乳がん治療、ガイドラインに従わないときの生存率

乳がん治療において、ガイドラインで推奨される治療を受け入れない乳がん患者もいる。もしガイドラインに従わない場合、生存率にどの程度影響するのだろうか。今回、シンガポールゲノム研究所のPeh Joo Ho氏らは、大規模な乳がん患者集団において推奨治療の非順守の予測因子および生存率への影響を検討した。その結果、ガイドラインで推奨された手術や放射線療法を順守しない場合、全生存が2倍以上悪化し、ガイドラインによる適切な治療に従うことの重要性が強調された。また、高齢患者でも同様の結果が得られ、推奨治療により恩恵を受ける可能性が示唆された。Scientific Reports2020128日号に掲載。

 本研究の対象は、200515年にシンガポールで乳がんと診断された患者のうち、転移のない乳がん患者19,241例で、3,158例(16%)が診断後10年以内に死亡した(生存期間中央値:5.8年)。シンガポールの公立病院では、一般にNCCNガイドラインとザンクトガレン2005コンセンサスに従っている。ロジスティック回帰を用いた治療非順守と因子との関連、パラメトリック生存モデルフレームワークを用いた治療非順守が全生存に及ぼす影響を検討した。

 主な結果は以下のとおり。

・治療非順守率が最も高かった治療は化学療法(18%)であった。
・化学療法、放射線療法、内分泌療法が順守されない予測因子は、年齢、腫瘍の大きさ、リンパ節転移、サブタイプ(放射線療法を除く)であった。
・手術拒否に関連する因子は、年齢とサブタイプであった。
・治療非順守は、手術(ハザード比[HR]2.2695%信頼区間[CI]1.802.83)、化学療法(HR1.2595%CI1.111.41)、放射線療法(HR2.2895%CI1.942.69)、内分泌療法(HR1.7095%CI1.412.04)において全生存が悪化した。
・ガイドラインが通常適用されない高齢患者でも同様の結果が得られた。

日焼け止めの有効成分6種、体内吸収後に血中へ

4つの形態の日焼け止め製品に含まれる6種の有効成分について、いずれも体内に吸収されて血中に移行し、さらなる安全性研究に進む基準となる米国食品医薬品局(FDA)の最大血漿中濃度閾値(0.5ng/mL)を上回ることが、米国・FDAMurali K. Matta氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA2020121日号に掲載された。FDAによる既報のパイロット研究では、日焼け止めの4種の活性成分(アボベンゾン、オキシベンゾン、オクトクリレン、エカムスル)の体内吸収が報告されている。他の活性成分の体内吸収を確認するとともに、FDAの基準値である0.5ng/mLを上回る迅速な体内曝露を評価する研究が求められていた。

6種の活性成分を4形態で比較する無作為化試験

 研究グループは、日焼け止めの6種の有効成分(アボベンゾン、オキシベンゾン、オクトクリレン、ホモサレート、オクチサレート、オクチノキサート)の体内吸収と薬物動態を評価する目的で、4つの形態(ローション、エアロゾルスプレー、非エアロゾルスプレー、ポンプスプレー)の製品を比較する無作為化試験を実施した(米国FDAの助成による)。

 本研究は、20191月~2月の期間に単一の施設で行われた。健康な48人を対象とし、4つの形態の日焼け止め製品の塗布を受ける群に、12人ずつ無作為に割り付けられた。

 日焼け止め製品は、4日間で13回塗布された。第1日に体表面積の75%に2mg/cm2が塗布され、第24日には同じ用量を1日に4回、2時間ごとに塗布された。個々の参加者から21日間で34の血液サンプルを採取し評価した。

 主要アウトカムは、第121日におけるアボベンゾンの最大血漿中濃度とした。副次アウトカムは、第121日におけるオキシベンゾン、オクトクリレン、ホモサレート、オクチサレート、オクチノキサートの最大血漿中濃度であった。

