拡張期血圧、下がらなくても大丈夫。本当?

拡張期のみが高い高血圧患者(Isolated Diastolic HypertensionIDH)の降圧治療には、難渋したことのある医師は少なくないであろう。とくに4060歳の成人では、収縮期血圧は下げることはできても拡張期血圧をガイドラインで定めるレベルまで下げることは難しい。ガイドラインでも米国のJNC72003年)では140/90mmHg未満だったものが、14年後にJNC8に代わって公式発表されたACC/AHAガイドラインでは130/80mmHg未満を目標とせよ、というのだから、90mmHg未満でさえ難渋していたのが、さらに困難になったわけである。

 そこで朗報と思えるのが、この論文である。長期追跡コホート研究の結果、拡張期型高血圧が90mmHg80mmHgの患者では心血管系予後はそれほど変わりがないというのである。そこで一安心といいたいところだが、注意が必要だ。この結果はあくまでも長期追跡研究であり、「黙って観察」した結果の報告である。

 しかし実際には、対象となった症例は医療機関に行ってただ観察されていただけではなく、当然血圧が高ければさらなる降圧治療は強化されていたであろうし、塩分制限などの努力もしたであろう。そのように観察期間での治療内容が結果に反映されないのが観察研究の最大の欠点である。しかも、人間、歳をとると、血管の弾力性がなくなり、拡張期血圧が下がってくるという厄介な問題も内包する。

 本試験はあくまでも、観察を開始した時点での拡張期80mmHg90mmHgの症例群での追跡結果にすぎないのである。エビデンスとしての確実性を上げるためには、ランダム化試験が不可欠だが、今のところIDHに関するランダム化試験はまだ存在しない。

 それでは、現実的に拡張期血圧だけが80mmHg以上あるいは90mmHg以上の高血圧患者にはどう対応すべきか? まず収縮期血圧を十分130mmHg以下に下げることを第一目標とし、それでも拡張期血圧がガイドラインレベルまで下がらないようであれば、収縮期血圧の低下によりめまいなどの低血圧症状の発現に注意しつつ、減塩や体重減少指導を強化し、非サイアザイド系利尿薬を追加するなど降圧療法を強化する。それでも下がらなければ、高血圧は血管に対する負担(負荷)であることを考えると、当然収縮期血圧のほうが拡張期血圧よりも数字が高い分血管への負荷が大きいことを考慮しつつ、多剤服用による降圧副作用や低血圧症状に注意しながら、あるレベルで妥協するのが現実的であろう。

SGLT2阻害薬で痛風リスクが低下する可能性

血糖降下薬であるSGLT2阻害薬により痛風のリスクが低下する可能性が、トロント大学(カナダ)のMichael Fralick氏らが実施した新たな研究から示された。詳細は「Annals of Internal Medicine114日オンライン版に発表された。

 SGLT2阻害薬を使用している人では、他の血糖降下薬(GLP-1受容体作動薬)を使用している人と比べて、痛風を発症するリスクが36%低かった。Fralick氏は「SGLT2阻害薬は2型糖尿病患者にとって最も効果的な薬剤の1つであり、痛風のリスク低減につながる可能性もある」と述べている。

 SGLT2阻害薬は、成人2型糖尿病患者に使用される血糖降下薬としては比較的新しいクラスの薬剤である。この薬は腎臓に作用し、体内の糖を尿とともに体外へ排出する。薬剤の名称(一般名)としては、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジンなどが該当する。

 2型糖尿病の人は血中の尿酸値が高いことが多い。その状態が長引き、尿酸の結晶が関節に蓄積すると痛風を引き起こす。痛風の症状はまず足の親指に現れることが多く、激しい関節痛や腫れを生じる。米国では数百万人が痛風に罹患しているとされる。

 今回の研究は、SGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬を新たに処方された約30万人の2型糖尿病患者(平均年齢54歳)を対象に実施された。その結果、SGLT2阻害薬を処方された約152,000人のうち636人が痛風を発症した。一方、GLP-1受容体作動薬が処方された約144,000人のうち、痛風を発症したのは836人だった。1,000人年当たりの罹患率は、SGLT2阻害薬4.9GLP-1受容体作動薬7.8であり、SGLT2阻害薬がハザード比0.64で有意に低かった。

 このように血糖降下以外の作用が見られたSGLT2阻害薬だが、リスクが全くないわけではない。米食品医薬品局(FDA)は同薬に、骨密度の低下や骨折リスクの増加に関する警告表示を義務付けている。また重篤な感染症や下肢切断のリスクが増加するとの報告があることも明らかにしている。

