脳梗塞患者の脳内に口腔常在菌を発見、米研究

通常は口腔内にある細菌が、脳梗塞患者の脳内で発見されたという研究結果を、タンペレ大学(フィンランド)法医学部のOlli Patrakka氏らが「Journal of the American Heart Association64日号に発表した。口腔常在菌は、脳卒中などの脳血管疾患の発症に関与している可能性があるという。

 Patrakka氏らの研究グループはこれまで、10年以上にわたり細菌感染と心血管疾患の関連について研究を重ねてきた。今回の研究では、20132017年の間に、同大学病院で急性期脳梗塞の治療を受けた患者75人(平均年齢67歳、男性69%)から摘出した血栓中の細菌について調べた。

 その結果、対象患者の84%(63人)の血栓中に細菌のDNAが発見された。このうち59人では、通常は口腔内に存在し、血流に入り込むと感染症を引き起こすレンサ球菌属(Streptococcus属)の細菌が見つかった。さらに、今回特定されたレンサ球菌属の主な細菌は、感染性心内膜炎の原因菌の一つと考えられている「緑色レンサ球菌」であることも分かった。

 なお、Patrakka氏によれば、2013年には、心筋梗塞患者から摘出した血栓にも同じレンサ球菌属の細菌が存在していたことが、同氏の共同研究者らによって確認されている。その後の研究で、脳動脈瘤が破裂した患者や下肢に血栓がある患者にも同じ細菌が見つかっていたという。

 この研究について、Patrakka氏は「脳梗塞患者の脳内に口腔常在菌のDNAが高頻度にみられることを示した初めてのものだ」と述べ、動脈硬化に関連した重篤な合併症の発症には細菌が関与する可能性を示したものだとしている。

 心疾患のリスク因子には、高血圧や高コレステロール、運動不足、糖尿病、喫煙習慣、肥満が知られている。一方、米国心臓協会(AHA)の専門家パネルは2012年、口腔衛生と心血管疾患の関連についてエビデンスをレビューした結果、歯周病と心疾患が直接関連したり、歯周病を治療すると心疾患の予防につながったりすることを裏付けるエビデンスは、現時点では不十分だと結論づけていた。

 このAHAの結論を示した声明文の筆頭著者で、米カロライナ医療センター口腔医学部研究教授のPeter Lockhart氏は、今回の研究報告を受けて、「脳梗塞患者の脳内に口腔常在菌が存在することを明らかにしたものだが、研究結果の意義には疑問の余地がある」と指摘。「口腔内の衛生状態や歯周病の有無にかかわらず、口腔内にある細菌が血流に入り込むこと自体は珍しくない」とした上で、「血栓中に細菌の存在が確認されても、それが疾患のプロセスに影響しているかどうかは不明だ」としている。

 また、Patrakka氏らは、自身の研究は、定期的に歯科検診を受けることで脳卒中リスクを低減できる可能性を示したものだとしているが、Lockhart氏は「心筋梗塞や脳卒中などを予防するには禁煙や健康的な食事、運動習慣などをより重視すべきだ」との見解を示している。

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