心疾患患者の3人に1人はインフルエンザワクチンを接種せず

インフルエンザはときに命に関わる危険な病気であり、毎年のワクチン接種が重要になる。特に、心疾患患者は、インフルエンザワクチンを接種すると心筋梗塞などの発症や死亡を予防できることが明らかになっている。しかし、米メッドスター・ヘルスの内科レジデントであるGowtham Grandhi氏らの調査で、米国の心疾患患者の約3人に1人はインフルエンザワクチンを接種していないことが分かった。研究結果は、米国心臓協会の年次集会(AHA 2019111618日、米フィラデルフィア)で発表された。

 この研究は、20082015年の医療費パネル調査(MEPS)データを用いたもの。心筋梗塞や脳卒中などの既往がある40歳以上の男女15,000人以上を対象に、インフルエンザワクチンの接種率について調べた。

 その結果、過去1年間に、患者の約3人に1人はワクチンを接種していないことが分かった。ワクチンの未接種率は、医療保険に加入し、定期的に医療サービスを受けている患者では約30%だったのに対し、保険未加入の低所得層者では65%に上っていた。

 Grandhi氏は「心疾患患者は、インフルエンザに罹ると合併症や死亡リスクが高まる。インフルエンザワクチン接種の有益性について、心疾患患者への教育を徹底する必要がある」と述べている。

 一方、責任研究者である米ヒューストン・メソジスト病院、ドベイキー心臓血管センターのKhurram Nasir氏は「この研究結果は、インフルエンザワクチン接種率の格差に光を当てたものだ」と説明。「今後は、このような格差の原因となっている患者側と医療制度上の要因を明らかにし、これらの課題を克服するための介入法に重点を置いて研究を進めていくべきだ」と述べている。

 さらに、Grandhi氏は「心臓専門医とプライマリケア医、その他の臨床医は、インフルエンザの流行が始まる前に、患者とワクチン接種について話し合い、定期受診の中でワクチン接種を受けるように促していく必要がある」と述べ、「可能であれば、予約がなくても患者にワクチン接種を提供すべきだ」と付け加えている。

 なお、学会発表された研究結果は通常、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。

[20191113/HealthDayNews]



電子処方ツール導入によるベンゾジアゼピン処方への影響

電子処方ツール(e処方)は、処方プロセスの妥当性および医療の質に関して、いくつかのベネフィットが認められている。しかし、デジタル化の好ましくない影響である、対面式の直接的な会話を省く簡便かつ迅速な処方プロセスにより、ベンゾジアゼピン(BZD)などの乱用リスクが高い薬剤の処方を促進してしまう可能性がある。スイス・Regional Hospital of Bellinzona and ValliRosaria Del Giorno氏らは、5つの指導病院ネットワークにおいて、入院患者に対する新規BZD処方に対するe処方の影響を調査するため、パネルデータ調査を行った。Diagnostics20191115日号の報告。

 20147月~20194月までの観察期間中に、入院患者43,320例の分析を行った。新規BZD処方に対するe処方の影響を推定するため、固定効果モデルを用いた。

 主な結果は以下のとおり。

e処方の導入により、新規BZD処方の有意な増加が認められた(絶対値:1.5%増、相対値:43%増[p0.001])。
・この関連性は、男性(絶対値:2.3%増、相対値:65%増[p0.001])、女性(絶対値:1.8%増、相対値:58%増[p0.01])、70歳以上(絶対値:1.6%増、相対値:59%増[p0.001])でも同様であった。
・時間依存独立変数で調整後も、e処方の導入により、同様に有意な影響が認められた。

 著者らは「e処方導入は、院内での新規BZD処方の有意な増加と関連が認められた。過剰処方や乱用リスクがある薬剤は、リスクを最小限にするためにも、e処方を慎重に使用する必要がある。これらの相互作用を分析し、質の高いケアを推進していくためには、ほかの環境や国でのさらなる研究が求められる」としている。

