米で新薬の迅速承認が加速

米食品医薬品局(FDA)は希少疾患や重症疾患の新薬の承認を早めることを目的に、4つの迅速承認プログラムを推進している。近年では、新薬承認の迅速化が加速し、厳格な審査を経ずに承認される薬剤が増えつつある実態が、米ハーバード大学医学部のJonathan Darrow氏らの研究で示された。研究によれば、2018年にはFDAが承認した新薬の81%が1つ以上の迅速承認プログラムの適用を受けていたという。研究結果の詳細は「Journal of the American Medical AssociationJAMA)」114日号に発表された。

 Darrow氏は「1983年から現在に至るまで、新薬の承認取得に必要とされる基準は大きく変わってきている。しかし、患者はもちろん医師でさえ、過去40年間にFDAの承認基準や要件が緩和されていることを知っている人は少ない」と話している。

 今回の研究では、2件以上のエビデンスレベルの高い臨床試験結果に基づいて承認された新薬のシェアは、19951997年の80.6%から、20152017年の52.8%へと、大きく減少したことが示された。また、FDAの医薬品審査期間は、1983年の3年以上から2017年には1年未満へと大幅に短縮していた。

 画期的で有効性が極めて高い新薬であれば、発売時期が早まるのは患者にとって朗報かもしれない。しかし、Darrow氏によれば、このような新薬の多くは、既存薬をわずかに上回る程度の効果しかないことが別の研究で明らかになっているという。

 一方、迅速承認プログラムを導入後も、新薬の承認件数には経年的に大幅な増加は見られなかった。年間の平均承認件数は、19901999年には34件で、20002009年には25件に減少。20102018年には41件と、1980年代から30件前後で推移していた。

 FDAは声明で「Darrow氏らの研究は、非常に幅広い問題をカバーするものだ」とする一方で、「10年前、20年前とは審査対象となる医薬品の種類や開発プログラムが標的とする患者集団は大きく変化していることが考慮されていない」と指摘。また、「FDAが受理するデータの種類や質、範囲も以前とはかなり変わってきており、このような変化を考慮せずに導き出した結論は正確ではない可能性がある」との見解を示している。

 なお、HealthDayは米国研究製薬工業協会(PhRMA)に対して取材を試みたが、回答は得られなかった。

 迅速承認プログラムの導入は、従来よりも柔軟なエビデンスに基づく新薬の承認を可能にした。「例えば、生存期間の延長や心臓発作の抑制などではなく、脂質値の低下や腫瘍の縮小といった評価項目だけでも承認が得られるようになった」とDarrow氏は説明する。ただ、臨床試験が開始されてから承認までの期間に変わりはなく、製薬企業が新薬の開発に費やす期間は短縮していないという。

 また、Darrow氏らによれば、製薬企業が負担する審査費用へのFDAの財政的な依存度は高まっており、「このプログラムには迅速な新薬承認が可能になった反面、弊害も見られる」としている。

 今回の研究には関与してない米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のJoshua Sharfstein氏は、これらの迅速承認プログラムは医療費の増大をもたらしたと指摘。その上で「どのような状況下でどのインセンティブを付与すれば、現行の治療を大きく変えるような医薬品の承認につながるのか、FDAは一度立ち止まって見直す必要がある」と述べている。

[2020114/HealthDayNews]