心血管を健康に保つ方法、宇宙からの教訓

元宇宙飛行士のJohn Glenn氏は1962220日、米国人として初めて地球周回軌道を飛行するという偉業を成し遂げた。しかし、打ち上げから30分後、彼がザンジバル諸島の上空辺りで、大気圏外で初めてトレーニング機器を使って運動したということはあまり知られていない。

 このマシンはMA-6 インフライト・エクササイズ・デバイスと呼ばれ、ベルトをバンジー・コード(伸縮性のあるロープ)とハンドルにつなげたもの。Glenn氏がトレーニングを行っている間、心拍数と血圧が測定された。

 この事実はGlenn氏が成し遂げた壮大な飛行と比べれば小さなことかもしれない。しかし、これをきっかけに、「人の心血管系は宇宙にどのように適応するのか?」「宇宙でも心血管を健康に保てるのか?」という疑問が持たれ続けてきた。そして、2問目の回答は、“どのような環境でも健康的に長生きしたいなら、活動的であり続けるべきだ”という、全ての人の教訓となるものだという。

 無重力空間での生活は楽しそうに見えるかもしれないが、重力がないため、血液が上半身に溜まりやすくなり、心臓に負担がかかる。米ペンシルベニア州立大学運動生理学准教授で、元宇宙飛行士のJames A. Pawelczyk氏は「フライト中の宇宙飛行士の顔を見れば、むくんでいることがはっきり分かるはずだ」と指摘する。同氏は、1998年にスペースシャトル・コロンビア号で16日間、地球の周回軌道を飛行した時に、乗組員が皆、細くなった足の皮膚をつまみ上げて面白がっていたことを今でも覚えているという。

 また、宇宙飛行士たちの中には筋肉の萎縮や骨密度の低下といった問題を経験し、急速な老化現象のような変化が見られることもある。

 これまで、宇宙空間で心血管系に関する先駆的な実験を行ってきた米テキサス・ヘルス・プレスビテリアン病院の運動・環境医学研究所所長であるBenjamin Levine氏による研究の一つに「ベッドレスト(長期の寝たきり)実験」がある。被験者に、地上でわずかに後ろに傾けたベッドの上に寝てもらい、無重力空間が体液の流れに与える影響を再現したところ、被験者の心筋は週当たり約1%萎縮したことが分かった。

 また、Levine氏らは、ベッドレスト実験中の被験者の一部にローイング運動をしてもらい、運動しなかった人と比較した。その結果、寝たきりで過ごした人の心臓は予想通り萎縮して硬くなったのに対し、運動した人にはそのような変化は全く認められなかった。その後、運動によって心筋萎縮は防げることが、国際宇宙ステーションの乗組員についても確認された。

 なお、これらの研究結果は20197月に「Circulation」誌で報告された。Levine氏らの他の研究では、3週間寝たきりで過ごすことが身体能力に与える影響は、30年以上の老化による影響を上回ることが示されている。同氏は「地上でも宇宙空間でも、多くの心臓の問題は運動することで予防できる可能性を示すものだ」と説明している。

 しかし、運動でも防ぎきれない心臓の問題もある。そのため、定期的な検査を必要とする点は地上と宇宙空間で共通している。Levine氏は「全ての宇宙飛行士の健康状態が完璧であるわけではない。宇宙飛行士には中年期の男女が多く、例えば、3年間の火星探査のミッション中に急性冠症候群を起こすという最悪の事態も考えられるため、健康診断は不可欠だ」と述べている。

 ただし、総じて心臓は宇宙空間でもうまく機能する。実際、これまでの宇宙船プログラムにおける死亡例の100%は乗り物の壊滅的な破損に起因したものだという。

[2020
220/American Heart Association] 

多発性硬化症の発症メカニズム、解明進む

ダブリン大学トリニティ・カレッジ(アイルランド)実験免疫学教授のKingston Mills氏らは、多発性硬化症(MS)のモデルマウスを用いた実験で、MSの炎症を引き起こすサイトカインの一種であるインターロイキン17IL-17)の新たな役割を発見したと、「Immunity24日オンライン版に発表した。同氏らは「この知見は、MSや乾癬、関節リウマチなどの自己免疫疾患に対し、より効果的な治療法の開発につながるものだ」と期待を示している。

