電子タバコの規制強化は喫煙率上昇につながる?

フレーバー付き製品の販売禁止やニコチン含有量を減らすなどで電子タバコの規制を強化すると、紙巻きタバコに移行する人が増えてしまう可能性が高いことが、米デューク大学医学部のLauren Pacek氏らの研究で示された。同氏は「ニコチン含有量を減らすなどの規制が強化されると、電子タバコの使用量が減る一方で、結果的に紙巻きタバコの使用量の増加につながりかねない」と主張している。研究結果の詳細は「Substance Use & Misuse715日オンライン版に掲載された。

 米食品医薬品局(FDA)は、ティーンエージャーの間で電子タバコの使用が急増したことを受け、若者が電子タバコを魅力的と感じにくくなるような対策を講じてきた。米国立衛生研究所(NIH)の助成を受けた今回の研究で、Pacek氏らは、電子タバコと一般的な紙巻きたばこの両製品を使用する1829歳の男女240人を対象に、オンライン調査を実施した。

 調査では、今後、フレーバー付き電子タバコ製品の販売が制限されたり、電子タバコにニコチンが含まれなくなったり、あるいは電子タバコ機器のニコチン含有量や蒸気の温度を調整するカスタマイズ機能がなくなったりした場合に、どのように対処するつもりであるかを尋ねた。

 その結果、電子タバコにニコチンが含まれなくなると、47%が「電子タバコの使用量を減らし、紙巻きたばこの使用量を増やす」と回答していた。また、電子タバコのカスタマイズ機能が利用できなくなった場合には22%が、フレーバー付き電子タバコの販売が、タバコとメンソールのフレーバーに限定された場合には約17%が、同様の回答を寄せていた。

 なお、Pacek氏によれば、FDAは現在、紙巻きたばこのニコチン含有量を大きく減らす方向で検討している。FDAの権限を越えるため、紙巻きタバコから完全にニコチンをなくすことはできないが、相当な本数を吸ってもニコチンを渇望する禁断症状を抑えられない程度までニコチン含有量は減らされる可能性があるという。同氏は「紙巻きタバコと電子タバコの両方でニコチン含有量が減らされることになれば、多くの人は別の手段を探すようになることも考えられる」としている。

 一方、今回の研究には関与していない専門家の一人で、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)タバコ管理研究・教育センター長のStanton Glantz氏は、「電子タバコからフレーバーやニコチンをなくすことで、その使用量が減るのは良いことだ」とコメント。また、今回の研究は小規模で、調査の質問も仮定に基づいている点を指摘し、「これらの結果だけで、確実に紙巻きタバコの使用が増えるとは予測できない」としている。

 さらに、Glantz氏は「特にフレーバーが付いていると、子どもを惹きつける可能性が高い」と指摘した上で、電子タバコと紙巻きタバコの両方でフレーバー付き製品の販売が禁止されれば、いずれの使用量も減るのではとの見方を示す。これまでの研究からも、紙巻きタバコのニコチン含有量を減らすと、喫煙本数を増やすよりも禁煙する人の方が多い傾向がみられることが報告されているという。

 なお、カリフォルニア州サンフランシスコ市では最近、電子タバコの販売を禁止する条例案が可決された。Glantz氏は、このような規制の導入によって、タバコ製品全般の使用をやめる人が増えるのではないかと期待を示している。

[2019716/HealthDayNews]





実験室で培養の「ミニ脳」に神経活動、人の脳に類似 米研究

実験室で培養した脳から、人のものに似た電気的活動を初めて検出したとする研究論文が29日、発表された。この研究結果は、神経学的状態のモデル化、さらには人の大脳皮質(灰白質)の発達に関する根本的理解への道を開くものだという。

 豆粒大の「脳培養」に意識があるかどうかは、まだ明らかになっていない。今回の革新的進展をもたらした研究チームは、検出された電気的活動が早産児のものに似ていることから意識はないとの見方を示しているが、確かなことは言えないという。これはこの研究分野に新たな倫理的次元を開く問題だ。