1日の単回塗布で全活性成分が閾値を上回る

 48人のベースラインの平均年齢は38.7SD 13.2)歳で、24人(50%)が女性であった。23人(48%)が白人、23人(48%)がアフリカ系米国人、1人(2%)がアジア人、1人は人種/民族が不明だった。

 6種の有効成分の最大血漿中濃度の幾何平均は、いずれも0.5ng/mLを超えており、すべての活性成分単回塗布後の第1日に、このFDAの閾値を上回った。

 第121日におけるアボベンゾンの最大血漿中濃度幾何平均(変動係数[%])は、ローションが7.1ng/mL73.9%)、エアロゾルスプレーが3.5ng/mL70.9%)、非エアロゾルスプレーが3.5ng/mL73.0%)、ポンプスプレーは3.3ng/mL47.8%)であった。また、第1日はそれぞれ1.6ng/mL49.0%)、1.2ng/mL90.6%)、1.0ng/mL65.2%)、0.7ng/mL64.5%)で、第4日は7.1ng/mL73.9%)、3.5ng/mL70.9%)、3.5ng/mL73.0%)、3.1ng/mL40.3%)だった。

 第121日のオキシベンゾンの最大血漿中濃度幾何平均(変動係数[%])は、ローションが258.1ng/mL53.0%)、エアロゾルスプレーが180.1ng/mL57.3%)であり、オクトクリレンはローションが7.8ng/mL87.1%)、エアロゾルスプレーが6.6ng/mL78.1%)、非エアロゾルスプレーが6.6ng/mL103.9%)で、ホモサレートはエアロゾルスプレーが23.1ng/mL68.0%)、非エアロゾルスプレーが17.9ng/mL61.7%)、ポンプスプレーが13.9ng/mL70.2%)、オクチサレートはエアロゾルスプレーが5.1ng/mL81.6%)、非エアロゾルスプレーが5.8ng/mL77.4%)、ポンプスプレーが4.6ng/mL97.6%)、オクチノキサートは非エアロゾルスプレーが7.9ng/mL86.5%)、ポンプスプレーが5.2ng/mL68.2%)であった。

 探索的評価では、4つの形態の製品のすべての活性成分は半減期が長いことが示された(平均値の範囲:27.3157.4時間)。

 重篤な薬剤関連の有害事象の報告はなかった。最も頻度の高い有害事象は皮疹であり、14例に認められた。

 著者は、「この結果は、日焼け止めの使用は控えるべきと示唆するものではない」と指摘し、「これらの知見の臨床的意義を検証するために、さらなる検討を要する」としている。

米で新薬の迅速承認が加速

米食品医薬品局(FDA)は希少疾患や重症疾患の新薬の承認を早めることを目的に、4つの迅速承認プログラムを推進している。近年では、新薬承認の迅速化が加速し、厳格な審査を経ずに承認される薬剤が増えつつある実態が、米ハーバード大学医学部のJonathan Darrow氏らの研究で示された。研究によれば、2018年にはFDAが承認した新薬の81%が1つ以上の迅速承認プログラムの適用を受けていたという。研究結果の詳細は「Journal of the American Medical AssociationJAMA)」114日号に発表された。

 Darrow氏は「1983年から現在に至るまで、新薬の承認取得に必要とされる基準は大きく変わってきている。しかし、患者はもちろん医師でさえ、過去40年間にFDAの承認基準や要件が緩和されていることを知っている人は少ない」と話している。

 今回の研究では、2件以上のエビデンスレベルの高い臨床試験結果に基づいて承認された新薬のシェアは、19951997年の80.6%から、20152017年の52.8%へと、大きく減少したことが示された。また、FDAの医薬品審査期間は、1983年の3年以上から2017年には1年未満へと大幅に短縮していた。

 画期的で有効性が極めて高い新薬であれば、発売時期が早まるのは患者にとって朗報かもしれない。しかし、Darrow氏によれば、このような新薬の多くは、既存薬をわずかに上回る程度の効果しかないことが別の研究で明らかになっているという。