 MSは、免疫細胞が脳や脊髄の中枢神経系(CNS)の組織に侵入し、神経を損傷した結果、さまざまな神経症状が現れる自己免疫疾患だ。MSの患者数は世界で約230万人、アイルランドでは9,000人を超えるとされる。しかし、その原因はいまだに明らかになっておらず、根本的な治療法も見つかっていない。

 マウスのMSモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)においてのこれまでの解析では、MSは、IL-17を産生する「ヘルパーT細胞」と呼ばれる免疫細胞が、CNSの神経線維を覆っている髄鞘を損傷することで起こるというメカニズムが示されている。なお、IL-17阻害薬は、乾癬の治療では既に承認されており、MS治療に関しても、再発寛解型MS患者を対象とした早期臨床試験から有望であることが報告されているという。

 Mills氏らが今回、EAEを解析した結果、MSの発症に際して、IL-17にはこれまで知られていなかった別の役割があることを突き止めた。IL-17を欠損したマウスやIL-17阻害薬を投与したマウスにEAEを誘発すると、自己免疫疾患を引き起こしにくいことが分かった。

 Mills氏は「IL-17は、疾患の原因となる免疫細胞をリンパ節に引き寄せて活性化することで、免疫細胞がCNSの組織に侵入して神経障害を起こしていることが分かった。IL-17は、疾患発症の引き金となる免疫反応の開始に重要な役割を果たしている」と説明。一方で、今回は基礎研究に過ぎず、現段階ではヒトにも当てはまるとは断言できないとしている。

 共著者の一人で同大学生化学・免疫学部のAoife McGinley氏は「重要なことに、今回の研究結果から、IL-17阻害薬が血液脳関門を通過しなくてもMS治療に効果を発揮する可能性が示唆された」と述べている。その上で、「再発寛解型MSの治療ターゲットとして、IL-17の重要性に新たな可能性が見出された。また、MS以外にも乾癬や関節リウマチなど他の自己免疫疾患の治療においても、IL-17阻害薬には大きな可能性があることが強調された」と付け加えている。

[202025/HealthDayNews]



家庭への有害物質の持ち帰りに注意

有害な化学物質や鉛などの金属を扱う仕事をする人は、気づかないうちに家庭に有害物質を持ち帰っている可能性がある――。そんな研究結果を、米ボストン大学のDiana Ceballos氏らが「Annals of Work Exposures and Health129日オンライン版に発表した。職場から持ち帰った有害物質は、家族、特に子どもの健康に深刻な悪影響を与えるという。

 Ceballos氏は、「米国労働安全衛生局(OSHA)の規制に従って、企業として職場での有害物質の取り扱いに安全策を講じていても、家庭への持ち帰りは規制上、盲点となっている可能性がある」と指摘。「現行の規制は、従業員の家族を含む全ての人の健康を守るのには十分ではないかもしれない」と述べている。

 Ceballos氏は、産業衛生士として米疾病対策センター(CDC)に所属していた時に、家電製品のリサイクル施設で働く父親が持ち帰った鉛が原因で、中毒になった2人の子どもの事例を経験した。この父親は、古い家電製品のブラウン管に使われていた鉛ガラスを粉砕する作業を行っていた。職場の鉛の曝露量は、成人男性の健康に悪影響を与えるほどではなかったが、父親の身体や作業衣に付着して家庭内に持ち込まれた鉛の粉塵量は、子どもたちにとっては危険なレベルだった。

 父親がその職場で働き始めて約1年が経過した頃、子どもたちの鉛の血中濃度が異常に高いことが発覚した。その後、子どもたちに行動や発達、学習面での問題といった鉛中毒の症状が現れ始めたという。

 Ceballos氏らは、有害物質の家庭内曝露の有名な事例として、1970年代のアスベスト被害を挙げる。労働者が作業衣などを通して自宅に持ち帰ったアスベスト粉塵を家族が吸入した結果、家族が悪性中皮腫などのがんを発症する被害が起こり、社会問題となった。

