偉大なる名言集

「急性の問題や痛みに対して応急処置ばかりを続けていれば、やがてはその対応先自体がその問題の根っこに隠れている慢性的な問題をかえって問題化させてしまう結果になる」

魚油サプリは心臓に良い――摂取量が多いほどリスクが低下

魚油に多く含まれているオメガ3脂肪酸の摂取により心血管疾患(CVD)リスクが低下することが示唆されているが、否定的な報告もある。その一方、米国では数百万人が魚油サプリメントを摂取しているとされる。今回、その行動が間違っていない可能性を示す研究結果が報告された。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のJoAnn Manson氏らによるこの報告は、「Journal of the American Heart Association930日オンライン版に掲載された。

 Manson氏らの研究は、オメガ3脂肪酸とCVDの関連を検討した13件の報告をメタ解析したもの。同様の研究は過去にも行われているが、今回は解析対象者数が計127,477人に及び、これまでに報告されている最大規模の研究より64%多い。解析対象者は、男性が59.7%で平均年齢64.3歳、BMI28.0、糖尿病患者39.4%、脂質低下薬使用患者72.6%。オメガ3脂肪酸の摂取量は研究により3764,000mg/日の幅があったが、多くの研究は約840mg/日だった。

 平均5.0年の介入期間中に3,838件の心筋梗塞、3,008件の冠動脈性心疾患による死亡が発生した。オメガ3脂肪酸を摂取していた人は摂取していない人に比べて、心筋梗塞が12%、冠動脈性心疾患による死亡が8%少なく、有意なリスク低下が認められた。なお、過去の多くの研究と同様に、オメガ3脂肪酸摂取による脳卒中のリスク低下は観察されなかった。

 今回の研究では、オメガ3脂肪酸の摂取量が多いほどCVDリスクが低下するという用量反応関係も確認された。具体的には、オメガ3脂肪酸摂取量が1,000mg/日増えるごとに、心筋梗塞のリスクが9%、冠動脈性心疾患のイベントリスクが7%低下していた。オメガ3脂肪酸摂取量がひときわ多かった(4,000mg/日)1件の研究を除いて解析しても、用量反応関係は有意だった。

 ただし今回の研究は、魚油が心臓に良いことを直接証明するものではなく、サプリメントを摂取している人が、普段から健康的な生活を心掛けていることを表している可能性も否定はできない。しかし研究者らは、今回の研究で用量反応関係が認められた点に注目している。

 米レノックス・ヒル病院のKatrina Hartog氏は、「サプリメントはリスクを軽減するだけであり、心疾患の主要なリスク因子の改善に取り組むことこそが最大のベネフィットを生む」と治療の基本を述べつつも、「今回の知見は、魚油が良いものであると再認識させる」としている。

 米ノースウェル・ヘルス・サンドラ・アトラス・バス心臓病院のGuy Mintz氏は、「この研究にはいぶかしい(fishyな)点が何もない」と述べている。また魚油が効果を発揮する理由を「機序は不明だが、抗炎症作用や抗不整脈作用によるのかもしれない」と解説。同氏は心疾患リスクが高い患者で特にサプリメントの効果が最も高いと推測しており、今回の研究結果に基づき「糖尿病、心疾患の既往、ステント留置、冠動脈バイパスの手術歴があるなど、CVDリスクが高い場合、オメガ3脂肪酸補充療法の追加について、医師は患者と話し合うべきだ」と述べている。

 この研究は、米国立衛生研究所(NIH)の資金援助で実施された。

[2019930/HealthDayNews]



巨大恐竜はどうやって体温を調節していたのか

長い首を持つ竜脚類などの巨大恐竜は、体温の過剰な上昇や脳の損傷を防ぐために特殊な冷却システムを発達させていたとする研究結果が、米オハイオ大学解剖学のRuger Porter氏らにより報告された。研究の詳細は、「The Anatomical Record1016日オンライン版に掲載された。

