魚油サプリは心臓に良い――摂取量が多いほどリスクが低下

魚油に多く含まれているオメガ3脂肪酸の摂取により心血管疾患(CVD)リスクが低下することが示唆されているが、否定的な報告もある。その一方、米国では数百万人が魚油サプリメントを摂取しているとされる。今回、その行動が間違っていない可能性を示す研究結果が報告された。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のJoAnn Manson氏らによるこの報告は、「Journal of the American Heart Association930日オンライン版に掲載された。

 Manson氏らの研究は、オメガ3脂肪酸とCVDの関連を検討した13件の報告をメタ解析したもの。同様の研究は過去にも行われているが、今回は解析対象者数が計127,477人に及び、これまでに報告されている最大規模の研究より64%多い。解析対象者は、男性が59.7%で平均年齢64.3歳、BMI28.0、糖尿病患者39.4%、脂質低下薬使用患者72.6%。オメガ3脂肪酸の摂取量は研究により3764,000mg/日の幅があったが、多くの研究は約840mg/日だった。

 平均5.0年の介入期間中に3,838件の心筋梗塞、3,008件の冠動脈性心疾患による死亡が発生した。オメガ3脂肪酸を摂取していた人は摂取していない人に比べて、心筋梗塞が12%、冠動脈性心疾患による死亡が8%少なく、有意なリスク低下が認められた。なお、過去の多くの研究と同様に、オメガ3脂肪酸摂取による脳卒中のリスク低下は観察されなかった。

 今回の研究では、オメガ3脂肪酸の摂取量が多いほどCVDリスクが低下するという用量反応関係も確認された。具体的には、オメガ3脂肪酸摂取量が1,000mg/日増えるごとに、心筋梗塞のリスクが9%、冠動脈性心疾患のイベントリスクが7%低下していた。オメガ3脂肪酸摂取量がひときわ多かった(4,000mg/日)1件の研究を除いて解析しても、用量反応関係は有意だった。

 ただし今回の研究は、魚油が心臓に良いことを直接証明するものではなく、サプリメントを摂取している人が、普段から健康的な生活を心掛けていることを表している可能性も否定はできない。しかし研究者らは、今回の研究で用量反応関係が認められた点に注目している。

 米レノックス・ヒル病院のKatrina Hartog氏は、「サプリメントはリスクを軽減するだけであり、心疾患の主要なリスク因子の改善に取り組むことこそが最大のベネフィットを生む」と治療の基本を述べつつも、「今回の知見は、魚油が良いものであると再認識させる」としている。

 米ノースウェル・ヘルス・サンドラ・アトラス・バス心臓病院のGuy Mintz氏は、「この研究にはいぶかしい(fishyな)点が何もない」と述べている。また魚油が効果を発揮する理由を「機序は不明だが、抗炎症作用や抗不整脈作用によるのかもしれない」と解説。同氏は心疾患リスクが高い患者で特にサプリメントの効果が最も高いと推測しており、今回の研究結果に基づき「糖尿病、心疾患の既往、ステント留置、冠動脈バイパスの手術歴があるなど、CVDリスクが高い場合、オメガ3脂肪酸補充療法の追加について、医師は患者と話し合うべきだ」と述べている。

 この研究は、米国立衛生研究所(NIH)の資金援助で実施された。

[2019930/HealthDayNews]



スタチン使用と認知症リスク~900万人超のメタ解析

認知症リスク低下に対するスタチンの影響については、これまで10年間にわたり議論の対象となってきたが、決定的なエビデンスは存在しない。台湾・台北医科大学のTahmina Nasrin Poly氏らは、スタチン療法と認知症リスクとの関連性を定量化するため、これに関連する観察研究のメタ解析を実施した。Neuroepidemiology誌オンライン版2019101日号の報告。

 20001月~20183月までに公表された関連研究を、EMBASEGoogleGoogle ScholarPubMedScopusWeb of Scienceよりシステマティックに検索した。2人の研究者により、研究の選択、データの抽出化、バイアスリスクの評価が行われた。次に、選択した研究からデータを抽出し、変量効果モデルを用いて観察研究のメタ解析を行った。サブグループ解析および感度分析も併せて実施した。

 主な結果は以下のとおり。

9162,509例(認知症患者:84,101例)を含む30件の観察研究が適格基準を満たした。
・スタチン使用患者は、スタチン未使用患者と比較し、すべての原因による認知症リスクが低かった(リスク比[RR]0.8395CI0.790.87I257.73%)。
・スタチン使用患者における全体的にプールされたRRは、アルツハイマー病で0.6995CI0.600.80p0.0001)、血管性認知症で0.9395CI0.741.16p0.54)であった。

 著者らは「スタチン使用は、認知症リスクの有意な低下と関連していることが示唆された。このような結果を検証する今後の研究は、患者、臨床医、政策立案者にとって有用な情報となるであろう。さらなるエビデンスが確立するまでは、スタチンは心血管疾患の治療で承認されている薬剤であることを、臨床医は意識しておく必要がある」としている。

ありふれた降圧薬で自殺リスクが高まる?

