であり、家族関係による影響はほとんどみられなかった。

 Chen氏は、環境の悪い地域から出ていくことができない家庭が多いことを考えると、小児科医にとってこの結果は重要だと考えている。そして「家族が直面していると思われる住環境を現実問題として認識し、子どもの喘息管理に家族の支えがいかに有効であるかについて小児科医が家族に助言を与えることができれば、家族の役に立つだろう」と話す。

 なぜ、良好な家族関係が、治安が悪い地域に住む小児の喘息の症状を軽減するのか。今回の研究では明確な理由は示されていないが、Chen氏らは、「親からのサポートを十分に受けていれば、子どもは自分の喘息の管理を優先することができるのかもしれない。喘息の管理の妨げとなるものが最小限に抑えられるよう、家族が地域のストレス要因から子どもを守っているのではないか」と可能性を説明している。ただし、同氏は、これが現時点では推測にすぎないことを認めており、「今後の研究でこの考えが正しいか検証していく必要がある」としている。

 なお、米疾病対策センター(CDC)によると、米国では8%を超える小児が喘息を抱えているという。

[2019725/HealthDayNews]

周術期の潜在性脳卒中、認知機能低下リスクを増大/Lancet

65歳以上の待機的非心臓手術時における周術期の潜在性脳卒中(covert stroke)の発生は、術後1年の認知機能低下リスクの増大と関連しており、発生率は14人に1人の割合(約7%)だったことが、カナダ・ウェスタンオンタリオ大学のMarko Mrkobrada氏ら「NeuroVISION」研究グループの検討により明らかにされた。非手術時の潜在性脳卒中の発生頻度は高く、認知機能の低下と関連することが知られている。また、成人における非心臓手術後の顕在性脳卒中(overt stroke)の発生率は1%未満で重大な病状と関連するが、周術期潜在性脳卒中についてはほとんど知られていなかった。Lancet誌オンライン版2019815日号掲載の報告。

9ヵ国12ヵ所の大学医療センターで試験

 NeuroVISION試験は、2014324日~2017721日にかけて、9ヵ国12ヵ所の大学医療センターを通じて行われた前向きコホート試験。入院にて待機的非心臓手術を受け、術後に脳MRI検査を実施した65歳以上の患者1,114例について評価した。

 2人の独立した神経放射線学専門医が、患者の臨床データをマスクしたうえで、MRI画像から急性脳梗塞の所見を評価した。潜在性脳卒中と術前ベースラインから術後1年の認知機能低下との関連について、多変量回帰分析を行い検証した。認知機能低下の定義は、モントリオール認知アセスメント(Montreal Cognitive AssessmentMoCA)による2ポイント以上の低下とした。

発症者の認知機能低下、非発症者の約2

 周術期潜在性脳卒中を発症したのは、被験者1,114例のうち78例(7%、95%信頼区間[CI]69)だった。

 術後1年の追跡が完了した被験者のうち認知機能低下が認められたのは、周術期潜在性脳卒中を発症しなかった被験者では29%(274/932例)だったのに対し、発症した被験者では42%(29/69例)だった(補正後オッズ比:1.9895CI1.223.20、絶対リスク増加:13%、p0.0055)。

 周術期潜在性脳卒中は、周術期せん妄リスクの増大とも関連していた(ハザード比[HR]2.2495CI1.064.73、絶対リスク増加:6%、p0.030)。また、術後1年時点の顕在性脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)の増大とも関連していた(HR4.1395CI1.1414.99、絶対リスク増加:3%、p0.019)。

“意外な食品”が腹部膨満感の原因?

