経皮吸収型抗精神病薬の理論的根拠と現状

イタリア・ボローニャ大学のAngela Abruzzo氏らは、現在承認されている抗精神病薬の概要、主な利点を調査し、経皮吸収製剤の開発における理論的根拠について報告を行った。CNS Drugs誌オンライン版201996日号の報告。

 過去10年間に公表された論文、特許、臨床試験を検索し、経皮吸収型抗精神病薬に関する研究の進展について調査を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・経皮吸収型抗精神病薬に関する利用可能なデータは、剤型の特徴、薬物吸収促進効果に焦点を当て報告、議論がなされていた。
・現在、多数の抗精神病薬が承認されているにもかかわらず、経皮吸収システムによる開発が行われている薬剤は、アリピプラゾール、アセナピン、ブロナンセリン、クロルプロマジン、ハロペリドール、オランザピン、プロクロルペラジン、クエチアピン、リスペリドンなど一部の薬剤のみであった。
・いくつかの研究や特許では、抗精神病薬の臨床的有用性を拡大する目的で、クリーム、フィルム、ゲル、ナノシステム、パッチ、液剤、スプレーなどの経皮吸収製剤が評価されていることが示唆された。
・とくに、ナノ粒子/小胞の使用や浸透促進剤、イオン導入によるマイクロニードルなどさまざまな戦略の使用は、抗精神病薬の経皮吸収を改善させる可能性がある。
・しかし、経皮吸収型抗精神病薬に関する臨床試験はほとんど行われておらず、アセナピンやブロナンセリンにおいて、薬物動態、有効性、忍容性に関して、興味深い臨床結果が示されている。
2019618日、日本において統合失調症治療薬としてブロナンセリン経皮吸収型テープ製剤が承認され、2019910日に発売された。
・ブロナンセリン経皮吸収型テープ製剤は、11回(通常用量:40mg、最大用量:80mg)胸部、腹部、背部のいずれかに貼付することにより24時間安定した血中濃度を維持できるため、良好な有効性および安全性が期待できる薬剤である。
・また、テープ製剤は、貼付の有無や投与量を視認できるメリットに加え、食事の影響を受けにくいことから、食生活が不規則な患者や経口投与が困難な患者にも使用可能である。 ]

PTSDで卵巣がんリスク増? 米研究

心的外傷後ストレス障害(PTSD)を経験した女性は、そうでない女性に比べて卵巣がんになりやすい可能性があることが、米ハーバード大学T. H.チャン公衆衛生大学院のAndrea Roberts氏らの研究で分かった。研究結果の詳細は「Cancer Research95日オンライン版に掲載された。

 Roberts氏らは今回、看護師健康調査(Nurses’ Health Study II)に参加した女性54,710人を対象に、PTSDと卵巣がんリスクの関連を調べるコホート研究を実施した。調査では、対象女性を1989年から2015年にかけて約26年間追跡。PTSD症状の有無は2008年に評価した。

 その結果、67つのPTSD症状があった女性は、症状がなかった女性に比べて卵巣がんリスクはほぼ2倍に上ることが分かった。なお、PTSDの症状には、ごく普通の音にも過敏に反応したり、心的外傷体験に関連するものを避けたりすることなどが含まれていた。

 この結果を踏まえ、Roberts氏は「PTSDの治療が成功すれば卵巣がんリスクは低減できるのか、あるいは別のタイプのストレスも卵巣がんのリスク因子であるのかなどを今後、明らかにしていく必要がある」と述べている。

 また、この研究では、PTSDを経験した女性では、最もよくみられる浸潤性の高いタイプの卵巣がんリスクが有意に高いことも明らかになった。さらに、45つのPTSD症状があった女性においても卵巣がんリスクは増大したが、統計学的に有意な結果ではなかったという。