 研究論文の共著者で、同大学解剖学教授のLawrence Witmer氏は、「小型恐竜であれば、日陰に逃げ込んで体を冷やすことができただろう。しかし、大型恐竜には体温が上がり過ぎるのを防ぐ手立てはなかったはずだ」とし、「大型恐竜には、脳の温度を調節する特別なメカニズムが備わっていたに違いない。しかし、それが何なのかは分かっていなかった」と研究の背景について述べている。

 その答えは日常生活から得られた。エアコンの仕組みである。エアコンは、蒸発するときに周囲から熱を奪っていく液体の性質を利用して空気を冷やしている。人間が夏に汗を蒸発させることで熱を放出し体温調節を行うのと同じである。

 この理論が正しいか否かを調べるにあたり着目したのは、恐竜の子孫とされる鳥類と爬虫類である。Porter氏らは、鳥類と爬虫類の死体を取り寄せて、CTを用いて血液の流れを調べた。その結果、これらの動物では、鼻、口、眼の水分を蒸発させることで脳に供給される血液の温度を下げていることが分かった。同氏らはこの結果をもとに、さまざまな恐竜の頭蓋骨の化石を3Dでイメージ化して、恐竜の頭部に熱交換を行う部分が複数あったことを明らかにした。

 Porter氏によると、血管は、その痕跡が骨に残っているため有用であるという。「現代の鳥類や爬虫類の骨にみられる管や溝は、恐竜の化石に関連づけることができるものであり、骨に残るこうした証拠を用いれば、絶滅した恐竜の血流パターンを再構築でき、恐竜の温熱生理学や熱への対処法を知ることが可能になる」という。

 今回の研究に資金を提供した米国立科学財団のSharon Swartz氏は、「研究結果は、恐竜が、特殊な環境条件が強いる物理的な制約により進化したことを示すものだ。技術革新と生物学の専門知識を組み合わせることで、研究チームは化石の記録を直接読み解くことに成功し、それにより、恐竜の骨格の形状や機能がどのように進化したのかについて解明するための新たな糸口がもたらされた」と評価している。

[20191016/HealthDayNews]



スタチン使用と認知症リスク~900万人超のメタ解析

認知症リスク低下に対するスタチンの影響については、これまで10年間にわたり議論の対象となってきたが、決定的なエビデンスは存在しない。台湾・台北医科大学のTahmina Nasrin Poly氏らは、スタチン療法と認知症リスクとの関連性を定量化するため、これに関連する観察研究のメタ解析を実施した。Neuroepidemiology誌オンライン版2019101日号の報告。

 20001月~20183月までに公表された関連研究を、EMBASEGoogleGoogle ScholarPubMedScopusWeb of Scienceよりシステマティックに検索した。2人の研究者により、研究の選択、データの抽出化、バイアスリスクの評価が行われた。次に、選択した研究からデータを抽出し、変量効果モデルを用いて観察研究のメタ解析を行った。サブグループ解析および感度分析も併せて実施した。

 主な結果は以下のとおり。

9162,509例(認知症患者:84,101例)を含む30件の観察研究が適格基準を満たした。
・スタチン使用患者は、スタチン未使用患者と比較し、すべての原因による認知症リスクが低かった(リスク比[RR]0.8395CI0.790.87I257.73%)。
・スタチン使用患者における全体的にプールされたRRは、アルツハイマー病で0.6995CI0.600.80p0.0001)、血管性認知症で0.9395CI0.741.16p0.54)であった。

 著者らは「スタチン使用は、認知症リスクの有意な低下と関連していることが示唆された。このような結果を検証する今後の研究は、患者、臨床医、政策立案者にとって有用な情報となるであろう。さらなるエビデンスが確立するまでは、スタチンは心血管疾患の治療で承認されている薬剤であることを、臨床医は意識しておく必要がある」としている。

ありふれた降圧薬で自殺リスクが高まる?