 米ニューヨーク州に拠点を置くノースウェル・ヘルスの家庭医療部門副責任者であるBarbara Keber氏は今回の研究について、解釈上の制限はあるものの大規模で比較的質の高い研究だと評価している。その一方、「痛風リスクのある患者に対し、そのリスクの低減を目的として日常診療でSGLT2阻害薬を使用するには、さらなる研究が必要である」と指摘している。

 前出のFralick氏はこの研究を実施した当時、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院の薬剤経済学部門に所属していた。同氏は、「自分が診察している2型糖尿病患者の一人一人について、常にリスクとメリット、薬剤コストを比較検討している。SGLT2阻害薬は非常に高額ではあるが、低血糖や体重増加を来すことがない。かつ今回の研究データから、痛風患者や痛風リスクの高い人では、SGLT2阻害薬によってそのリスクが低下する可能性が示された」と述べている。

[2020113/HealthDayNews]

「平熱37度」はもはや常識ではない?

欧米では長らく、平熱の目安は摂氏37度と考えられてきた。しかし、米スタンフォード大学医学部教授のJulie Parsonnet氏らの研究で、米国成人の体温は19世紀から下がり続けていることが明らかになった。同氏は「子どもの頃に教わった“平熱37度”は、もはや常識ではない」と述べている。研究の詳細は「eLife17日オンライン版に掲載された。

 平熱の目安は、1851年にドイツの医師が37度とすることを提唱して以来、それが一般的とされてきた。しかし、近年では、その基準は高すぎるとする研究報告が相次いでいる。例えば、約35,000人の英国成人を対象とした最近の研究では、平均体温は約36.6度であると報告されている。

 今回の研究は、南北戦争の退役軍人の兵役記録や医療記録から収集した18621930年のデータと、19711975年に実施された米国国民健康栄養調査(NHANES)データ、米スタンフォード大学病院の患者データベースから収集した20072017年のデータを用いたもの。1862年から2017年の間に測定された計677,423件の体温データを分析した。

 その結果、2000年代に生まれた男性の平均体温は、1800年代初期に生まれた男性よりも0.59度低かった。一方、2000年代に生まれた女性の平均体温は、1890年代に生まれた女性よりも0.32度低いことが分かった。全体として、米国人の体温は10年ごとに0.03度低下していることが明らかになったという。

 Parsonnet氏らは、米国人の平均体温が下がった理由の一つとして、代謝を上げる炎症が減ったことを挙げている。「感染症などで炎症が起こると、代謝を上げて体温を上昇させるタンパク質やサイトカインが産生される」と同氏は説明する。しかし、過去200年の間に、医療の進歩や衛生状態の改善、食生活や生活水準の向上により、公衆衛生面が劇的に改善したことで、こうした炎症を起こすことが減ったと考えられるとしている。

 また、住環境が快適になったことも、体温が低下した一因である可能性がある。19世紀とは違い、現代の住居では、セントラルヒーティングやエアコンがあたりまえのものとして設置されており、快適な暮らしが送れるようになった。そのような環境では、体温を維持するために、より多くのエネルギーを消費する必要もなくなったことは大きいという。

 Parsonnet氏は「200年前と比べ、室温や微生物との接触、入手できる食品などを含めた生活環境は大きく変化した。われわれ人間は、生理学的な変化を遂げていると言える」と話している。

[202018/HealthDayNews]



慢性膵炎の疼痛緩和、早期外科治療vs.内視鏡

 本研究は、オランダの30施設が参加した無作為化優越性試験であり、20114月~20169月の期間に患者登録が行われた(オランダ保健研究開発機構などの助成による)。

 対象は、膵管拡張を伴う閉塞性慢性膵炎による重度の疼痛がみられ、非オピオイド鎮痛薬では疼痛の進行を抑制できないため、オピオイド鎮痛薬の使用(強オピオイド≦2ヵ月、弱オピオイド≦6ヵ月)を開始した成人患者であった。

 被験者は、無作為割り付けから6週間以内に外科的ドレナージ術を行う早期外科治療群、または至適な薬物療法が無効または許容できない有害事象が発現したため、内視鏡による初期治療を行う群(必要に応じて、体外衝撃波結石破砕術や外科治療を併用)に割り付けられた。