 成体幹細胞から作製されるいわゆる「脳オルガノイド(細胞集合体)」が登場してから約10年となるが、機能的な神経細胞ネットワークを発達させたのは今回が初めてだ。

 米カリフォルニア大学サンディエゴ校(University of California, San Diego)の生物学者アリソン・ムオトリ(Alysson Muotri)氏と研究チームが医学誌「セル・プレスCell Press)」で発表した論文によると、今回の飛躍的進歩は二つの要因によって可能となったという。一つ目の要因は、培地製法の最適化などを含む幹細胞培養過程の向上だ。

 二つ目は、子宮の中で赤ちゃんの脳が発達するのと同じように、神経細胞に発達のための十分な時間を単に与えることだ。これについてムオトリ氏は、「人間の最初期の神経発達はゲノム(全遺伝情報)に符号化されている」と説明している。

 研究チームがオルガノイドから突発的に放出される脳波を検出し始めたのは、約2か月が経過してからだった。

 脳波信号は最初まばらで、みな同じ周波数で発せられた。これは非常に未成熟な人の脳にみられるパターンだ。だが成長するにつれて、異なる周波数で脳波が発せられ、信号がより定期的に出現するようになった。これはオルガノイドの神経細胞ネットワークの発達が進んだことを示唆している。

同様の成長軌跡

 研究チームは次に、この脳波パターンを初期発達段階にある人の脳の脳波パターンと比較した。比較作業には、早産児39人から記録した脳波活動を使い訓練した機械学習アルゴリズムが用いられた。

 その結果、脳オルガノイドがペトリ皿の中で発達した期間についての予測を正確に行うことができた。これは、自然環境の脳と同様の成長軌跡を脳オルガノイドもたどることを示唆するものだ。

 新生児がどの発達段階で意識を獲得するのか、そして「意識」の定義については、どちらも科学者らの間で論争の的となっている。

 新生児の脳活動を調査した2013年のフランスの研究では、新生児が見せられた顔の画像について考え始めるのは生後5か月からであり、その映像を一時的な「作業記憶」に保存するとみられることが明らかになった。研究ではこの能力を知覚的意識と関連付けている。

応用と倫理

 脳オルガノイドの応用範囲として考えられるのは、てんかんや自閉症などの神経学的疾患患者の幹細胞から脳オルガノイドを作製することにより、疾患のモデル化を向上させられることだ。治療法の発見につながるかもしれない。

 研究チームは、より基本的な問題も解明したいとしている。ムオトリ氏によると、脳オルガノイドの発達は約910か月で止まるが、その理由がまだ明らかになっていないのだという。

「この理由を知りたい。内部への栄養物の供給を可能にする血管新生系がないからなのか、それとも(感覚入力の形での)刺激が単に欠けているだけなのか」──ムオトリ氏は両方の仮説を検証したいとしている。

 そして今後は、脳オルガノイドが人の脳に近づくにつれ、あらゆる種類の倫理的問題が浮上するのは避けられないとしながら、この研究分野を合意された制限と規制の対象とすることを提案している。【翻訳編集】 AFPBB News

心房細動リスクが低いコーヒー摂取量~医師1万9千人の調査

 発作性心房細動患者ではコーヒー摂取が心房細動のトリガーとしてしばしば報告されているが、コーヒー摂取と心房細動リスクの関連を検討した前向き研究の結果は一貫していない。今回、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のVijaykumar Bodar氏らが男性医師で調査したところ、113杯のコーヒー摂取で心房細動リスクが低いことが示唆された。Journal of the American Heart Association201986日号に掲載。

 本研究は、Physicians’ Health Study18,960人)に参加した男性医師における前向き調査。コーヒー摂取量は自己申告による食事摂取頻度調査票により評価した。心房細動発症率は年次調査票により評価し、副次サンプルの診療記録により検証した。Cox比例ハザードモデルを用いて心房細動のハザード比と95%信頼区間(CI)を計算した。