ありふれた降圧薬の使用で自殺リスクが高まる可能性があることが、セント・マイケルズ病院(カナダ)のMuhammad Mamdani氏らの研究で明らかになった。アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を使用している患者は、ACE阻害薬を使用している患者と比べて、自殺により死亡するリスクが有意に高いことが分かった。ただし、今回の研究では因果関係は明らかになっておらず、同氏らは結果の慎重な解釈を求めている。結果の詳細は「JAMA Network Open1016日オンライン版に掲載された。

 ARBACE阻害薬はいずれも、血管を収縮させる「アンジオテンシンII」と呼ばれるホルモンの働きを阻害することで降圧効果を発揮する。例えば、ARBは、アンジオテンシンIIが受容体と結合するのを阻害するのに対し、ACE阻害薬は体内のホルモン産生量を減らすように作用する。これらの降圧薬は、高血圧や慢性腎臓病(CKD)、心不全、糖尿病の治療に世界中で汎用されている。

 Mamdani氏らのチームは今回、ARB使用と自殺リスクとの関連を示唆した過去の研究に着目。19952015年のカナダの診療報酬請求データベースを用いて、66歳以上の患者を対象とした症例対照研究を行った。

 ARBまたはACE阻害薬を処方されてから100日以内に自殺により死亡した964人を症例群とし、年齢や性などをマッチさせた、いずれかの降圧薬を処方された3,856人を対照群として比較した。両群の年齢中央値は76歳で、約80%は男性だった。その結果、ARB使用群では、ACE阻害薬使用群と比べて自殺による死亡リスクが統計学的に有意に高いことが分かった(調整オッズ比1.6395%信頼区間1.332.00)。

 Mamdani氏によると、特に気分障害になりやすい患者では、自殺リスクはさらに高まる可能性があるという。同氏は「ARBは脳内のアンジオテンシンII濃度を上昇させる可能性がある。このことが気分障害に関連している可能性があり、自殺企図の引き金となることが考えられる」と説明している。

 今回の研究は因果関係を証明するものではなく、今後さらに研究を重ねる必要があるという。Mamdani氏は「今すぐARBの処方を見直す必要はない」としているが、「もし自分が患者として選ぶなら、ARBよりもACE阻害薬を選ぶだろう」と付け加えている。

 一方、今回の研究には関与していない米バージニア大学医学部名誉教授のRobert Carey氏は「現時点でアンジオテンシンIIが気分障害や自殺企図と関連するという科学的根拠はない」と主張する。同氏は、自殺リスクには他にもさまざまな要因が関与している可能性があるとし、「例えば、一部の患者が使用していた抗うつ薬やベンゾジアゼピン系薬が自殺率に影響した可能性がある」との見方を示している。

 同じく専門家の一人で、米マウント・サイナイ病院の心臓病専門医であるSuzanne Steinbaum氏は、この研究では物質乱用や精神病による入院歴、救急科の受診歴などが評価されていない点を指摘。「今回の研究結果がARBからACE阻害薬に切り替えるべき根拠になるとは考えていない。背景にあるメカニズムは不明で、もっと基礎的な研究が必要だ」と同氏は述べている。

[20191017/HealthDayNews]



心停止蘇生後の「低体温療法」に脳保護効果

心停止から蘇生した患者に対する低体温療法は、これまで考えられていたよりも多くの患者を救える可能性があることが、ナント大学病院(フランス)のJean-Baptiste Lascarrou氏らが実施した臨床試験で示された。心電図波形が「ショック非適応リズム」の心停止患者に低体温療法を実施したところ、標準的な治療を行った場合に比べて、蘇生後に良好な脳機能が保たれる確率が約2倍に上ることが分かった。この結果は「New England Journal of Medicine102日オンライン版に発表された。

