研究成果を基にした「オプジーボ」、副作用少なく多くのがんに効果 ノーベル医学・生理学賞の本庶佑氏

本庶佑氏の研究成果を基に開発されたがん治療薬「オプジーボ」。従来の抗がん剤とは全く異なるメカニズムが特徴で、有効性が高く副作用も少ない。多くの種類のがんに効く利点もあり、がん治療に革命をもたらす新薬として脚光を浴びている。

 これまでの抗がん剤は、化学物質でがん細胞の分裂を阻害して増殖を抑える薬や、ホルモンの働きで抑える薬、細胞の特定のタンパク質を狙って攻撃する分子標的薬の3つに大別される。これらのほとんどは、がん細胞を直接攻撃するタイプの薬だ。

 これに対してオプジーボは、人の体が本来持っている免疫力を強めることで、がん細胞をやっつける。がんを攻撃するT細胞という免疫細胞の表面には、免疫を抑えるブレーキ役の「PD-1」というタンパク質がある。オプジーボはこの分子に結合し、その働きを阻害することでブレーキを外し、T細胞がきちんとがんを攻撃できるようにする仕組みだ。

 このタイプの薬は免疫を監視(チェック)する分子の働きを妨げることから、「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれる。平成18年に始まったオプジーボの臨床試験では、驚くべき効果が明らかになった。

 皮膚がんの一種で治療が非常に難しい悪性黒色腫や肺がんなどを対象にした米国の治験で、進行がん患者への有効性を確認。また悪性黒色腫を対象に既存の抗がん剤と比較した治験では、抗がん剤を使った患者は15カ月後の生存率が20%に低下したのに対し、オプジーボの患者は70%の生存率を維持し、顕著な効果を示した。

 オプジーボの特徴はメカニズムだけでなく、効果が長続きすることだ。従来の抗がん剤は最初は効いていても、使っている途中で効きにくくなり、転移や再発をしてしまうことが多い。これに対しオプジーボは、効く人には最初から効くことが多いほか、途中から効果が出たり、使用を止めても効果が続いたりするケースがある。

 免疫チェックポイント阻害薬の臨床研究に長く携わる国立がん研究センター中央病院の北野滋久医師は「オプジーボを投与した進行悪性黒色腫患者の約3割は5年以上の長期間、生存している。これまでの常識では考えられないことだ。従来の抗がん剤では全身にがんが転移したり、再発したりした患者が治癒するのは極めて困難だが、治る人が出てくるかもしれないとの期待を抱かせる薬だ」と話す。

 多くのがんに効果があるのも特徴だ。現在承認されている適応症は悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がん、頭頸部がん、胃がんなど7種類。さらに食道、卵巣など10種類以上のがんで臨床試験が行われている。免疫を強める働きがあるため、副作用として自己免疫疾患のような症状が出ることがある。だが頻度は低く、脱毛やだるさなどが生じる既存の抗がん剤と比べて症状は軽いことが多い。免疫チェックポイント阻害薬は、「CTLA-4」という別のブレーキ役のタンパク質を抑える薬が米国で開発され、先行して商品化された。ただ、単独では悪性黒色腫しか効果がなく、適応症の広さや副作用の少なさでオプジーボの方が評価は高い。北野医師は「オプジーボは幅広い種類のがんに効く可能性がある。既に悪性黒色腫では患者に最初に投与する第一選択薬になっており、肺がんなど複数のがんでも標準的な治療法になっている」と話す。

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