 主な結果は以下のとおり。

・平均年齢は66.1歳で、平均追跡期間9年の間に新たに2,098人に心房細動が発症した。
・年齢・喫煙・飲酒・運動を調整した心房細動のハザード比(95CI)は、コーヒー摂取がまれ/なしを基準として、1/週以下が0.850.711.02)、24/週が1.070.881.30)、56/週が0.930.741.17)、1/日が0.850.740.98)、23/日が0.860.760.97)、4/日以上が0.960.801.14)であった(p for nonlinear trend0.01)。
2次解析において、カフェイン摂取量の標準偏差(149mg)変化当たりの心房細動の多変量調整ハザード比(95CI)は0.970.921.02)であった。

妊娠による子宮内膜がんリスク低下、中絶でも

妊娠が受胎後早期で終了しても40週(正期産)で終了しても、子宮内膜がんのリスクは顕著に減少することが明らかにされた。人工妊娠中絶で妊娠終了に至った場合と出産で妊娠が終了した場合とで、リスク低下との関連性は類似しており、妊娠による子宮内膜がんのリスク低下は妊娠初期に生じる生物学的なプロセスによって説明できる可能性も示唆されたという。デンマーク・Statens Serum InstitutAnders Husby氏らが、デンマークの女性を対象とした全国コホート研究の結果を報告した。生涯の出産数は子宮内膜がんのリスク低下と関連があり、妊娠により抑制された月経周期数が保護的に作用することが示唆されていたが、妊孕性や妊娠累積期間、妊娠中のある特定時期に生じる過程がこの保護作用を強めるかどうかは不明であった。BMJ2019814日号掲載の報告。

デンマーク女性約231万例、妊娠約395万件について解析

 研究グループは、19352002年の期間に生まれたすべてのデンマークの女性を対象に、Danish National Registry of Induced Abortions(人工妊娠中絶登録)、Medical Birth Registry(出生登録)、Danish Cancer Registry(がん登録)のデータを用いて全国コホート研究を実施した。

 主要評価項目は、妊娠回数、種類(人工妊娠中絶または出産)、妊娠期間別の子宮内膜がん相対リスク(発生率比)で、対数線形ポアソン回帰モデルを用いて推定した。

 解析対象は、デンマーク女性2311,332例で、妊娠は計3947,650件であった。

人工妊娠中絶、出産にかかわらず、子宮内膜がんのリスクは低下

 追跡期間5,7347,622人年において、子宮内膜がんが6,743例に認められた。年齢、期間、社会経済的要因について補正した後、初回妊娠の終了が人工妊娠中絶(補正後相対リスク[aRR]0.5395%信頼区間[CI]0.450.64)であるか、出産(aRR0.6695CI0.610.72)であるかにかかわらず、子宮内膜がんリスクの顕著な低下が示された。2回目以降の妊娠でも、人工妊娠中絶(aRR0.8195CI0.770.86)、出産(aRR0.8695CI0.840.89)を問わず、さらなるリスクの低下が認められた。

 妊娠期間、妊娠時の年齢、自然流産、肥満、出生コホート、妊孕力、社会経済的要因により結果が変わることはなかった。

 なお本研究について著者は、子宮内膜がんのリスク低下と関連が示唆されている経口避妊薬の使用歴に関するデータがないことなどを挙げて、結果は限定的だと述べている。

中年期から初老期の肥満で脳の老化が早まる?

中年期から初老期にかけて過体重や肥満だった人は、脳の老化が10年以上も早まる可能性があることが、米マイアミ大学医学部のMichelle Caunca氏らの研究から明らかになった。この期間中にウエスト周囲長が大きく、体格指数(BMI)が高い人は、加齢に伴い、記憶や思考などで重要な役割を果たす大脳皮質(灰白質)の厚さが薄くなる確率が高まることが分かったという。研究の詳細は「Neurology724日オンライン版に掲載された。

 Caunca氏らは、平均年齢64歳の男女1,289人を対象にBMIとウエスト周囲長などを測定し、平均で約6年後に脳MRI検査で評価した大脳皮質の厚みや脳容積との関連を調べた。対象者の約4分の1BMI30以上の肥満者で、約半数はBMI25以上30未満の過体重者であった。

