女性のオーガズムは「進化の名残」?

女性のオーガズムをめぐる謎の一端を解明したと、米イェール大学環境・進化学教授のGunter Wagner氏と米シンシナティ大学小児科学教授のMihaela Pavlicev氏らが「Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)」930日オンライン版に発表した。同氏らは、女性のオーガズムは進化の過程で、交尾において排卵を誘発する役割から生殖的な機能が失われていったとする仮説を、ウサギを用いた実験で検証できたとしている。

 Wagner氏らが指摘するように、男性にとって性交中のオーガズムには、射精を起こすという明確な生殖機能としての役割がある。しかし、女性ではオーガズムに達したか否かにかかわらず排卵がみられる。そのため、オーガズムの生殖機能における役割だけでなく、その存在そのものが長きにわたり、生理学的にも謎に包まれていたという。こうした中、同氏らは今回、ウサギを用いた実験で、この謎を解き明かすことができたと主張している。

 女性のオーガズムに重要な身体の部位である「陰核(クリトリス)」は、生殖を目的とした性交が行われる部位からは離れた場所に位置する。このことは、女性のオーガズムが謎に包まれている要因の一つであった。一方、Wagner氏らによると、ネコやウサギ、フェレットといった哺乳類動物では、雄と雌の生殖器が交わる経路上に陰核が存在し、交尾の際には陰核がより重要な役割を果たしている。また、雌のウサギでは陰核が刺激されてオーガズムに達すると排卵が促されることが知られているという。

 そこで、Wagner氏とPavlicev氏は、ヒトの進化の過程で女性の陰核の役割から生殖的な機能が失われ、快楽をもたらすホルモンを放出する機能のみが残ったという仮説を立て、それを検証するために雌のウサギを用いた実験を行った。

 この実験では、雌のウサギに抗うつ薬のfluoxetine(フルオキセチン、日本国内未承認)を2週間にわたり注射した。同薬にはオーガズムに達しにくくさせる作用があると考えられており、Wagner氏らは同薬を注射したウサギでは排卵が起こらなくなると予測した。

 Wagner氏らの予測は的中し、fluoxetineを注射したウサギでは、注射しなかったウサギと比べて交尾後の排卵の回数が30%減少したことが分かった。この結果を踏まえ、「ヒトにおいても遠い昔、女性のオーガズムは子孫を残す上で必要な役割を果たしていた可能性がある」と同氏らは述べている。

 なお、Wagner氏はイェール大学のニュースリリースの中で、「女性のセクシュアリティについて理解を深めることは重要だ」と指摘。また、フロイトなどの主張を発端に世間に広がった「オーガズムに達することのない女性は精神的に未熟」とする意見や、「パートナーに問題があるから女性はオーガズムに達することができない」とする意見の正当性が今回の研究によって否定されたとの見解を示している。

[2019930/HealthDayNews]