患者の20人に1人は予防可能な医療過誤の被害者

左右を取り違えて膝を手術されてしまう、アレルギーの既往があると分かっている薬を投与される―。そうした医療過誤は実際に起こっている。英NIHR グレートマンチェスター患者安全トランスレーショナルリサーチセンターのMaria Panagioti氏らの研究によると、患者の20人に1人は予防可能な医療過誤の被害を受けており、そうした被害の12%は永続的な障害や死亡に至っているという。研究の詳細は、「BMJ717日オンライン版に掲載された。

 Panagioti氏らによると、米国では、予防可能な患者への被害のために、およそ93億ドル(約1101憶円)の医療費が余分に費やされている。同氏らはこうした事実と研究結果を踏まえ、予防できる患者への被害を軽減することで、医療は大きく改善され、医療費も大幅に削減される可能性があるとしている。

 研究では、医療過誤による患者への被害の中でも防止可能だったものに的を絞り、関連論文のシステマティックレビューを実施。基準を満たした70件の論文を対象にメタアナリシスを行い、医療過誤による患者への被害の頻度や重症度、最もよく生じるタイプなどを調べた。

 解析の結果、337,025人の解析対象者のうち、28,150人が有害なインシデントを経験し、15,419人が予防できる有害なインシデントを経験していたことが明らかになった。また、有害なインシデントの累計は47,148件で、そのうち25,977件(55%)は予防可能なものであった。

 さらに、予防可能な被害のほぼ半数は、薬物治療(25%)やそのほかの管理治療(24%)により生じたものであったほか、予防可能な被害の約12%は永続的な障害や死をもたらす重度のものであった。予防可能なインシデントの頻度が高いのは手術室や集中治療室で、最も少ないのは産科だった。

 これらの結果を受けPanagioti氏らは、「予防可能な患者への被害は医療現場のいたるところで生じている深刻な問題であることが確認できた」と結論づけ、こうした被害を減らすために「まずは、薬に関連した有害事象など予防可能な患者への被害の主な原因の軽減に取り組むとともに、集中治療室や手術室などに焦点を合わせていくべきだ」としている。さらに、プライマリケアや精神科などの専門領域、小児や高齢者といった弱者、発展途上国からエビデンスを集めることも重要だと指摘している。

 付随論評を執筆した、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスおよびハーバード大学医学大学院の専門家らは、研究結果は「医療システムにおいて予防可能な被害がどれくらい生じているかを思い起こさせてくれるものである。また、予防可能なものがどれだけあるかに着目している点が重要である」と評している。そして、今後は、ヒヤリハットの丹念な報告を推奨するような環境をつくり、有害事象のより体系的な判断基準を構築し、患者の積極的な参加を促していく文化を育むことにより、予防可能な被害を把握する能力を向上させていくことが必要だと付け加えている。

[2019718/HealthDayNews]



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