巨大恐竜はどうやって体温を調節していたのか

長い首を持つ竜脚類などの巨大恐竜は、体温の過剰な上昇や脳の損傷を防ぐために特殊な冷却システムを発達させていたとする研究結果が、米オハイオ大学解剖学のRuger Porter氏らにより報告された。研究の詳細は、「The Anatomical Record1016日オンライン版に掲載された。

 研究論文の共著者で、同大学解剖学教授のLawrence Witmer氏は、「小型恐竜であれば、日陰に逃げ込んで体を冷やすことができただろう。しかし、大型恐竜には体温が上がり過ぎるのを防ぐ手立てはなかったはずだ」とし、「大型恐竜には、脳の温度を調節する特別なメカニズムが備わっていたに違いない。しかし、それが何なのかは分かっていなかった」と研究の背景について述べている。

 その答えは日常生活から得られた。エアコンの仕組みである。エアコンは、蒸発するときに周囲から熱を奪っていく液体の性質を利用して空気を冷やしている。人間が夏に汗を蒸発させることで熱を放出し体温調節を行うのと同じである。

 この理論が正しいか否かを調べるにあたり着目したのは、恐竜の子孫とされる鳥類と爬虫類である。Porter氏らは、鳥類と爬虫類の死体を取り寄せて、CTを用いて血液の流れを調べた。その結果、これらの動物では、鼻、口、眼の水分を蒸発させることで脳に供給される血液の温度を下げていることが分かった。同氏らはこの結果をもとに、さまざまな恐竜の頭蓋骨の化石を3Dでイメージ化して、恐竜の頭部に熱交換を行う部分が複数あったことを明らかにした。

 Porter氏によると、血管は、その痕跡が骨に残っているため有用であるという。「現代の鳥類や爬虫類の骨にみられる管や溝は、恐竜の化石に関連づけることができるものであり、骨に残るこうした証拠を用いれば、絶滅した恐竜の血流パターンを再構築でき、恐竜の温熱生理学や熱への対処法を知ることが可能になる」という。

 今回の研究に資金を提供した米国立科学財団のSharon Swartz氏は、「研究結果は、恐竜が、特殊な環境条件が強いる物理的な制約により進化したことを示すものだ。技術革新と生物学の専門知識を組み合わせることで、研究チームは化石の記録を直接読み解くことに成功し、それにより、恐竜の骨格の形状や機能がどのように進化したのかについて解明するための新たな糸口がもたらされた」と評価している。

[20191016/HealthDayNews]



心停止蘇生後の「低体温療法」に脳保護効果

心停止から蘇生した患者に対する低体温療法は、これまで考えられていたよりも多くの患者を救える可能性があることが、ナント大学病院(フランス)のJean-Baptiste Lascarrou氏らが実施した臨床試験で示された。心電図波形が「ショック非適応リズム」の心停止患者に低体温療法を実施したところ、標準的な治療を行った場合に比べて、蘇生後に良好な脳機能が保たれる確率が約2倍に上ることが分かった。この結果は「New England Journal of Medicine102日オンライン版に発表された。

 ショック非適応リズムの心停止には、心臓が停止し、心電図で波形の動きがみられない「心静止」と、心電図上は波形が認められるが、脈拍が触れない状態である「無脈性電気活動(PEA)」が含まれる。これまで、ショック適応の心停止患者に対しては、脳機能の保護を目的に低体温療法が実施されており、今ではほとんどの病院で治療できる環境が整っている。しかし、ショック非適応の患者においても、低体温療法が予後に差をもたらすかどうかは明らかになっていなかった。

 そこで、Lascarrou氏らは今回、フランスの複数カ所のICU(集中治療室)に搬送されたショック非適応リズムの心停止患者584人を対象に、臨床試験を行った。対象患者の平均年齢は67歳で、約3分の2が男性だった。また、半数以上の患者には慢性心疾患が、約3分の1の患者には慢性呼吸器疾患があった。心停止を起こした場所は、約半数は自宅、約4分の1は外出先、残りの約4分の1は病院内だった。全患者の90%以上はバイスタンダー(その場に居合わせた人)に目撃されており、3分の2には心肺蘇生が行われていた。

 試験では、対象患者の半数を24時間の低体温療法を実施する群に、残る半数を標準的な治療を実施する群にランダムに割り付けた。患者の体温は、標準治療では37度(華氏98.6度)としたのに対し、低体温療法では摂氏33度(華氏91.4度)まで冷却した。