 ショック非適応リズムの心停止には、心臓が停止し、心電図で波形の動きがみられない「心静止」と、心電図上は波形が認められるが、脈拍が触れない状態である「無脈性電気活動(PEA)」が含まれる。これまで、ショック適応の心停止患者に対しては、脳機能の保護を目的に低体温療法が実施されており、今ではほとんどの病院で治療できる環境が整っている。しかし、ショック非適応の患者においても、低体温療法が予後に差をもたらすかどうかは明らかになっていなかった。

 そこで、Lascarrou氏らは今回、フランスの複数カ所のICU(集中治療室)に搬送されたショック非適応リズムの心停止患者584人を対象に、臨床試験を行った。対象患者の平均年齢は67歳で、約3分の2が男性だった。また、半数以上の患者には慢性心疾患が、約3分の1の患者には慢性呼吸器疾患があった。心停止を起こした場所は、約半数は自宅、約4分の1は外出先、残りの約4分の1は病院内だった。全患者の90%以上はバイスタンダー(その場に居合わせた人)に目撃されており、3分の2には心肺蘇生が行われていた。

 試験では、対象患者の半数を24時間の低体温療法を実施する群に、残る半数を標準的な治療を実施する群にランダムに割り付けた。患者の体温は、標準治療では37度(華氏98.6度)としたのに対し、低体温療法では摂氏33度(華氏91.4度)まで冷却した。

 その結果、ランダム化から90日後の死亡率は、低体温療法群では81%、標準治療群では83%と予想通り高く、両群間に統計学的な有意差は認められなかった。一方、90日後に良好な神経学的機能〔脳機能カテゴリー(CPC)のスコアが12点と定義〕が保たれた患者の割合は、標準治療群では6%未満だったのに対し、低体温療法群では10%を上回っていた。

 なお、Lascarrou氏によると、CPCスコア「1点」は、脳機能は正常で、仕事も普通にできる場合が多い。また、同スコア「2点」は、日常生活を送る機能があり、適切な環境では働くこともできる状態であることを意味するという。

 この結果について、専門家の一人で、米国心臓協会(AHA)のスポークスパーソンを務めるJohn Osborne氏は「シンプルかつ明快なアプローチによる低体温療法は、心停止から蘇生した患者に大きなプラス効果をもたらした。生存例の半数で良好な神経学的予後が示されたことは、大きな進歩だ」と評価。「今後、心肺蘇生や救急治療のガイドラインで、ショック非適応の心停止患者への低体温療法が推奨されるようになる可能性がある」と予想している。

 一方、Lascarrou氏は今後の課題について、「冷却期間や復温時間の調整を含め、最も高いベネフィットが得られる低体温療法の方法を見出す必要がある」と付け加えている。

[2019102/HealthDayNews]



高血圧の第1選択薬、単剤での有効性を比較/Lancet

降圧治療の単剤療法を開始する際、サイアザイド(THZ)系/THZ系類似利尿薬はACE阻害薬に比べて優れており、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬は、その他の第1選択薬4クラスの降圧薬に比べ有効性が劣ることが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のMarc A. Suchard氏らが行った系統的な国際的大規模解析の結果、示された。残余交絡や出版バイアスなども補正した包括的フレームワークを開発し、米国、日本、韓国などの490万例の患者データを解析して明らかにしたもので、その他の第1選択薬については、現行ガイドラインに合わせて降圧治療の単剤療法を開始した場合の有効性は同等であったという。高血圧に対する至適な単剤療法については曖昧なままで、ガイドラインでは、並存疾患がない場合はあらゆる主要な薬剤を第1選択薬に推奨されている。この選択肢について無作為化試験では精錬がされていなかった。Lancet誌オンライン版20191024日号掲載の報告。