 主要アウトカムは、18ヵ月間の追跡期間におけるIzbicki疼痛スコア(0100点、点数が高いほど疼痛の重症度が高い)とした。副次アウトカムは、追跡期間終了時の疼痛消失、介入・合併症・入院の回数、膵機能、QOL36-Item Short Form Health SurveySF-36])、死亡であった。

18ヵ月間の平均Izbicki疼痛スコア:37vs.49

 88例(平均年齢52歳、女性21例[24%]、早期外科治療群44例、内視鏡治療群44例)が登録され、85例(97%)が試験を完遂した。ベースラインの平均年齢は早期外科治療群が7歳若かった(49歳、56歳)。全体の膵管径中央値は8mmIQR610)であり、16%で膵石と膵管狭窄が、74%で膵石のみ、10%で膵管狭窄のみが認められた。

 早期外科治療群の44例中41例が手術を受けた(割り付けから手術までの期間中央値40日[IQR3265])。一方、内視鏡治療群の44例中2例で薬物療法が成功し、42例は成功しなかった。このうち39例(89%)が内視鏡治療を受け(施行回数中央値3回[14])、24例(62%)は不成功であった。22例で体外衝撃波結石破砕術が行われ、13例(30%)が外科治療を受けた。

 18ヵ月の追跡期間中の平均Izbicki疼痛スコアは、早期外科治療群が37点と、内視鏡治療群の49点に比べ有意に低かった(群間差:-12点、95%信頼区間[CI]:-22~-2p0.02)。

 追跡期間終了時に、疼痛の完全消失(Izbicki疼痛スコア≦10点)または部分消失(同>10点、かつベースラインに比べ50%以上の低下)は、早期外科治療群が40例中23例(58%)、内視鏡治療群は41例中16例(39%)で達成され、両群間に有意な差はなかった(群間差:19%、95CI:-441p0.10)。

 介入の回数は早期外科治療群で少なかった(群間差:-2回、95CI:-3~-1p0.001)。一方、死亡(0%、00)、入院回数(0、-10p0.15)、膵外分泌機能不全(3、-1015p0.99)、膵内分泌機能不全(-16、-364p0.12)、QOL(身体機能:3、-28p0.21、心の健康:3、-28p0.21)には、両群間に有意な差はみられなかった。

 有害事象は、早期外科治療群で12例(27%)、内視鏡治療群では11例(25%)に認められた。早期外科治療群の有害事象はすべて術後の合併症であり、内視鏡治療群は7例(16%)が内視鏡治療後の合併症で、5例(38%)は外科治療後の合併症だった。

 著者は、「この差の長期の持続性を評価し、これらの知見の再現性を確認するために、さらなる検討を行う必要がある」としている。

性行為の頻度が低い女性は閉経が早い?

性生活が充実していない女性は、閉経を迎えるのが早い可能性があることが、約3,000人の米国人女性の性生活と閉経の時期を10年間にわたって追跡調査した結果、明らかになった。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のMegan Arnot氏らによるこの研究は「Royal Society Open Science115日オンライン版に掲載された。

 この研究は、閉経にともなう生物学的・心理学的変化に関するデータの収集を目的とした米国の研究「Study of Women’s Health Across the NationSWAN)」に19961997年に参加した女性のデータから抽出した2,936人を対象にしたもの。研究開始時の女性の平均年齢は45.88歳で、既に閉経していた女性はいなかったが、46%に月経周期の変化やホットフラッシュといった閉経周辺期の症状が現れ始めていた。約10年間の追跡期間中に自然閉経に至った女性の割合は45%(1,324人)で、平均閉経年齢は52歳だった。

 解析の結果、因果関係が証明されたわけではないが、追跡期間中に閉経を迎えた女性の割合は、性行為の頻度が「月に1回未満」と回答した女性と比べて「週に1回以上」と回答した女性で28%少なく、「月に1回以上」と回答した女性で19%少ないことが示された。また、女性がパートナーと住んでいるかどうかは、結果に影響を与えていなかった。

 この結果についてArnot氏は、「性行為の機会がなく妊娠する可能性がない女性では、体が排卵にエネルギーを注ぐ必要はないと判断していることを示唆するものだ。排卵に使わなくなった分のエネルギーを、例えば孫の世話に必要なエネルギーにあてるといった具合に、生物学的なエネルギーのバランスがとられているのかもしれない」と説明している。

 米レノックス・ヒル病院産婦人科のJennifer Wu氏は、「性行為の機会を持ち続けることにさまざまな利点があるのは医師の間ではよく知られている。例えば、閉経が遅い女性では、骨の強度が高く脂質値も良好に保たれている可能性が高い」とし、良好なセクシュアルヘルスには閉経の遅延以外にもプラスの面があることを指摘している。