 分析の結果、高血圧、飲酒や喫煙の習慣など大脳皮質の厚みに影響する因子で調整しても、BMIの高さは大脳皮質の菲薄化と関連することが分かった。また、BMI1単位高まるごとに、過体重者では大脳皮質が0.1mmずつ薄くなり、肥満者では0.2mmずつ薄くなることも示された。

 さらに、ウエスト周囲長が大きいほど大脳皮質は薄くなったほか、より弱い関連ではあるが、BMIとウエスト周囲長はいずれも脳容積の萎縮と関連していることも明らかになった。

 Caunca氏によれば、このような関連は65歳未満の人でより強く認められたという。「今回の研究では、特に中年期から初老期の体重は、その後の大脳皮質の薄さと関連していることが示された」と同氏は説明している。

 論文の共著者で同大学Evelyn F. McKnight脳研究所のTatjana Rundek氏は、同誌のニュースリリースの中で、「一般には、加齢に伴い、大脳皮質は10年当たり0.010.10mm薄くなるとされる。しかし、われわれの研究からは、中年期から初老期に過体重や肥満であると脳の老化が加速し、10年以上も老化が早まる可能性が示唆された」と述べている。

 ただし、この研究は過体重が大脳皮質の菲薄化の原因であることを証明するものではなく、これらの関連がみられた理由も明らかになっていない。しかし、Caunca氏は「肥満がもたらす慢性的な炎症状態が脳の健康に悪い影響を与えている可能性がある」と指摘。加えて、「肥満によるインスリン抵抗性などの代謝面での変化が、大脳皮質における代謝低下を引き起こしているとも考えられる」との見方を示している。

 一方、今回の研究には関与していない米マウントサイナイ医科大学アルツハイマー病研究センターのMary Sano氏は、「大脳皮質が薄くなったからといって必ずしも認知症になるわけではないが、大脳皮質の菲薄化は認知機能の低下と関連する可能性がある」と述べている。その上で、「体重の増加が認知症の直接的な原因であるのか、あるいは認知機能の低下をもたらすだけなのかは不明だが、いずれも重要であることに変わりはない」と話している。

[2019724/HealthDayNews]

植物性食品をよく食べる人は糖尿病リスクが低下

11個のリンゴで医者知らず」ということわざがあるが、米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のQi Sun氏らの研究により、植物性食品中心の食生活を送っている人ほど2型糖尿病のリスクが低くなる可能性が示された。詳細は「JAMA Internal Medicine722日オンライン版に発表された。

 研究グループは、20192月までに発表された論文のシステマティックレビューを行い、抽出された9件の前向きコホート研究についてメタ解析を実施した。総計30万人以上の対象者のうち追跡中に約24,000人が2型糖尿病を発症していた。

 対象者の食事摂取状況を分析したところ、植物性食品を主に摂取している人ではそうでない人に比べて2型糖尿病のリスクが23%低かった。さらに、野菜や果物、豆類、ナッツ類、全粒穀物など、食物繊維やビタミン、ミネラル、抗酸化物質などを含む健康的な植物性食品を摂取している人ではその関連がより強く、糖尿病のリスクは30%低下していた。

 なぜ植物性食品を中心とする食生活が2型糖尿病のリスクを低減するのか、その因果関係まで今回の研究で明らかにすることはできない。しかしSun氏は「植物性食品を中心とする食生活には2型糖尿病のリスクを減らす大きな効果がある」と述べている。

 リスクが低下する機序の一つとして、体重の関与が考えられる。つまり、総摂取量に占める植物性食品の割合が多いことが、減量や肥満防止につながり、結果として2型糖尿病リスクが抑制された可能性がある。ただし今回の研究においてはBMIによる調整後も、植物性食品中心の食生活と2型糖尿病リスク低下との関連性は保たれていた。

 この点についてSun氏は「抗酸化物質や健康に良い植物性油脂により、インスリン感受性が向上したり、炎症が抑制された可能性もある」と指摘している。また植物性食品の摂取比率が高いということは動物性食品の摂取量が少ないということであり、結果的にコレステロールや飽和脂肪酸、塩分など健康に良くない成分の摂取量が減ることになる。

