吸入ステロイド使用者、認知症リスクが35%低い

アルツハイマー病の病理学的カスケードにおいて神経炎症が重要な役割を示すことが報告され、神経炎症が治療標的として認識されてきている。今回、ドイツ・ロストック大学のMichael Nerius氏らが、ドイツにおける縦断的健康保険データを用いて認知症リスクに対するグルココルチコイドの影響を検討したところ、グルココルチコイドの使用が認知症リスクの低下に関連していることが示唆された。Journal of Alzheimer’s disease誌オンライン版20191118日号に掲載

 本研究では、50歳以上の176,485人のベースラインサンプルにおいて、ドイツ最大の健康保険会社の200413年の健康保険データを使用し、グルココルチコイド治療と認知症の発症率との関連を調べた。Cox比例ハザードモデルにより、性別、年齢、認知症の主要な危険因子として知られている併存疾患を調整後、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。さらに、グルココルチコイド治療について投与経路および治療期間で層別化して検討した。

 主な結果は以下のとおり。

・認知症ではない176,485人のうち、2013年の終わりまでに19,938人が認知症と診断された。
・認知症発症リスクは、グルココルチコイド非使用者に比べ、使用者で有意に低かった(HR0.8195CI0.780.84)。
・投与経路別にみると、吸入グルココルチコイドの使用者で最もリスクが低く(HR0.6595CI0.570.75)、次いで点鼻(HR0.7695CI0.660.87)、その他(HR0.8495CI0.800.88)と経口(HR0.8395CI0.780.88)の使用者で低かった。
・長期使用者と短期使用者でリスク減少に差はなかった。

 著者らは「グルココルチコイドが神経炎症にプラスの影響を与え、人々から認知症から守ることができるかどうかを判断するには、前向き臨床試験が必要」としている。

認知症発症説の一つである「血糖値上昇」→「血中インスリン値上昇」→「インスリン抵抗性によるアミロイドβの蓄積」→「脳神経のアミロイドβの蓄積」→「認知症の発症」

糖質コルチコイドはその働きが血中の血糖値を上昇させるという働きを考えると、上記の認知症仮説から逸脱する臨床結果なのかどうか?

今後の前向きな臨床研究結果が気になるところです。

寝室の明るさが動脈硬化の進行と関連――睡眠中は暗い方が良い?

夜間の寝室の照明が明るいほど動脈硬化が進行する可能性が報告された。肥満や糖尿病などの既知の動脈硬化危険因子の影響を調整しても、なお有意な関連が認められるという。奈良県立医科大学疫学・予防医学講座の大林賢史氏らの研究によるもので、詳細は「Environment International1021日オンライン版に掲載された。

 ヒトは昼と夜が24時間周期で繰り返される環境で進化してきた結果、「概日リズム」という生理機能が備わっている。そのため、夜の不適切な明るさは「光害」として概日リズムを乱す可能性があり、これまでにも夜勤労働者で肥満や高血圧、糖尿病のリスクが高いことが報告されている。今回発表された論文は、夜間の寝室の明るさと動脈硬化の進行の関連を、縦断的に研究したものだ。

 前向きコホート研究「平城京スタディ」に登録されている60歳以上の地域住民を追跡調査し(観察期間中央値34カ月)、動脈硬化の指標である頸動脈IMT(首の動脈の血管壁の厚さ)を測定した。睡眠時の寝室の明るさのほか、動脈硬化の進行に関係する因子として、BMI、喫煙・飲酒習慣、糖尿病、高血圧、経済状況なども評価した。

 分析対象者数は989人で平均年齢71.4±6.9歳、男性が47.2%、観察開始時の頸動脈IMTは、平均IMT0.88±0.15mm、最大IMT1.10±0.32mm。照度計で測定した寝室の明るさにより対象者を4群に分け、観察期間中に頸動脈IMTが厚くなる程度に差があるかを比較検討した。寝室の明るさは、最も暗い第1四分位群が平均0ルクス、第2四分位群は0.3ルクス、第3四分位群は1.6ルクス、最も明るい第4四分位群は9.3ルクスだった。

 BMI、喫煙・飲酒習慣、糖尿病、高血圧、経済状況などを調整した多変量解析で、夜間の寝室が明るい群で有意に頸動脈の平均IMTが厚くなることがわかった(第4四分位群対第1四分位群:回帰係数=0.028P0.019)。同様に最大IMTも厚くなることがわかった(第4四分位群対第1四分位群:回帰係数=0.083P0.001。第3四分位群対第1四分位群:回帰係数=0.046P0.048)。