 Wu氏はさらに、Arnot氏らの研究では、閉経の遅延に関連する性行為としてオーラルセックスや愛撫、自慰行為も含まれていたことに言及し、「パートナーがいない女性でも、遅めの閉経による恩恵を受けることは可能だと考えられる」と話している。

 一方、米ノースウェル・ヘルス、ハンティントン病院産婦人科のMitchell Kramer氏は、既婚女性は独身女性よりも閉経を迎えるのが遅いことが過去の研究で示されていると指摘。その一因として、結婚している人の方が性行為の頻度が高いことが考えられると説明している。

 また、Kramer氏は「全ての女性がいつかは閉経を迎えるが、性行為の機会を多く持つことで何らかの機序により生殖システムに影響が及び、閉経が遅れる可能性はある」と考察。その一方で、「今回の研究結果は、科学的な観点では重大な意味を持つが、女性の健康にとってどの程度重要なのかは不明だ。一般女性がこの報告を深刻に受け取る必要はない」としている。

[2020115/HealthDayNews]



薬剤耐性菌問題は依然として脅威

米疾病対策センター(CDC)は1113日、「米国における薬剤耐性菌の脅威」を更新し、米国では薬剤耐性菌を原因とする死亡者数は幾分か減ったものの、これらの耐性菌の拡大に歯止めがかかる兆しは見えていないことを報告した。

 報告書によると、これまでに進められてきた対策によって、米国における薬剤耐性菌の感染による死亡者数は18%減少し、薬剤耐性菌の院内感染による死亡者数は約30%減少した。この結果について米国医療疫学学会(SHEA)会長のHilary Babcock氏は「われわれが耐性菌に対して無力ではないことを示す素晴らしいデータだ。医療疫学者や感染予防の専門家、研究者や薬剤師など、さまざまな人たちが重要な感染予防・抗菌薬管理プログラムを通じて人々の命や健康を守り、病院内の環境の安全性を高めてきた結果だ」と説明する。

 しかし、今回発表された報告書では、依然として米国内で薬剤耐性を示す細菌や真菌に感染する人は年間280万人を超え、これらの薬剤耐性菌の感染による死亡者数も年間35,000人に上ることが明らかにされている。これは、米国では11秒に1人のペースで薬剤耐性菌感染が生じ、15分に1人のペースで薬剤耐性菌感染による死亡者が出ていることに相当するという。

 さらに、薬剤耐性菌の脅威が当初の予測よりも深刻であることも報告されている。CDCが初めて薬剤耐性菌の報告書をまとめた2013年には、薬剤耐性菌による年間死亡者数は23,000人と試算されていたが、今回の報告書ではその約2倍にあたる44,000人が薬剤耐性菌感染によって死亡しているとの推計値が示されている。

 そのほか、CDCは薬剤耐性菌の脅威のレベルを「緊急」「深刻」「懸念」の3つのカテゴリーに分類しているが、今回、新たにカンジダ・アウリス(Candida auris)と呼ばれるカンジダ属の真菌とアシネトバクター(Acinetobacter)と呼ばれる細菌が「緊急」のカテゴリーに加えられた。これらの菌は、免疫力が低下した入院患者に重篤な侵襲性感染症をもたらす危険性があるが、最も強力で広く使用されている抗菌薬や抗真菌薬への耐性を獲得しつつある兆候が示されているという。

 「カンジダ・アウリスは5大陸で同時に出現した。このことは、われわれが直面している問題の大きさを物語っている」とCDC局長のRobert Redfield氏は説明。また、カンジダ・アウリスに感染した人は3人に1人が死亡することも指摘している。

 なお、今回カンジダ・アウリスとアシネトバクターが「緊急」のカテゴリーに加わったことで、同カテゴリーに分類される脅威はカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridioides difficile)の3つから5つに増えた。

 National Association of County and City Health OfficialsNACCHO)のAdriane Casalotti氏は、「薬剤耐性菌の問題がなくなることはない。特定の耐性菌の抑圧に成功しても別の耐性菌が新たな問題になる」と話す。一方、CDCの薬剤耐性調整・戦略部門のMichael Craig氏は「耐性菌感染による死亡者数が減少しているということは、今用いている戦略が間違っていないということだ。医療機関に導入されている院内感染対策や、抗菌薬使用の適正化、適切な食品の取り扱いや安全な性行為、ワクチン接種や手指衛生は全て有効な対策だ」としている。