 このような家庭内曝露のリスクが高い職種は数多くあり、家電製品のリサイクル業や農業、建築業などが挙げられる。他にも、これまでの研究では、パン屋の子どもたちは喘息やアレルギー性疾患のリスクが高いことが報告されている。これは家庭に持ち込まれた小麦粉に子どもたちが曝露し、小麦に感作されたためである可能性が高いと考えられている。

 現状では、有害物質の家庭内曝露の危険性は、労働者の間でもほとんど知られていない。先ほどの事例の父親も、自分の仕事にこのようなリスクがあるとは夢にも思っていなかったという。しかし、「有害物質の家庭内曝露は防げるはずだ」とCeballos氏は強調する。家庭内曝露を防ぐために、企業は、職場の有害物質の使用を制限し、職場と家庭内の曝露を減らす方法について従業員に対して研修を行うべきだとしている。さらに、「有害物質の家庭への持ち帰りを防ぐための規制を整備する必要がある」と同氏は付け加えている。

 また、家庭への有害物質の持ち込みを減らすため、Ceballos氏は、職場を出る前に手や顔を洗ったり、シャワーを浴びたりして有害物質を洗い流すことや、用意しておいた衣服に着替え、靴を履き替えることなどを勧めている。また、車通勤の人は、汚染されたほこりがたまりやすい車内も清潔にするよう助言している。

[202026/HealthDayNews]

二日酔いにロキソプロフェンは本当に効くのか

二日酔い症状の緩和にロキソプロフェンナトリウム(以下、ロキソプロフェン)が効くという言説。医療関係者ならば耳にしたことがあるかもしれないが、医学的に妥当なのだろうか。

 今回、原 正彦氏(日本臨床研究学会 代表理事)が、二日酔いの症状緩和に対するロキソプロフェンの有効性を、医師を被験者としたランダム化二重盲検プラセボ対照試験で検証したところ、頭痛を緩和する一方で全身倦怠感と吐き気は改善しないことが示された。Alcohol誌オンライン版で202033日に報告。

 本試験は20177月~185月に実施。合計229人の医師がエントリーし、150人の被験者が二日酔い後の服薬を行ったところで終了した。被験者は、ロキソプロフェン群(n74)またはプラセボ群(n76)に無作為に割り付けられた。

 主要エンドポイントは、試験薬服用前および服用後3時間における全身倦怠感の重症度の差とし、視覚的アナログ尺度(VAS)により評価した。副次エンドポイントは、頭痛と吐き気の重症度の違い、有害事象の発現率とした。被験者の年齢中央値は34歳(四分位範囲:3039歳)、92.0%は男性であり、両群間のベースラインの患者背景は同等だった。

 主な結果は以下のとおり。

・全身倦怠感の緩和において、ロキソプロフェン群とプラセボ群の間に統計学的に有意な差はみられなかった(VAS改善度の中央値:24[四分位範囲:1449vs.19935]、p0.07)。
・頭痛は、ロキソプロフェン群で有意に緩和された(251050vs.10230]、調整差分:1495%信頼区間:821p0.001)。
・吐き気の緩和に有意差はなく(7027vs.10024]、p0.68)、心窩部不快感などの有害事象の発現率も、両群間で同等だった(2.7vs.3.9%、p0.25)。

 結果として、ロキソプロフェンは二日酔い後の頭痛を和らげるのに有効と考えられたが、全身倦怠感や吐き気は軽減しなかった。

 原氏は、「試験中に数人の被験者から『渡された試験薬が実薬かプラセボか、事前にわかってしまうのではないか?』という声が寄せられ、(二重盲検のため)試験終了までドキドキしていたが、試験終了後にキーオープンを行い統計学的に評価したとき、試験薬の同定確率には群間差が認められなかったので安堵した」とコメントしている。

糖尿病でも運動していれば介護リスクは糖尿病でない人と同レベル―新潟大

糖尿病患者は介護が必要になるリスクが高いものの、運動を続けていれば糖尿病でない人と変わらない程度にリスクが低下する可能性が報告された。新潟大学医学部血液・内分泌・代謝内科の曽根博仁氏、藤原和哉氏らが、新潟県三条市の医療ビッグデータを解析した結果、明らかになった。詳細は「BMJ Open Diabetes Research & Care125日オンライン版に掲載された。