 一方、迅速承認プログラムを導入後も、新薬の承認件数には経年的に大幅な増加は見られなかった。年間の平均承認件数は、19901999年には34件で、20002009年には25件に減少。20102018年には41件と、1980年代から30件前後で推移していた。

 FDAは声明で「Darrow氏らの研究は、非常に幅広い問題をカバーするものだ」とする一方で、「10年前、20年前とは審査対象となる医薬品の種類や開発プログラムが標的とする患者集団は大きく変化していることが考慮されていない」と指摘。また、「FDAが受理するデータの種類や質、範囲も以前とはかなり変わってきており、このような変化を考慮せずに導き出した結論は正確ではない可能性がある」との見解を示している。

 なお、HealthDayは米国研究製薬工業協会(PhRMA)に対して取材を試みたが、回答は得られなかった。

 迅速承認プログラムの導入は、従来よりも柔軟なエビデンスに基づく新薬の承認を可能にした。「例えば、生存期間の延長や心臓発作の抑制などではなく、脂質値の低下や腫瘍の縮小といった評価項目だけでも承認が得られるようになった」とDarrow氏は説明する。ただ、臨床試験が開始されてから承認までの期間に変わりはなく、製薬企業が新薬の開発に費やす期間は短縮していないという。

 また、Darrow氏らによれば、製薬企業が負担する審査費用へのFDAの財政的な依存度は高まっており、「このプログラムには迅速な新薬承認が可能になった反面、弊害も見られる」としている。

 今回の研究には関与してない米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のJoshua Sharfstein氏は、これらの迅速承認プログラムは医療費の増大をもたらしたと指摘。その上で「どのような状況下でどのインセンティブを付与すれば、現行の治療を大きく変えるような医薬品の承認につながるのか、FDAは一度立ち止まって見直す必要がある」と述べている。

[2020114/HealthDayNews]

日本人統合失調症患者における長時間作用型抗精神病薬の使用と再入院率~全国データベース研究

統合失調症患者に対する抗精神病薬の長時間作用型持効性注射剤(LAI)について、現在の処方状況および臨床結果を調査することは重要である。国立精神・神経医療研究センターの臼杵 理人氏らは、日本での統合失調症患者に対する抗精神病薬LAIについて、その処方割合と再入院率に関する調査を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版20191225日号の報告。

 日本のレセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて、オープンデータセットを作成した。統合失調症の患者レコードを使用した。分析(1)において、20152月~20173月に精神科施設を受診した外来患者に対する抗精神病薬の処方割合を調査した。分析(2)においては、精神科施設を初回退院後90日以内に抗精神病薬LAIによる治療を受けた患者を対象に、退院後365日間の再入院率を調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・抗精神病薬による治療を受けた統合失調症外来患者のうち、LAIの処方割合は3.5%であった。
・再入院率は、統合失調症患者全体で41.0%、定型抗精神病薬LAIの単独療法を受ける患者で36.2%、非定型抗精神病薬LAIの単独療法を受ける患者で23.5%であった。

 著者らは「日本での統合失調症治療において、抗精神病薬LAIは、まだ十分に普及していない。非定型抗精神病薬LAIは、定型抗精神病薬LAIと比較し再入院率が低かった。本結果は、今後の研究を行ううえで重要な基本情報となりうるが、集約データベースとデータベースの構造によって一般化可能性が制限されると考えられるため、解釈には注意が必要である」としている。

ソーシャルメディアは健康に良い?悪い? AHAニュース

ソーシャルメディアの広がりとウェブサイトやアプリケーションの無限の資源が、人々の健康情報への飽くなき欲求と結びあうと、患者、医療従事者、研究者にとって強力なツールとなる。最近の調査によると、米国人の81%がスマートフォンを利用しており、ほぼ全員がコンピューターを保有しているという。さらに72%が何らかのソーシャルメディアを利用していて、69%がFacebook37%がInstagram22%がTwitterを利用しているとされる。