食後の腹部膨満感は、繊維質の多い食事ではなく、“意外な食品”が原因かもしれない―。米ジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のNoel Mueller氏らの研究から、塩分を取り過ぎた時に、腸が過剰に反応して腹部膨満感を引き起こしている可能性が示された。同氏は「減塩は、腸内ガスの発生を防ぎ、腹部膨満感の症状軽減に効果的なだけでなく、健康的で食物繊維が豊富な食事を続けるのにも役立つ可能性がある」と述べている。研究の詳細は「American Journal of Gastroenterology7月号に掲載された。

 この研究は、19981999年に実施された大規模試験、DASH-Sodium試験のデータを用いたもの。この試験では、健康な成人を対象に、高血圧の予防や改善を目的とした食事療法であるDASH食(低脂肪で繊維質、果物、ナッツ類、野菜を豊富に取り入れた食事)群または食物繊維が少なく、脂肪が多い平均的な食事を取る群にランダムに割り付け、塩分摂取や他の因子が高血圧に与える影響を調べた。今回は計412人(平均年齢48歳、女性57%)を対象に解析を行った。

 ベースライン時に、参加者の36.7%が腹部膨満感を訴えており、その症状は女性に比べて男性で強かった。また、食事内容にかかわらず、塩分の摂取量が多い人では腹部膨満感を生じる確率が27%高いことが分かった。一方で、塩分摂取量を減らすと腹部膨満感の症状が軽減することも示された。

 塩分が腹部膨満感を引き起こす機序は明らかになっていないが、Mueller氏は、「塩分の摂取量が多いほど体内に水分が貯留され、消化効率が低下して腸内でガスが発生し、腹部膨満感が引き起こされる可能性がある」と説明する。また、同氏によれば、マウスを用いた実験で、食事に含まれる塩分は腸内細菌の組成を変化させる可能性が示唆されており、そのことが腸内ガスの発生につながっているとも考えられるという。

 これらの結果を踏まえ、Mueller氏は「加工食品を避け、食事からの塩分摂取量を減らすことが腹部膨満感の症状軽減に役立つかもしれない」と述べている。米国では成人の3人に1人が腹部膨満感を抱えており、過敏性腸症候群の患者ではその割合は90%以上に上るとみられている。

 専門家の一人で、米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスのSamantha Heller氏によると、腹部膨満感の原因には、乳糖不耐症やセリアック病、小腸内細菌異常増殖症、感染症などが挙げられる。症状が長引く場合には医師の診察を受ける必要があるが、症状自体は珍しいものではないという。なお、過剰な腸内ガスの発生を抑えるため、同氏は、以下の方法を勧めている。

・定期的に運動する。
・ファストフードや冷凍食品、ジャンクフード、揚げ物などの加工食品を避ける。
・十分な水分を摂取する。炭酸飲料は避ける。
・野菜やマメ類、全粒穀物など食物繊維が豊富な食品を食べる。ただ、少しずつゆっくりと食べ、こまめに水分を取る。
・全体的に食事量を控えめにする。

[201973/HealthDayNews]









患者の20人に1人は予防可能な医療過誤の被害者

左右を取り違えて膝を手術されてしまう、アレルギーの既往があると分かっている薬を投与される―。そうした医療過誤は実際に起こっている。英NIHR グレートマンチェスター患者安全トランスレーショナルリサーチセンターのMaria Panagioti氏らの研究によると、患者の20人に1人は予防可能な医療過誤の被害を受けており、そうした被害の12%は永続的な障害や死亡に至っているという。研究の詳細は、「BMJ717日オンライン版に掲載された。

 Panagioti氏らによると、米国では、予防可能な患者への被害のために、およそ93億ドル(約1101憶円)の医療費が余分に費やされている。同氏らはこうした事実と研究結果を踏まえ、予防できる患者への被害を軽減することで、医療は大きく改善され、医療費も大幅に削減される可能性があるとしている。

 研究では、医療過誤による患者への被害の中でも防止可能だったものに的を絞り、関連論文のシステマティックレビューを実施。基準を満たした70件の論文を対象にメタアナリシスを行い、医療過誤による患者への被害の頻度や重症度、最もよく生じるタイプなどを調べた。

 解析の結果、337,025人の解析対象者のうち、28,150人が有害なインシデントを経験し、15,419人が予防できる有害なインシデントを経験していたことが明らかになった。また、有害なインシデントの累計は47,148件で、そのうち25,977件(55%)は予防可能なものであった。