[20191113/HealthDayNews]

PPIで認知症リスクが1.3倍~メタ解析

プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用と認知症リスクについて、中国・Anhui Medical UniversityYun Zhang氏らが、調査を行った。European Journal of Clinical Pharmacology誌オンライン版20191121日号の報告。

 英語と中国語のデータベースより、201812月までの文献を包括的に検索した。プールされたハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は、変量効果モデルを用いて算出した。サブグループ解析と感度分析も実施した。不均一性の評価には、Cochran’s Q検定およびI2検定を用いた。出版バイアス評価には、Begg検定およびEgger検定を用いた。

 主な結果は以下のとおり。

6研究、166,146例が抽出された。
・全体的な結果では、PPI使用による認知症リスクの有意な増加が認められた(HR1.2995CI1.121.49)。
・サブグループ解析では、PPI使用と認知症リスクとの有意な関連が、欧州の患者(HR1.4695CI1.231.73)および65歳以上(HR1.3995CI1.171.65)で認められた。
・フォローアップ期間5年以上では、プールされたHRは、1.2895CI1.121.46)であり、PPI使用患者の認知症リスクが1.28倍に増加していることが示唆された。
・地域的な影響については、欧州の患者の全体的なプールHR推定値は、1.4695CI1.231.73)であった。
・出版バイアスは認められなかった。

 著者らは「本結果では、PPI使用が認知症リスクを上昇させることが認められた。これらの調査結果を確認するためにも、高品質なコホート研究が求められる」としている。

黄砂が飛来すると胎盤の早期剥離が増える

東アジア内陸部の砂漠から飛来する黄砂が、アレルギー症状や呼吸器疾患、循環器疾患の発症・増悪に関係していることは多くの報告で示されている。今回は産科の救急疾患である常位早期胎盤剥離(以下、早期剥離)との関係が新たに報告された。黄砂が飛来した12日後は早期剥離の発生が1.41.6倍に増えるという。東邦大学医学部社会医学講座衛生学分野の道川武紘氏らの研究によるもので、詳細は「BJOGAn International Journal of Obstetrics and Gynaecology1026日オンライン版に掲載された。

 早期剥離は全妊婦の約1%に発生するとされ、本来は出産後に子宮壁から剥がれる胎盤が、胎児が母親の胎内にいる時期に剥がれてしまうこと。これが起きると妊婦には大量出血、胎児には酸素や栄養供給が絶たれるというリスクが生じ、母児双方の命にかかわる。今のところ発生原因はよくわかっていない。

 この早期剥離の原因について、東邦大学と九州大学および国立環境研究所の疫学研究グループは、環境という外的因子も関与しているのではないかと仮説を立てて研究を続けてきた。その一環としてさまざまな健康被害をもたらす黄砂に着目。日本産科婦人科学会が実施している周産期登録事業の登録データと、ライダーと呼ばれる黄砂観測装置のデータを利用した検討を行った。

 研究の対象は、ライダーが設置されている9都府県(北は宮城、南は長崎で東京や大阪も含まれる)にある113病院で20092014年に出産した妊婦3,014人。多胎児出産(双子や三つ子など)は除外した。早期剥離のリスク因子と考えられている年齢、喫煙、血圧、および日によって変動する気温や湿度、気圧といった気象要因の影響を調整した上で、黄砂と早期剥離の関連性を分析した。

 研究期間中の黄砂飛来日数は、15日(新潟県)~71日(長崎県)。早期剥離が発生した日付そのものは基礎データからはわからないため、先行研究を参考に早期剥離の発生から出産までの期間を1日以内と仮定し、出産日を起点に16日前の黄砂飛来状況を調査した。

 その結果、出産の12日前に黄砂が飛来していた場合、黄砂のない日に比べて早期剥離が1.4倍に増加していたことがわかった。黄砂飛来時には大気汚染物質(二酸化窒素や二酸化硫黄、光化学オキシダント)の濃度が高くなる傾向があるため、統計的にそれらを調整してもなお黄砂と早期剥離の関連性が認められた。さらに、妊娠35週以降の緊急分娩に絞った分析では黄砂飛来との関連性がより強くなり、黄砂がない日の1.6倍に早期剥離が増加していた。