ありふれた降圧薬の使用で自殺リスクが高まる可能性があることが、セント・マイケルズ病院(カナダ)のMuhammad Mamdani氏らの研究で明らかになった。アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を使用している患者は、ACE阻害薬を使用している患者と比べて、自殺により死亡するリスクが有意に高いことが分かった。ただし、今回の研究では因果関係は明らかになっておらず、同氏らは結果の慎重な解釈を求めている。結果の詳細は「JAMA Network Open1016日オンライン版に掲載された。

 ARBACE阻害薬はいずれも、血管を収縮させる「アンジオテンシンII」と呼ばれるホルモンの働きを阻害することで降圧効果を発揮する。例えば、ARBは、アンジオテンシンIIが受容体と結合するのを阻害するのに対し、ACE阻害薬は体内のホルモン産生量を減らすように作用する。これらの降圧薬は、高血圧や慢性腎臓病(CKD)、心不全、糖尿病の治療に世界中で汎用されている。

 Mamdani氏らのチームは今回、ARB使用と自殺リスクとの関連を示唆した過去の研究に着目。19952015年のカナダの診療報酬請求データベースを用いて、66歳以上の患者を対象とした症例対照研究を行った。

 ARBまたはACE阻害薬を処方されてから100日以内に自殺により死亡した964人を症例群とし、年齢や性などをマッチさせた、いずれかの降圧薬を処方された3,856人を対照群として比較した。両群の年齢中央値は76歳で、約80%は男性だった。その結果、ARB使用群では、ACE阻害薬使用群と比べて自殺による死亡リスクが統計学的に有意に高いことが分かった(調整オッズ比1.6395%信頼区間1.332.00)。

 Mamdani氏によると、特に気分障害になりやすい患者では、自殺リスクはさらに高まる可能性があるという。同氏は「ARBは脳内のアンジオテンシンII濃度を上昇させる可能性がある。このことが気分障害に関連している可能性があり、自殺企図の引き金となることが考えられる」と説明している。

 今回の研究は因果関係を証明するものではなく、今後さらに研究を重ねる必要があるという。Mamdani氏は「今すぐARBの処方を見直す必要はない」としているが、「もし自分が患者として選ぶなら、ARBよりもACE阻害薬を選ぶだろう」と付け加えている。

 一方、今回の研究には関与していない米バージニア大学医学部名誉教授のRobert Carey氏は「現時点でアンジオテンシンIIが気分障害や自殺企図と関連するという科学的根拠はない」と主張する。同氏は、自殺リスクには他にもさまざまな要因が関与している可能性があるとし、「例えば、一部の患者が使用していた抗うつ薬やベンゾジアゼピン系薬が自殺率に影響した可能性がある」との見方を示している。

 同じく専門家の一人で、米マウント・サイナイ病院の心臓病専門医であるSuzanne Steinbaum氏は、この研究では物質乱用や精神病による入院歴、救急科の受診歴などが評価されていない点を指摘。「今回の研究結果がARBからACE阻害薬に切り替えるべき根拠になるとは考えていない。背景にあるメカニズムは不明で、もっと基礎的な研究が必要だ」と同氏は述べている。

[20191017/HealthDayNews]



インスリンなどの注射薬を経口薬に置きかえる新技術

糖尿病患者の多くが11回以上のインスリン自己注射を行っているが、カプセル型の経口薬が注射薬に取ってかわる日が来るかもしれない。米マサチューセッツ工科大学(MIT)機械工学部の教員で消化管医のGiovanni Traverso氏らが薬剤のカプセル化に関する新技術を開発し、その詳細が「Nature Medicine107日オンライン版に掲載された。

