抗うつ薬は抑うつ症状より不安症状の軽減に効果あり?

抗うつ薬のセルトラリン(日本での商品名ジェイゾロフト)を使用した人の多くは、以前よりも気分が良くなったと報告する。しかし、こうした効果は、抑うつ症状ではなく不安症状を軽減する同薬の作用によるものである可能性が高いことが、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)疫学精神医学教授のGlyn Lewis氏らが行った臨床試験により明らかになった。研究の詳細は、「Lancet Psychiatry919日オンライン版に掲載された。

 今回の試験は、英国4都市のプライマリケアの医療機関の患者653人を対象に、2015年から2017年にかけて実施された。対象者は1874歳(平均年齢39.7歳、59%が女性)。罹病期間はさまざまであったが、臨床面接スケジュール改訂版(Clinical Interview Schedule -RevisedCIS-R)を用いた評価では、54%がうつ病、46%が全般性不安障害、15%が混合性不安抑うつ状態の基準を満たしていた。

 Lewis氏らは、対象者の半数をセルトラリンを12週間使用する群に、残る半数をプラセボを使用する群に割り付けた。セルトラリンは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と呼ばれる抗うつ薬の一つである。対象者には、試験開始から2612週間後に質問票を用いた抑うつ症状の評価を行い、全般性不安障害のスクリーニングも実施した。

 その結果、試験開始から6週間の時点では、セルトラリン使用群では抑うつ症状は5%しか軽減しておらず、統計学的に有意な効果は示されなかった。それに対し、不安症状は6週間後に21%軽減し、12週間後には23%軽減した。

 抑うつ症状に対しても、12週間後にはセルトラリンの効果が現れることが示唆されたが、Lewis氏らはその効果は弱いものだとしている。ただし、同氏らは、抑うつ症状を抱える患者のほとんどに不安症状もあることを指摘。また、セルトラリンを使用した患者は、精神面に関連した生活の質(QOL)の大幅な改善も実感していたという。さらに、全般的に気が楽になったと報告する患者は、プラセボ群に比べてセルトラリン使用群は2倍に上り、重篤な副作用もみられなかった。

 こうした結果を踏まえLewis氏らは、「セルトラリンを使用しても6週間以内では抑うつ症状の軽減は期待できないようだ。しかし、不安症状に対しては早期から軽減効果が見られた上に、QOLや自己評価による精神面での健康についても改善が見られた。これは臨床的に重要な意味を持つだろう」と結論付けている。さらに、「研究結果は、本格的なうつ病や不安障害とは診断されないような、軽症から中等症までの抑うつ症状を有する患者も含め、これまで考えられていたよりも幅広い患者層にSSRIを処方することを支持するものである」とした上で、「抑うつ症状の治療としてセルトラリンなどのSSRIを処方することを医師は躊躇すべきでない」と主張している。

 今回の報告を受けて、専門家の一人で米ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のTurhan Canli氏は、「結局のところ、広く使用されている抗うつ薬の多くは、抑うつ症状に対してそれほど効果がないのかもしれない。しかし、この試験ではセルトラリンによって不安症状の軽減やQOLの向上が確認されており、特に不安症状を抱えている患者では同薬が有益である可能性がある」と話している。

[2019923/HealthDayNews]



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