医師数32万7,210人、増えた科や多い都道府県は?―厚労省調査

厚生労働省は19日、「医師・歯科医師・薬剤師統計」の最新結果を取りまとめ、公表した。それによると、全国の医師数は、327,210人で、前回調査(16年)に比べ2.4%増となり、一貫して増加傾向が続いている。このうち、女性医師は71,758人で、前回よりも6.3%増と大きく数字を伸ばし、過去最多を更新した。一方、医療施設に従事する医師の平均年齢は上がり続けており、診療所に従事する医師の平均年齢は初めて60歳代となり、高い年齢層が支えていることがわかる。

 「医師・歯科医師・薬剤師統計」は、厚労省が2年おきに実施しており、今回は2018(平成30)年1231日時点に調査を行ったもの。それによると、全国の医師数は327,210人(前回比で7,730人、2.4%増)、歯科医師数は104,908人(同375人、0.4%増)、薬剤師数は311,289人(同9,966人、3.3%増)であった。

 医師数を男女別にみると、男性医師は255,452人(前回比で3,465人、1.4%増)、女性医師は71,758人(同4,265人、6.3%増)となっており、女性医師数の躍進が顕著であった。

 医師のうち、医療施設従事者は311,963人(総数の95.3%)で、前回比で7,204人(2.4%)増加した。平均年齢は49.9歳。このうち、病院は44.8歳で前回調査時から0.3ポイント上昇し、診療所は60.0歳で前回から0.4ポイント上昇して、初めて60歳代となった。

 主たる診療科別にみると、前回調査時より従事者が増えたのは、美容外科が最も多く(対前回比で130%)、以下、産科(同112%)、腎臓内科・救急科(同111%)、リハビリテーション科(同109%)などとなっている。一方、従事者が減ったのは、気管食道外科が最も多く(対前回比で94%)、以下、外科(同95%)、肛門外科(同97%)、内科・産婦人科・臨床検査科(同99%)などとなっている。なお、本稿で紹介した診療科別の統計結果においては「臨床研修医」や「不詳」および「その他」の回答はいずれも除外している。

 従業地の都道府県別にみた医療施設に従事する人口10万人当たりの医師数は、全国では246.7人で、前回比で6.6人増加した。このうち、最も多いのは徳島県(329.5人)で、次いで京都府(323.3人)、高知県(316.9人)などとなっている。一方、最も少ないのは埼玉県(169.8人)で、次いで茨城県(187.5人)、千葉県(194.1人)などとなっている。

海洋由来オメガ3脂肪酸と大腸がん予防効果

オメガ3脂肪酸には植物由来と海洋由来があるが、本稿は海洋由来オメガ3脂肪酸の話題。米国・ハーバード公衆衛生大学院のMingyang Song氏らは、「Vitamin D and Omega-3 TrialVITAL試験」で事前に設定された補助的研究において、海洋由来オメガ3脂肪酸(11g)の摂取は大腸がん前がん病変リスクの減少と関連しないことを明らかにした。ただし副次解析で、ベースラインのオメガ3濃度が低い参加者やアフリカ系米国人に関しては有益性を示す結果がみられ、筆者は、これらの対象についてはサプリメントの有益性についてさらなる調査が必要であると述べている。JAMA Oncology誌オンライン版20191121日号掲載の報告。

 研究グループは201111月~20143月に、がんおよび心血管疾患の既往がない米国の一般集団25,871例(うちアフリカ系米国人5,106例)を登録し、海洋由来オメガ3脂肪酸1g/日(エイコサペンタエン酸[EPA460mgとドコサヘキサエン酸[DHA380mgを含む)およびビタミンD32,000 IU/日)を投与する群と、プラセボ群に無作為に割り付けた。