 研究グループでは、三条市の特定健診と診療報酬請求および介護保険データを統合し、生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症)および生活習慣(運動習慣の有無、現喫煙)と、介護保険の利用状況との関連を検討する後方視的コホート研究を行った。運動習慣の有無は「中等度の運動を週に230分以上、1年間継続していること」で判定した。

 20122015年に健診を受け、少なくとも2年間追跡可能だった3998歳の11,469人のうち、心血管疾患の既往がなく要介護認定を受けていない9,673人(うち男性4,420人)を3.7年(中央値)追跡。すると追跡期間中に165人が要介護認定を受けた(うち要支援49人)。

 要介護状態の発生に関連する可能性のある既知の因子を統計的に調整した上でリスク因子を検討すると、加齢(5歳ごとのハザード比2.48P0.001)やBMI18.5未満(ハザード比1.63P0.043)とともに、糖尿病(同1.74P0.013)と運動習慣がないこと(同1.83P0.001)が有意な因子として抽出された。

 続いて、前記3種類の生活習慣病と運動習慣の有無を加えた、計4つのリスク因子の保有数と要介護リスクを検討。リスク因子を1つも保有していない人に比較し、1つ保有している人はハザード比1.34P0.365)、2つの人は同1.95P0.036)、3つの人は同2.11P0.031)で、4つ全てを保有している人は同3.93P0.003)であり、2つ以上保有している場合のリスク上昇は統計的に有意だった。

 次に、対象全体を糖尿病の有無と運動習慣の有無で4群に分け、糖尿病がなく運動習慣がある人の要介護リスクを基準に、他の3群のリスクを比較した。すると、運動習慣がない人では糖尿病がある場合に有意に高リスク(ハザード比3.20P0.001)であるのはもちろん、糖尿病がなくても有意なリスク上昇(同1.82P0.003)が認められた。ところが、運動習慣がある人では糖尿病であっても有意なリスク上昇は認められなかった(同1.68P0.244)。

 曽根氏は、「我々は以前、日本人糖尿病患者の大規模研究で、運動が糖尿病患者の死亡率を低下させる可能性を示したが、今回さらに、運動が介護リスクを非糖尿病者並みに改善し、健康寿命を延伸できる可能性も示せた。また、BMI18.5未満が要介護の独立したリスク因子であったことから、フレイルによる要介護発生を防ぐために、運動介入とともに栄養介入も重要と考えられる」と述べている。

[2020217/HealthDayNews]



心不全の急増と治療の進歩 AHAニュース

Aimee Rodriguez-Zepeda氏が医師から悪い知らせを伝えられたのは、子宮がんの化学療法が終了した日から約6年後のことだった。その時、彼女の心臓は20%しか機能していなかった。元海兵隊員である彼女を子宮がんから救った化学療法が、心血管疾患の遺伝的背景と相まって、心不全を引き起こしたのだ。

 2014年、39歳の時に心不全の診断を受けた彼女は、「私の身体は時限爆弾のようなものだったのだろう」と語り、「化学療法で健康を取り戻す代償として、薬の副作用で体がダメージを受けることに、今もってあまり注意が払われていないのではないか」と述べている。

 かつては致命的な疾患と捉えられていた心不全だが、状況は徐々に変化してきている。現在では、生活習慣の改善や薬剤、埋め込み型デバイス、手術などの進歩により、十年以上、あるいは数十年にわたり管理可能となってきている。それに伴い患者数も急増し、米国には現在600万人の心不全患者がいて、高齢化に伴い2030年までに800万人に達すると見込まれている。

 心不全の原因としては、心筋梗塞や高血圧、先天性心疾患、糖尿病、肺疾患、飲酒などが多く、がんに対する化学療法や放射線治療もリスクを高める。また、米メイヨークリニックのShannon Dunlay氏は、「有病率の上昇には多くの因子が関与しているが、理由の1つは単に平均寿命が延びているということだ。心不全リスクは加齢に伴い上昇する」と指摘する。

