口ひげに口唇がんの予防効果? 米研究

口ひげは、男らしさを演出できるだけでなく、思わぬ健康効果をもたらすようだ。米カンザス大学ヘルスシステム皮膚科部長のDaniel Aires氏らによる研究で、若い頃から口ひげを生やしている男性は、そうでない男性に比べて口唇がんの発症につながる日光角化症になりにくい可能性があることが示された。この研究結果は「Journal of the American Academy of Dermatology6月号に発表された。

 Aires氏は「毛髪に頭皮を守る働きがあるように、口ひげにも同様に唇を保護する効果があるようだ。しかし、こうした効果が科学的に検証されたことはこれまでなかった」と説明している。

 Aires氏らは今回、頭部や顔面に「日光角化症」と呼ばれる前がん病変があると診断された男性患者200人を調べた。同氏によれば、日光角化症はうろこ状の鱗屑を伴う皮膚病変で、有棘細胞がんと呼ばれる危険性の高いがんに進行する場合がある。特に唇の皮膚は非常に薄いため、唇に日光角化症を発症すると、その他の部位に発症した場合と比べてより速く浸潤し、致死的ながんに進行しやすいという。

 なお、米国では、日光角化症の患者数は年間約300万人に上り、皮膚科を受診する患者の7人中1人を日光角化症患者が占めている。ただ、複数の研究で成人における日光角化症の有病率は10%以上であることが示されており、診断や治療を受けていない患者がかなりの数に上る可能性が高とされている。

 今回の研究では、参加した男性のうち59人は、20歳代前半から厚さが9mm以上の口ひげを長年にわたり生やしていた。分析の結果、こうした口ひげのある男性では、口ひげがない男性と比べて下唇に日光角化症を発症するリスクが16分の1に低下することが分かった。また、この結果は、皮膚がんの家族歴や日焼けの経験、喫煙習慣、年齢といった他のリスク因子で調整後も認められた。

 専門家らは「日光角化症は、未治療のまま放置すると有棘細胞がんに進行する可能性がある」と注意を呼び掛けている。なお、この種のがんは皮膚の外層や唇の周辺、耳、毛髪のない頭皮、肩などに発症しやすいが、口腔内や鼻、喉に起こることもある。また、最初に発症した部位から転移する可能性もある。

 では、口ひげを生やしていない男性は、これから生やすべきなのだろうか?
 この点について、Aires氏は「今回の研究に参加した男性は若いうちから口ひげを生やしていたため、年を取ってから生やした口ひげでも同じような保護効果が得られるかどうかは分からない」としている。ただし、日焼け止めを使用すると高齢者の日光角化症を予防できることが複数の研究で示されていることから、同氏は「口ひげにも同じロジックが当てはまる可能性はある」との見方を示している。

 この研究には参加していない米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター皮膚外科部門の部門長を務めるSteven Wang
氏は「毛髪が頭皮の保護に優れた効果を発揮していることは既に知られている」と指摘し、口ひげが唇を保護することを示した今回の報告は「理にかなった研究結果だ」と話している。

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