 主要評価項目は、大腸の通常型腺腫(管状腺腫、管状絨毛腺腫、絨毛性腺腫および高度異形成腺腫など)または鋸歯状病変(serrated polypSP)(過形成性ポリープ、鋸歯状腺腫およびsessile serrated polypなど)のリスクとした。追跡調査のアンケートでポリープの診断を受けたと報告した参加者(ポリープサブグループ)については、内視鏡および病理学的記録にて診断を確認。ロジスティック回帰分析を用い、年齢、性別、ビタミンD3治療群および内視鏡検査の使用について補正後、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出して評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・投与群とプラセボ群で患者背景は類似していた。女性50.6%、50.5%、黒人19.7%、19.8%、平均年齢は67.2歳、67.1歳。
・介入は予定どおり20171231日に終了。追跡期間中央値5.3年において、通常型腺腫が投与群294例、対照群301例(多変量OR0.9895CI0.831.15)、鋸歯状病変がそれぞれ174例、167例(OR1.0595CI0.841.29)が記録された。
・ポリープサブグループにおいて、大きさ、位置、多発性または組織型で関連はなかった。
・副次解析において、ベースラインの血漿中オメガ3指数が低い参加者で、海洋由来オメガ3脂肪酸の投与が通常型腺腫のリスク低下と関連していた(OR0.7695CI0.571.02、オメガ3指数による相互作用のp0.03)。
・サプリメントによる有益性は、アフリカ系米国人集団で示されたが(OR0.5995CI0.351.00)、他の人種/民族集団ではみられなかった(相互作用のp0.11)。

うつ病や統合失調症リスクに対する喫煙の影響

統合失調症やうつ病の患者では、一般集団と比較し喫煙率が高い。英国・ブリストル大学のRobyn E. Wootton氏らは、ゲノムワイド関連研究(GWAS)で特定された遺伝子変異を使用して、この因果関係を調べることのできるメンデルランダム化(MR)法を用いて検討を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2019116日号の報告。

 統合失調症およびうつ病に対する喫煙の双方向の影響を調査するため、2つのサンプルにおけるMRを実施した。喫煙行動についてはGSCANGWAS and Sequencing Consortium of Alcohol and Nicotine use)コンソーシアムから喫煙開始のGWASを使用し、UK Biobank462,690サンプルより生涯の喫煙行動に関する独自のGWASを実施した。肺がんなどのポジティブコントロールアウトカムを用いて検証した。統合失調症とうつ病には、PGCPsychiatric Genomics Consortium)のGWASを使用した。

 主な結果は以下のとおり。

・喫煙は、統合失調症(オッズ比[OR]2.2795%信頼区間[CI]1.673.08p0.001)とうつ病(OR1.9995CI1.712.32p0.001)の両方のリスク因子であることが示唆された。
・この結果は、生涯の喫煙と喫煙開始の両方で、一貫して認められた。
・うつ病に対する遺伝傾向が喫煙を増加させる可能性が示唆されたが(β0.09195CI0.0270.155p0.005)、統合失調症では明らかではなく(β0.02295CI0.0050.038p0.009)、喫煙開始に対する影響は非常に弱かった。

 著者らは「喫煙と統合失調症やうつ病の関連性は、少なくとも部分的に、喫煙の因果効果であることが示唆された。このことは、メンタルヘルスに対する喫煙の有害な結果をさらに示すものである」としている。

米国中高生にフレーバー電子タバコが蔓延

2019年の米国の高等学校(high school)および中学校(middle school)の生徒における電子タバコ使用者の割合は高く(それぞれ27.5%、10.5%)、特定の銘柄の電子タバコ使用者の多くがフレーバー電子タバコを使用(72.2%、59.2%)している実態が、米国食品医薬品局(FDA)タバコ製品センターのKaren A. Cullen氏らの調査で明らかとなった。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2019115日号に掲載された。米国の青少年における電子タバコの使用率は、2011年から2018年に、実質的に増加しているという。青少年の電子タバコや他のタバコ製品の使用率の継続的な監視は、公衆衛生学上の施策や計画立案、規制の取り組みへの情報提供として重要とされる。

612学年19,018人の横断研究

 研究グループは、2019年の米国の高等学校および中学校の生徒における電子タバコの使用状況(使用頻度、銘柄、フレーバー製品の使用など)を調査する目的で、横断研究を行った(FDAと米国疾病予防管理センター[CDC]の助成による)。
 2019年度の全国青少年タバコ調査(National Youth Tobacco Survey)に参加した第612学年(高等学校:第912学年、中学校:第68学年)の米国人生徒19,018人を対象とした。調査期間は、2019215日~524日。