 さらに、予防可能な被害のほぼ半数は、薬物治療(25%)やそのほかの管理治療(24%)により生じたものであったほか、予防可能な被害の約12%は永続的な障害や死をもたらす重度のものであった。予防可能なインシデントの頻度が高いのは手術室や集中治療室で、最も少ないのは産科だった。

 これらの結果を受けPanagioti氏らは、「予防可能な患者への被害は医療現場のいたるところで生じている深刻な問題であることが確認できた」と結論づけ、こうした被害を減らすために「まずは、薬に関連した有害事象など予防可能な患者への被害の主な原因の軽減に取り組むとともに、集中治療室や手術室などに焦点を合わせていくべきだ」としている。さらに、プライマリケアや精神科などの専門領域、小児や高齢者といった弱者、発展途上国からエビデンスを集めることも重要だと指摘している。

 付随論評を執筆した、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスおよびハーバード大学医学大学院の専門家らは、研究結果は「医療システムにおいて予防可能な被害がどれくらい生じているかを思い起こさせてくれるものである。また、予防可能なものがどれだけあるかに着目している点が重要である」と評している。そして、今後は、ヒヤリハットの丹念な報告を推奨するような環境をつくり、有害事象のより体系的な判断基準を構築し、患者の積極的な参加を促していく文化を育むことにより、予防可能な被害を把握する能力を向上させていくことが必要だと付け加えている。

[2019718/HealthDayNews]



80歳以上では腰痛があると認知症リスク低い

疼痛は日常生活動作の低下の主な原因となり、高齢者の認知症リスクを高める可能性がある。しかし疼痛と認知症に関する研究結果は一致していない。今回、山田 恵子氏(大阪大学/順天堂大学/カナダ・McGill大学)らが、身体活動、心理社会的要因、膝痛/腰痛のメカニズムの違いを考慮し、膝痛/腰痛と認知症発症との関連を前向き研究(JAGESJapan Gerontological Evaluation Study、日本老年学的評価研究)で検討した。その結果、6579歳で膝痛があると認知症リスクが高く、定期的な歩行習慣がない人ではリスクがさらに高まる恐れがあることが示唆された。また、80歳以上では腰痛が認知機能維持の指標となる可能性も示された。Scientific Reports2019723日号に掲載。

 本研究では、全国の30の地方自治体における、脳卒中、がん、外傷、うつ病、パーキンソン病、認知症の既往のない高齢者(65歳以上)14,627人に、自記式質問票への記入を依頼し、その後3年間追跡調査を行った。Cox回帰モデルを使用して、認知症発症に対するハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。年齢および定期的な歩行習慣の有無で層別分析を行った。

 主な結果は以下のとおり。

6579歳では、膝痛あり・腰痛なしの人のほうが、膝痛も腰痛もない人よりも認知症リスクが高かった(HR1.7395CI1.112.68)。
80歳以上では、膝痛なし・腰痛ありの人のほうが、膝痛も腰痛もない人よりも認知症のリスクが低かった(HR0.5095CI0.310.80)。
・膝痛があり定期的な歩行習慣がない人は、最も認知症リスクが高かった(HR1.7195CI1.262.33)。

1日300kcalのカロリー制限と心血管リスク

健康的な体重、もしくは適正体重を少しオーバーしている人では、1日の摂取カロリーを300kcal減らすだけで、コレステロール値や血圧、血糖値などが有意に改善し、糖尿病や心疾患リスクを低減できる可能性が、米デューク大学教授のWilliam Kraus氏らにより報告された。研究の詳細は「The Lancet Diabetes & Endocrinology711日オンライン版に掲載された。

 今回の研究は、肥満でない健康な人におけるカロリー制限の有効性を調べるCALERIE試験の一部として行われたもの。米国の3カ所の診療施設において、BMI22.027.9kg/m2の肥満ではない2150歳の成人男女218人を、1日の摂取カロリーを25%制限する群(143人)、または自由に食事を摂取する群(75人)にランダムに割り付け、2年間にわたるカロリー制限が健康に及ぼす影響について調べた。