 米コロンビア大学の管理栄養士で糖尿病療養指導士であるMaudene Nelson氏は、「植物性食品中心の食事と聞くと大量のブロッコリーを食べるような食生活を思い描く人がいるかもしれないが、リンゴやピーナッツバターといったシンプルな食品、あるいは野菜がたくさん入ったスープ料理、肉より野菜が多いケバブなど、魅力的な選択肢がたくさんある」と助言している。またタンパク源としては、鶏肉であれば1日に6オンス(約170g)以下の摂取を推奨している。

 Sun氏もまた「健康的な食生活を守るために、厳格なビーガン(完全菜食主義者)やベジタリアンになる必要はない。魚や鶏肉、ヨーグルトなどを適切に摂取することも健康的な食生活の一部である」と説明している。

[2019725/HealthDayNews]

夜間頻尿が転倒や骨折に及ぼす影響

夜間頻尿はさまざまな併存疾患と関連しているが、転倒や骨折への影響はわかっていない。今回、フィンランド・Paijat-Hame Central HospitalJori S. Pesonen氏らが系統的レビューおよびメタ解析を行った結果、夜間頻尿により転倒リスクが約1.2倍、骨折リスクが約1.3倍に増加することが示唆された。The Journal of Urology誌オンライン版2019726日号に掲載。

 本研究では、PubMedScopusCINAHL、主要な泌尿器関連学会の抄録を20181231日まで検索し、転倒および骨折の調整相対リスクについてランダム効果メタ解析を実施した。転倒および骨折の予後因子と原因となる因子としての夜間頻尿のエビデンスの質をGRADEアプローチにより評価した。

 主な結果は以下のとおり。

5,230件の潜在的な報告のうち、観察縦断研究9件が夜間頻尿と転倒または骨折との関連に関するデータであった(転倒4件、骨折4件、両方1件)。
・統合推定値によると、夜間頻尿と転倒の関連のリスク比は1.2095CI1.051.37I251.7%、高齢者における年次リスク差7.5%)、夜間頻尿と骨折の関連のリスク比は1.3295CI0.991.76I257.5%、年次リスク差1.2%)であった。
・サブグループ解析では、年齢、性別、経過観察時間、夜間頻尿の定義、バイアスリスクにより、影響に対する有意な変化は認められなかった。
・夜間頻尿のエビデンスの質の評価は、予後因子としては転倒は中程度、骨折は低く、転倒/骨折の原因としてはどちらも非常に低かった

アルコール摂取が心血管疾患に及ぼす影響

アルコール使用は、非感染性疾患の予防および修正可能な因子であり、飲酒量によっては心血管系に複雑な影響を及ぼす。英国・バーミンガム大学のEd Day氏らは、アルコール使用と心血管疾患との関連性について検討した。Addiction20199月号の報告。

 主な結果は以下のとおり。

・観察研究やプロスペクティブ研究では、少量のアルコールを摂取する人は、禁酒者と比較し、心血管および全死亡リスクが一貫して低いことが示唆されている(J曲線)。
・潜在的なベネフィットの最大値は、女性の場合、標準ドリンクサイズ0.51/日(純エタノール:714g)で全死亡リスクが18%低下(95%信頼区間[CI]1322%)、男性の場合、12/日で全死亡リスクが17%低下(95CI1519%)であった。
・しかし、全体的なアルコールの有害作用は有益な効果をはるかに上回り、エタノールの平均消費量10g/日で早期死亡リスクが確実に増加する。
・血圧は定期的なアルコール摂取により用量依存的に上昇し、高血圧(140/90mmHg超)の相対リスクは、エタノール50g/日で1.7100g/日で2.5であった。
・わずか1ヵ月の禁酒により、血圧値の低下が期待できる。
・過度なアルコール摂取は、心臓の機能が正常な人であっても、急性心臓不整脈の発症と関連が認められる。
・心房細動は、慢性的な大量アルコール摂取に関連する最も一般的な不整脈であり、アルコール量が14g/日を超えると、その後1杯(エタノール14g)当たり相対リスクが10%増加する。
・エタノールとその代謝物は心筋細胞に毒性を有しており、アルコール性心筋症は非虚血性拡張型心筋症の全体の1/3を占める。

 著者らは「アルコール摂取が少量ではない人に対するスクリーニングと簡便な介入により、心血管合併症発症の予防が可能である。心血管疾患を有する人は、アルコール摂取量を減らすことで改善が期待できる。アルコール性心筋症患者では、治療を最適化するため、禁酒を目指すべきである」としている。

意外と知らない副作用。痛み止めの飲みすぎで胃潰瘍?放置すると胃に穴開くケースも

胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因は何だと思いますか?そう尋ねると、たいてい「食べ過ぎや飲み過ぎ」「ストレス」などの答えが返ってきます。本当でしょうか?