 「治療の基本は薬物治療」と、米ペンシルベニア大学のAnjali Tiku Owens氏は言う。治療薬には、アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬、β遮断薬などいくつかの種類がある。最近、米食品医薬品局(FDA)は、初のアンジオテンシン受容体/ネプリライシン阻害薬の合剤(ARNi)である新薬、サクビトリル/バルサルタンを承認した。

 これらの薬剤に加え、Dunlay氏は「ほかの疾患の治療薬が心不全の治療にも有効な場合がある」として、糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬に関する最近の臨床試験結果を紹介している。この試験では、心臓のポンプとしての出力が低下した心不全患者にSGLT2阻害薬を投与したところ、糖尿病の有無に関わらず病状の悪化と心血管死のリスクが減少することが明らかとなった。

 ただ、Dunlay氏とOwens氏はともに「心不全の治療に最も効果的な手段の1つは、生活習慣を改善することだ」と指摘する。この点に関連し、冒頭のRodriguez-Zepeda氏も、「心不全を管理するのに、食生活を変えたり運動を行ったことが最も効果的だったと感じている」と語っている。

 患者自身がすべきことについて、Dunlay氏は「やるべきことはたくさんある。毎日決められた時間に薬を服用し、運動をして、水分摂取量を管理すること。特に、体重増加は体内に余分な水分が貯留している可能性を示す重要な兆候の1つであり、毎朝の体重測定を忘れずに行うべき」としている。そして「もし体重が5ポンド(2.27kg)以上増えていたら、薬を調整すべきか検討が必要であるため、医療機関に連絡をとるべきだ」と解説している。

 Owens氏によると、薬物治療や生活習慣の改善、埋め込み型デバイスなどの効果が十分でなく心臓移植が唯一の望みになる患者もいるが、そうしたケースは稀だという。そして同氏は、心不全治療の目標を「単に寿命を延ばすだけでなく、より快適に生きることだ」としている。具体的には「充実した人生を送っているか、それとも入退院を繰り返している人生なのか」の違いだとし、医療従事者に対しても「心不全と診断したら、患者の生活の質にも焦点を当てて、患者と治療目標について話し合いを続ける必要がある」と述べている。

[2020
23/American Heart Association] 

視力と認知症との関係

200018年の大手製薬会社35社の収益性は、代表的な他業種の米国上場企業357社と比べて有意に高いが、その差について、会社の規模、会計年度、研究開発費を考慮すると、必ずしもそうとは断言できないというエビデンスが示された。米国・ベントレー大学のFred D. Ledley氏らによる検討の結果で、著者は「大手製薬会社の収益性に関するデータは、医療をより利用しやすくする根拠に基づく施策を作成するために重要とはいえるだろう」とまとめている。JAMA202033日号掲載の報告。

視力の低下と認知症リスクとの関連を調査した縦断的エビデンスの結果は一致していない。香港中文大学のAllen T. C. Lee氏らは、誤分類、逆因果関係、健康上の問題や行動による交絡因子に関連するバイアスとは無関係に、高齢者の大規模なコミュニティーコホートにおける視力低下と認知症発症率との関連を調査した。The Journals of GerontologySeries Aオンライン版2020211日号の報告。

 ベースライン時に認知症でない地域在住高齢者15,576例を対象に、認知症発症について6年間フォローアップを行った。認知症診断は、ICD-10または臨床的認知症尺度(CDR13に従って実施した。ベースラインおよびフォローアップ時の視力評価には、スネレン視力表を用いた。人口統計(年齢、性別、教育、社会経済的地位)、身体的および精神医学的併存疾患(心血管リスク、眼科的状態、聴覚障害、運動不足、うつ病)、ライフスタイル(喫煙、食事、身体活動、知的活動、社会活動)についても評価した。

 主な結果は以下のとおり。

68,904人年以上のフォローアップ期間中に、1,349例が認知症を発症した。
・ベースライン時の視力低下は、人口統計、健康上の問題、ライフスタイルで調整した後でも、また3年以内の認知症発症を除外した場合でも、6年後の認知症発症率の高さと関連が認められた。
・正常な視力の高齢者と比較した、視力低下の重症度別の認知症ハザード比(HR)は、以下のとおりであった。
 ●軽度 HR1.19p0.31
 ●中等度 HR2.09p0.001
 ●重度 HR8.66p0.001