治療の有効性と安全性に関する55のアウトカムを比較

 研究グループは、数百万の患者の観察データを含む多くの薬剤の有効性アウトカムおよび安全性評価を比較可能とする、残余交絡、出版バイアス、p値ハッキングなどを最小限に補正したリアルワールドの包括的フレームワークを開発した。同フレームワークを用いて、6つの診療報酬請求データベースと、3つの電子診療録データベースについてシステマティックに解析を行い、第1選択薬の降圧薬について治療の有効性と安全性に関する55のアウトカムを比較した。

 有効性に関する主要アウトカムは3つ(急性心筋梗塞、心不全による入院、脳卒中)、副次アウトカムは6つ、安全性に関するアウトカムは46で、相対リスクを算出して比較した。

THZ系利尿薬、ACE阻害薬に比べ安全性アウトカムも良好

 患者データ490万例の解析において、全クラスおよびアウトカムを比較した22,000の補正後・傾向スコア補正後ハザード比を得た。

 単剤療法を開始する際、ほとんどの比較推算値は治療薬クラス間に差は認められないことを示すものだった。しかし、THZ/THZ系類似利尿薬は、ACE阻害薬に比べ、主要有効性アウトカムが有意に高かった。初回治療におけるリスクは、急性心筋梗塞のハザード比(HR0.8495%信頼区間[CI]0.750.95p0.01)、心不全による入院が0.830.740.95p0.01)、脳卒中が0.830.740.95p0.01)だった。安全性プロファイルも、THZ/THZ系類似利尿薬はACE阻害薬よりも良好だった。

 また、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬の有効性は、その他4クラスの降圧薬(THZ/THZ系類似利尿薬、ARBACE阻害薬、ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬)に比べ有効性は有意に劣っていた。

インスリンなどの注射薬を経口薬に置きかえる新技術

糖尿病患者の多くが11回以上のインスリン自己注射を行っているが、カプセル型の経口薬が注射薬に取ってかわる日が来るかもしれない。米マサチューセッツ工科大学(MIT)機械工学部の教員で消化管医のGiovanni Traverso氏らが薬剤のカプセル化に関する新技術を開発し、その詳細が「Nature Medicine107日オンライン版に掲載された。

 タンパク質で作られている薬は経口投与すると消化管で分解されてしまい効果を得られない。その一例が糖尿病治療薬のインスリン。インスリンが必要な患者は毎日頻繁に自己注射をしなければならない。この現状に対して新たに開発されたカプセル製剤は、インスリンなどのタンパク質でできた薬剤を小腸まで送り届け、体内に吸収させることができる。Traverso氏によると、小腸の表面積は250m2とテニスコートほどもあり、多くの経口薬が小腸から吸収される。また小腸には痛みの受容体がないことから、小腸をターゲットとすることで痛みを伴わずに針を用いた薬剤投与が可能になるという。

 このカプセル製剤は長さ30mmほど。胃の強い酸性環境(pH1.53.5)に耐えられるようにポリマーでコーティングされている。胃を通過し小腸に達して周囲のpHが約6に上昇すると、カプセルが壊れて中に折りたたまれていた3本のアームが開く。アームにはインスリンを注入する長さ1mmの微細な針が付いていて、小腸の内側の壁に付着する。続いて針の溶解が始まり、それとともにインスリンが注入される。インスリンの注入が終わるとアームはバラバラになって排泄される。

 このカプセル製剤を実際にブタに用いた実験では、注射剤と同じスピードでインスリンを血液中に供給することができ、即座に血糖値が低下することが確認された。この新技術についてTraverso氏は、「患者も医療者も、薬剤を投与する経路として注射より経口を望んでいることが、開発の大きな動機となっている」と述べている。なお、懸念される小腸の穿孔や閉塞については、動物やヒトの組織を用いた多数の安全性試験を行い、有害事象を起こさずに薬物を伝達可能であり、分解後のアームも排泄されることを確認済という。

