ミック・ジャガーが手術した心臓弁疾患とは?

英国のロックバンド「ローリング・ストーンズ」のボーカル、ミック・ジャガーが心臓弁膜症の手術を受けることが報じられ、容態を心配したファンは少なくないだろう。これまでジャガー本人が自身の病状について語ったことはないが、45日に行われた心臓弁置換術は成功し、順調に回復していることをSNSで本人が明かした。

 ジャガーと同様の疾患を抱える患者は多い。米国では、心臓弁膜症の患者数は500万人を超え、米国立保健統計センター(NCHS)の最新データ(2013年)によると、心臓弁手術を受けた患者数は年間10万人以上に上るという。

 米ワシントン大学医学部教授のCatherine Otto氏によれば、心臓弁膜症とは、心臓にある4つの「弁」のいずれかが正常に機能しなくなり、心臓のポンプ機能が支障を来した状態を指す。心臓弁膜症に関する米国心臓協会(AHA)のガイドライン作成委員会の共同委員長を務める同氏は、「血液を肺に送り出す心臓の右側にある2つの弁に問題が生じることはほとんどないが、全身に血液を送り出す左側の2つの弁には機能異常が生じやすい」と説明する。

 左側の2つの弁のどちらかの開きが悪くなると、心臓が過度に働かない限り血液は送り出されない。また、弁が完全に閉じずに逆流を起こした状態になると、不足した血液を補うために心臓は余分に血液を送り出さなくてはならなくなるという。

 なお、AHAガイドラインの共著者で米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部心臓病学教授のRobert Bonow氏によれば、先天的に弁に異常がある患者の割合は極めて低く、先天異常があっても数十年にわたって問題なく生活できる場合が多いという。一方で、解剖学的に正常な弁でも心臓が鼓動するたびに開いては閉まる動作を繰り返し、その回数は80年間に約30億回にも達すると同氏は試算する。「こうした弁も人生のどこかの時点で劣化し始める。長く生きていれば起こりうる現象の一つにすぎない」と、かつてAHAの会長も務めたBonow氏は説明する。

 心臓弁膜症のリスク因子には、心筋梗塞と同様、高コレステロールや喫煙、高血圧、糖尿病などが挙げられる。しかし、「運動選手などリスク因子が全くない人でも心臓弁膜症を発症する可能性はある」とBonow氏は指摘する。

 心臓弁膜症の症状は、胸痛や動悸、息切れ、疲労、立ちくらみ、足首や脚、腹部のむくみなどだ。しかし、症状が軽く、患者は気付きにくいこともあるとOtto氏は話す。なお、同氏の患者で最もよく見られる症状は運動能力の低下で、運動時の胸痛や息切れ、めまい、失神などは特に重度の症状だという。

 劣化した心臓弁は金属や動物の組織で作られた新しい弁と置換することができる。Bonow氏によれば、その治療法は近年、経カテーテル大動脈弁置換術(Transcatheter Aortic Valve ReplacementTAVR)と呼ばれる治療法の普及に伴い大きく変化した。従来、標準とされた開胸手術に対し、TAVRでは大腿動脈から挿入したカテーテルを用いて心臓弁を置換するため、低侵襲な手術が可能となった。また、TAVRにかかる時間は12時間と極めて短く、入院期間も数日で済み、その後12週間は自宅で療養できる。対して、開胸手術後の回復には6週間から3カ月を要する。

 現在、TAVRは、開胸手術によるリスクが高い患者に対する治療法として承認されているが、最近発表された臨床試験では、低リスク患者においてもTAVRによって開胸手術に匹敵する治療成績が得られているという。

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