 その結果、カロリー制限群では、指示された25%を達成できるかどうかには差があったが、摂取カロリーが平均で11.9%(1日約300kcal)減っていた。体重は平均7.5kg減少し、その71%は脂肪だった。一方、対照群では0.1kgの体重増加が認められた。

 また、カロリー削減群では、研究開始から2年後のコレステロール値や血圧、血糖値、そのほかの代謝疾患のリスクマーカーの値が、研究開始時に比べ有意に低下した。さらに、C反応性蛋白の値やインスリン感受性など、心疾患やがん、認知機能低下に関連する慢性炎症のバイオマーカーの値も、研究開始時に比べ有意に改善していた。

 これらの結果を踏まえ、Kraus氏らは、「今回の研究で用いた25%という厳しいカロリー削減でなくても、糖尿病や心血管疾患のリスクを低減できることが示された。夕食後にスナックを食べないようにするといったちょっとした努力で、カロリーは簡単に減らすことができる」と話している。

 また、Kraus氏らは、「何がこうした心血管代謝リスクの低減と関連しているのか、そのメカニズムはまだ分かっていないが、カロリー制限には何かがある」として、カロリー制限の有効性に期待を示している。同氏らはすでに、今回の研究への参加者から血液や筋肉、そのほかの試料を収集しており、「この代謝シグナルや“魔法の分子”が何であるのかを解明すべく、今後も調査を続けていきたい」と話している。

[2019712/HealthDayNews

アルコール消費とトラックドライバーの日中の眠気

商用車ドライバーの交通事故の主な原因として、日中の過度な眠気(excessive daytime sleepinessEDS)が挙げられる。アルコール消費は、睡眠に直接的な影響を及ぼし、翌日の注意力やパフォーマンスに悪影響を及ぼす。順天堂大学のRonald Filomeno氏らは、日本の商用トラックドライバーにおけるアルコール消費とEDSとの関係および、このことが公衆衛生に及ぼす影響について横断的研究を実施した。Occupational Medicine誌オンライン版201972日号の報告。

 対象は、東京都および新潟県の商用車ドライバー。対象者は、年齢、BMI、アルコール消費量、エプワース眠気尺度(ESS)、タバコ消費量の詳細を含む自己管理型アンケートに回答した。対象者の酸素飽和度低下指数は、対象者が自宅に持ち帰ったパルスオキシメーターで評価された。

 主な結果は以下のとおり。

・全日本トラック協会に登録されている2069歳の男性ドライバー1,422人が回答した。
43歳未満のドライバーにおいて、非飲酒者と比較したEDSの多変量調整オッズ比(OR)は、軽度飲酒者で0.8195CI0.471.40)、中等度飲酒者で0.9395CI0.511.70)、大量飲酒者で0.6195CI0.211.79)であった。
43歳以上のドライバーにおいて、非飲酒者と比較したEDSの多変量調整ORは、軽度飲酒者で1.4295CI0.593.45)、中等度飲酒者で1.5395CI0.633.75)、大量飲酒者で3.3795CI1.149.96)であった(P for interaction0.05)。

 著者らは「ESSとアルコール摂取との関連について、アルコール消費量の増加とともにEDSレベルが上昇することが示唆され、とくに43歳以上ではその関連がより顕著である」としている。

妊娠糖尿病リスク

これまでの研究において、妊娠中の抗うつ薬使用に関連する妊娠糖尿病について中程度のリスクが観察されている。しかし、これは適応症による交絡の可能性も考えられる。米国・ワシントン大学のPaige D. Wartko氏らは、交絡を考慮したうえで、妊娠中の抗うつ薬継続使用と妊娠糖尿病との関連性および血糖値の評価を行った。Pharmacoepidemiology and Drug Safety誌オンライン版2019712日号の報告。

