急性腎障害の腎臓でも移植後の成績は良好、米研究

米国では、急性腎障害(AKI)を有する死亡したドナーから提供された腎臓のうち、約30%は廃棄されているのが現状だ。しかし、その多くは移植に用いても問題はなく、移植後の成績は良好であることが、米ジョンズ・ホプキンズ大学腎臓内科のChirag Parikh氏らによる大規模研究で示唆された。死亡ドナーから提供された腎臓を移植する献腎移植において、ドナーにAKIがあるか否かで移植腎の生着率に差は見られないことが分かったという。詳細は「JAMA Network Open18日オンライン版に発表された。

 この研究結果は、20102013年に米国で献腎移植を受けた患者のデータに基づくもの。この期間中にAKIを有する死亡ドナーは6,832人で、AKIを有さない死亡ドナーは15,310人であった。研究では、両ドナーの傾向スコアをマッチさせた上で、計13,444人のドナーから献腎移植を受けた計25,323人を対象に、移植腎の生着率や腎臓の廃棄率などを調べた。なお、死亡ドナーの平均年齢は40.4歳で、男性が63%であり、AKI群と非AKI群の間で年齢や人種、死亡前の全般的な健康状態などに差は見られなかったという。

 その結果、移植から中央値で5年後の移植腎の生着率には、両群間で有意な差は認められなかった。一方、AKIの腎臓の回収率と廃棄率には、臓器調達機関によってばらつきが見られたが、ほとんどの機関で廃棄率は高いことが示された。

 この結果について、Parikh氏は「AKIを有する死亡ドナーから提供された腎臓でも、移植後は正常に機能することを裏付ける最も強いエビデンスだ」と強調する。AKIは重篤な状態ではあるが、「臓器移植の観点から見ると管理可能な問題だ」と同氏。献腎移植のドナーは、重度の外傷により集中治療室(ICU)で治療を受けた若い患者が少なくない。こうした患者には、血圧の急降下や使用された薬剤が原因で腎機能が急激に低下した例が含まれているが、そのほとんどは可逆的で、移植後も腎機能は良好に機能するという。

 米国では、非営利の臓器調達機関が、各地域のドナー候補者の評価や臓器提供を調整している。臓器提供の受け入れは地域の移植施設が判断するが、その基準は施設ごとに異なる。AKIの腎臓に関しては、移植腎の生着期間が短いとの懸念から、安全策として受け入れを見送る施設もある。

 一方で、専門家の一人で米コロンビア大学のSumit Mohan氏は「より質の高い腎臓の提供を待つ方が賢明とする考え方には、バイアスがかかっている」と指摘する。同氏によると、外科医は移植した腎臓がすぐに機能することを期待して手術を行う。しかし、急性損傷を受けた腎臓は通常、回復までに数日を要する。それでも適切に治療すれば、最終的にはAKIの腎臓もうまく機能するようになるという。

 Mohan氏は「Parikh氏らの研究結果は、米国ではより多くの提供腎を活用できることを示した点で重要だ」と評価し、移植臓器の供給をより適正に管理する方策を模索する必要があると述べている。

 全米臓器分配ネットワーク(UNOS)によると、米国の腎移植の待機者数は約95,000人に上る。しかし、毎年約9,000人が死亡するか、医学的理由で待機リストから外れている。その理由は臓器提供の不足だけではない。2019年にMohan氏らが発表した研究では、移植を受けることなく死亡した待機者の多くは、複数回にわたって臓器提供のオファーを受けていたが、移植施設がそれを断っていたことが明らかになった。

 Mohan氏は「移植外科医は正しい判断をしようとしているのだと思う。しかし、限られた時間内に、より理想的な腎臓の提供を受けられる可能性について、判断を見誤っているともいえる」と指摘している。

[2020116/HealthDayNews]