 米Penn Medicine CenterRaina Merchant氏は、「ソーシャルメディアは、以前には成し得なかった方法での医療サポートを可能にし、情報を拡散する素晴らしいツールだ。ソーシャルメディアを通じて患者同士で何を話しているのか、何を心配しているのかを理解できる」と述べている。

 同氏はこれまでに、Facebookの投稿を分析し、健康問題や心理学的問題を検討したり、医療機関の評判を見比べたり、医療従事者がソーシャルメディアを使って患者の話を理解するために手助けするといった研究を行ってきている。しかし何百万ものツイートを分析した同氏が直面したのは、インターネットのジレンマと言える「デマ」だった。

 「よくあるのが、例えば『凍らせたレモンを食べれば糖尿病が治る』といった類だ。言うまでもなくばかげた話で、薬を飲むのを中断し冷凍レモンを食べていれば、深刻な健康被害につながる。我々はこうした状況に対抗しなければならない」と同氏は語る。

 子どもに対しては別の問題もある。非営利団体Action for Healthy KidsLoren Coleman氏は、「ソーシャルメディアは健康法を学んだり刺激を受けたりするのに最適な場所」と評価しながら、「ネットによるいじめは大きな問題であり、子どもたちがソーシャルメディアを上手に利用できるように、保護者はオンラインかつオフラインで関与していく必要がある」と述べている。

 一方、医療従事者の間でも、ソーシャルメディアの存在は日に日に大きくなっている。米スタンフォード大学医学部長で循環器・血管内治療を専門とするRobert Harrington氏は、「専門家として活動していく上でソーシャルメディアが非常に役立つようになってきた。時間を効果的に使え、以前より多くの情報を得た上で考察できるようになった」と述べている。

 しかし同氏は最近、電子タバコを巡る自身の姿勢に不満を持つ人々とネット上で口論するという経験をした。「このような人々はデータについて話したいのではなく、自分の思いを人に伝えたいのだ。専門家はこういった口論を避けずに、進んで関与していかなければならない。この手の議論には、信念に基づく意見ではなく、事実に即した意見が求められる」と述べている。

 一般の人にとっての問題は、多くの場合、情報の受け手側にいることである。かつてないほど大量の情報が得られるようになったことで、情報を整理し、何が信頼できるのかを自ら判断しなければならない。「そのためには、さまざまな視点から情報を批判的に考える姿勢(クリティカルシンキング)が必要」とHarrington氏は指摘している。

 前出のColeman氏は、「“Infobesity”(情報肥満)という新語は、インターネットなどに氾濫する情報によって人々が過剰負荷になっている状態を表現している。このような状況をわれわれ自身そして子どもたちが健全な形で管理していくことが極めて肝要である」と述べている。

[2020
122/American Heart Association] 

慢性腎臓病の発症リスクを予測する新ツール

今後5年間に慢性腎臓病(CKD)になるかどうかを主治医が簡単な計算で予測できるとしたら、どうだろうか。米ジョンズ・ホプキンス大学の研究者らの報告によると、それが可能になったという。

 「われわれが開発したリスク計算式を使えば、医師は今後5年間に誰がCKDになるかを高い精度で推測できる。この計算式は、世界各地での異なる臨床環境においてもその精度を維持できることが示されている」と、同大学公衆衛生大学院疫学分野教授のJosef Coresh氏は述べている。この報告は、「JAMA118日オンライン版に掲載された。

 新たに開発された計算式は、年齢や性別といった情報を用いて、その人がCKDを発症しやすいかどうかを予測するもので、糖尿病のない人を対象とするものと糖尿病のある人を対象とするものの計2種類。CKDリスクが最も高く早期治療のメリットを受ける患者を医師が選び出す上で助けとなる。CKDは進行性の疾患だが、このような手法で早期に発見し治療していけば、進行を遅らせたり止めたりすることも可能だという。

