認知症への運動不足の影響、発症前10年から?

運動不足(physical inactivity)と認知症の関連についての観察研究は、逆の因果関係バイアスの影響が働く可能性があるという。フィンランド・ヘルシンキ大学のMika Kivimaki氏らIPD-Work consortiumは、このバイアスを考慮したメタ解析を行い、運動不足はあらゆる原因による認知症およびアルツハイマー病との関連はないのに対し、心血管代謝疾患を発症した集団では、運動不足により認知症リスクがある程度高い状態(1.3倍)にあることを示した。研究の詳細はBMJ2019417日号に掲載された。無作為化対照比較試験では、運動による認知症の予防および遅延のエビデンスは得られていない。一方、観察コホート研究の多くはフォローアップ期間が短いため、認知症の発症前(前駆期)段階における身体活動性の低下に起因するバイアスの影響があり、運動不足関連の認知症リスクが過大評価されている可能性があるという。

19件の前向き研究を逆の因果関係バイアスを考慮して解析

 研究グループは、運動不足は認知症のリスク因子かを検討するために、この関連における心血管代謝疾患の役割および認知症発症前(前駆期)段階の身体活動性の変化に起因する逆の因果関係バイアスを考慮して、19件の前向き観察コホート研究のメタ解析を行った(NordForskなどの助成による)。

 19件の研究は、Individual-Participant-Data Meta-analysis in Working PopulationsIPD-WorkConsortiumInter-University Consortium for Political and Social ResearchUK Data Serviceを検索して選出した。

 曝露は運動不足であり、主要アウトカムは全原因による認知症およびアルツハイマー病とし、副次アウトカムは心血管代謝疾患(糖尿病、冠動脈性心疾患、脳卒中)であった。変量効果によるメタ解析で要約推定量を算出した。

運動不足は、発症前10年では関連あり、10年以上前では関連なし

 認知症がなく、登録時に運動の評価が行われた404,840例(平均年齢45.5歳、女性57.7%、運動不足164,026例、活発な身体活動24814例)について、電子カルテの記録で心血管代謝疾患および認知症の発症状況を調査した。認知症の平均フォローアップ期間は14.9年(範囲:9.221.6)だった。

 600万人年当たり、2,044例が全認知症を発症した。認知症のサブタイプのデータを用いた研究では、アルツハイマー病は520万人年当たり1,602例に認められた。

 認知症診断前の10年間(認知症の発症前段階)の運動不足は、全認知症(ハザード比[HR]1.4095%信頼区間[CI]1.231.71)およびアルツハイマー病(1.361.121.65)の発症と有意な関連が認められた。一方、認知症発症の10年以上前の身体活動を評価することで、逆の因果関係を最小化したところ、活動的な集団と運動不足の集団に、認知症リスクの差はみられなかった(全認知症:1.010.891.14、アルツハイマー病:0.960.851.08)。これらの傾向は、ベースラインの年齢別(60歳未満、60歳以上)および性別(男性、女性)の解析でも同様に認められた。

 また、認知症発症の10年以上前の運動不足は、糖尿病(HR1.4295CI1.251.61)、冠動脈性心疾患(1.241.131.36)および脳卒中(1.161.051.27)の新規発症リスクの上昇と関連し、診断前10年間では、これらのリスクはさらに高くなった。

 認知症に先立って心血管代謝疾患がみられた集団では、運動不足の集団は認知症のリスクが過度な傾向がみられたものの、有意ではなかった(HR1.3095CI0.792.14)。心血管代謝疾患がみられない認知症では、運動不足と認知症に関連はなかった(0.910.691.19)。

 著者は、「これらの知見は、運動不足を対象とする介入戦略だけでは、認知症の予防効果には限界があることを示唆する」としている。

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