 電子健康データとリンクしたワシントン州の出生記録を用いて、Kaiser Permanente Washington(総合医療提供システム)に登録されている女性のうち妊娠前6ヵ月間で抗うつ薬を処方されていた女性を対象に、200114年の間に単胎児出生のレトロスペクティブコホート研究を実施した。妊娠中も抗うつ薬を使用していた女性を継続群(1,634例)、使用していなかった女性を中止群(1,211例)とした。妊娠糖尿病の相対リスク(RR)およびスクリーニング時の血糖値の平均差を算出するため、治療重み付け逆確率を用いた一般推定式を使用した。ベースライン特性にはメンタルヘルス状態および重症度の指標が含まれる。

 主な結果は以下のとおり。

・中止群と比較し、継続群の妊娠糖尿病リスク(RR1.1095CI0.841.44)および血糖値(平均差:2.3mg/dL95CI:-1.56.1mg/dL)は、同程度であった。
・特定の抗うつ薬についてもほぼ同様の結果が観察された。セルトラリン(RR1.3095CI0.901.88)およびベンラファキシン(RR1.5295CI0.872.68)に関連する妊娠糖尿病リスクの潜在的な影響が認められたが、いずれも統計学的に有意ではなかった。

 著者らは「妊娠中に抗うつ薬を使用している女性では、妊娠糖尿病や高血糖リスクが高いわけではないことが示唆された。セルトラリンとベンラファキシンについては、さらなる研究が必要かもしれない」としている。

電子たばこで痙攣? 米で127件もの痙攣報告(2019年8月)

若者の間で増える電子たばこ使用

 米国の食品医薬品局(FDA)は、電子たばこの利用者から痙攣を起こしたという127件の有害事象報告を受けたと発表した。電子たばこは、内臓タンクまたはカートリッジに入った液体(リキッド)を電気で加熱し、発生する蒸気を吸う仕組み。米国ではベイパー(Vapor)とも呼ばれている。

 米国における18歳以上の喫煙率は2005年の20.9%から、2017年には14%まで低下した。その一方で、特に若者や子供の間で電子たばこの人気が急上昇。2018年には360万人の中高生が、過去30日間に電子たばこを利用したという。これは中学生の4.9%、高校生の20.8%にあたる。

中高生はJUULing

 米国で最も人気のある電子たばこJUULだ。シンプルなUSBメモリー・スティックのような形状でバッテリー内臓。ラップトップ・コンピューターのUSBポートで充電できる。

 ストロベリー・ミルク、スイカ、カプチーノ、マンゴー、クリームなど、若者が試してみたくなるよう味が沢山ある。電子たばこを吸うことをVapingと呼ぶが、中高生は圧倒的にJUULingである。

 ただしJUULは日本の電子たばことは違い、どんなに無害そうな名前であっても、すべてニコチンを含んでいる。しかも1個のJUULポッド(リキッド)には、普通のタバコ20本分のニコチンが含まれるという危険なシロモノだ。

ニコチン中毒で痙攣か?

 FDAでは今年4月までに、電子たばこ利用者から痙攣を起こしたという35件の報告を受けてモニターを続けてきた。今日までに、同じような報告が新たに92件寄せられ、合計で127件になったという。これは消費者からの自主的な有害事象報告なため、さらに多くの人が痙攣を経験している可能性もある。

 FDAの発表によれば、痙攣を経験した電子たばこ利用者のほとんどは若者か子供で、初めて電子たばこを利用した人もいれば、常用している人もいた。また痙攣が起きたタイミングも、電子たばこを吸ってすぐの人もいれば、翌日という人もいた。

 電子たばこと痙攣の関連はまだ特定できないものの、痙攣はニコチン中毒の副作用の一つであり、電子タバコで使うリキッドを誤飲、あるいは意図的に飲んだ時に起こるという報告がある。

本当にコワイ電子たばこの被害

 ニコチンは子供や若者にとって大敵だ。脳は25歳くらいまで発達を続けるが、ニコチンは脳の発達を妨げ、また脳内の学習や気分、衝動を司る部分に悪影響を与える。また依存性が高く、若い時からニコチンを使うことで、将来的に他の薬物に依存しやすくなるリスクもあると、FDAは指摘している。