 以上の結果から大林氏らは「夜間の寝室の明るさが動脈硬化の進行と関連していることが示された。この関連は、年齢や肥満、喫煙、高血圧、糖尿病など、既知の動脈硬化危険因子とは独立していた」と結論をまとめている。

 今回の研究では、夜間の寝室の明るさが最も暗い群と最も明るい群で、頸動脈最大IMTの進行に0.083mmの差が見られた。先行研究の結果から、この差は心筋梗塞を10.0%、脳梗塞を11.6%増加させる差に相当すると著者らは述べている。

 また、夜間の寝室の明るさが動脈硬化を進行させる機序について、著者らは、概日リズムが乱れることにより、血管内皮機能の低下が生じること、交感神経活性が亢進すること、血管拡張作用のあるメラトニンの分泌が低下することなどが関与している可能性を考察している。

 なお、数名の著者が、住宅・建材関連企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。

[20191111/HealthDayNews]



松果体(メラトニン生成)から分泌されるホルモンが血管拡張効果をつかさどっています。

つまり不適切なタイミングによる光刺激は結果的に血管の弾力性を損なう原因の一つであるというこの臨床報告からは、スマホの長期使用などによるブルーライトからの悪影響などはよくよく注意が必要であるのでしょう。

勃起不全が心房細動リスク上昇と関連

勃起不全(勃起障害、ED)の男性は、心房細動と診断される傾向が強いことが新たな研究で明らかにされた。心房細動は不整脈の一種で、血栓、脳卒中、心不全の原因となることもある。米国では最大610万人がこの疾患に罹患しているとされる。研究の詳細は、米国心臓協会の年次集会(AHA 2019111618日、米フィラデルフィア)で発表された。

 過去の研究では、EDは心血管疾患と関連することが示されていた。そこで研究グループは今回、心房細動がこの知見にどう当てはまるのかを明らかにしようと試みた。研究を率いた米ノースウエスタン大学の循環器専門医である田中仁啓氏は、「EDの症状が心血管疾患の23年前に現れることはよく知られている。EDの症状を後の心房細動を予測する指標として利用できれば、患者を早期に治療できる可能性があるし、うまくいけば疾患の進行を止めることもできるかもしれない」と期待を示す。

 研究では、心房細動の既往のない高齢男性1,760人を対象とした。4年後に心房細動と診断された人の割合は、EDがあると申告した男性では9.6%だったのに対し、EDのない男性では2.9%であった。喫煙、体重、糖尿病、血圧などのリスク因子を考慮しても、EDのある男性が心房細動と診断される確率はEDのない男性と比べて66%高かった。

 この結果について田中氏は、「かなり強い関連性が認められた。医師は、EDが認められる患者に対しては、その他の心血管リスク因子について調べ、できる限り早く治療を開始するべきだ」と述べている。

 この研究の弱点の1つは、EDの有無は患者の自己申告によるものであり、それが血管の問題によるものなのか、あるいは心理的問題によるものなのかを研究チームが把握していない点である。田中氏はさらに、「不整脈は突然現れたり消えたりするため、患者の中には症状を訴えない人もいる」として、心房細動の検出が極めて難しい点も研究の限界として挙げている。同氏は今後の研究で、テストステロン値、EDと心房細動の相互作用を掘り下げていきたいとしている。

 今回の研究には関与していない、米ジョンズ・ホプキンズ大学病院のHugh Calkins氏は、「私の担当する男性患者においてもEDは非常に多く認められるが、この研究結果には納得させられるものがあった」と話す。そして、「大変独創的な研究だ。このテーマに関する研究が今後、間違いなく展開していくだろうし、血管の健康とED、心房細動の関係についての議論も進むだろう」と今後の展開を予測する。なお、同氏は、AHA、米国心臓病学会(ACC)、および米国不整脈学会(HRS)が共同で最近改訂した心房細動ガイドラインの著者の一人である。

 Calkins氏はさらに、EDと「隠れ心房細動」とも呼ばれる無症候性心房細動との関連について研究を重ねていく必要があると指摘する。「無症候性心房細動のスクリーニングは近年注目されている領域である。ED患者はもれなく、7日間のモニターやスマートウォッチを用いた心房細動のスクリーニングを1年に1度受けるべきかという問題が当然出てくるが、研究結果は、スクリーニングを受けることが糖尿病や体重管理、睡眠時無呼吸といったリスク因子に対する早期の対応につながることを示唆している」と説明している。