 この研究は、黄砂が早期剥離を引き起こす機序にまで踏み込んだものではないが、道川氏らは黄砂に含まれている微生物や大気汚染物質の関与に触れている。例えば、黄砂とともに飛来する微生物の中にはグラム陰性桿菌も存在すると考えられ、そのグラム陰性桿菌の細胞壁を構成するリポ多糖は妊婦に炎症を引き起こし、早産の原因となることが知られているという。また、黄砂とともに飛来した大気汚染物質による炎症が早期剥離を増加させた可能性や、喘息をもつ妊婦の喘息症状が黄砂によって悪化し早期剥離につながった可能性も考えられるとしている。

[20191125/HealthDayNews]

心疾患患者の3人に1人はインフルエンザワクチンを接種せず

インフルエンザはときに命に関わる危険な病気であり、毎年のワクチン接種が重要になる。特に、心疾患患者は、インフルエンザワクチンを接種すると心筋梗塞などの発症や死亡を予防できることが明らかになっている。しかし、米メッドスター・ヘルスの内科レジデントであるGowtham Grandhi氏らの調査で、米国の心疾患患者の約3人に1人はインフルエンザワクチンを接種していないことが分かった。研究結果は、米国心臓協会の年次集会(AHA 2019111618日、米フィラデルフィア)で発表された。

 この研究は、20082015年の医療費パネル調査(MEPS)データを用いたもの。心筋梗塞や脳卒中などの既往がある40歳以上の男女15,000人以上を対象に、インフルエンザワクチンの接種率について調べた。

 その結果、過去1年間に、患者の約3人に1人はワクチンを接種していないことが分かった。ワクチンの未接種率は、医療保険に加入し、定期的に医療サービスを受けている患者では約30%だったのに対し、保険未加入の低所得層者では65%に上っていた。

 Grandhi氏は「心疾患患者は、インフルエンザに罹ると合併症や死亡リスクが高まる。インフルエンザワクチン接種の有益性について、心疾患患者への教育を徹底する必要がある」と述べている。

 一方、責任研究者である米ヒューストン・メソジスト病院、ドベイキー心臓血管センターのKhurram Nasir氏は「この研究結果は、インフルエンザワクチン接種率の格差に光を当てたものだ」と説明。「今後は、このような格差の原因となっている患者側と医療制度上の要因を明らかにし、これらの課題を克服するための介入法に重点を置いて研究を進めていくべきだ」と述べている。

 さらに、Grandhi氏は「心臓専門医とプライマリケア医、その他の臨床医は、インフルエンザの流行が始まる前に、患者とワクチン接種について話し合い、定期受診の中でワクチン接種を受けるように促していく必要がある」と述べ、「可能であれば、予約がなくても患者にワクチン接種を提供すべきだ」と付け加えている。

 なお、学会発表された研究結果は通常、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。

[20191113/HealthDayNews]



電子処方ツール導入によるベンゾジアゼピン処方への影響

電子処方ツール(e処方)は、処方プロセスの妥当性および医療の質に関して、いくつかのベネフィットが認められている。しかし、デジタル化の好ましくない影響である、対面式の直接的な会話を省く簡便かつ迅速な処方プロセスにより、ベンゾジアゼピン(BZD)などの乱用リスクが高い薬剤の処方を促進してしまう可能性がある。スイス・Regional Hospital of Bellinzona and ValliRosaria Del Giorno氏らは、5つの指導病院ネットワークにおいて、入院患者に対する新規BZD処方に対するe処方の影響を調査するため、パネルデータ調査を行った。Diagnostics20191115日号の報告。

 20147月~20194月までの観察期間中に、入院患者43,320例の分析を行った。新規BZD処方に対するe処方の影響を推定するため、固定効果モデルを用いた。

 主な結果は以下のとおり。

e処方の導入により、新規BZD処方の有意な増加が認められた(絶対値:1.5%増、相対値:43%増[p0.001])。
・この関連性は、男性(絶対値:2.3%増、相対値:65%増[p0.001])、女性(絶対値:1.8%増、相対値:58%増[p0.01])、70歳以上(絶対値:1.6%増、相対値:59%増[p0.001])でも同様であった。
・時間依存独立変数で調整後も、e処方の導入により、同様に有意な影響が認められた。

 著者らは「e処方導入は、院内での新規BZD処方の有意な増加と関連が認められた。過剰処方や乱用リスクがある薬剤は、リスクを最小限にするためにも、e処方を慎重に使用する必要がある。これらの相互作用を分析し、質の高いケアを推進していくためには、ほかの環境や国でのさらなる研究が求められる」としている。