 米国にもニコチンを使わない電子たばこもあるが、それでも「無害の蒸気」を吸っているわけではない。電子たばこで吸い込む蒸気には、吸い込むと肺の奥深くまで入り込んでしまう可能性のある微小粒子や、香料には気管支や肺の悪影響を与えるジアセチルなどの化学物質、発がん物質、ニッケルや鉛などの重金属が含まれている。

 さらに電子たばこの機器自体もバッテリーが発火したり、使用中に機器が爆発してあごの骨が砕けてしまった17歳の少年や、爆発が原因で死亡した男性など、複数の事故が発生している。

遅すぎ?若者の電子たばこ規制

 FDAは若者の電子たばこ使用禁止や喫煙予防に取り組んでいる(注1)。昨年11月には、味付き電子たばこ製品を18歳未満の消費者に販売することを禁止し、販売店には年齢確認を責任を負わせた。

 またニューヨーク州、コネチカット州、テキサス州など17州と首都ワシントンでは、州法によって、たばこおよび電子たばこ製品の購入可能年齢を、18歳から21歳に引き上げている。

 さらに今年7月には、JUULを製造するJUUL Labs本社があるカリフォルニア州サンフランシスコ市が、2020年より同市内で電子たばこ販売を禁じる市条例を制定した。

 JUULを吸っている中高生の多くは、ニコチンが含まれているという認識がない場合が多い。FDAは先月、ソーシャル・メディア動画で人気の英国のマジシャン、ジュリアス・デインさんを起用して「電子たばこは、たばこと同じだ」と伝えるPRを開始した。メッセージが、若者に届いてくれるといいのだが。

日本の高齢者、痩せと糖尿病が認知症リスク

わが国の高齢者において、痩せていること(BMI 18.5kg/m2未満)と糖尿病が認知症発症のリスク因子であり、BMIが低いほど認知症発症率が高いことが、JAGESJapan Gerontological Evaluation Study:日本老年学的評価研究)のコホートデータを用いた山梨大学の横道 洋司氏らの研究で示された。

また、本研究において認知症発症率が最も高かったのは高血圧症を持つ痩せた高齢者で、次いで脂質異常症を持つ痩せた高齢者であった。Journal of Diabetes Investigation誌オンライン版2019617日号に掲載。

 本研究では、高齢者における糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満(BMI 25kg/m2以上)、痩せ(BMI 18.5kg/m2未満)に関連する認知症リスクを比較し、さらにこれらの代謝性疾患とBMIの組み合わせに関連する認知症リスクも調査した。対象は、2010年に健康診断を受けた高齢者(平均年齢73.4歳)で、平均5.8年間追跡した。

認知症は介護保険登録を用いて調べ、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、肥満、痩せは、服薬もしくは健康診断結果で評価し、認知症発症率と調整ハザード比(HR)を計算した。

 主な結果は以下のとおり。

・参加した高齢者3,696人のうち、338人が認知症を発症した。
・標準体重で該当する疾患がない人を基準とすると、男女それぞれの調整HR95%信頼区間)は、糖尿病では2.221.263.90)および2.001.073.74)、高血圧症では0.560.291.10)および1.050.641.71)、脂質異常症では1.300.871.94)および0.730.491.08)、BMI 2529.9kg/m2では0.730.421.28)および0.820.491.37)、痩せでは1.040.512.10)および1.721.052.81)であった。
・脂質異常症を持たない標準体重の男性と比較して、脂質異常症を持つ痩せた男性のHR4.151.799.63)、高血圧症を持たない標準体重の女性と比較して高血圧症を持つ痩せた女性のHR3.791.559.28)と、認知症リスクが有意に高かった。
・認知症発症率が最も高かったのは高血圧症を持つ痩せた高齢者で、次いで脂質異常症を持つ痩せた高齢者であった。