[2019
1119/American Heart Association]

アルツハイマー病を防ぐ変異を持つ症例

アミロイドβの高度な沈着は見られるが、アルツハイマー病を発症しない…。そんなまれな症例を、米国・ハーバード大学医科大学院のJoseph F. Arboleda-Velasquez氏らが Nature Medicine201911月号に報告した。今回の発見により、アルツハイマー病の予防や治療に、新たな選択肢がもたらされるかもしれない。

 報告された症例は、アルツハイマー病になりやすい変異(E280A プレセニリン-1)を持つ家系から見つかった。対象症例の患者の家系では、軽度認知症を中央値44歳(95CI4345)、認知症を中央値49歳(95CI4950)で発症することが報告されているが、今回の症例は70歳まで軽度認知症を発症しなかった。

 アルツハイマー病は、アミロイドβの脳への沈着が引き金となり、タウタンパク質が凝集し、神経細胞死に至ることで発症すると考えられている。著者らは脳画像検査を実施し、所見を確認した。すると、アミロイドβの沈着は非常に高度にもかかわらず、タウタンパク質の凝集や神経変性はあまり見られなかった。

 症例のゲノムを調べたところ、プレセニリン-1のほかに、アルツハイマー病との関連が知られるAPOE3タンパク質に変異があった。このAPOE3タンパク質の変異が、アルツハイマー病の発症に関わる糖タンパク質との結合を阻害することも突き止められた。

 これらの結果から、APOE3タンパク質の変異によって、APOE3タンパク質と糖タンパク質の結合が阻害されたことで、アミロイドβ沈着が高度でもアルツハイマー病が発症しなかった可能性が示唆された。著者らは、APOEタンパク質の発現抑制や、糖タンパク質の結合部位の調節が、アルツハイマー病の予防や治療に貢献できるのでは、と期待を示している。



片頭痛に対するubrogepantの痛み消失効果は?

前兆症状の有無にかかわらず、片頭痛に対してubrogepant投与はプラセボ投与と比べて、2時間後に痛みが消失した人の割合は有意に高率であり、最もつらい片頭痛関連の症状がなかった人の割合は有意に低率だった。米国・メイヨー・クリニックのDavid W. Dodick氏らが、1,672例を対象に行った無作為化二重盲検プラセボ対照パラレル群間比較試験の結果で、NEJM2019125日号で発表した。ubrogepantは、経口小分子カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬で、急性期の片頭痛治療に有効であることが示されていた。

ubrogepant 50mg100mg vs.プラセボの有効性を評価

 研究グループは、前兆症状の有無にかかわらず片頭痛を有する成人1,672例を対象に、ubrogepantの有効性、安全性、副作用プロファイルを評価する試験を行った。

 被験者を無作為に1113群に分け、プラセボ(559例)、ubrogepant 50mg556例)、ubrogepant 100mg557例)をそれぞれ単回投与した。

 有効性の主要エンドポイントは2つで、初回投与後2時間時点での痛みの消失と、最もつらい片頭痛関連症状がないこととした。副次エンドポイントは、痛みの緩和(投与後2時間時点)、痛みが緩和した状態の持続(224時間)、痛みのない状態の持続(224時間)、2時間時点で片頭痛関連の症状(羞明、音過敏、悪心)がないこととした。

2時間後の痛み消失、プラセボ群12%に対し、ubrogepant19.221.2

 投与後2時間時点で痛みが消失したのは、プラセボ群11.8%に対し、ubrogepant 50mg19.2%(多様性補正後のp0.002、)、ubrogepant 100mg21.2%(同p0.001)と、いずれのubrogepant群とも有意に高率だった。

 投与後2時間時点で、最もつらい片頭痛関連の症状がなかった人の割合も、プラセボ群27.8%に対し、ubrogepant 50mg38.6%、ubrogepant 100mg37.7%と有意に高率だった(いずれも、p0.002)。

 初回投与後、または任意による2回目投与後48時間以内の有害事象発生率は、プラセボ群12.8%、ubrogepant 50mg9.4%、ubrogepant 100mg16.3%だった。なかでも発現が高頻度だったのは、悪心、傾眠、口内乾燥で(0.44.1%)、これらはとくにubrogepant 100mg群での発現頻度が高かった(2.14.1%)。

 両ubrogepant群で投与後30日以内に発生した重篤な有害事象としては、虫垂炎、自然流産、心嚢液貯留、痙攣発作が報告されたが、いずれも投与後48時間以内の発生報告例はなかった。

鉢植え植物は室内の空気をきれいにする?