 Coresh氏のチームは計算式の開発に、19704月~20171月に報告された28カ国から34件のコホート研究のデータを利用。研究対象者数は合計5222,711人に及ぶ。

 全体を糖尿病の有無で2グループに分けると、糖尿病のないグループは4441,084人(平均年齢54±16歳、38%が女性、BMI27±6)。平均4.2年の追跡期間中に14.9%にあたる66856人がCKDを発症した。一方、糖尿病のあるグループは781,627人(平均年齢62±11歳、13%が女性、BMI32±6)で、平均3.9年の追跡期間中に40.1%にあたる313,646人がCKDを発症した。

 計算に用いる情報として、先に挙げた年齢や性別のほかに、人種・民族、eGFR、心血管疾患や高血圧の既往、喫煙歴、BMI、尿中アルブミンを利用する。糖尿病患者の場合はこれにHbA1cと糖尿病用薬の使用状況を加える。

 開発された計算式が5年後のCKD発症をどの程度の確率で予測するかをROC解析で検討すると、糖尿病がない場合のC統計量は0.845、糖尿病がある場合は0.801となった。この予測能力は臨床で利用するのに十分な精度という。さらに、別の200万人強のグループで確認したところ、やはり高い精度があるとみなされた。

[2019118/HealthDayNews]

医師数32万7,210人、増えた科や多い都道府県は?―厚労省調査

厚生労働省は19日、「医師・歯科医師・薬剤師統計」の最新結果を取りまとめ、公表した。それによると、全国の医師数は、327,210人で、前回調査(16年)に比べ2.4%増となり、一貫して増加傾向が続いている。このうち、女性医師は71,758人で、前回よりも6.3%増と大きく数字を伸ばし、過去最多を更新した。一方、医療施設に従事する医師の平均年齢は上がり続けており、診療所に従事する医師の平均年齢は初めて60歳代となり、高い年齢層が支えていることがわかる。

 「医師・歯科医師・薬剤師統計」は、厚労省が2年おきに実施しており、今回は2018(平成30)年1231日時点に調査を行ったもの。それによると、全国の医師数は327,210人(前回比で7,730人、2.4%増)、歯科医師数は104,908人(同375人、0.4%増)、薬剤師数は311,289人(同9,966人、3.3%増)であった。

 医師数を男女別にみると、男性医師は255,452人(前回比で3,465人、1.4%増)、女性医師は71,758人(同4,265人、6.3%増)となっており、女性医師数の躍進が顕著であった。

 医師のうち、医療施設従事者は311,963人(総数の95.3%)で、前回比で7,204人(2.4%)増加した。平均年齢は49.9歳。このうち、病院は44.8歳で前回調査時から0.3ポイント上昇し、診療所は60.0歳で前回から0.4ポイント上昇して、初めて60歳代となった。

 主たる診療科別にみると、前回調査時より従事者が増えたのは、美容外科が最も多く(対前回比で130%)、以下、産科(同112%)、腎臓内科・救急科(同111%)、リハビリテーション科(同109%)などとなっている。一方、従事者が減ったのは、気管食道外科が最も多く(対前回比で94%)、以下、外科(同95%)、肛門外科(同97%)、内科・産婦人科・臨床検査科(同99%)などとなっている。なお、本稿で紹介した診療科別の統計結果においては「臨床研修医」や「不詳」および「その他」の回答はいずれも除外している。

 従業地の都道府県別にみた医療施設に従事する人口10万人当たりの医師数は、全国では246.7人で、前回比で6.6人増加した。このうち、最も多いのは徳島県(329.5人)で、次いで京都府(323.3人)、高知県(316.9人)などとなっている。一方、最も少ないのは埼玉県(169.8人)で、次いで茨城県(187.5人)、千葉県(194.1人)などとなっている。

