退院時の降圧治療強化、高齢患者では有害か

心疾患以外の疾患で入院した高齢患者では、退院時に降圧薬を増量したり追加したりするのは危険を伴う可能性があることが、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のTimothy Anderson氏らの研究から明らかになった。入院中に血圧が一過性に上昇したために退院時に降圧治療を強化すると、転倒や他の健康上の問題のリスクが高まることが分かったという。研究結果の詳細は「JAMA Internal Medicine819日オンライン版に掲載された。

 この研究は、20112013年に心疾患以外の疾患で入院した高血圧患者4,056人(平均年齢77歳、男性97.7%)を後ろ向きに追跡したもの。対象患者の血圧は、入院前には良好にコントロールされていた。研究では、対象患者を、退院時に降圧薬を強化された群と強化されなかった群に分けて、臨床転帰を比較した。

 その結果、降圧治療強化群と非強化群との間で、退院から1年後の心血管イベントの発症リスク(ハザード比1.18)と収縮期血圧のコントロール状況(134.7mmHg134.4mmHg)には差はみられないことが分かった。一方、降圧治療強化群では、非強化群と比べて退院から30日以内の再入院率が高く(21.4%対17.7%、ハザード比1.23)、転倒や失神、腎障害といった重篤な薬剤関連の有害イベントがみられる確率も高かった(4.5%対3.1%、同1.41)。

 Anderson氏は「入院中には、疾患やストレスに反応して血圧は一過性に上昇することがある。しかし、今回の研究結果から、この時期に降圧治療を強化しても有益性はないことが示唆された」と説明。「降圧薬を調整するのは、患者が急性疾患から回復するまで先延ばしにする方が安全な可能性が高い」と述べている。

 ただ、Anderson氏は「今回の研究結果は心疾患で入院した患者には当てはまらない」と強調。若年患者や健康状態が比較的良好な患者にも適用できないとの考えを示している。

 共著者の一人で、UCSF老年医学教授のMichael Steinman氏は「降圧薬の調整はタイミングが重要だ」とし、「降圧治療を開始する目標は、心筋梗塞や心不全、脳卒中などのリスクを長期的に抑えることにある。しかし今回の結果から、心疾患以外で入院した場合には、入院中には降圧治療を開始すべきではないことが示唆された」と述べている。

 この研究には関与していない二人の専門家は、今回の研究結果に同意を示している。その一人で米レノックス・ヒル病院の心臓専門医であるSatjit Bhusri氏によれば、今回の研究の鍵は心疾患以外で入院した患者に焦点を当てたことにあるという。「このような患者では、ストレスや外傷、炎症に対する生理学的反応として血圧の上昇はよくみられる」とし、「一過性の血圧上昇に対して降圧治療を強化しても利益はもたらされず、むしろ害を引き起こす可能性がある」と同氏は述べている。

 一方の米ノースウェル・ヘルス、サンドラ・アトラス・バス・ハート病院のGuy Mintz氏も、「この研究のメッセージは明確で、血圧が危険なレベルでなければ降圧薬は調整すべきではないということだ」と述べ、退院時には標準治療を行い、外来でフォローアップを続けることで患者は安全に退院できるとしている。

[2019819/HealthDayNews]

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