 著者らは「中等度から重度の視覚障害は、認知症の潜在的な予測因子およびリスク因子である可能性がある。臨床的な観点から、視力が低下している高齢者に対する認知症リスク評価のさらなる必要性が示唆された」としている。

大手製薬企業、他業種と比べ収益性は高いのか/JAMA

売上総利益、EBITDA、純利益を比較

 研究グループは、大手製薬会社35社と、S&P 500種指数の該当企業357社について、200018年の年次会計報告書の横断研究を行った。利益率を比較し、大手製薬会社がその他業種の大企業と比べ、収益性が高いとするエビデンスを究明した。

 主要アウトカムは、売上高と、年間収益の3つの指標である売上総利益(売上高-売上原価)、EBITDA(主事業からの税引き前利益:支払利息、税金、減価償却費、償却費を含まない収益)、純利益(すべての収益と支出の差)。200018年までの累積や、年間の利益率(マージン)を算出して比較した。

純利益マージン、大手製薬13.8%で他業種大手7.7

 200018年にかけて、大手製薬会社35社の合計累積売上高は11.5兆ドル、売上総利益は8.6兆ドル、EBITDA3.7兆ドル、純利益は1.9兆ドルだった。

 一方、S&P 500357社の合計は、それぞれ130.5兆ドル、42.1兆ドル、22.8兆ドル、9.4兆ドルだった。

 二変量回帰モデルによる解析の結果、大手製薬会社はS&P 500357社に比べ、年間利益率の中央値は有意に高かった。総利益マージンは76.5vs.37.4%(群間差:39.1%、95%信頼区間[CI]32.545.7p0.001)、EBITDAマージンは29.4vs.19%(10.4%、7.113.7p0.001)、純利益マージンは13.8vs.7.7%(6.1%、2.59.7p0.001)だった。

 ただし、会社の規模、会計年度を補正し、また研究開発費を報告している企業に絞った回帰モデルでの解析では、それらの差は縮小することが示された。総利益マージンの群間差は30.5%(95CI20.940.1p0.001)、EBITDAマージンの群間差は9.2%(5.213.2p0.001)、純利益マージンの群間差は3.6%(0.0117.2p0.05)だった。

魚油サプリ、全死因死亡と心血管疾患死リスクを低下/BMJ

魚油サプリメントの摂取は、全死因死亡および心血管疾患(CVD)死亡のリスク低下と関連し、一般集団においてCVDイベントに対して最低限の有益性をもたらす可能性があることが示された。中国・南方医科大学のZhi-Hao Li氏らが、大規模前向きコホート研究の結果を報告した。魚油サプリメントは、英国やその他の先進国でよく用いられており、最近の無作為化比較試験13件を対象としたメタ解析で、オメガ3脂肪酸サプリメントと比較して、わずかではあるが有意なCVDの予防効果が示唆された。ただし無作為化試験での魚油サプリメント摂取は、理想的な管理下で評価されたものであり、結果を大規模かつ多様な集団に一般化することは難しいことから、研究グループは、リアルライフ設定での大規模コホート研究で評価を行った。BMJ202034日号掲載の報告。

42万人超の大規模前向きコホート研究

 研究グループは200610年にUK Biobankに登録された参加者のうち、ベースラインでCVDあるいはがんを有していない4069歳の男女427,678例について、2018年末まで追跡調査した。全参加者は、魚油を含むサプリメントの常用に関する質問票に回答した。

 主要評価項目は全死因死亡、CVD死亡、CVDイベントとし、Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。

高血圧者で関連性はより強い

 ベースラインで427,678例中133,438例(31.2%)が魚油サプリメントを常用していた。

 非常用者に対する常用者の多変量補正ハザード比(HR)は、全死因死亡が0.8795%信頼区間[CI]0.830.90)、CVD死亡が0.8495CI0.780.91)、CVDイベントが0.9395CI0.900.96)であった。CVDイベントに関しては、高血圧症を有する参加者においてこの関連性はより強い傾向があった(交互作用p0.005)。

