心不全の急増と治療の進歩 AHAニュース

Aimee Rodriguez-Zepeda氏が医師から悪い知らせを伝えられたのは、子宮がんの化学療法が終了した日から約6年後のことだった。その時、彼女の心臓は20%しか機能していなかった。元海兵隊員である彼女を子宮がんから救った化学療法が、心血管疾患の遺伝的背景と相まって、心不全を引き起こしたのだ。

 2014年、39歳の時に心不全の診断を受けた彼女は、「私の身体は時限爆弾のようなものだったのだろう」と語り、「化学療法で健康を取り戻す代償として、薬の副作用で体がダメージを受けることに、今もってあまり注意が払われていないのではないか」と述べている。

 かつては致命的な疾患と捉えられていた心不全だが、状況は徐々に変化してきている。現在では、生活習慣の改善や薬剤、埋め込み型デバイス、手術などの進歩により、十年以上、あるいは数十年にわたり管理可能となってきている。それに伴い患者数も急増し、米国には現在600万人の心不全患者がいて、高齢化に伴い2030年までに800万人に達すると見込まれている。

 心不全の原因としては、心筋梗塞や高血圧、先天性心疾患、糖尿病、肺疾患、飲酒などが多く、がんに対する化学療法や放射線治療もリスクを高める。また、米メイヨークリニックのShannon Dunlay氏は、「有病率の上昇には多くの因子が関与しているが、理由の1つは単に平均寿命が延びているということだ。心不全リスクは加齢に伴い上昇する」と指摘する。

 「治療の基本は薬物治療」と、米ペンシルベニア大学のAnjali Tiku Owens氏は言う。治療薬には、アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬、β遮断薬などいくつかの種類がある。最近、米食品医薬品局(FDA)は、初のアンジオテンシン受容体/ネプリライシン阻害薬の合剤(ARNi)である新薬、サクビトリル/バルサルタンを承認した。

 これらの薬剤に加え、Dunlay氏は「ほかの疾患の治療薬が心不全の治療にも有効な場合がある」として、糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬に関する最近の臨床試験結果を紹介している。この試験では、心臓のポンプとしての出力が低下した心不全患者にSGLT2阻害薬を投与したところ、糖尿病の有無に関わらず病状の悪化と心血管死のリスクが減少することが明らかとなった。

 ただ、Dunlay氏とOwens氏はともに「心不全の治療に最も効果的な手段の1つは、生活習慣を改善することだ」と指摘する。この点に関連し、冒頭のRodriguez-Zepeda氏も、「心不全を管理するのに、食生活を変えたり運動を行ったことが最も効果的だったと感じている」と語っている。

 患者自身がすべきことについて、Dunlay氏は「やるべきことはたくさんある。毎日決められた時間に薬を服用し、運動をして、水分摂取量を管理すること。特に、体重増加は体内に余分な水分が貯留している可能性を示す重要な兆候の1つであり、毎朝の体重測定を忘れずに行うべき」としている。そして「もし体重が5ポンド(2.27kg)以上増えていたら、薬を調整すべきか検討が必要であるため、医療機関に連絡をとるべきだ」と解説している。

 Owens氏によると、薬物治療や生活習慣の改善、埋め込み型デバイスなどの効果が十分でなく心臓移植が唯一の望みになる患者もいるが、そうしたケースは稀だという。そして同氏は、心不全治療の目標を「単に寿命を延ばすだけでなく、より快適に生きることだ」としている。具体的には「充実した人生を送っているか、それとも入退院を繰り返している人生なのか」の違いだとし、医療従事者に対しても「心不全と診断したら、患者の生活の質にも焦点を当てて、患者と治療目標について話し合いを続ける必要がある」と述べている。

[2020
23/American Heart Association] 

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です