薬剤耐性菌問題は依然として脅威

米疾病対策センター(CDC)は1113日、「米国における薬剤耐性菌の脅威」を更新し、米国では薬剤耐性菌を原因とする死亡者数は幾分か減ったものの、これらの耐性菌の拡大に歯止めがかかる兆しは見えていないことを報告した。

 報告書によると、これまでに進められてきた対策によって、米国における薬剤耐性菌の感染による死亡者数は18%減少し、薬剤耐性菌の院内感染による死亡者数は約30%減少した。この結果について米国医療疫学学会(SHEA)会長のHilary Babcock氏は「われわれが耐性菌に対して無力ではないことを示す素晴らしいデータだ。医療疫学者や感染予防の専門家、研究者や薬剤師など、さまざまな人たちが重要な感染予防・抗菌薬管理プログラムを通じて人々の命や健康を守り、病院内の環境の安全性を高めてきた結果だ」と説明する。

 しかし、今回発表された報告書では、依然として米国内で薬剤耐性を示す細菌や真菌に感染する人は年間280万人を超え、これらの薬剤耐性菌の感染による死亡者数も年間35,000人に上ることが明らかにされている。これは、米国では11秒に1人のペースで薬剤耐性菌感染が生じ、15分に1人のペースで薬剤耐性菌感染による死亡者が出ていることに相当するという。

 さらに、薬剤耐性菌の脅威が当初の予測よりも深刻であることも報告されている。CDCが初めて薬剤耐性菌の報告書をまとめた2013年には、薬剤耐性菌による年間死亡者数は23,000人と試算されていたが、今回の報告書ではその約2倍にあたる44,000人が薬剤耐性菌感染によって死亡しているとの推計値が示されている。

 そのほか、CDCは薬剤耐性菌の脅威のレベルを「緊急」「深刻」「懸念」の3つのカテゴリーに分類しているが、今回、新たにカンジダ・アウリス(Candida auris)と呼ばれるカンジダ属の真菌とアシネトバクター(Acinetobacter)と呼ばれる細菌が「緊急」のカテゴリーに加えられた。これらの菌は、免疫力が低下した入院患者に重篤な侵襲性感染症をもたらす危険性があるが、最も強力で広く使用されている抗菌薬や抗真菌薬への耐性を獲得しつつある兆候が示されているという。

 「カンジダ・アウリスは5大陸で同時に出現した。このことは、われわれが直面している問題の大きさを物語っている」とCDC局長のRobert Redfield氏は説明。また、カンジダ・アウリスに感染した人は3人に1人が死亡することも指摘している。

 なお、今回カンジダ・アウリスとアシネトバクターが「緊急」のカテゴリーに加わったことで、同カテゴリーに分類される脅威はカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridioides difficile)の3つから5つに増えた。

 National Association of County and City Health OfficialsNACCHO)のAdriane Casalotti氏は、「薬剤耐性菌の問題がなくなることはない。特定の耐性菌の抑圧に成功しても別の耐性菌が新たな問題になる」と話す。一方、CDCの薬剤耐性調整・戦略部門のMichael Craig氏は「耐性菌感染による死亡者数が減少しているということは、今用いている戦略が間違っていないということだ。医療機関に導入されている院内感染対策や、抗菌薬使用の適正化、適切な食品の取り扱いや安全な性行為、ワクチン接種や手指衛生は全て有効な対策だ」としている。

[20191113/HealthDayNews]