 その結果、ランダム化から90日後の死亡率は、低体温療法群では81%、標準治療群では83%と予想通り高く、両群間に統計学的な有意差は認められなかった。一方、90日後に良好な神経学的機能〔脳機能カテゴリー(CPC)のスコアが12点と定義〕が保たれた患者の割合は、標準治療群では6%未満だったのに対し、低体温療法群では10%を上回っていた。

 なお、Lascarrou氏によると、CPCスコア「1点」は、脳機能は正常で、仕事も普通にできる場合が多い。また、同スコア「2点」は、日常生活を送る機能があり、適切な環境では働くこともできる状態であることを意味するという。

 この結果について、専門家の一人で、米国心臓協会(AHA)のスポークスパーソンを務めるJohn Osborne氏は「シンプルかつ明快なアプローチによる低体温療法は、心停止から蘇生した患者に大きなプラス効果をもたらした。生存例の半数で良好な神経学的予後が示されたことは、大きな進歩だ」と評価。「今後、心肺蘇生や救急治療のガイドラインで、ショック非適応の心停止患者への低体温療法が推奨されるようになる可能性がある」と予想している。

 一方、Lascarrou氏は今後の課題について、「冷却期間や復温時間の調整を含め、最も高いベネフィットが得られる低体温療法の方法を見出す必要がある」と付け加えている。

[2019102/HealthDayNews]



高血圧の第1選択薬、単剤での有効性を比較/Lancet

降圧治療の単剤療法を開始する際、サイアザイド(THZ)系/THZ系類似利尿薬はACE阻害薬に比べて優れており、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬は、その他の第1選択薬4クラスの降圧薬に比べ有効性が劣ることが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のMarc A. Suchard氏らが行った系統的な国際的大規模解析の結果、示された。残余交絡や出版バイアスなども補正した包括的フレームワークを開発し、米国、日本、韓国などの490万例の患者データを解析して明らかにしたもので、その他の第1選択薬については、現行ガイドラインに合わせて降圧治療の単剤療法を開始した場合の有効性は同等であったという。高血圧に対する至適な単剤療法については曖昧なままで、ガイドラインでは、並存疾患がない場合はあらゆる主要な薬剤を第1選択薬に推奨されている。この選択肢について無作為化試験では精錬がされていなかった。Lancet誌オンライン版20191024日号掲載の報告。

治療の有効性と安全性に関する55のアウトカムを比較

 研究グループは、数百万の患者の観察データを含む多くの薬剤の有効性アウトカムおよび安全性評価を比較可能とする、残余交絡、出版バイアス、p値ハッキングなどを最小限に補正したリアルワールドの包括的フレームワークを開発した。同フレームワークを用いて、6つの診療報酬請求データベースと、3つの電子診療録データベースについてシステマティックに解析を行い、第1選択薬の降圧薬について治療の有効性と安全性に関する55のアウトカムを比較した。

 有効性に関する主要アウトカムは3つ(急性心筋梗塞、心不全による入院、脳卒中)、副次アウトカムは6つ、安全性に関するアウトカムは46で、相対リスクを算出して比較した。

THZ系利尿薬、ACE阻害薬に比べ安全性アウトカムも良好

 患者データ490万例の解析において、全クラスおよびアウトカムを比較した22,000の補正後・傾向スコア補正後ハザード比を得た。

 単剤療法を開始する際、ほとんどの比較推算値は治療薬クラス間に差は認められないことを示すものだった。しかし、THZ/THZ系類似利尿薬は、ACE阻害薬に比べ、主要有効性アウトカムが有意に高かった。初回治療におけるリスクは、急性心筋梗塞のハザード比(HR0.8495%信頼区間[CI]0.750.95p0.01)、心不全による入院が0.830.740.95p0.01)、脳卒中が0.830.740.95p0.01)だった。安全性プロファイルも、THZ/THZ系類似利尿薬はACE阻害薬よりも良好だった。

 また、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬の有効性は、その他4クラスの降圧薬(THZ/THZ系類似利尿薬、ARBACE阻害薬、ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬)に比べ有効性は有意に劣っていた。

PTSDに対するVR療法の有効性~メタ解析

心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対する仮想現実を用いた治療(virtual reality exposure therapyVRET)は、注目すべき新たな治療法であるが、その有効性および安全性は明らかになっていない。中国・安徽医科大学のWenrui Deng氏らは、PTSD患者に対するVRETの有効性を調査し、関連する潜在的な調整因子を特定するため、システマティック・レビュー、メタ解析を行った。Journal of Affective Disorders2019101日号の報告。

 各種データベース(PubMedEmbaseWeb of ScienceCochrane LibraryPsycInfoScience DirectEBSCO)より検索を行った。ランダム化比較試験(RCT13件(654例)、単群試験5件(60例)を含む18件のPTSDに関する研究を特定した。