医療者が共有できていない、重症低血糖とその背景

20191029日、日本イーライリリー主催のプレスセミナー「糖尿病患者さんと家族の意識調査から見る、重症低血糖の実態」が開催され、山内 敏正氏(東京大学大学院医学研究科糖尿病・代謝内科 教授)が「低血糖・重症低血糖について」、岩倉 敏夫氏(神戸市立医療センター中央市民病院)が「糖尿病患者さんと家族調査結果から見える課題」と題して重症低血糖について解説した。会の後半に行われたトークセッションでは、患者代表の大村 詠一氏(元エアロビック競技日本代表)が、低血糖発現時の状況や医療者とのコミュニケーションに関する本音を語った。

重症低血糖はどう重症なのか?

 低血糖は食事摂取量の低下や摂取時間の遅れ、エネルギー消費の増大、インスリン感受性の改善、薬剤の影響などが原因で生じる。これに対する生理反応として、血糖値がおおよそ70mg/dL以下になると交感神経や中枢神経症状などが起こりやすい。

 一般的に重症低血糖は、非糖尿病者では生理的に来しえない54mg/dL未満の場合と、低血糖の回復に際し“他者による介助が必要な重度認知機能障害に関連する低血糖”に定義される。この状態に陥ると、糖尿病患者の脳や筋骨格系、心血管系に影響し、急性期では認知機能や作業パフォーマンスの低下、慢性期ではQOL低下や運転・雇用の制限などの問題を抱えてしまう。これを踏まえて山内氏は「重症低血糖は短期的かつ長期的に悪影響を与え、生命を脅かす危険性がある。とくに認知機能における記憶や言語処理などに影響を及ぼす」とコメントし、「まずは、低血糖に対する本人の自覚が大切。しかし、運動後615時間後の低血糖発生は夜間睡眠時に及ぶ場合もある。このような場合を踏まえ、本人だけではなく周囲の理解も必要」と話した。

重症低血糖を発症しやすい患者とは

 日本糖尿病学会による糖尿病治療に関連した重症低血糖の調査委員会報告(1型糖尿病[T1D]:240例、2型糖尿病[T2D]:480例)では発症者の傾向を病型別に分けて調査している。この調査報告によると、T1DT2Dの平均HbA1c値はそれぞれ、7.5%、6.8%であった。前駆症状(交感神経系刺激症状)の発現率は、T1D41%、T2D56.9%の患者に見られ、重症低血糖の発症年齢の中央値はT1D54歳、T2Dの中央値は77歳、とくにT2D患者は65歳以上が83%を占めていた。過去に重症低血糖を起こし受診歴がある患者はそれぞれ67.8%、33.1%であった。また、重症低血糖に影響した要因について、医師への調査によると、食事の内容・タイミングの不適合が最も多く、全体の40%を占めた。次いで、薬剤の過量もしくは誤投与が27%と続いた。T2Dに限定して症低血糖の原因薬剤を抽出したところ、インスリン群で61%、SU薬群で33%であった。この結果を踏まえ同氏は、「重症低血糖は防げるにもかかわらず、同一患者が複数回起こしているケースがある。本人・家族だけではなく医療者による工夫も必要」と問題提起した。

 また、重症低血糖の発症患者として高齢者が問題視されている。とくに75歳以上の2型糖尿病のSU治療群での低血糖割合が多い。熊本宣言2013を受け、75歳以上の高齢者に対するHbA1c値のあり方が厳格化されつつある中で、「75歳以上のSU薬使用においてHbA1cの下限値7.0%を設けたことは世界で初の試みだった。これがさらに浸透すれば今回の調査報告に比べ低血糖症状の患者が半数以下に減らせるのではないか」と、同氏は今後の結果報告に期待した。

医療者、6割もの患者の低血糖症状を把握できず

 重症低血糖による意識障害に陥った場合、第三者(家族、友人、介護者…)によるフォローが患者の生命予後の鍵となる。重症低血糖対策への意識調査を糖尿病患者とその家族に実施した岩倉氏によると、低血糖の認知度の高さに(糖尿病患者:77%、糖尿病患者の同居家族:76%)比して、「重症低血糖の認知はそれぞれ25%、40%にとどまった」と、現状を懸念した。