鉢植え植物に室内の空気の質を良くする効果は期待できないようだ。一般に空気清浄効果があると考えられている観葉植物だが、自宅やオフィスの空気の質を良くするには、室内に植物を置くよりも自然換気を行う方がはるかに高い効果が得られることが、米ドレクセル大学建築環境工学准教授のMichael Waring氏らによる研究で示された。この研究結果は、「Journal of Exposure Science and Environmental Epidemiology116日オンライン版に掲載された。

 今回の研究は、過去30年間に実施された、鉢植え植物が室内の揮発性有機化合物(VOC)量に及ぼす影響を検討した12件の研究結果を分析したもの。Waring氏らは、これらの研究から得られたデータをクリーンエア供給率(CARD)と呼ばれる空気清浄機の性能を表す指標に換算した。

 分析の結果、自然換気か換気装置によるものかにかかわらず、換気によって室内のVOC濃度が低下する速度は、植物が空気中からVOCを除去する速度を大幅に上回っていることが明らかになった。

 結果を受けてWaring氏は、「鉢植え植物が部屋の空気をきれいにするというのは、かねてより信じられてきたよくある誤解の1つだ。植物に優れた力があるのは確かだが、自宅やオフィスの空気の質に効果をもたらすほど素早く室内の空気を清浄化することはできない」と述べている。

 研究チームによると、鉢植え植物には空気清浄効果があるという誤解は、1989年にNASAが発表した「植物は発がん性化学物質を空気から除去するのに役立つ可能性がある」とする研究結果がきっかけで広まったのではないかという。しかし、この研究でもその他の同様の研究でも、実験が行われたのは締め切った空間であり、実際のオフィスや家庭の環境とは共通点がほとんどないものであった。

 また、これらの研究では植物がVOC濃度を徐々に低下させることがデータとして示されたが、自然換気が行われる室内や換気設備の備わった室内に実際に植物を置いた場合はどうなるのかまでは検討されていなかった。研究チームが計算したところ、建物の空気処理システムによる空気清浄能力、あるいは単に家の窓をいくつか開けるだけの換気に匹敵する効果を鉢植え植物から得るには、床面積1平方メートル当たり1001,000鉢が必要であるという。

 Waring氏は「このことは、科学的知見がいかに誤解につながりやすいかを示す一例である。それと同時に、科学研究において、身の回りで実際に起こっていることの理解につながる確かなデータに近づくためには、常に結果に疑問を持ち、検討を重ねていく必要があることを示す好例でもある」と話している。

[20191112/HealthDayNews]

スタチンは高齢者の脳に有害ではない?

コレステロール低下薬のスタチン系薬(以下、スタチン)が思考力や記憶力の低下をもたらすのではないかという広く行き渡った懸念には根拠がないことを示唆する新たな研究が、セント・ビンセント病院(オーストラリア)のKatherine Samaras氏らにより発表された。研究では、認知症リスクのある一部の人では、アトルバスタチン(商品名リピトール)やロスバスタチン(同クレストール)などのスタチンにより記憶力や認知機能が改善する可能性も示された。詳細は「Journal of the American College of Cardiology1118日オンライン版に発表された。

 心疾患や脂質異常症などの治療でスタチンを使用している人は何百万人もいる。しかし、スタチンが記憶力の低下をもたらすことを示唆する複数の研究結果が報告されたことを受け、米食品医薬品局(FDA)は2012年、全てのスタチンに対し黒枠警告の表示を指示した。

 Samaras氏らは今回、高齢者の認知機能に関する研究(Sydney Memory and Aging Study)に参加した7090歳の男女1,037人のデータを用いて、スタチンの使用と記憶力や認知機能の低下との関連を調べる研究を実施した。対象者のうち約600人がスタチンを平均9年にわたり使用していた。

 研究開始時に全ての参加者が情報処理速度や言語能力などの記憶力や認知機能の検査を受けていたが、スタチンの使用者と非使用者の間に差は認められなかった。また、一部の参加者はMRI検査で脳容積を測定したが、2年にわたってスタチンの使用者と非使用者の間に脳容積の有意差は認められなかった。さらに、6年にわたってスタチンの使用者と非使用者の間に記憶力や認知機能の有意差は認められなかった。