 参加者の自己申告に基づき、現在電子タバコを使用中(過去30日以内に1回以上使用)、頻回使用(過去30日間に20日以上)、現使用者が習慣的に使用している銘柄(JUULbluLogicMarkTenNJOYVuse、その他、なし)、特定銘柄の使用者(他のタバコ製品は使用しない)におけるフレーバー電子タバコの使用の有無と、使用しているフレーバーの種類を調査した。使用率の推定値は複雑抽出デザイン(complex sampling design)で重み付けした。

頻回(月に20日以上)使用者は160万人、毎日使用者は97万人

 調査には、高等学校の生徒197人(平均年齢16.1SD 3.0]歳、女性47.5%)と、中学校の生徒8,837人(12.72.8]歳、48.7%)が含まれた。学年別の参加者割合は全体として類似していた(範囲:第12学年12.9%~第7学年14.6%)。全体の回答率は66.3%だった。

 2019年の電子タバコの現使用率の推定値は、高等学校生が27.5%(95%信頼区間[CI]25.329.7)、中学校生は10.5%(9.411.8)であった。また、現使用者のうち、高等学校生の34.2%(31.237.3)、中学校生の18.0%(15.221.2)が頻回使用者であり、それぞれ63.6%(59.367.8)および65.4%(60.669.9)が特定の銘柄の電子タバコを使用していた。

 現使用者のうち、高等学校生の59.1%(95CI54.863.2)、中学校生の54.1%(49.159.0)が、過去30日間にJUUL(ニコチン塩ベースの電子タバコ製品)を習慣的に使用しており、それぞれ13.8%(12.015.9)および16.8%(13.620.7)は、習慣的に使用している電子タバコの銘柄はないと回答した。

 特定の銘柄の電子タバコの使用者のうち、高等学校生の72.2%(95CI69.175.1)、中学校生の59.2%(54.863.4)が、フレーバー電子タバコを使用しており、使用頻度の高いフレーバーは、果物(高等学校生66.1%[62.469.5]、中学校生67.7%[62.672.5])、メンソール/ミント(57.3%[53.361.3]、31.1%[25.637.2])、キャンディー/デザートなどの甘い物(34.9%[31.338.7]、38.3%[32.644.2])であった。

 なお、過去30日間に、電子タバコ以外のタバコ製品を使用したと答えた生徒の割合は、高等学校生が5.8%(95CI4.67.3)、中学生は2.3%(1.82.9)であり、電子タバコと合わせると、それぞれ31.2%(29.133.5)および12.5%(11.213.9)が、何らかのタバコ製品を使用していた。

 著者は、「これらのデータにより、2019年に米国の高等学校生410万人と中学校生120万人が電子タバコを使用したと推定される。このうち160万人が頻回使用者で、97万人は毎日使用しており、特定銘柄のフレーバー電子タバコの使用者は240万人と考えられる」としている。

金銭管理の問題はアルツハイマー病の予兆か

未払いの請求書がたまり、銀行口座の残高はマイナス、投資は先細り――。高齢者にこうした金銭管理の問題がみられたら、認知症やアルツハイマー病の予兆であるかもしれない。未診断で早期のアルツハイマー病患者は、適切な家族の援助を得ることができず、金銭管理で誤った決断を下してしまうリスクが高いことが、米ジョージタウン大学教授のCarole Gresenz氏らの研究で示された。研究の詳細は「Health Economics1024日号に発表された。

 今回の研究は、19922014年の出来高払い方式のメディケア請求データと50歳以上の米国人の健康に関する調査(Health and Retirement StudyHRS)のデータを用いたもの。HRSでは各世帯の金融資産や負債に関する調査も行われていた。

 研究では、家族にアルツハイマー病または関連する認知症(ADRD)と診断された人がいる2,777世帯を含む8,871世帯のデータを分析した。ADRDの患者がいる家庭のうち、家計管理を主に行っている人がADRDである家庭は73%を占めていた。その結果、早期のアルツハイマー病患者は、自分の資産や貯蓄、預金口座を適切に管理できなくなるため、資産の大幅な減少につながることが多いことが分かった。

 Gresenz氏は「アルツハイマー病は早期に診断されないと最悪の事態を招く可能性がある」と指摘。「アルツハイマー病のために金銭管理能力が低下することで、請求書の未払いやクレジットカードでの浪費、投資への関心が薄れるといった問題が生じる可能性がある。また、金銭感覚が失われた高齢者は詐欺や悪徳商法などの被害にも遭いやすい」と説明している。