 これまで基礎研究で、ストレスやストレスホルモンは卵巣のがん細胞の増殖を促進する可能性があることや、慢性的なストレスの存在は腫瘍のサイズや浸潤性の高さと関連することが示唆されている。一方、臨床研究でもPTSDと卵巣がんは関連する可能性が示されているが、この研究は女性7人を対象としたきわめて小規模なものにすぎなかった。なお、Roberts氏らは、今回の研究結果はこれらの因果関係を証明するものではないとしている。

 共著者の一人で同大学院社会・行動科学教授のLaura Kubzansky氏は「卵巣がんは“サイレントキラー”とも呼ばれ、初期の段階では自覚症状がなく、発見されにくい。そのため、卵巣がんの予防や早期治療のためには、発症リスクが高い女性を特定することが重要だ」と指摘している。

 米国では、卵巣がんは女性のがん死亡の第5位となっている。同じく共著者で米モフィットがんセンターのShelley Tworoger氏は、「卵巣がんのリスク因子については、いまだほとんど明らかになっていない。PTSDや抑うつといった精神的ストレスの関与は、卵巣がん予防に関する研究に新たな道を開く可能性がある」と期待を示している。また、「別の集団でも今回と同じ研究結果が得られれば、女性が将来、卵巣がんを発症するリスクが高いのかどうかを判定する際に、精神的ストレスをリスク因子の一つとして考慮するようになるかもしれない」と同氏は付け加えている。

[201995/HealthDayNews

幼少期の逆境体験が高齢者の疾患リスクに――日本とフィンランドで同じ結果

子どもの頃に逆境体験(過酷な体験)をした人は成人後の主観的健康観が低く、生活習慣病の有病率が高いとする国際研究の結果が明らかになった。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男氏らの研究グループの報告で、詳細は「BMJ Open」に820日オンライン掲載された。

 この研究は高齢者を対象に、現在の主観的健康観や既往症(がん、心臓病または脳卒中、糖尿病)、BMI、喫煙歴と、幼少期の逆境体験(adverse childhood experiencesACE)との関連を質問票により調査したもの。ACEは、親の離婚、家族内の恐怖(本人への身体的虐待や家庭内暴力の目撃)、経済的困窮という3項目をカウントした。

 対象は、日本の65歳以上の成人13,123人(平均年齢69.5歳、男性47.4%)と、フィンランドの60歳以上の成人1353人(64.4歳、男性30.9%)。日本人については日本老年学的評価研究の登録データを用い、介護保険サービスを利用していない(要介助・介護状態でない)者を対象とした。

 まず幼少期のACE体験の有無を見ると、日本では50.0%、フィンランドでは37.2%が1つ以上のACEを体験していた。次に、体験したACEの数と主観的健康観との関連を検討。年齢と性別で調整した[モデル1]では、日本のオッズ比(OR1.43、フィンランドのOR1.39で、ACEを多く体験しているほど主観的健康観が低いという有意な関連が認められた。調整因子に教育歴、配偶者の有無、就労状況を追加した[モデル2]でもやはり有意だった(ORは、日本1.35、フィンランド1.34)。

 ACEの数と既往症の関連も認められた。具体的には、日本における各疾患のORがモデル1で、がん1.16、心臓病または脳卒中1.14、糖尿病1.08であり、モデル2でも、がん1.20、心臓病または脳卒中1.10であって、それぞれACE数が多いほどリスクが上昇する有意な関連があった。フィンランドでは、モデル1で心臓病または脳卒中のOR1.14、糖尿病は1.18で有意に関連しており、糖尿病はモデル2でも有意だった(OR1.17)。このほか、ACE数が多いほどBMIが高値で現喫煙者・前喫煙者の割合が高いという有意な関連が、日本・フィンランドの双方で見られた。

 ACEと成人後の疾患リスクの関連については、米国などの社会格差が大きい国からは既に報告されているが、その他の地域、特に日本からの報告は少ない。今回の研究で、日本とフィンランドという比較的格差が少なく、かつ平等な義務教育や医療保険制度が存在する両国においても同様の傾向が示された。著者らは「ACEと主観的健康観の低下、生活習慣病および健康行動との関連は、日本とフィンランド双方の高齢者で類似していた。この国際比較研究は、健康に対するACEの影響が文化的・社会的環境を問わず一貫していることを示唆している」とまとめている。

[2019917/HealthDayNews]

若者のソーシャルメディア利用時間は制限すべき?

