6時間睡眠に忍び寄る睡眠負債

日本人の睡眠時間は世界でダントツ短い。厚生労働省の『平成27年 国民健康・栄養調査』によると、睡眠時間6時間未満の人がわずか8年で11%も増加し、全体の4割を占めている。睡眠不足が日常的に継続した暁には、健康被害はおろか経済損失としても影響がでるという。

 201992日、働くひとの眠り方改革「Biz×Sleep」プロジェクト始動に先駆けたオープニングイベントが開催され、枝川 義邦氏(早稲田大学リサーチイノベーションセンター 研究戦略部門教授)が「『働き方改革』成功の鍵は“眠り方改革”!」について講演、問題解決の糸口について語った。トークセッションでは、お笑い芸人TKO(木本 武宏氏、木下 隆行氏)が、眠りの悩みについて打ち明けた。

6時間寝ていても油断は禁物

 枝川氏はまず日本と世界の睡眠状況を示すために、OECD(経済協力開発機構)加盟国の平均睡眠時間のグラフを提示し、「日本の平均的な睡眠時間は7時間22分で、加盟国で最も短い(OECDの平均は8時間25分)。ただし、この統計は15歳以上の睡眠時間を算出しているので、10代の睡眠が十分とれている者が含まれている」と述べた。

 睡眠不足が積み重なった状態を『睡眠負債』というが、同氏は、「気づかないくらいわずかな睡眠不足でも、蓄積すると大きな影響を及ぼす可能性がある」とし、「実は、6時間未満で熟眠感を得ている人でも睡眠負債の可能性がある。睡眠不足が日常的な習慣になっている可能性もあり、自覚がないことも特徴」と警鐘を鳴らした。この現象は2003年に発表された論文1)で明らかとなり、2週間分の負債が蓄積することによるパフォーマンスの低下は、徹夜による負債に匹敵することが示された。

睡眠削減・労働時間多い=仕事がデキるの発想は時代遅れ!?

 睡眠負債を抱えた人が働きに出れば、仕事効率に影響を及ぼしパフォーマンス低下は避けられない。2018年度『企業の睡眠負債』実態調査によると、仕事中に眠気を感じているのは8割近く、うち2割は毎日眠気を感じていた。回答者の6割近くが生産性への影響を訴えたという。

 この“出勤しているにもかかわらず従業員のパフォーマンスが上がらない“残念な状態は、プレゼンティーイズムと呼ばれ、従業員の健康関連コストの8割弱を占める。同氏は「睡眠不足が原因の場合、1人あたり約3.4万円/年もの損失を職場に与えてしまう。以前は睡眠時間を削ってでも夜遅くまで働くことがカッコいいとされ、長時間労働を自負していた。しかし、今は規則正しい生活を行う人こそが素敵」とし、「睡眠負債は個人の問題ではなく、会社全体の問題として捉えることが重要」と強調した。

遅寝遅起きでも◯、睡眠リズムとコーヒーナップが大切

 睡眠不足にならない生活習慣を心がけることが一番だが、睡眠不足が避けられない場合もある。そのような時に、同氏は「コーヒーナップがお薦め」だという。コーヒーに含まれるカフェインの効果は摂取後2030分後に効果を発揮する。また、人間の脳の活動は起きてから約12時間後に低下傾向に陥ることから、「(脳の活動が低下する前)昼食時にコーヒーを飲んで仮眠をとると、カフェインの効果で目が覚めやすく、午後の仕事が効率的にできる」と、それぞれのメカニズムを上手く利用した睡眠負債の対処法を推奨し、「まとまった睡眠時間が取れない人も、仕事中に眠気が襲ってきたときに1015分の昼寝を取り入れることで、脳がスッキリして業務効率も上がる」とも述べた。

 TKOとのトークセッションにおいて、木下氏は「不規則な生活が続いてしまう」と、悩みを吐露。それに対し枝川氏は、「睡眠はリズムが大切。前半と後半で役割が違うので、なるべくまとまった時間を睡眠にあてることが望ましい。短い睡眠時間を足し算するのは、最後の手段にしてほしい」とアドバイスした。

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