実は、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因のおよそ95%以上は、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)による感染か、痛み止めだとされています。

特に痛み止めに関しては、頭痛や関節痛、腰痛などの慢性的な痛みに、市販の薬を漫然と飲み続けている方も多いため、注意が必要です。では、全ての痛み止めが潰瘍のリスクになるのでしょうか?もちろんそうではありません。

この記事では、胃潰瘍や十二指腸潰瘍と痛み止めの関係について解説します。

おなじみの痛み止め、NSAIDsに注意

胃潰瘍と十二指腸潰瘍は、その性質や原因が似ているため、合わせて「消化性潰瘍」と呼びます。

前述の通り、ピロリ菌と痛み止めは消化性潰瘍の二大要因とされ、このいずれの原因でもない胃潰瘍は15%、十二指腸潰瘍は2%以下と、かなり少ないことが分かっています

実際、「痛み止めを飲みすぎると胃が荒れる」といった漠然としたイメージを持っている方は多いでしょう。ただし、ここでいう「痛み止め」とは、「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」と呼ばれるタイプを指します

具体的には、ロキソニン(R)(ロキソプロフェン)、イブ(R)(イブプロフェン)、ボルタレン(R)(ジクロフェナク)、アスピリン(R)などの薬ですね。

市販されている痛み止めの中にも含まれている薬ですので、聞いたことのある方は多いでしょう。

別のタイプの痛み止め、アセトアミノフェン

一方、NSAIDsと同じくらいよく使われるタイプの痛み止めに、「アセトアミノフェン」があります。

カロナール(R)、ピリナジン(R)、アンヒバ(R)、アルピニー(R)などは、誰もが聞いたことのある名前でしょう。これらの薬は前述のNSAIDsと全く異なるタイプの痛み止めで、消化性潰瘍の原因とはなりません。

(※こちらも長期に多量に使用する場合は肝障害などの副作用リスクがありますが、今回は割愛します)

ちなみに、市販薬の場合、名前が似ていても中に含まれる痛み止め成分が異なる、ということがよくあります。例えば、誰もがよく知る「バファリン(R)」を例に挙げてみると、

「バファリンA」はアスピリン(NSAIDs)「バファリンルナJ」はアセトアミノフェン

「バファリンEX」はロキソプロフェン(NSAIDs)「バファリンプレミアム」はイブプロフェン(NSAIDs)とアセトアミノフェンの両方といった具合です(バファリン公式サイトより引用)。

もちろん、短期間でピンポイントに使用するなら、過度に心配する必要はありません。

これらの有効な痛み止めが病院に行かずに手に入るのは大きな利点ですから、むしろ上手に使うべきでしょう。

ただし、慢性的な痛みの症状に対して痛み止めを毎日飲み続けている、というケースでは注意が必要です

上記の薬の「使用上の注意」にも、目立つ形で「長期連続して服用しないでください」と明記されています

しかしながら、「痛み止めがないと生活に支障をきたす」というくらい、痛み止めが手放せない方も多いはずです。どう対処すればいいのでしょうか?