 タンパク質で作られている薬は経口投与すると消化管で分解されてしまい効果を得られない。その一例が糖尿病治療薬のインスリン。インスリンが必要な患者は毎日頻繁に自己注射をしなければならない。この現状に対して新たに開発されたカプセル製剤は、インスリンなどのタンパク質でできた薬剤を小腸まで送り届け、体内に吸収させることができる。Traverso氏によると、小腸の表面積は250m2とテニスコートほどもあり、多くの経口薬が小腸から吸収される。また小腸には痛みの受容体がないことから、小腸をターゲットとすることで痛みを伴わずに針を用いた薬剤投与が可能になるという。

 このカプセル製剤は長さ30mmほど。胃の強い酸性環境(pH1.53.5)に耐えられるようにポリマーでコーティングされている。胃を通過し小腸に達して周囲のpHが約6に上昇すると、カプセルが壊れて中に折りたたまれていた3本のアームが開く。アームにはインスリンを注入する長さ1mmの微細な針が付いていて、小腸の内側の壁に付着する。続いて針の溶解が始まり、それとともにインスリンが注入される。インスリンの注入が終わるとアームはバラバラになって排泄される。

 このカプセル製剤を実際にブタに用いた実験では、注射剤と同じスピードでインスリンを血液中に供給することができ、即座に血糖値が低下することが確認された。この新技術についてTraverso氏は、「患者も医療者も、薬剤を投与する経路として注射より経口を望んでいることが、開発の大きな動機となっている」と述べている。なお、懸念される小腸の穿孔や閉塞については、動物やヒトの組織を用いた多数の安全性試験を行い、有害事象を起こさずに薬物を伝達可能であり、分解後のアームも排泄されることを確認済という。

 今回の実験では、この新技術の実証にインスリンが用いられたが、研究グループによると、ホルモン製剤や酵素薬、抗体医薬、核酸医薬、ワクチンなど、他の薬剤にも応用できる可能性があるとしている。Traverso氏は、「さらに大きな影響を及ぼし得る活用法を見いだすべく、共同研究者らと緊密な連携を取り合っているところだ」と、現状と展望を語っている。

[2019108/HealthDayNews]C



血糖管理を緩和すべき糖尿病患者への行き過ぎた治療の実態

高齢や複数の併存疾患がある場合など、ガイドラインでは血糖管理目標の緩和を考慮すべきとされる糖尿病患者に対して、インスリンによる厳格な血糖管理が行われ、患者もそれを望みがちであるという実態を報告した2本の論文が「JAMA Internal Medicine916日および923日オンライン版に掲載された。

 1つ目の報告は米国の医療保険団体の1つであるカイザーパーマネンテのRichard Grant氏らが、75歳の高齢2型糖尿病患者21,531人(女性48.3%、インスリン療法18.9%)の医療記録を最大4年間追跡したもの。

 対象者を健康状態で、良好(併存疾患が2つ未満、または2つで身体活動性が保たれている)、中等度(併存疾患が2つを上回る、または2つで定期的な運動の実践を報告していない)、不良(末期の心肺疾患、末期腎不全、認知症、転移性がんを有する)の3群に分類。健康状態「良好」の群を基準にインスリンが用いられている割合を比較すると、健康状態「不良」の調整リスク比2.03、「中等度」1.85で、ともにインスリンが使われやすい状況にあった(P0.01)。

 また、インスリン療法患者の32.7%は追跡開始から4年以内または死亡の6カ月前にインスリンの使用が中止されていたが、健康状態「良好」の群に比し「不良」や「中等度」ではインスリンの使用が継続される割合が有意に高かった(調整リスク比はそれぞれ1.471.16P0.01)。

 Grant氏は、「インスリン療法は生涯のほとんどの期間、そのベネフィットがリスクを上回る。しかし、余命が短くなるにつれ、強力な血糖管理はリスクに比べてベネフィットが少なくなる」と述べている。同氏によると、管理目標の緩和を医師から提案されると患者は心配することが多いという。しかし「血糖管理の緩和は治療の放棄ではなく、治療のリスクを軽減するためのもの」と同氏は説明している。

 もう1つの報告は、米ジョンズ・ホプキンス大学のNancy Schoenborn氏らの研究。65歳以上の2型糖尿病患者818人(平均年齢74.0±6.8歳、男性53.7%)を対象に行った横断調査の結果、対象の60%がガイドラインの推奨と相反して血糖管理強化療法が必要と考えており、罹病期間が長い患者ほどその傾向が強いことが明らかになった。

 この結果についてSchoenborn氏は、「医師がなぜ血糖管理の緩和を推奨するのかについて、患者はもっと情報を得る必要があることが示唆される」とし、「血糖管理緩和は副作用のリスクを低下させ、生活の質(QOL)を向上する」と述べている。