 主な結果は以下のとおり。

・主要有効性分析では、VRETは、PTSD症状コントロール状態患者と比較し、中程度のエフェクトサイズが検出された(g0.32795CI0.1050.550p0.01)。
・サブグループ分析では、アクティブコントロール群(g0.017)よりもインアクティブ群(g0.567)において、VRETの効果が大きかった。
・本知見は、抑うつ症状においても一致していた。
・用量反応関係が認められ、より多いVRETセッションで、より大きな効果が認められた。
PTSD症状に対するVRETの長期的な効果が認められており、フォローアップ3ヵ月(g0.697)および6ヵ月(g0.848)において症状の持続的な減少が認められた。
・単群試験の分析では、VRETPTSDに有意な影響を及ぼすことが示唆された。
・戦争関連のPTSD患者の多くでは、メタ解析の推定値およびその後の結論において不確実性が認められた。

 著者らは「VRETは、PTSD症状の有意な軽減が期待できる治療法であり、PTSD治療における実践は支持される」としている。

統合失調症や双極性障害の認知機能に対する睡眠の影響

精神疾患患者では、精神病性障害だけでなく睡眠障害や認知機能障害を併発し、機能やQOLに影響を及ぼす。ノルウェー・オスロ大学のJannicke Fjaera Laskemoen氏らは、統合失調スペクトラム障害(SCZ)および双極性障害(BD)において睡眠障害が認知機能障害と関連しているか、この関連性が睡眠障害のタイプ(不眠症、過眠症、睡眠相後退[DSP])により異なるか、この関連性が健康対照者と違いがあるかについて検討を行った。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2019105日号の報告。

 対象は、ノルウェー精神障害研究センター(NORMENT)研究より抽出された797例(SCZ457例、BD340例)。睡眠障害は、うつ病症候学評価尺度(IDS-C)の項目に基づき評価した。いくつかの認知ドメインとの関連は、別々のANCOVAを用いてテストした。認知障害との関連性が睡眠障害のタイプにより異なるかをテストするため、three-way ANOVAを実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・いくつかの共変量で調整した後、睡眠障害を有する患者では、睡眠障害のない患者と比較し、処理速度や認知抑制が有意に低いことが明らかとなった。
・睡眠障害と認知機能との関連性は、SCZBDで類似しており、不眠症と過眠症のいずれにおいても、処理速度や認知抑制への有意な影響が認められた。
・健康対照者では、睡眠障害と認知機能に関連性は認められなかった。

 著者らは「精神疾患患者における睡眠障害は、認知機能障害の一因となりうる。精神疾患患者の治療では、睡眠障害の治療が認知機能を保護するために重要であることを示唆している」としている。

遠隔オリゴ転移再発乳がんの予後および予後因子/日本癌治療学会

進行乳がん(ABC)のガイドラインの定義によるオリゴ転移がん(OMD)がNon-OMDNOMD)と比べて有意に予後良好であり、通常の再発乳がんの予後因子である「遠隔転移巣の根治切除の有無」「転移臓器個数」「転移臓器部位」「無病期間(DFI)」「周術期の化学療法の有無」がOMDにおいても予後因子であることが示唆された。がん研有明病院/隈病院の藤島 成氏が第57回日本癌治療学会学術集会(102426日)で発表した。

 一部の進行乳がんにおいて長期予後が得られる症例があり、そのような症例としてOMDHER2陽性乳がんが挙げられる。ABCのガイドラインにおけるOMDの定義は、転移個数が少なくサイズが小さい腫瘍量の少ない転移疾患とされており、その転移個数は5個以下となっているが、転移臓器の個数は定義されていない。OMDの転移臓器の個数は1つにすべきというドイツのグループからの意見もあり、その定義について議論されている。今回、藤島氏らはABCのガイドラインの定義によるOMDの予後を評価し、さらにOMDの予後因子を検討した。

 対象は、がん研有明病院で原発性乳がんの手術を受け200514年に遠隔再発を来した患者612例のうち、重複がん、両側乳がん、追跡不能例を除いた437例。ABCのガイドラインに基づき分類したOMDNOMDの予後を比較し、さらにOMDの予後因子を分析した。脳転移および転移個数5個以下でも根治切除不能と判断した症例はNOMDに分類した。

