アルツハイマー病遺伝子の影響は20代から?

まだ若い学生でも、鍵をなくしたり、約束をうっかり忘れてしまったりすることはあるが、ほとんどの場合は気にするほどのことではない。しかし、アルツハイマー病の家族歴がある若者に記憶力の低下がみられた場合、深刻な問題の初期症状である可能性も考えられることが、米アリゾナ州フェニックスの遺伝学研究所であるTGenMatt Huentelman氏らによる研究で示された。この研究結果は「eLife618日オンライン版に発表された。

 Huentelman氏らの研究グループは2013年、アルツハイマー病の家族歴が将来、アルツハイマー病を発症するリスクにどのように影響するのかを調べるため、“MindCrowd”と呼ばれるオンライン言語記憶検査を開始した。当時はリンダ・カーターなどのセレブリティが、ソーシャルメディアでこの検査を紹介したことから大きな話題を呼んだ。

 その後、20188月までに150カ国、米国では全50州から約6万人(92%が白人)が“MindCrowd”に登録。現在もこのプロジェクトは進行中で、これまでに116,000人の検査が行われているが、今回の研究では、20188月までに登録された1885歳の男女59,571人を解析対象とした。

 “MindCrowd”は、まず12組の互いに関連する2つの単語が表示される。次に、関連する単語のうち1つだけがランダムに表示され、対応する単語を思い出してもらう検査だ。対象者はこの検査を3回受けたほか、自分自身と家族の健康状態について情報を提供した。また、研究では、アルツハイマー病の家族歴がある約5,000人から提供された血液または唾液のサンプルを用いて、アルツハイマー病リスクに関連する特定のタンパク質〔アポリポタンパクEAPOE)〕の測定も行われた。

 その結果、20歳代の若者を含めた1865歳の対象者のうち、家族にアルツハイマー病患者がいる人では、家族歴がない人と比べて言語記憶検査のスコアが低いことが分かった。

 ただ、Huentelma氏は「両親や祖父母がアルツハイマー病と診断されているからといって、自分もアルツハイマー病を発症する運命にあると思う必要はない」と強調。「アルツハイマー病リスクには遺伝的要因以外にも、さまざまな要因が影響している。家族歴がある人や遺伝的にアルツハイマー病リスクが高い人でも、認知機能の問題がみられないまま長生きする人は多い」と説明している。

 その一方で、Huentelman氏は「アルツハイマー病リスクの約75%は遺伝的要因によるものだと考えられているのも事実だ」とし、今回の研究で実施された検査からも、「一般的な認知症の発症年齢と比べて40歳も若い人の認知機能に、遺伝的なリスクが影響している可能性があることが示唆された」としている。

 なお、Huentelman氏によれば、この検査は認知症の臨床的な診断を目的としたものではない点に注意が必要だという。同氏は「アルツハイマー病の家族歴がある人では言語記憶検査スコアの有意な低下がみられたが、その差はわずかなものだった。したがって、若い人たちの日常生活に影響するほどのことではないとみられる」と説明している。さらに、「認知症リスクの低減に有益な因子としては、運動や睡眠、栄養価の高い食事、積極的な社会参加、禁煙などが知られている」としている。

 この研究には関与していない米アルツハイマー病協会のKeith Fargo氏も、この考えに同意し、今回の研究結果は慎重に解釈する必要があると指摘。「アルツハイマー病に遺伝的要因が関与しているのは確かだが、どの程度影響しているのかは不明だ。現実的には、その人が将来、アルツハイマー病を発症するか否かを予測するのはほぼ不可能だ」としている。

[2019627/HealthDayNews]



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