 血糖管理の強化に伴う最も重大な副作用は低血糖で、その症状は、震え、冷や汗、興奮、意識の混乱、めまいなどだが、米国糖尿病学会(ADA)によると、不整脈や失神を起こすこともあり、稀ではあるが最悪の場合、死に至ることもあるという。そのためADAや米国退役軍人省、米国老年医学会は、健康状態が不良で余命が短い患者に関しては血糖管理の緩和を提案している。

 米モンテフィオーレ医療センター臨床糖尿病センター長のJoel Zonszein氏は、「低血糖の予防は高齢者においてより重要であり、低血糖リスクが少ない新しいタイプのインスリンや他の薬剤もある」と解説。患者に対しては、「医師とのコミュニケーションを保つことが大切だ。健康状態はいつでも変わり得るので、現在の治療のリスクとベネフィットを医師と話し合うように」とアドバイスしている。

[2019925/HealthDayNews]



長引く痛みによる抑うつ状態に、過剰なCRFが関与

痛みが長引く「慢性痛」では、しばしば気分が落ち込む「抑うつ状態」になることはよく知られている。あたかも当然と思われがちな両者の関係は、実はこれまで詳細なメカニズムが不明だったが、脳内で分泌されるCRF(コルチコトロピン放出因子)という物質が脳内報酬系を抑制するために引き起こされることが新たな研究でわかった。北海道大学薬学研究院薬理学研究室の南雅文氏らの研究グループが明らかにしたもので、詳細は「The Journal of Neuroscience826日オンライン版に掲載された。

 CRFは、さまざまなストレスを受けた時に脳内で分泌されるペプチドで、ストレスホルモンの遊離を促し、全身性のストレス反応を引き起こすことが知られている。また扁桃体などで分泌されるCRFは、不安や恐怖などのネガティブな情動の発生にも関与している。

 研究グループはまず、慢性痛のモデルラットを作製。それを用いた検討から、慢性痛によって脳内の分界条床核という部分の神経情報伝達に乱れが生じることを見いだした。そしてこのモデルラットでは、分界条床核、および分界条床核と機能的に関連している扁桃体中心核という領域で、CRFの遺伝子発現が増えていることを確認した。

 続いてラットの分界条床核にCRF受容体拮抗薬を投与し、CRFの働きを抑制する実験を行った。すると、CRFを抑制すると慢性痛により生じていた神経情報伝達の変化が回復することがわかった。このことから、慢性痛によって生じる分界条床核内の過剰なCRFが神経情報伝達の乱れの原因であることが示唆された。

 次に、分界条床核内のCRFによって乱れた神経情報伝達を遮断し、脳内報酬系への影響を検討した。脳内報酬系は、ヒトや動物が報酬を与えられた時などに活性化する神経系で、その活性化にはドパミン神経が重要な役割を果たしている。今回の検討の結果、乱れた神経情報伝達の遮断によって、ドパミン神経の活動が上昇することが明らかになった。

 ドパミン神経の活動低下はうつ病と関連すると考えられている。また、慢性痛によってドパミン神経活動が低下することが報告されている。研究グループでは、これらの知見と今回の検討結果をあわせて考察し、慢性痛時に分界条床核内でCRFが引き起こす神経情報伝達の乱れが、脳内報酬系で中心的な役割を担っているドパミン神経を持続的に抑制し、抑うつ状態が引き起こされると考えられるとまとめている。

 脳内報酬系は「快情動」や「やる気」を司っており、うつ病では脳内報酬系の機能が低下するために、楽しいはずのことが楽しくなくなる(快情動の喪失)、やる気がなくなるといった状態が引き起こされると考えられている。CRFをターゲットとした今後の研究により、慢性痛による抑うつ状態だけでなく、うつ病の新規治療薬の創薬も期待される。

[2019107/HealthDayNews]



β遮断薬によるCOPD増悪抑制、初の無作為化試験/NEJM

 中等度~重度の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、β遮断薬メトプロロールの増悪予防効果は、プラセボと同等であることが判明した。米国・アラバマ大学バーミングハム校のMark T. Dransfield氏らが、532例の患者を対象に行った前向きプラセボ対照無作為化試験の結果で、増悪による入院の頻度がメトプロロール群のほうが高かったことも示されたという。これまで観察試験では、β遮断薬が中等度~重度COPD患者の増悪および死亡リスクを低減することが示されていたが、無作為化試験では検証されていなかった。NEJM誌オンライン版20191020日号掲載の報告。

