高血圧治療ガイドライン改訂、降圧目標の変更は?

本邦における高血圧有病者は約4,300万人と推計される。このうち、治療によって良好なコントロールが得られているのは30%以下。残りの70%は治療中・未治療含め血圧140/90mmg以上のコントロール不良の状態となっている。2014年以来5年ぶりの改訂となる「高血圧治療ガイドライン2019JSH2019)」では、一般成人の降圧目標値が引き下げられ、より早期からの非薬物治療を主体とした介入を推奨する内容となっている。

 425日の発表を前に、日本高血圧学会主催の記者発表が419日に行われ、平和 伸仁氏(横浜市立大学附属市民総合医療センター)が改訂点やその作成経過について解説した。

家庭血圧 vs.診察室血圧、厳格治療 vs.通常治療などCQ方式で推奨度を明記

 JSH2019では、初めてClinical QuestionCQ)方式、Systematic ReviewSR)方式が採用され、エビデンスに基づく17CQが作成された。また、エビデンスが十分ではないが、医療者が実臨床で疑問を持つ課題として9Q(クエスチョン)を設定。コンセンサスレベルでの推奨が解説されている。

 作成されたCQは、「成人の本態性高血圧患者において、家庭血圧を指標とした降圧治療は、診察室血圧を指標とした治療に比べ、推奨できるか?(CQ1)」、「降圧治療において、厳格治療は通常治療と比較して心血管イベントおよび死亡を改善するか?(CQ3)」、「高血圧患者における減塩目標6g/日未満は推奨されるか?(CQ4)」など。推奨の強さが3段階、エビデンスの強さが4段階でそれぞれ評価されている。

 Qについては、2021年以降製造・輸出入が禁止される水銀血圧計に代わって何を推奨するか(Q1)、家庭血圧はいつ/何回/何日間の測定を推奨するか(Q2)などの項目が設けられた。

基準値は変更なし、ただし120/80mmHg以上は定期的な再評価と早期介入を推奨

 高血圧の基準値は、2014年版(JSH2014)と同じく140/90mmHg以上。一方で、正常域血圧の名称と拡張期血圧の範囲が、一部変更された:

至適血圧:120/80mmHg未満→正常血圧:120/80mmHg未満
正常血圧:120129/8084mmHg→正常高値血圧:120129/80mmHg未満
正常高値血圧:130139/8589mmHg→高値血圧:130139/8089mmHg

 背景には、120139/8089mmHgでは生涯のうちに高血圧へ移行する確率が高く、120/80mmHg未満と比較して脳心血管リスクが高いというデータがある。そのため、基準値以下である高値血圧あるいは正常高値血圧の段階から、早期介入が推奨されている。JSH2014では、I度高血圧以上のみ年齢や合併症の有無によって層別化されていた脳心血管病リスクが、高値血圧についても低~高リスクに分類された(表3-2)。

また、高血圧管理計画は、高値血圧や正常高値血圧についてもフローチャートの形で整理され、初診時の血圧レベルに応じた再評価時期、治療法選択の考え方が示されている(図3-1)。

なぜ、降圧目標は10mmHgずつ引き下げられたのか

 合併症のない75歳未満の成人および脳血管障害患者、冠動脈疾患患者については130/80mmHg未満、75歳以上の高齢者については140/90mmHg未満に、それぞれ降圧目標値が10mmHgずつ引き下げられた。この背景には、日本人対象のJATOSVALISHHOMED-BPなどを含む介入試験のメタ解析結果(CQ3)と、EPOCH-JAPANや久山町研究などのコホート研究結果があるという。

 厳格治療群と通常治療群を比較したRCTのメタ解析では、厳格治療群で複合心血管イベントおよび脳卒中イベントリスクが有意に低く、130/80mmHgを目標とする厳格治療のメリットが示された。またEPOCH-JAPANでは、120/80mmHg未満と比較して血圧レベルが上昇するにつれ脳心血管死亡リスクが高まることが示されている。

 高齢者では、130 mmHg未満への降圧による腎障害などに注意を要するため、140/90mmHg未満とされたが、「忍容性があれば個別に判断して130/80mmHg未満を目指す」とされている。

従来よりも厳格な薬物治療が求められる患者とは?

 とはいえ、「この目標値は、すべての患者における降圧薬による降圧目標ということではない」と平和氏は重ねて強調。初診時あるいは降圧薬治療中で130/80mmHg台、低・中等リスクの患者では、生活習慣修正の開始・強化が推奨されている。脳心血管病や糖尿病などの合併症のある高リスク患者でのみ、「降圧薬治療の開始/強化を含めて、最終的に130/80mmHg未満を目指す」とされた。

 JSH2014と比較して、生活習慣修正の上で薬物による降圧強化が新たに推奨された病態としては、下記が挙げられている:

◇130
139/8089mmHgで、以下のいずれか
75歳未満の高リスク患者※
・脳血管障害患者(血管狭窄なし)
・冠動脈疾患患者
高リスク患者の判定:
 ・脳心血管病既往
 ・非弁膜症性心房細動
 ・糖尿病
 ・蛋白尿陽性のCKD
 ・65歳以上/男性/脂質異常症/喫煙の4項目のうち、3項目以上がある
 ・上記4項目のうちいずれかがあり、血圧160/100mmHg以上
 ・血圧180/110mmHg以上
◇75
歳以上で、収縮期血圧140149mmHg

人は幼年期から青年期を経て老年期に移行するという宿命をもっていると思います。それに伴いその時々の身体機能は変化していくというのが常識ではありますが、それを踏まえて考えると

幼年期には幼年期なりの血管の柔軟性やホルモンの活動があり、青年期や老年期もそれに沿った体内機能があると思います。

血圧測定の正常値の医療機関の提言において、個人的に毎回違和感を感じていしまうのは、何故幼年期から老年期にかけてすべて一律な血圧値を正常と示唆するのかというところです。

確かに人によっては、何らかの病的疾患によって提唱する血圧値を維持する事が最優先にしなければならない患者はおられるとは思いますが

そのような病的疾患を持つ患者さんと、そうではない患者さんを医療界が提唱する一律な正常血圧値で、高血圧症であるかそうではないかというカテゴリー分けはあまりにも短絡的なのではないのでしょうかと思いました。

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