 著者は、研究の限界として魚油サプリメントに関する詳細情報(用量、剤形、使用期間)の記録がなかったこと、残余交絡因子あるいは逆の因果関係が存在する可能性などを挙げたうえで、「今後、さらなる研究で魚油サプリメントの用量が臨床的に意味のある効果にどのように影響を及ぼすかを調べる必要がある」とまとめている。

健康の秘訣は良好な人間関係? AHAニュース

80年代のロックミュージシャン、ヒューイ・ルイスは「愛の力は不思議なもの 君の人生だって救ってくれるかもしれない」と歌ったが、実際に愛には、人を健康で長生きさせる力があるようだ。

 支え合う相手がいること、特に結婚が健康に有益であることは、これまで数々の研究で示されてきた。2017年に「Journal of the American Heart Association」に発表された研究では、未婚の心疾患患者は既婚の心疾患患者に比べ、約4年後に心筋梗塞を起こすか、心血管疾患により死亡する率が52%高いことが示された。国立健康統計センター(NCHS)によると、既婚者の死亡率は、結婚経験のない人、離婚した人、配偶者と死別した人に比べて低いという。そのほか、恋人の写真を見るだけで、気分や痛みの制御に関わる脳の領域が活性化することや、パートナーのことを考えることが血糖値にプラスの影響を及ぼし、活力の上昇をもたらすことを報告する研究もある。

 ハーバード成人発達研究は、1938年から2つのグループの男性を追跡している。この研究を率いるRobert Waldinger氏が、研究成果に関して行ったTED講演「What makes a good life?(人生を幸せにするものは何?)」は、数千万回以上再生されている。この研究で明らかになったことの中で特に興味深いのは、中年期の安定した人間関係は、30年後の健康と幸福を予測する因子としては、コレステロール値よりも強力であるということだ。「この研究から分かったことは、“良好な人間関係が幸福と健康をもたらす”というメッセージにほかならない」と同氏は主張する。

 では、なぜ良好な人間関係が健康に良いのか。Waldinger氏は、良好な人間関係が、恐怖や怒りを感じたときに生じる闘争・逃走反応を和らげてくれるという仮説を述べている。「嫌なことがあった日でも、家に帰ってそのことを話せる相手がいれば、気持ちが軽くなっていくのを感じるだろう。聞き上手で励ましてくれる人ならなおさらだ」と同氏は話す。手を握ったり抱きしめたりといったスキンシップもストレスホルモンを低減させることが、研究で明らかにされている。

 米ブリガム・ヤング大学心理学・神経科学教授のJulianne Holt-Lunstad氏は、ストレスの緩和にとどまらず、支えとなるパートナーがいることで、運動やより良い食生活を心がけ、必要なときは医者に行くといった具合に、健康的な生活が促されている可能性があると指摘する。彼女が率いた別の研究では、結婚の効果はその質によって左右されることも分かった。幸せな結婚生活を送っている人は、未婚者に比べ血圧が低かったが、結婚生活がうまくいっていない人は独身者よりも血圧が高いという結果が得られたからだ。「結婚であれ何であれ、良好な人間関係というものは、信頼と安心で成り立っている。それには、相手が自分のニーズに応えてくれるのと同じように、自分も相手のニーズに応える必要がある。一方通行の関係は良好とは言えない」と同氏は説明している。

 Waldinger氏によると、必ずしも結婚や同居をしていなくても、必要なときに支えてくれる人がいると分かっていることが重要だという。根底に愛情があれば、言い争いが結婚の破綻につながることはないことも、同氏が以前行った研究から分かっている。「幸せな結婚のあり方はそれぞれに違っている。大切なのは、相手との相性ではないだろうか。人との関係において、頻繁な連絡や親密性を重視する人もいれば、そうしたことをさほど重視しない人もいる」と同氏は述べている。

 一方、Holt-Lunstad氏は、「人間関係は、体の健康、特に心臓に大きな影響を及ぼすことをもっと多くの人が知るべきだ」と述べ、「運動や禁煙が与える影響に関してはすっかりメッセージが広まった感があるが、今後は人間関係が与える影響についても同様に伝えていく必要がある」と付け加えている。

[2020
25/American Heart Association]