初回COPD増悪までの日数をプラセボと比較

 研究グループは、米国26ヵ所の医療機関を通じて、4085歳のCOPD患者を対象に試験を行った。被験者は、中等度気流制限があり増悪リスクが高い(前年に増悪歴または酸素補給処方歴があることを根拠として判定)患者で、β遮断薬の服用歴がある患者、あるいは使用の適応がある患者は除外した。

 被験者は無作為に2群に分けられ、一方にはメトプロロール徐放錠を、もう一方にはプラセボをそれぞれ投与した。投与量は最終的に125mg50mgまたは100mgに調整された。

 主要エンドポイントは、治療期間中の初回COPD増悪までの日数だった。治療期間は最終投与量により異なり、25mgの患者は336日間、50mg100mgだった患者は350日間だった。

メトプロロール群202日、プラセボ群222日で有意差なし

 計532例の患者が無作為化を受けた。平均年齢65.0±7.8歳、平均FEV1値は41.1±16.3%だった。

 本試験は、主要エンドポイントに対する無益性と安全性の観点から、予定より早期に中止となった。

 初回増悪までの日数中央値は、メトプロロール群202日に対しプラセボ群222日と、両群で有意差はなかった(ハザード比[HR]1.0595%信頼区間[CI]0.841.32p0.66)。入院を要する増悪リスクは、メトプロロール群がプラセボ群よりも高いことが認められた(HR1.9195CI1.292.83)。

 メトプロロールに関連していると思われる副作用の発現頻度、および全非呼吸器系の重篤有害イベントの発生率は両群間で差はなかった。治療期間中の死亡は、メトプロロール群11例、プラセボ群5例が報告された。

スボレキサントの睡眠改善効果と聴覚刺激による目覚め効果

不眠症患者の夜間の反応性に対するデュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)スボレキサントの安全性プロファイルについて、米国・Thomas Roth Sleep Disorders and Research CenterChristopher L. Drake氏らが、二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験により検討を行った。Journal of Clinical Sleep Medicine2019915日号の報告。

 不眠症患者(DSM-5診断)12例を対象に、スボレキサント10mg群、スボレキサント20mg群、プラセボ群にランダムに割り付けた。薬物最大血中濃度に達した時点で、安定期N2睡眠中に聴覚刺激音を再生し、目覚めるまで5デシベル(db)ずつ増加した。覚醒時のdbを聴覚刺激覚醒閾値(AAT)とし、群間比較を行った。また、85db超の割合についても比較を行った。最終的に、閾値周辺(80db90db)を用いて感度分析を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・スボレキサント群は、プラセボ群と比較し、平均AATに有意な差は認められなかった。
AAT85dbで覚醒しなかった患者の割合についても、差は認められなかった。
・スボレキサント20mg群では、プラセボ群と比較し、中途覚醒の減少および総睡眠時間の増加が認められた。

 著者らは「スボレキサントのようなDORAは、不眠症改善効果が期待できる一方で、夜間の聴覚刺激に対する覚醒を可能とすることが示唆された」としている。



うつ病と糖尿病合併に関する調査結果

うつ病と糖尿病合併との関連を明らかにするため、オーストリア・ウィーン医科大学のGernot Fugger氏ら欧州リサーチコンソーシアムの治療抵抗性うつ病研究グループ(GSRD)は、多施設共同研究を実施した。Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry2019830日号の報告。

 DSM-IVでうつ病と診断された患者1,410例の201216年の人口統計および臨床情報を、横断的に検索した。糖尿病合併の有無により患者特性の比較には、記述統計、共分散分析(ANCOVA)、二項ロジスティック回帰分析を用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・うつ病患者の糖尿病合併ポイント有病率は、6%であった。
・糖尿病合併うつ病患者は、高齢、重症、入院、慢性身体疾患の合併の割合が有意に高かった。
・現時点での自殺リスクが有意に高く、メランコリックな特徴が顕著であった。
・糖尿病合併うつ病患者は、さまざまな増強療法を組み合わせるよりも、1剤以上の抗うつ薬併用療法が行われていた。

 著者らは「うつ病患者の糖尿病合併率は、これまでの研究よりも低かったが、研究の地理的要因における糖尿病有病率を考慮すると、一般人口と比較し、うつ病患者はリスクが高いことが示唆された。現時点では、自殺リスクが著しく増加しており、すべての糖尿病合併患者を徹底的に評価する必要がある。うつ病の重症度や治療反応は、糖尿病合併の影響を受けていなかった」としている。