ソーシャルメディアの利用時間が長い若者は、社会的ひきこもりや不安、抑うつなどになりやすいとする研究結果を、米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のKira Riehm氏らが「JAMA Psychiatry911日オンライン版に発表した。1215歳の男女を対象としたこの研究では、FacebookInstagramTwitterなどのソーシャルメディアの利用に13時間以上費やす若者は、不安や抑うつなどの精神的な健康問題を抱えるリスクが約2.53倍に上ることが分かったという。

 Riehm氏らは今回、2013年から2016年にかけて、米連邦政府の助成を受けて実施された全米の若者6,595人を対象とした調査のデータを解析した。その結果、ソーシャルメディアを全く利用していない若者の割合は全体の17%未満だったのに対し、1日当たりの利用時間が「30分以下」の若者は約32%、「30分超3時間以下」は31%、「3時間超6時間以下」は12%、「6時間超」は8%をそれぞれ占めていた。

 また、ソーシャルメディアの利用時間が長いほど不安や抑うつ、孤独感といった「内在化問題」を抱えるリスクが上昇した。例えば、内在化問題を抱えるリスクは、ソーシャルメディアを全く利用していない若者と比べて、利用時間が「30分超3時間以下」の若者では約2倍、「3時間超6時間以下」では約2.5倍、「6時間超」は約3倍であった。

 同様に、ソーシャルメディアの利用時間が長いと、内在化問題だけではなく、いじめや強いストレスを感じた時に無謀な行動を取る行動化(acting out)、注意力の欠如などの「外在化問題」を同時に抱えるリスクも約24倍以上に上っていた。一方、調査では、ソーシャルメディアの利用時間と外在化問題のみとの関連は一貫していなかった。

 これらの結果を踏まえて、Riehm氏は「今回の研究では、ソーシャルメディアを利用する時間の長さと若者が不安や抑うつなどの問題を抱えるリスクの関連が明確に示された」と説明。その上で、「ソーシャルメディアの利用時間が13時間を超える若者は、メンタルヘルスに問題を抱えるリスクが高い」と結論づけている。

 これまでの研究でも同様の結果は示されているが、ソーシャルメディアが若者の心理状態に影響する理由は明らかになっていない。この点について、Riehm氏は「ソーシャルメディアをみると自分以外の全ての人は充実した日々を送っていると錯覚し、自尊心を傷つけられるのではないか」との見方を示している。

 一方、この研究には関与していない米ピッツバーグ大学メディア・テクノロジー・ヘルス研究センターのCesar Escobar-Viera氏は、「ソーシャルメディアが気分や感情に及ぼす影響については議論が続いている」とし、利用しているサイトの数や利用回数も重要な指標である可能性があることや、観察研究では関連が示されるに過ぎず、因果関係は証明されていないことを指摘している。

[2019919/HealthDayNews]

ベジタリアンは肉食より脳卒中リスク増

魚食や菜食主義(ベジタリアン)の人は、肉食の人と比較して虚血性心疾患の発生率は低かったが、ベジタリアンでは脳出血および全脳卒中の発生率が高いことが示された。英国・オックスフォード大学のTammy Y N Tong氏らが、ベジタリアンと虚血性心疾患および脳卒中との関連を調査した前向きコホート研究「EPIC-Oxford研究」の18年を超える追跡調査結果を報告した。これまでの研究では、ベジタリアンが非ベジタリアンより虚血性心疾患のリスクが低いことは報告されていたが、利用可能なデータが限られており、脳卒中に関するエビデンスは十分ではなかった。BMJ201994日号掲載の報告。