 一方、研究期間中にスタチンの使用を開始した99人では、スタチンは記憶力低下の抑制に関連していることが明らかになった。また、予測通りの結果ではあるが、心疾患患者ではスタチン使用により心筋梗塞リスクが低下していた。さらに、心疾患患者では、スタチンの非使用者と比べて使用者で記憶力の低下が緩やかであることも示された。

 そのほか、心疾患や糖尿病など認知症のリスク因子を有する高齢者において、スタチンの非使用者と比べて使用者では認知機能低下の進行が遅いことも分かった。また、アルツハイマー病リスクを高める因子であるAPOE4遺伝子を有する高齢者においても、スタチンは認知機能の低下を有意に遅らせることが示された。なお、心疾患のない高齢者における記憶力の低下率は、スタチンの使用者と非使用者で同程度であった。

 こうした結果を受けSamaras氏は、「高齢者の大規模集団において、6年にわたって記憶力を含むさまざまな側面で認知機能の低下は見られなかった」と結論付けている。ただし、同氏らは、この研究が観察研究であることを強調。「強い関連が認められても決定的な結果とみなすことはできない」として慎重な解釈を求めた上で、「スタチンを使用している人で、同薬が記憶力や認知機能に悪影響を与えるのではないかと不安に感じている人がいれば、かかりつけ医に相談すべきだ。ただ、全般的に今回の研究では極めて心強い結果が得られた」と話している。

 この研究の付随論評の著者の一人で、米ウェイル・コーネル・メディシンのCostantino Iadecola氏は、脳は80%が脂質であるため、脂質の変化に非常に敏感であるとし、「コレステロールを調節すれば脳に影響が及ぶのは驚くべきことではない」と話す。ただし、同氏は「スタチンの認知機能に対する保護作用に関しては、さらなる研究で検証する必要がある」との見解を示している。

[20191118/HealthDayNews]



縫合糸に代わる「両面テープ」を開発

手術などでできた傷口をふさぐ際、針や糸を使わず両面テープを貼るだけでよい時代が来るかもしれない――。米マサチューセッツ工科大学(MIT)機械工学・土木環境工学准教授のXuanhe Zhao氏らは、傷口の縫合処置に用いる医療用両面テープを開発。動物実験で、テープを貼ると傷口の組織が数秒で接着するという有望な結果が得られたと「Nature1030日号に報告した。この両面テープは、縫合糸に取って代わることが期待されるという。

 Zhao氏によれば、世界で行われる外科手術は年間23000万件以上に上り、その多くでは傷口を縫合糸で縫い合わせる処置が施されているという。しかし、同氏は「針と糸を用いて縫合すると組織にストレスを与えるほか、感染症や痛み、瘢痕の原因となることがある」と指摘。「われわれは、縫合糸とは根本的に異なるアプローチを提案している」と説明している。

 Zhao氏らが開発した両面テープは、生体高分子(ゼラチンまたはキトサン)とポリアクリル酸から成るもので、クモが濡れた状態の獲物を捕らえるのに用いる粘着性物質に着想を得た。同氏らがマウスやラット、ブタの組織を使った実験を行った結果、傷口に両面テープを貼ってから5秒以内に、肺や腸などの組織はしっかりと接着することが分かった。

 外科用縫合糸は、一部の組織の縫合には適さず、患者によっては合併症を引き起こすこともあるという。今回の研究結果を踏まえ、Zhao氏らは「この両面テープが縫合糸に代用される日が来るかもしれない」と期待を寄せる。

 また、従来の液状組織接着剤は接着するまでに数分かかり、体の他の部位に液が漏れるといったデメリットがあったが、この両面テープを使うと、組織ははるかに速く接着する。さらに、実験の結果、両面テープは、心臓などの臓器に医療機器を植え込む際にも活用できる可能性も示された。

 論文の筆頭著者を務めた同大学のHyunwoo Yuk氏は「私たちが開発した両面テープは、組織にダメージを与えたり、二次性の合併症を引き起こしたりすることなく、さまざまな部位で利用できる。そのため、植え込み型心電計や薬物送達デバイスの適用を広げ、より簡便かつ効率的な方法でこれらを使えるようになるだろう」と述べている。

 Zhao氏らは今後も、動物実験を続けていくとともに、医師との共同研究でこの両面テープの新たな可能性を探っていく予定だ。ただし、基礎研究で得られた結果は、ヒトに適用できるとは限らない点に注意が必要だとしている。

[20191031/HealthDayNews]