 今回の研究には関与していないアルツハイマー病協会のRuth Drew氏は「アルツハイマー病が進行するに伴い、患者は誰でも金銭管理だけでなく、最終的には日常生活を送るためにも介助や介護が必要になる」と説明。自身の経験でも、多くの人からこのような問題について話を聞いているとしている。

 なお、Drew氏によれば、職場や家庭で金銭管理に責任を持つ立場にあった人が、自分の認知機能が低下していることに気付いていなかったという事例もあったという。「こうした変化に周りの人は気付かなかったり、気付いても家族に伝えられなかったりしたようだ。その間に金銭に大きな影響が及んでしまっていた。われわれが会った時には、患者の家族は、資産が予想以上に減ってしまった患者を介護しなければならない状況に陥っていた」と同氏は振り返る。

 また、Gresenz氏は「早期のアルツハイマー病患者がいる家族は、患者本人だけでなく家族も、預金や貯金、株式、債券など高齢者でも動かしやすい資産が大幅に減ってしまうリスクが高いことを知っておくべきだ」と強調。「家族は、高齢になった親の金銭管理能力を早めにチェックする方がよい。認知症の兆候がなくても、セーフティネットの存在を確認しておいてほしい」とアドバイスしている。さらに、「高齢者を守る上では金融機関にも重要な役割がある」と同氏は付け加えている。

 一方、前出のDrew氏は「アルツハイマー病や認知症に関しては、今後の計画を立てるのに早すぎるということはない」とし、高齢者自身には、信頼できるファイナンシャルプランナーと早めに話し合うことを勧めている。

[20191029/HealthDayNews]

長時間作用型の避妊パッチに実現性、米研究

皮膚に貼るだけで長時間にわたり避妊効果が続く「パッチ型避妊薬」の研究で有望な成績が得られたと、米ジョージア工科大学教授のMark Prausnitz氏らが「Science Advances116日号に発表した。このパッチ型避妊薬は、表面の多数の微小な針(マイクロニードル)が皮膚に刺さると、針に含まれた避妊薬が吸収されるというもの。従来の長期避妊法である子宮内避妊器具(IUD)やインプラントは医療機関で装着する必要があるが、この簡便なパッチ型避妊薬はこれらの代替となる可能性があるという。

 パッチ型避妊薬は、皮膚に貼って1分ほど上から押さえると、黄体ホルモン作用を持つプロゲスチン(レボノゲストレル)を含んだ微小な針が皮膚に残り、ホルモンが吸収される。皮膚に残った針はその後、分解されて消失する。ただし、今回報告されたのは動物実験と少人数の女性を対象に実行可能性を検証した初期段階の研究結果に過ぎない。

 Prausnitz氏は「既にさまざまな長時間作用型の可逆的避妊法があるが、私たちは、医療機関で施術する必要がない簡便な避妊法の開発を目指した」と説明。その理由の一つとして、同氏は、医療機関を受診しにくい発展途上国の女性でも使いやすい避妊法の必要性を挙げているが、パッチ型避妊薬は米国など医療資源が豊かな国でも魅力的な選択肢になる可能性があるとしている。

 一方、この研究には関与していない米国セクシャルヘルス協会のメディカルアドバイザーであるSusan Wysocki氏も、Prausnitz氏の考えに同意し、「保険が適用される避妊法は限られており、IUDやインプラントを装着できる医療機関が近隣にない女性もいる」と指摘。「女性によってニーズはさまざまであり、避妊法の選択肢が広がるのは歓迎すべきだ」としている。

 このパッチの表面には、ホルモン製剤のレボノゲストレルが充填された多数のマイクロニードルがあり、その根元は特殊な発泡性の材質で作られている。約1分間、パッチを皮膚に押さえつけると、この発泡性の層から針の部分が切り離され、針だけが皮下に残る。そして、残った針からレボノゲストレルが徐々に放出されるという仕組みだ。