最近糖尿病の原因ではないかといわれているものに様々な要因によって慢性的な「高血糖症」による疾患の悪化があります。

この場合、インシュリン抵抗性によるアミロイドβの蓄積や、血球糖化現象による血管壁への悪影響などの疾患を起こすことが多いのですが

うつ病患者が高血糖になりうる過剰な糖質摂取になりにくいような食欲減退や行動衰退などが起きている場合は、糖尿病とうつ病との関係性は低いとは考えられるのですが

逆に過食症(過剰な糖質摂取)を引き起こすうつ病患者になると、高血糖値を誘発することによる糖尿病という合併症にもなりうるのではないのでしょうか?

糖尿病の定義は病理的範囲における血糖値を数値化することが可能なのですが

一方うつ病の定義はその数値化における明確な定義を示すのが難しいとされているために、

両者の関係性を安易な統計資料だけで判断するには不完全なのではないのと感じます。

てんかん発作時の無呼吸にセロトニン濃度が関連か

てんかん発作後に脳内物質セロトニンの血中濃度が高いと、発作に関連して生じる無呼吸の発症リスクが低くなる可能性があることが、米テキサス大学マクガバン・メディカル・スクール神経学教授のSamden Lhatoo氏らの研究により示された。研究の詳細は「Neurology94日オンライン版に掲載された。

 セロトニンは、脳にある神経細胞間のシグナル伝達を行うホルモンで、呼吸や起床後の覚醒を司ることが知られている。しかし、てんかん発作前後および発作中にどのような影響を及ぼしているのかはよく分かっていないという。

 そこでLhatoo氏らは、難治性てんかん患者49人(29人が女性、平均年齢42歳、平均罹病期間17年)を対象に、前向きコホート研究を実施。セロトニンの濃度とてんかんにおける無呼吸発作との関連を調べた。

 研究では、モニタリングユニットにいる患者が発作を起こしたときの脳および心臓の電気活動、血中酸素濃度、血流の変化を測定した。また、発作後10分以内および12時間以上たってから血液サンプルを採取し、セロトニン濃度を測定した。

 その結果、全患者の35%で発作中に無呼吸が認められ、全身けいれん発作を起こした27人の患者の30%で発作後に無呼吸が認められた。

発作中に無呼吸にならなかった32人の患者では、セロトニン濃度が、発作前の平均110ng/mLから発作後には平均で140ng/mL上昇していた。しかし、発作中に無呼吸になった17人の患者では、発作前に比べセロトニン濃度の有意な上昇は認められなかった。

一方、全身けいれん発作を起こし発作後に無呼吸にならなかった19人の患者では、発作後にセロトニン濃度の上昇が認められたが、全身けいれん発作を起こし発作後に無呼吸になった患者8人の発作前の濃度と比較すると、有意差は認められなかった。

 こうした結果を受けLhatoo氏は、「発作後にセロトニン濃度が高いと、呼吸機能障害が生じにくいことが分かった。

今回の研究で、セロトニン濃度とてんかん患者の突然死(SUDEP)の発生リスクを関連づけられたわけではない。しかし、SUDEPは全身けいれん発作後に起こる重度の呼吸機能不全と関係するという過去の研究結果を鑑みると、今回得られた知見はその関連の解明にとって重要な手がかりとなるだろう」と話している。

 その上でLhatoo氏は、将来的には、SUDEPを防ぐ新しい治療法の開発にもつながりうる可能性に期待を示している。ただし、「今回の研究は小規模であり、さらなる研究で結果を確認していく必要がある」とも付け加えている。

また、「過剰なセロトニンは有害にもなり得ることに注意が必要だ。今回の結果を受けてセロトニン濃度を高める方法を研究しようなどと考えないことを強く推奨する」と強調している。

[201994/HealthDayNews]

脳機能のダイナミズムはいまの科学でも解き明かすのが困難ないわばブラックボックスです。

この報告を途中まで読み進めるとつい「てんかん後の患者の無呼吸を軽減させるための治療法はセロトニンを患者に投与すればよいのではないか」と安易な結論になりがちですが

文面の最後に「脳内ホルモンの機能はそんなに単純なものではない」というてんかん疾患への治療医療陣営からの警告で結ばれているところなどはやはり、脳内ホルモン機能の専門家サイドの思慮深さを感じざろう得ません。