アルツハイマー病を防ぐ変異を持つ症例

アミロイドβの高度な沈着は見られるが、アルツハイマー病を発症しない…。そんなまれな症例を、米国・ハーバード大学医科大学院のJoseph F. Arboleda-Velasquez氏らが Nature Medicine201911月号に報告した。今回の発見により、アルツハイマー病の予防や治療に、新たな選択肢がもたらされるかもしれない。

 報告された症例は、アルツハイマー病になりやすい変異(E280A プレセニリン-1)を持つ家系から見つかった。対象症例の患者の家系では、軽度認知症を中央値44歳(95CI4345)、認知症を中央値49歳(95CI4950)で発症することが報告されているが、今回の症例は70歳まで軽度認知症を発症しなかった。

 アルツハイマー病は、アミロイドβの脳への沈着が引き金となり、タウタンパク質が凝集し、神経細胞死に至ることで発症すると考えられている。著者らは脳画像検査を実施し、所見を確認した。すると、アミロイドβの沈着は非常に高度にもかかわらず、タウタンパク質の凝集や神経変性はあまり見られなかった。

 症例のゲノムを調べたところ、プレセニリン-1のほかに、アルツハイマー病との関連が知られるAPOE3タンパク質に変異があった。このAPOE3タンパク質の変異が、アルツハイマー病の発症に関わる糖タンパク質との結合を阻害することも突き止められた。

 これらの結果から、APOE3タンパク質の変異によって、APOE3タンパク質と糖タンパク質の結合が阻害されたことで、アミロイドβ沈着が高度でもアルツハイマー病が発症しなかった可能性が示唆された。著者らは、APOEタンパク質の発現抑制や、糖タンパク質の結合部位の調節が、アルツハイマー病の予防や治療に貢献できるのでは、と期待を示している。



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