 今回の実験では、この新技術の実証にインスリンが用いられたが、研究グループによると、ホルモン製剤や酵素薬、抗体医薬、核酸医薬、ワクチンなど、他の薬剤にも応用できる可能性があるとしている。Traverso氏は、「さらに大きな影響を及ぼし得る活用法を見いだすべく、共同研究者らと緊密な連携を取り合っているところだ」と、現状と展望を語っている。

[2019108/HealthDayNews]C



血糖管理を緩和すべき糖尿病患者への行き過ぎた治療の実態

高齢や複数の併存疾患がある場合など、ガイドラインでは血糖管理目標の緩和を考慮すべきとされる糖尿病患者に対して、インスリンによる厳格な血糖管理が行われ、患者もそれを望みがちであるという実態を報告した2本の論文が「JAMA Internal Medicine916日および923日オンライン版に掲載された。

 1つ目の報告は米国の医療保険団体の1つであるカイザーパーマネンテのRichard Grant氏らが、75歳の高齢2型糖尿病患者21,531人(女性48.3%、インスリン療法18.9%)の医療記録を最大4年間追跡したもの。

 対象者を健康状態で、良好(併存疾患が2つ未満、または2つで身体活動性が保たれている)、中等度(併存疾患が2つを上回る、または2つで定期的な運動の実践を報告していない)、不良(末期の心肺疾患、末期腎不全、認知症、転移性がんを有する)の3群に分類。健康状態「良好」の群を基準にインスリンが用いられている割合を比較すると、健康状態「不良」の調整リスク比2.03、「中等度」1.85で、ともにインスリンが使われやすい状況にあった(P0.01)。

 また、インスリン療法患者の32.7%は追跡開始から4年以内または死亡の6カ月前にインスリンの使用が中止されていたが、健康状態「良好」の群に比し「不良」や「中等度」ではインスリンの使用が継続される割合が有意に高かった(調整リスク比はそれぞれ1.471.16P0.01)。

 Grant氏は、「インスリン療法は生涯のほとんどの期間、そのベネフィットがリスクを上回る。しかし、余命が短くなるにつれ、強力な血糖管理はリスクに比べてベネフィットが少なくなる」と述べている。同氏によると、管理目標の緩和を医師から提案されると患者は心配することが多いという。しかし「血糖管理の緩和は治療の放棄ではなく、治療のリスクを軽減するためのもの」と同氏は説明している。

 もう1つの報告は、米ジョンズ・ホプキンス大学のNancy Schoenborn氏らの研究。65歳以上の2型糖尿病患者818人(平均年齢74.0±6.8歳、男性53.7%)を対象に行った横断調査の結果、対象の60%がガイドラインの推奨と相反して血糖管理強化療法が必要と考えており、罹病期間が長い患者ほどその傾向が強いことが明らかになった。

 この結果についてSchoenborn氏は、「医師がなぜ血糖管理の緩和を推奨するのかについて、患者はもっと情報を得る必要があることが示唆される」とし、「血糖管理緩和は副作用のリスクを低下させ、生活の質(QOL)を向上する」と述べている。

 血糖管理の強化に伴う最も重大な副作用は低血糖で、その症状は、震え、冷や汗、興奮、意識の混乱、めまいなどだが、米国糖尿病学会(ADA)によると、不整脈や失神を起こすこともあり、稀ではあるが最悪の場合、死に至ることもあるという。そのためADAや米国退役軍人省、米国老年医学会は、健康状態が不良で余命が短い患者に関しては血糖管理の緩和を提案している。

 米モンテフィオーレ医療センター臨床糖尿病センター長のJoel Zonszein氏は、「低血糖の予防は高齢者においてより重要であり、低血糖リスクが少ない新しいタイプのインスリンや他の薬剤もある」と解説。患者に対しては、「医師とのコミュニケーションを保つことが大切だ。健康状態はいつでも変わり得るので、現在の治療のリスクとベネフィットを医師と話し合うように」とアドバイスしている。

[2019925/HealthDayNews]