予防が大切

痛み止め(NSAIDs)を長期間使わねばならない時は、胃薬を内服することで消化性潰瘍を予防することが大切です。

予防治療がされていないと、胃潰瘍の発生頻度は1015%、十二指腸潰瘍の発生頻度は3%とされています。

「じゃあ、市販の胃薬を買ってきて一緒に飲んでおこう」「以前病院で処方してもらった胃薬が余っているのでそれを飲んでおこう」などと思った方、ちょっとお待ちください。

胃薬にもたくさんの種類があります。

どんな胃薬でもいい、というわけではありません。NSAIDsの長期使用例で、消化性潰瘍の予防効果が証明されているのは、プロトンポンプ阻害剤、プロスタグランジン製剤、H2受容体拮抗薬と呼ばれるタイプの胃薬です。ずいぶん難しい話になってきましたね。もちろん、ここまで詳しい知識を持っておく必要はありません。

私が伝えたいのは、自己判断で痛み止めを毎日のように漫然と飲み続けている方は、消化性潰瘍の予防が必要なケースがあるため、一度は医師に相談していただきたい、ということです。

「胃が痛くないから大丈夫!」と思った方がいるかもしれませんが、NSAIDsが原因で起こる消化性潰瘍は、その半数近くが無症状、という報告もあります。

消化性潰瘍を放置すると、胃や十二指腸に穴が開き(穿孔)、手術が必要になったり、大量に出血したりして危険なこともあります。継続的に使用する時は、やはり医師の指示のもとでお願いしたいと思います。(参考文献)日本消化器病学会「消化性潰瘍診療ガイドライン 2015(改訂第2)

認知機能低下と入院の関連、外科と内科で違いは

手術による2泊以上の入院は、平均的な認知機能の経過(the cognitive trajectory)にわずかながら影響を及ぼしたが、非外科的入院ほどではなかった。

重大な認知機能低下のオッズは、外科手術後で約2倍であり、非外科的入院の約6倍よりも低かったという。米国・ウィスコンシン大学のBryan M. Krause氏らが、加齢に伴う認知機能の経過と大手術との関連を定量化する目的で行った前向き縦断的コホート研究の結果を報告した。

手術は長期的な認知障害と関連する可能性があるが、これらの関連性を検討した先行研究では、認知機能低下が加齢に伴い加速するという認知機能の経過を考慮しておらず、方法論的な問題のため一貫した結果が得られていなかった。

著者は、「本研究の情報は、インフォームドコンセントの際に、手術による健康上の有益性の可能性と比較検討されるべきである」とまとめている。BMJ201987日号掲載の報告。

Whitehall IIコホート研究の参加者を対象に19年間追跡

 研究グループは、Whitehall II研究において19972016年の間に認知機能の評価を5回行った成人7,532例を対象に、Hospital Episode StatisticsHES)データベースを用いて、手術と加齢に伴う認知機能の経過との関連を解析した。

 注目した曝露は入院で、追跡期間中の2泊以上の入院を“大きな入院”と定義し、主要評価項目は論理的思考、記憶、音素流暢性(phonemic fluency)、意味流暢性(semantic fluency)を含む認知機能検査一式から得られた全般的認知機能スコア(global cognitive score)とした。

 ベイズ線形混合効果モデルを用いて入院後の加齢に伴う認知機能の経過における変化を算出するとともに、手術によって引き起こされた重大な認知機能低下(最初の3回の認知機能評価データに基づく予測経過から標準偏差1.96を超えると定義)のオッズも同様に算出した。

重大な認知機能低下のオッズは、外科的入院で約2倍、内科的入院で約6

 加齢に伴う認知機能の経過を考慮した後でも、大手術(“大きな入院”を要した手術)はわずかな認知機能低下と関連があり、平均して5ヵ月未満の加齢に相当した(95%信用区間[CrI]0.010.73)。一方、内科疾患および脳卒中による入院は、それぞれ1.4年(95CrI1.01.8)と13年(95CrI9.616)の加齢と関連していた。

 重大な認知機能低下は、非入院患者の2.5%、外科入院患者の5.5%、内科入院患者の12.7%で確認された。“大きな入院”をしていない患者と比較すると、外科的または内科的イベントを伴う大きな入院をした患者は、認知機能の予測経過からかなり低下する傾向にあった(外科的入院オッズ比:2.395CrI1.43.9]、内科的入院オッズ比:6.295CrI3.411.0])。

 なお、著者は研究の限界として、因果関係は不明で、麻酔投与のデータは限られており、長期的な認知機能の変化における麻酔の影響は評価していないことなどを挙げている。