肥満は動脈壁に直接ダメージを与える?

肥満が動脈壁に直接ダメージを与え、心疾患の発症につながるメカニズムの一端を、英オックスフォード大学心臓血管内科教授のCharalambos Antoniades氏らが明らかにした。肥満の心疾患患者では、動脈周囲の脂肪組織で「WNT5A」と呼ばれるタンパク質が多く産生され、血管内に有害な影響を与えている可能性があることが分かったという。同氏らは、新たな治療法につながる知見だと期待を示している。詳細は「Science Translational Medicine918日号に掲載された。

 この研究結果はまだ初期段階のものだが、Antoniades氏は「心疾患の治療や予防戦略でWNT5Aは新たな標的になり得る」とし、「脂肪細胞におけるWNT5Aの産生を抑制したり、WNT5Aが血管壁に与える有害な影響を阻害したりする治療法を開発できれば、肥満を抑え、心筋梗塞や脳卒中を予防できるかもしれない」と話している。

 これまで数多くの研究で、肥満の人は、やせた人と比べて心疾患リスクが高いことが明らかにされてきた。米国心臓病学会(ACC)によると、肥満は心疾患の原因となる2型糖尿病や高血圧、睡眠時無呼吸などのリスクを高めるため、間接的に心疾患リスクを上昇させると考えられてきた。それに対し、今回の研究は、肥満が血管に直接ダメージを与えている仕組みの一端を明らかにしたものだとAntoniades氏は説明している。

 Antoniades氏らは今回、心臓手術を受けた1,004人の心疾患患者から採取した血液と組織サンプルを分析した。その結果、肥満患者では血中のWNT5Aレベルが著しく高いことが分かった。また、同氏らは、WNT5Aは特に動脈周囲にある脂肪組織から大量に放出されていることを突き止めた。さらに、WNT5Aレベルが高い患者では、その後35年の間に、動脈内にプラークがより速く蓄積することも明らかになった。

 この研究結果からは、WNT5A自体が心疾患の原因であると断定はできないが、Antoniades氏らは実験室でより直接的なエビデンスを得ることができたと話す。血管細胞をWNT5Aに曝露させたところ、「より有毒な物質が産生され、プラークの蓄積を促進する状態に変化した」のだという。

 今回の報告を受けて、米ノースウェル・ヘルス傘下のサンドラ・アトラス・ベイス心臓病院のBenjamin Hirsh氏は「このタンパク質は、肥満患者で多く産生されるだけではなく、血管に損傷を与えてしまうものだ」と話し、「肥満によって血管が損傷を受ける経路は、おそらくWNT5Aを介した経路だけだろう」と考察。その上で、「この研究結果は、肥満が有害な影響をもたらすメカニズムの解明を前進させる重要な一歩となるものだ」としている。

 一方、米退役軍人医療センター・ヒューストンの循環器医で、ACCの予防部門とリーダーシップ評議員会のトップでもあるSalim Virani氏は、「新たな治療につながる可能性があるため、肥満と心疾患が関連するメカニズムの解明は重要だ」とした上で、薬物治療よりも健康的な生活習慣を重視すべきだと強調している。

 また、Virani氏は「肥満は一部のがんを含む他の疾患のリスク上昇にも関連するため、体重管理は重要だ」と説明。ただ、どれだけ減量できたかにかかわらず、定期的な運動を含めた健康的な生活習慣を心掛ければ身体的および精神的な健康が増進されるとし、「肥満で運動不足の生活よりも、肥満でも活動的な生活を送っている方が良い」と話している。

[2019919/HealthDayNews]



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