 ラットを用いた実験では、このマイクロニードルによってヒトのホルモン血中濃度は、避妊効果が得られるレベルで1カ月以上維持されることが示された。次に、10人の女性を対象にホルモン剤が充填されていないパッチでテストを行い、痛みやマイクロニードルの分離に要する時間を検証したところ、痛みが問題となることはなく、微小な針は皮下にしっかりと埋め込まれることが確認された。

 なお、パッチの使用後、皮膚に赤みが見られたが、1時間以内に消失したという。また、女性10人中9人は、毎日ピルを飲むよりも、月に1回貼るだけで済むパッチ型の避妊薬を使いたいと回答していた。ただし、このパッチ型避妊薬の避妊効果はまだ検証されていないことに注意が必要だ。Prausnitz氏は、次の段階では、36カ月とさらに長期にわたり避妊効果が得られるような製剤の開発を試みる予定だという。

 一方、Wysocki氏は「避妊法は女性がコントロールできるかどうかが重要な鍵となる。自分で選択できる長時間作用型の避妊薬は多くの女性にとって魅力的だ」として、今後、研究が前進することに期待を示している。

[2019117/HealthDayNews]

ベンゾジアゼピン治療と自殺リスク

不安症および睡眠障害のマネジメントのためのガイドラインでは、抗うつ薬治療と心理療法を第1および/または第2選択治療とし、ベンゾジアゼピン(BZD)は、第3選択治療としている。米国・コロラド大学のJennifer M. Boggs氏らは、自殺による死亡とBZDガイドラインコンコーダンスとの関連について評価を行った。General Hospital Psychiatry誌オンライン版20191117日号の報告。

 Mental Health Research Networkより、米国8州のヘルスシステムから不安症および/または睡眠障害を有する患者を対象とした、レトロスペクティブ症例対照研究として実施した。自殺による死亡症例は、年およびヘルスシステムにおいて対照とマッチさせた。適切なBZDの使用は、単独療法でない、長期使用でない、65歳未満であると定義した。ガイドラインコンコーダンスと自殺による死亡との関連は、診断および治療の共変量で調整し、評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・対象は、不安症患者6,960例(BZDR使用患者:2,363例)、睡眠障害患者6,215例(BZDR使用患者:1,237例)。
BZDガイドラインコンコーダンスは、不安障害患者の自殺率低下と関連が認められた(OR0.61195CI0.3920.953p0.03)。このことには、BZDの使用を短期間にすること、心理療法または抗うつ薬を併用することも影響していた。
BZDガイドラインコンコーダンスと自殺による死亡との関連において、睡眠障害患者では、有意な関連が認められなかった(OR0.41395CI0.1541.11p0.08)。

 著者らは「BZDを短期間使用し、心理療法または抗うつ薬治療を併用した不安症患者では、自殺率が低いことが明らかとなった」としている。

医療者が共有できていない、重症低血糖とその背景

20191029日、日本イーライリリー主催のプレスセミナー「糖尿病患者さんと家族の意識調査から見る、重症低血糖の実態」が開催され、山内 敏正氏(東京大学大学院医学研究科糖尿病・代謝内科 教授)が「低血糖・重症低血糖について」、岩倉 敏夫氏(神戸市立医療センター中央市民病院)が「糖尿病患者さんと家族調査結果から見える課題」と題して重症低血糖について解説した。会の後半に行われたトークセッションでは、患者代表の大村 詠一氏(元エアロビック競技日本代表)が、低血糖発現時の状況や医療者とのコミュニケーションに関する本音を語った。

重症低血糖はどう重症なのか?

 低血糖は食事摂取量の低下や摂取時間の遅れ、エネルギー消費の増大、インスリン感受性の改善、薬剤の影響などが原因で生じる。これに対する生理反応として、血糖値がおおよそ70mg/dL以下になると交感神経や中枢神経症状などが起こりやすい。

 一般的に重症低血糖は、非糖尿病者では生理的に来しえない54mg/dL未満の場合と、低血糖の回復に際し“他者による介助が必要な重度認知機能障害に関連する低血糖”に定義される。この状態に陥ると、糖尿病患者の脳や筋骨格系、心血管系に影響し、急性期では認知機能や作業パフォーマンスの低下、慢性期ではQOL低下や運転・雇用の制限などの問題を抱えてしまう。これを踏まえて山内氏は「重症低血糖は短期的かつ長期的に悪影響を与え、生命を脅かす危険性がある。とくに認知機能における記憶や言語処理などに影響を及ぼす」とコメントし、「まずは、低血糖に対する本人の自覚が大切。しかし、運動後615時間後の低血糖発生は夜間睡眠時に及ぶ場合もある。このような場合を踏まえ、本人だけではなく周囲の理解も必要」と話した。