血液1滴で13種のがん検出、2時間以内に99%の精度

東芝は1125日、血液中のマイクロRNAを使ったがん検出技術を開発したと発表した。同社によると、独自のマイクロRNA検出技術を使った健康診断などの血液検査により、生存率の高いStage 0の段階でがんの有無を識別することが期待できるという。早期の社会実装に向け、来年から実証試験を進めていく。

 リキッドバイオプシーの解析対象となるマイクロRNAを巡っては、2014年に「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクト」が始動。国立がん研究センターや国立長寿医療研究センターが保有するバイオバンクを活用し、膨大な患者血清などの検体を臨床情報と紐づけて解析。血中マイクロRNAをマーカーとした検査システムの開発が進んでいる。この研究成果をベースに、国内メーカー4社が、日本人に多い13種のがんについて、血液検体から全自動で検出するための機器や検査用試薬、測定器キットなどの開発に取り組んでいる最中だ。

 東芝も本プロジェクトに当初より参画。東京医科大学と国立がん研究センターとの共同研究において、このほど膵臓がんや乳がんなど13種類のがん患者と健常者について、独自の電気化学的なマイクロRNA検出技術を活用し、2時間以内に99%の精度で網羅的に識別することに成功した。この中には、Stage 0の検体も含まれていたという。本研究により、13がん種いずれかのがんの有無について、簡便かつ高精度に検出するスクリーニング検査の実現が期待される。独自のマイクロRNAチップと専用の小型検査装置を用いることで、検査時間を2時間以内に短縮し、即日検査も可能になるという。

頭痛の裏に失明リスクのある眼疾患/日本頭痛学会

眼の痛みがあったとしても診断時にその訴えがあるとは限らず、併存疾患の多い高齢者ではとくに鑑別が困難だが、頭痛診療で頭に留めておきたい眼疾患がある。第47回日本頭痛学会(111516日)の「頭痛診療のクロストーク・連携」と題したワークショップで、川崎医科大学附属病院眼科の家木 良彰氏が頭痛診療と眼疾患について講演した。

長期間高眼圧が続くと、視神経のダメージは不可逆

 はじめに家木氏は、突然の嘔吐と頭痛を訴え受診した80代女性の症例を紹介した。精査加療のため入院し、他疾患による頭痛として退院。退院後も吐き気、頭痛、眼痛が持続するため、10日以上経過後に初めて眼科を受診した。眼圧を測定したところ右眼圧60mmHgで、急性閉塞隅角緑内障と診断。同日中に白内障手術が施行された。

 翌日には眼圧が正常化し、頭痛・眼痛・吐き気は改善したが、視力は光覚弁(暗室にて眼前で照明を点滅させ明暗を弁別できる視力で、失明に含まれる)となった。高眼圧が続くことによる視神経のダメージは不可逆であり、「もっと早い眼科受診で失明を回避できた可能性がある。このような症例は、12年に1例くらいの頻度で残念ながら遭遇することがある」と同氏。一方で、最初の受診時に眼の痛みや不調に関する訴えがない場合は、眼科疾患の診断が難しいと指摘した。

緑内障のなかでも特殊な病態、急性閉塞隅角緑内障の所見とは

 緑内障患者の主な特徴としては、眼圧が高い(ただし眼圧が正常である正常眼圧緑内障患者は日本では多い)、年齢が高い(40歳以上で要注意)、近視が強い、初期には自覚症状がほとんどない、などが挙げられる。40歳以上の日本人における緑内障有病率は約5%とされ、日本人の失明原因の第1位となっている。

 このうち、急性閉塞隅角緑内障の病態は少し特殊である。高度眼圧上昇(多くは40mmHg以上)がみられ、症状としては眼痛・頭痛・悪心・嘔吐などがある。緑内障の他の病型と異なり近視よりも遠視の人がなりやすく、虹輪視(電球などを見たときに、その周囲に光の輪のようなものが見える)や霧視(かすみがかって見える)、高度の視力低下がみられる。しかし、とくに高齢者では患者側から自主的にそれらの申告がないこともあり、内科的あるいは脳外科的疾患の誤診につながってしまうことがあるという。

 家木氏は、急性閉塞隅角緑内障の鑑別の参考に、近視の場合はほとんどが開放隅角、白内障手術が済んでいたら開放隅角、遠視で背の低い高齢女性に閉塞隅角が多い、といった情報を紹介。診断は眼圧を測定すれば可能であり、たとえ結果が眼科と関係なかったとしても除外診断には役立つため、疑わしい場合は積極的に眼科医にコンサルトしてほしいと話して講演を締めくくった。