てんかん発作時の無呼吸にセロトニン濃度が関連か

てんかん発作後に脳内物質セロトニンの血中濃度が高いと、発作に関連して生じる無呼吸の発症リスクが低くなる可能性があることが、米テキサス大学マクガバン・メディカル・スクール神経学教授のSamden Lhatoo氏らの研究により示された。研究の詳細は「Neurology94日オンライン版に掲載された。

 セロトニンは、脳にある神経細胞間のシグナル伝達を行うホルモンで、呼吸や起床後の覚醒を司ることが知られている。しかし、てんかん発作前後および発作中にどのような影響を及ぼしているのかはよく分かっていないという。

 そこでLhatoo氏らは、難治性てんかん患者49人(29人が女性、平均年齢42歳、平均罹病期間17年)を対象に、前向きコホート研究を実施。セロトニンの濃度とてんかんにおける無呼吸発作との関連を調べた。

 研究では、モニタリングユニットにいる患者が発作を起こしたときの脳および心臓の電気活動、血中酸素濃度、血流の変化を測定した。また、発作後10分以内および12時間以上たってから血液サンプルを採取し、セロトニン濃度を測定した。

 その結果、全患者の35%で発作中に無呼吸が認められ、全身けいれん発作を起こした27人の患者の30%で発作後に無呼吸が認められた。

発作中に無呼吸にならなかった32人の患者では、セロトニン濃度が、発作前の平均110ng/mLから発作後には平均で140ng/mL上昇していた。しかし、発作中に無呼吸になった17人の患者では、発作前に比べセロトニン濃度の有意な上昇は認められなかった。

一方、全身けいれん発作を起こし発作後に無呼吸にならなかった19人の患者では、発作後にセロトニン濃度の上昇が認められたが、全身けいれん発作を起こし発作後に無呼吸になった患者8人の発作前の濃度と比較すると、有意差は認められなかった。

 こうした結果を受けLhatoo氏は、「発作後にセロトニン濃度が高いと、呼吸機能障害が生じにくいことが分かった。

今回の研究で、セロトニン濃度とてんかん患者の突然死(SUDEP)の発生リスクを関連づけられたわけではない。しかし、SUDEPは全身けいれん発作後に起こる重度の呼吸機能不全と関係するという過去の研究結果を鑑みると、今回得られた知見はその関連の解明にとって重要な手がかりとなるだろう」と話している。

 その上でLhatoo氏は、将来的には、SUDEPを防ぐ新しい治療法の開発にもつながりうる可能性に期待を示している。ただし、「今回の研究は小規模であり、さらなる研究で結果を確認していく必要がある」とも付け加えている。

また、「過剰なセロトニンは有害にもなり得ることに注意が必要だ。今回の結果を受けてセロトニン濃度を高める方法を研究しようなどと考えないことを強く推奨する」と強調している。

[201994/HealthDayNews]

脳機能のダイナミズムはいまの科学でも解き明かすのが困難ないわばブラックボックスです。

この報告を途中まで読み進めるとつい「てんかん後の患者の無呼吸を軽減させるための治療法はセロトニンを患者に投与すればよいのではないか」と安易な結論になりがちですが

文面の最後に「脳内ホルモンの機能はそんなに単純なものではない」というてんかん疾患への治療医療陣営からの警告で結ばれているところなどはやはり、脳内ホルモン機能の専門家サイドの思慮深さを感じざろう得ません。