重症低血糖を発症しやすい患者とは

 日本糖尿病学会による糖尿病治療に関連した重症低血糖の調査委員会報告(1型糖尿病[T1D]:240例、2型糖尿病[T2D]:480例)では発症者の傾向を病型別に分けて調査している。この調査報告によると、T1DT2Dの平均HbA1c値はそれぞれ、7.5%、6.8%であった。前駆症状(交感神経系刺激症状)の発現率は、T1D41%、T2D56.9%の患者に見られ、重症低血糖の発症年齢の中央値はT1D54歳、T2Dの中央値は77歳、とくにT2D患者は65歳以上が83%を占めていた。過去に重症低血糖を起こし受診歴がある患者はそれぞれ67.8%、33.1%であった。また、重症低血糖に影響した要因について、医師への調査によると、食事の内容・タイミングの不適合が最も多く、全体の40%を占めた。次いで、薬剤の過量もしくは誤投与が27%と続いた。T2Dに限定して症低血糖の原因薬剤を抽出したところ、インスリン群で61%、SU薬群で33%であった。この結果を踏まえ同氏は、「重症低血糖は防げるにもかかわらず、同一患者が複数回起こしているケースがある。本人・家族だけではなく医療者による工夫も必要」と問題提起した。

 また、重症低血糖の発症患者として高齢者が問題視されている。とくに75歳以上の2型糖尿病のSU治療群での低血糖割合が多い。熊本宣言2013を受け、75歳以上の高齢者に対するHbA1c値のあり方が厳格化されつつある中で、「75歳以上のSU薬使用においてHbA1cの下限値7.0%を設けたことは世界で初の試みだった。これがさらに浸透すれば今回の調査報告に比べ低血糖症状の患者が半数以下に減らせるのではないか」と、同氏は今後の結果報告に期待した。

医療者、6割もの患者の低血糖症状を把握できず

 重症低血糖による意識障害に陥った場合、第三者(家族、友人、介護者…)によるフォローが患者の生命予後の鍵となる。重症低血糖対策への意識調査を糖尿病患者とその家族に実施した岩倉氏によると、低血糖の認知度の高さに(糖尿病患者:77%、糖尿病患者の同居家族:76%)比して、「重症低血糖の認知はそれぞれ25%、40%にとどまった」と、現状を懸念した。

 重症低血糖を経験した患者では予防策に対する意識が高く、「ブドウ糖を含む飲食物を摂取」「血糖測定の実施」のほか、「食事の量」や「運動」に注意を払っていた。しかし、重症低血糖に関する相談や情報共有を医療者と共有している患者はたったの37%しかいないことが明らかになった。なお、相談される医療者は、医師、薬剤師、看護師の順であったが、岩倉氏は「患者から直接相談されるだけではなく、薬剤師や看護師などから患者情報を得ることもある」とコメントした。

年齢を重ねると低血糖症状にも変化

 最後に行われたトークセッションでは、患者代表の大村氏が自身の経験や血糖値管理の本音を吐露。幼少期から1型糖尿病を発症した同氏は「外食の場合、写真と実物の量が異なることがあるので、配膳されてから注射するなど、糖質が配膳されるタイミングで投与するなどの工夫をしている」と話した。また、同氏の場合、血糖値が2030mg/dL程度にならないと重症低血糖の症状が表れず、日頃から6070mg/dLの値を経験していたという。そのため、「先生に低血糖の有無を聞かれても、自覚症状がないので言わないこともある。さらに、加齢に伴い低血糖症状にも変化が表れているので、患者自身が身体変化について医療者と共有する意識を持つことが大切」と実体験を語った。これに、岩倉氏は「まずは血糖値を知って不安を払拭することが何よりも大切」と、アドバイスした。