 重症低血糖を経験した患者では予防策に対する意識が高く、「ブドウ糖を含む飲食物を摂取」「血糖測定の実施」のほか、「食事の量」や「運動」に注意を払っていた。しかし、重症低血糖に関する相談や情報共有を医療者と共有している患者はたったの37%しかいないことが明らかになった。なお、相談される医療者は、医師、薬剤師、看護師の順であったが、岩倉氏は「患者から直接相談されるだけではなく、薬剤師や看護師などから患者情報を得ることもある」とコメントした。

年齢を重ねると低血糖症状にも変化

 最後に行われたトークセッションでは、患者代表の大村氏が自身の経験や血糖値管理の本音を吐露。幼少期から1型糖尿病を発症した同氏は「外食の場合、写真と実物の量が異なることがあるので、配膳されてから注射するなど、糖質が配膳されるタイミングで投与するなどの工夫をしている」と話した。また、同氏の場合、血糖値が2030mg/dL程度にならないと重症低血糖の症状が表れず、日頃から6070mg/dLの値を経験していたという。そのため、「先生に低血糖の有無を聞かれても、自覚症状がないので言わないこともある。さらに、加齢に伴い低血糖症状にも変化が表れているので、患者自身が身体変化について医療者と共有する意識を持つことが大切」と実体験を語った。これに、岩倉氏は「まずは血糖値を知って不安を払拭することが何よりも大切」と、アドバイスした。

運動によるうつ病予防は遺伝的高リスクの人にも効果

うつ病を発症するリスクが遺伝的に高くても、運動することで予防効果が得られる可能性があることが、米マサチューセッツ総合病院精神科および米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院に所属するKarmel Choi氏らの研究から明らかになった。週4時間の運動で、新たにうつ病を発症するリスクは17%低下することが分かったという。研究の詳細は「Depression and Anxiety1115日オンライン版に掲載された。

 この研究は、大規模な前向き研究である英国バイオバンクに参加した成人7,968人の遺伝データを分析したもの。電子カルテと生活習慣に関する質問票調査への回答も用いて、うつ病の遺伝的リスク別に、身体活動と将来の発症リスク低減との関連を調べた。

 その結果、うつ病になりやすい遺伝的素因を有する人は、調査開始から2年以内にうつ病と診断される可能性が高かった。一方、研究開始時点の身体活動レベルが高い人ほど、うつ病になりにくいことも分かった。このような運動による保護効果は遺伝的リスクが最も高い群でも、身体活動レベルが高いほどうつ病リスクは低減することが明らかになった。

 また、今回の研究では、エアロビクスやダンス、エクササイズマシンなどの高強度運動と、ヨガやストレッチなどの低強度運動はいずれもうつ病予防に役立つことが分かった。さらに、週に4時間の運動を行うと、うつ病を発症するリスクが17%低下する可能性も示されたという。

 Choi氏は「今回の研究結果から、うつ病の遺伝的なリスクは“宿命”ではない可能性が強く示唆された。遺伝的にリスクが高い人でも、身体活動レベルを高めれば、うつ病リスクを抑えられる可能性がある」と結論。その上で、「平均して運動を毎日35分行うとうつ病リスクは低減し、将来の発症予防にもつながる可能性がある」と述べている。

 現代社会の中で、うつ病は世界的にも身体障害を引き起こす主因とみなされている。「世界中の患者数の多さを考えれば、できる限り多くの人が実践できる効果的な治療法や予防策を見出すことが強く求められている」と、Choi氏は強調。「メンタルヘルスやプライマリケアの診療医は、この研究結果を根拠に、患者にうつ病の家族歴があっても、予防のために運動を勧めることができるだろう」と付け加えている。

[2019116/HealthDayNews]