5万人を18年以上追跡、肉食・魚食・菜食群に分け心血管疾患の発生を調査

 研究グループは、19932001年に虚血性心疾患、脳卒中、狭心症または心血管疾患の既往がない48,188例を登録し、ベースラインとその後201013年に収集された食事の情報に基づいて、肉食群(魚、乳製品、卵を消費するかどうかにかかわらず肉を食べる人:24,428例)、魚食群(魚は食べるが肉は食べない人:7,506例)、菜食群(ヴィーガンを含むベジタリアン:16,254例)に分類し、追跡調査した。ベースラインとその後の2010年頃(平均追跡期間14年後)の両方で食事に関する報告があったのは28,364例であった。

 主要評価項目は、2016年までの英国医療サービスの関連記録から特定された虚血性心疾患および脳卒中(脳梗塞、脳出血)の発生とし、Cox比例ハザードモデル、Wald検定を用いて解析した。

脳卒中、肉食群に比べ菜食群で20%増加

 18.1年以上の追跡調査の結果、虚血性心疾患2,820例、全脳卒中1,072例(脳梗塞519例、脳出血300例)が確認された。社会人口学的および生活習慣の交絡因子を調整後、魚食群および菜食群の虚血性心疾患の発生は、肉食群と比較してそれぞれ13%(ハザード比[HR]0.8795%信頼区間[CI]0.770.99)および22%(HR0.7895CI0.700.87)低下した(異質性のp0.001)。この差は、虚血性心疾患の発生が肉食群よりも菜食群において、10年以上で1,000人当たり10症例(95CI6.713.1)少ないことに相当した。虚血性心疾患との関連性は、自己報告による高コレステロール、高血圧、糖尿病、BMIで調整すると、部分的に減弱した(菜食群のHR0.9095CI0.811.00)。

 一方、菜食群では、全脳卒中の発生が肉食群より20%増加した(HR1.2095CI1.021.40)。これは、10年以上で1,000人当たり3症例多いことに相当し、大部分は脳出血の増加によるもので、脳卒中との関連性は疾患リスク因子を調整しても減弱しなかった。

 なお、著者は研究の限界として、スタチンなどの薬物療法に関する情報が利用できなかったこと、食事や食事以外に関する交絡因子の可能性、対象者の多くが欧州の白人であり一般化できるかは限定的であることなどを挙げている。

肺気腫に至る肺損傷、電子タバコ使用でも確認

「リキッド」を加熱して発生させた蒸気を吸い込む電子タバコ(ベイパー)を常用すると、通常の紙巻きタバコと同様に、肺気腫につながる肺損傷が引き起こされる可能性があることが、米ノースカロライナ大学細胞生物学・生理学教授のRobert Tarran氏らの研究で明らかになった。詳細は「American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine87日オンライン版に発表された。

 Tarran氏らは今回、非喫煙者と喫煙者、さらに電子タバコ使用者の計41人の肺から採取した胸水の検査を実施した。その結果、喫煙者と電子タバコ使用者ではいずれも、肺気腫の前兆とされるプロテアーゼ酵素の濃度上昇が認められた。

 Tarran氏らによると、肺の細胞でプロテアーゼが慢性的に過剰産生されると、「肺胞」と呼ばれる繊細な組織がダメージを受ける。喫煙者では、このような肺の損傷が原因で肺気腫につながると考えられている。なお、肺気腫は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の一つで、徐々に息切れが悪化する。現在、治癒に導く治療法はないという。

 喫煙者や電子タバコ使用者でプロテアーゼの産生量が増加した要因について、Tarran氏は「電子タバコのリキッドに含まれるニコチンが要因ではないか」と推測。その上で、「電子タバコは、従来の紙巻きタバコに比べて安全とはいえない可能性がある」との見方を示している。

 米国では、従来の紙巻きタバコの喫煙率が低下した一方で、ティーンエージャーを中心に電子タバコの使用が急増している。米食品医薬品局(FDA)によると、2018年に電子タバコを使用していた中高生は計360万人を超えており、使用者数は前年と比べて高校生では78%増加し、中学生では48%増加した。

 なお、電子タバコの危険性を示唆する報告は今回が初めてではない。2018年には、同大学の別の研究グループが、電子タバコ使用者と喫煙者から採取した胸水中のプロテアーゼなどの濃度が上昇していることを報告。また、同年にTarran氏らが実施した研究では、広く使用されている電子タバコのリキッドから有毒な物質が検出されている。

 さらに、米疾病対策センター(CDC)は今年8月、電子タバコを使用する健康な若者の間で突然、重篤な肺疾患を発症した150件を超える事例について調査中であることを明らかにしている。

 米ノースウェル・ヘルスのタバコ対策センターでディレクターを務めるPatricia Folan氏は、今回のTarran氏らの報告を受け、「医療従事者や一般の人々が、電子タバコは有害な影響をもたらし得ることを理解するために役立つ研究結果だ。また、この結果から、電子タバコは安全で禁煙に有用とする説が否定された」とコメント。さらに、「紙巻きタバコの喫煙率低下で得られた健康上のメリットは、電子タバコの普及で相殺されてしまった可能性がある」と指摘している。

 なお、Tarran氏らは今後、より大規模な研究で肺のプロテアーゼ濃度を調べる計画を明らかにしている。

[2019826/HealthDayNews

不眠症患者の疲労に関連する因子

不眠症患者では一般的に疲労が認められるが、臨床症状との関連についてはあまり知られていない。韓国・成均館大学校のSeog Ju Kim氏らは、不眠症患者の疲労と臨床症状との関連について調査を行った。Journal of Psychiatric Research201910月号の報告。

 スタンフォード大学睡眠医学センターを受診した患者を対象に、不眠重症度指数(ISI)、不眠症状アンケート(ISQ)、疲労重症度尺度(FSS)、エプワース眠気尺度(ESS)、こころとからだの質問票(PHQ-9)を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

ISIおよびISQにより、6,367例中2,024例が不眠症と診断された(年齢:43.06±15.19、女性:1,110例、男性:914例)。
・重度の疲労を伴う不眠症患者(1,306例)では、そうでない不眠症患者(718例)と比較し、不眠症状、日中の眠気、抑うつ症状の重症度が高く、習慣的な睡眠時間が長かった。これらは、高い疲労スコアの独立した予測因子であった。
・日中の眠気(ESS≧10)を有する不眠症患者では、抑うつ症状と習慣的な睡眠時間のみが疲労スコアを予測した。
・不眠症の重症度と日中の眠気との相互関係は、疲労の重症度を有意に予測した。
・抑うつ症状は、不眠症と疲労の有意なメディエーターであった。
・終夜の睡眠ポリグラフ検査(PSG)を受けている不眠症患者(598例)では、疲労とPSGパラメーターとの間に有意な関連は認められなかった。

 著者らは「不眠症または抑うつ症状のマネジメントは、不眠症患者の疲労を軽減させる可能性がある。その一方で、睡眠時間を延長させる任意の介入は、疲労を悪化させる可能性がある」としている。

犬を飼うことは心臓の健康に良い?