エリスロポエチン低値は貧血の2型糖尿病患者の腎機能低下に先行

貧血を伴う2型糖尿病患者では、エリスロポエチン(EPO)レベルが低いことが、その後の腎機能の低下に関与していることがわかった。糖尿病性腎症を発症していない段階でもEPO低値が将来の腎機能低下に関連し、特に正常上限値(23.7IU/L)を下回る場合に腎機能低下が急速に進むという。大阪大学大学院医学系研究科腎疾患臓器連関制御学の濱野高行氏らの研究によるもので、「Scientific Reports1016日オンライン版に掲載された。

 EPOは赤血球の産生を促進する造血因子で主に腎臓で作られるホルモン。貧血状態では代償的にその分泌が増えて赤血球数を増やすように働く。糖尿病患者のEPOレベルは糖尿病がない人よりも低いことが報告されている。一方、貧血も糖尿病患者によく見られ、腎症や網膜症、心疾患などの糖尿病合併症に影響を及ぼすことが知られている。ただしEPO値と腎機能との関連は明らかでない。このような背景から濱野氏らは、貧血を伴う外来2型糖尿病患者290人を2年間前向きに追跡し、EPOレベルと腎機能(eGFR)低下との関連を検討した。

 ベースライン時の主な患者背景は、年齢71歳(中央値)、男性61%、BMI23.5HbA1c6.9%、eGFR53mL//1.73m2。ヘモグロビン(Hb)の中央値が11.8g/dLと大半が軽度の貧血を有する群であるにもかかわらず、EPOの中央値は14.4IU/Lと低値だった。EPO14.4IU/Lを基準に低EPO群と高EPO群に分け比較すると、低EPO群は年齢が若くてBMIが低く、群間に有意差が見られた。

 EPOレベルが基準値上限の23.7IU/Lを下回る場合を、貧血患者を対象とする本検討における「相対的なEPO欠乏」と定義すると、全体の73.1%が該当した。また体内の鉄貯蔵量のマーカーである血清フェリチンが50ng/dL以下の場合を「鉄欠乏」と定義すると44.1%が該当した。この結果をCKDの病期別に検討すると、病期進行に伴い相対的なEPO欠乏を呈する患者の割合が増加し(傾向性P0.02)、鉄欠乏患者の割合は減少することがわかった(傾向性P0.01)。またCKDでない患者でも58.7%が相対的なEPO欠乏だった。

 EPOレベルと腎機能低下との関連について、まず対象全体のeGFR低下速度を見ると、1年につき-1.3mL//1.73m2(中央値)であることがわかった。これを前述の低EPO群と高EPO群とで比較すると、前者は-1.7 mL//1.73m2、後者は-0.8 mL//1.73m2であり、低EPO群では腎機能の低下が有意に速いことが見いだされた(P0.02)。またEPO23.7IU/Lを下回る場合、eGFRが特に急速に低下することが示された。

 ベースライン時の対数変換EPOlogEPO)とeGFR低下速度との関係を検討すると、両者に有意な関連が認められた(β0.83P0.04)。この関連は、年齢や性別、eGFR、尿アルブミン/クレアチニン比、Hb、血圧、HbA1cRAS阻害薬の使用、ビタミンDFGF23L-FABPなど、腎機能に関連する因子で調整してもなお有意だった(β0.93P0.04)。またlogEPOは鉄欠乏との間でのみ交互作用があり(P0.01)、他の因子との関連は見られなかった。

 これらの結果を踏まえ著者らは「低EPOレベルは貧血を有する2型糖尿病患者の腎機能低下を予測する。これはCKDのない場合においても同様であり、貧血のある2型糖尿病患者のEPOレベルを積極的に評価すべき」と結論をまとめている。なお、最近登場したEPOレベルの上昇作用をもつ低酸素誘導因子(HIF)安定化薬については、「投与により腎転帰が改善するか否か今後の検討が必要」と述べている。

[20191118/HealthDayNews]