犬を飼うことは心臓の健康に良い影響を与える可能性があることが、米メイヨー・クリニックのFrancisco Lopez-Jimenez氏らの研究で明らかになった。この研究では、ペットとして犬を飼っている人はペットを飼っていない人に比べて、心血管疾患のリスク因子が少ない傾向があり、運動の機会が多く、食習慣が健康的で、血糖値が低いことが分かったという。また、犬を飼っている人は犬以外のペットを飼っている人と比べても、運動習慣や食習慣が優れていたという。詳細は「Mayo Clinic Proceedings: Innovations, Quality & Outcomes9月号に掲載された。

 Lopez-Jimenez氏らは今回、心血管疾患の既往歴がない2564歳のチェコ人の成人1,769人(44.3%が男性)の健康調査データを用いた研究を実施した。このうち、犬を飼っていた人の約3分の267%)は運動量が米国心臓協会(AHA)の推奨基準(中等度の運動を150/週以上または高強度の運動を75/週)を満たしていた。一方、ペットを飼っていない人でこの推奨基準を満たしていたのは48%、犬以外のペットを飼っている人では55%だった。

 また、AHAは果物や野菜、マメ類、食物繊維を豊富に含む穀類、魚、脂肪の少ない肉で構成された食事を推奨している。今回の研究で、食事がこうしたAHAの推奨基準に届いていない人の割合は、犬を飼っている人では7%未満だったが、ペットを飼っていない人では16%、犬以外のペットを飼っている人では13%だった。

 これらの結果についてLopez-Jimenez氏は、「犬を飼っていると動く機会が増えるのは容易に想像できる。犬を飼っている人の血糖値の低さには運動習慣が関連しているのではないか」との考えを示している。しかし、なぜ犬を飼うことで食習慣の改善が促されるかについては不明だとし、「犬を飼うことと食習慣の改善には直接的な関連はない可能性もある」と話している。

 犬を飼うことのメリットは、運動量の増加だけではなく、犬が飼い主の家族の一員となって精神的な支えとなるなど、さまざまであることが過去の研究で示されている。Lopez-Jimenez氏も、「犬がいることで孤独感が軽減され、世話をしてやらねばという使命感が芽生える」と説明し、それが飼い主の健康管理を促すことにもつながっているのではないかと推測している。

 犬を飼うことが心臓に良い影響を与えることを示唆した研究は、今回の研究が初めてではない。2013年にはAHAも、犬をペットとして飼うことが心血管疾患リスクの低下に関連している可能性があるとする声明を発表している。

 この声明文の筆頭著者で、米ベイラー医科大学のGlenn Levine氏は、犬を飼うことが飼い主の身体活動量の増加につながることは良質な研究データにより示されており、それこそが犬を飼うことで得られる直接的かつ最大のベネフィットであると説明。また、より間接的なベネフィットとして、犬の存在がストレスの軽減や他者との関わり、幸福感などをもたらし、自分自身の健康管理の向上にもつながる可能性があるとしている。

 ただし、Levine氏は「AHAは、健康のために犬を飼うことを提唱してはいない」と強調。その上で、「犬を飼う上で最も優先すべきは、愛情を注がれ、世話をしてもらえる場所を犬に与えることだ。犬を飼うことによる健康効果はその『おまけ』として付いてくる可能性があるに過ぎない」と話している。

[2019823/HealthDayNews]

内臓脂肪を減らす「スマート和食」、そのメカニズム

「和食(Washoku)」が、日本の伝統的な食文化として、ユネスコの無形文化遺産に登録されたのは2013年。その健康効果には世界的に注目が集まっているが、ヒトの内臓脂肪蓄積に与える影響やメカニズムについては不明である。

 今回、坂根 直樹氏(京都医療センター 臨床研究センター 予防医学研究室長)、高瀬 秀人氏(花王株式会社 生物科学研究所)らの研究グループは、日本の伝統に基づく食事が、内臓脂肪面積あるいはGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)分泌に及ぼす効果を調査した。Nutrition journal201992日号の報告。

 同グループは、これまでの研究で、11,438人の内臓脂肪と食習慣、さらに579人の3日間の食事記録と食習慣を調査した。それらのデータを詳細に解析した結果、「タンパク質/脂肪比≒1.0」「食物繊維/炭水化物比≧0.063」「ω-3脂肪酸/脂肪比≧0.054」これら3つの条件が、内臓脂肪蓄積の予防と関連することが明らかになった1)。

 坂根氏らは、この3つの比を取り入れた日本食を「スマート和食」と呼び、スマート和食と現代食が内臓脂肪蓄積に与える影響について、クロスオーバー試験で調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・対象は21人の過体重あるいは肥満の男性(平均年齢:41.0 ± 9.0 歳、平均BMI25.2 ± 2.0 kg/m2)。
・単回の食事負荷試験で、食後03060120180240分におけるGIPの曲線下面積(AUC)を算出した。スマート和食では、現代食と比べ、食後GIP濃度が有意に低かった(AUC700.0 ± 208.0pmol/L4 h vs.1117.0 ± 351.4 pmol/L4 hp 0.05)。一方、同時に測定した血糖、中性脂肪、インスリン、GLP-1peptide YY、グレリンでは、両群間で差を認めなかった。
2週間にわたるスマート和食の介入では、内臓脂肪だけでなく、LDL-コレステロール、中性脂肪、HbA1c値が有意に減少した。

 これらの結果から、スマート和食は、おそらくGIP分泌の抑制を介して、過体重/肥満男性の内臓脂肪面積を低下させ、代謝パラメーターを改善する可能性が示された。

 坂根氏はコメントで、「今回の結果より、GIPが和食の内臓脂肪低減効果のメカニズムに関与していることが示唆された。ポッコリお腹を何とかしたいという患者さんはたくさんいる。食事では、脂質を減らしてタンパク質を増やす、糖質を摂る前に野菜・きのこ・海藻類などの食物繊維をたっぷり摂る、脂質を摂るならω-3系脂肪酸を積極的に摂る、という3つのポイントが大事」と示唆し、内臓脂肪を減らすための食事指導を勧めている。

アジア人の研究で糖尿病と心不全の危険な関係が判明

2型糖尿病と心不全を併発している患者は心臓の構造が変化しており、入院や死亡のリスクが高いことが、アジア人を対象とした国際研究から報告された。詳細は「Journal of the American Heart Association821日オンライン版に掲載された。

 糖尿病は世界的に増加傾向にあり、糖尿病と心不全を併発することも少なくない。この両者の関連について欧米の患者を対象とした研究は広く行われてきているが、アジア人を対象とした研究報告はこれまでのところ多くはない。

 今回の研究では、ASIAN-HFAsian Sudden Cardiac Death in Heart Failure(アジア心不全突然死)〕レジストリに登録されている心不全患者約6,200人のデータを国際チームが解析した。

 その結果、2型糖尿病と心不全の併存は、心臓の構造異常、生活の質(QOL)の低下、入院や死亡のリスク上昇と関連することが判明した。具体的には、糖尿病患者では非糖尿病患者に比べて、左室拡張末期容積が小さく、心不全患者のQOL評価指標であるカンザスシティー心筋症スコアが低く、心不全による再入院および全ての原因による死亡・再入院のリスクが高く、それぞれ群間に有意差があった。

 なお、心不全は心臓の収縮力(左室駆出率)が低下したタイプ(HFrEF)と収縮力が保たれているタイプ(HFpEF)に分けられるが、今回の研究ではHFrEF5,028人でそのうち2型糖尿病は40.2%、HFpEF1,139人でそのうち2型糖尿病は45.0%であり、HFpEFにおける糖尿病の有病率が有意に高いことがわかった。また国・地域別ではシンガポールと香港で、糖尿病を併発している心不全患者の割合が高かった。

 本論文の筆頭著者であるシンガポール国立心臓病センターのJonathan Yap氏は、「糖尿病と心不全という対をなす両疾患の悪影響を取り除くには、一次予防戦略が必要であり、そして患者ごとに個別化した医療が求められる」と述べている。さらに「今回の知見は地域およびプライマリケアレベルでの公衆衛生的予防手段の必要性を強調するもの。糖尿病が併存する心不全患者について、医師は注意深く監視し、疾患管理を最適化すべき」とまとめている。