 主な結果は以下のとおり。

OMD133例、NOMD304例であった。
・再発時年齢中央値、DFI中央値、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体、HER2の発現は両群に有意差はなかった。
・サブタイプ別では全体として両群に有意差はなかったが、トリプルネガティブ(TN)についてOMD10.5%、NOMD20.4%と、OMDのほうが少なかった。
・転移部位について、肝転移、肺転移では両群に差はなかったが、骨転移、遠隔リンパ節転移はNOMDよりOMDで少なかった(どちらもp0.01)。
・再発後の初回全身療法はNOMDで化学療法が有意に多く(p0.01)、OMDは内分泌療法が有意に多かった(p0.01)
OMD症例の14例(10.5%)に遠隔転移巣の根治切除術が実施されており、14例中13例が1臓器のみの転移であった(肺転移:9例、肝転移:3例、骨転移:1例、子宮・卵巣:1例)。
・追跡期間中央値は40ヵ月(範囲:0150)、遠隔再発後の全生存期間(OS)中央値は、OMD76ヵ月)がNOMD33ヵ月)よりも有意に予後が良好だった(p0.01)。
OMDにおけるサブタイプ別のOS中央値は、luminal92ヵ月、luminal/HER2126ヵ月と、HER259ヵ月、TN52ヵ月より予後良好な傾向が認められた。
OMDにおけるOSに関する単変量比例ハザードモデル解析によると、ER陽性(p0.02)、周術期の化学療法なし(p0.01)、遠隔転移巣の根治切除あり(p0.04)、1臓器のみの転移(p0.01)、DFI 2年以上(p0.01)、肝転移なし(p0.04)、サブタイプがluminalもしくはluminal/HER2p0.03)が有意な予後良好因子であった。再発時年齢が50歳未満も予後良好な傾向がみられた(p0.07)。
・多変量比例ハザードモデル解析によると、周術期の化学療法なし(p0.04)、遠隔転移巣の根治切除あり(p0.03)、1臓器のみの転移(p0.01)、DFI 2年以上(p0.01)、肝転移なし(p0.05)が有意な予後良好因子であった。
・予後良好因子が2個以下と3個以上で分類すると、遠隔転移後のOS中央値は3個以上が106ヵ月で、2個以下の34ヵ月に比べて有意に予後が良好であった(p0.01)。

 藤島氏は、「ABCのガイドラインに基づいてOMDNOMDに分類すると、OMDは有意に予後良好である。しかし、OMD患者の予後は臨床的因子によって異なるため、OMD患者の中でも臨床的因子を考慮した異なる治療戦略が必要ではないか」と述べた。

大手術時の麻酔深度、1年死亡率と関連する?/Lancet

大手術後の合併症リスクが高い患者において、浅い全身麻酔は深い全身麻酔と比較して1年死亡率を低下しないことが示された。ニュージーランド・Auckland City HospitalTimothy G. Short氏らによる、高齢患者を対象に検討した国際多施設共同無作為化試験「Balanced Anaesthesia Study」の結果で、著者は「今回の検討で、処理脳波モニターを用いて揮発性麻酔濃度を調節した場合、広範囲にわたる麻酔深度で麻酔は安全に施行できることが示された」とまとめている。麻酔深度の深さは、術後生存率低下と関連することがこれまでの観察研究で示されていたが、無作為化試験でのエビデンスは不足していた。Lancet誌オンライン版20191020日号掲載の報告。

術後合併症リスクが高い高齢者で、浅麻酔と深麻酔での1年全死因死亡率を比較

 研究グループは7ヵ国73施設において、明らかな併存疾患を有し手術時間が2時間以上かつ入院期間が2日以上と予想される60歳以上の患者を登録し、大手術後の合併症リスクが高い患者を、bispectral indexBIS)を指標として浅い全身麻酔(浅麻酔群:BIS50)または深い全身麻酔(深麻酔群:BIS35)の2群に手術直前に無作為に割り付けた(地域別の置換ブロック法)。なお、患者および評価者は、割り付けに関して盲検化された。また、麻酔科医は、各患者の術中の平均動脈圧を適切な範囲に管理した。

 主要評価項目は、1年全死因死亡率で、解析にはlog-rank検定およびCox回帰モデルを使用した。

1年全死亡率は両群で有意差なし

 20121219日~20171212日の期間に、スクリーニングされ適格基準を満たした18,026例中、6,644例が登録および無作為化された(intention-to-treat集団:浅麻酔[BIS50]群3,316例、深麻酔[BIS35]群3,328例)。

 BIS中央値は、浅麻酔群で47.2(四分位範囲[IQR]43.750.5)、深麻酔群で38.836.342.4)であった。平均動脈圧中央値はそれぞれ84.5mmHgIQR78.091.3)および81.0mmHg75.487.6)であり、浅麻酔群が3.5mmHg4%)高かった。一方、揮発性麻酔薬の最小肺胞濃度は、それぞれ0.620.520.73)および0.880.741.04)であり、浅麻酔群が0.2630%)低かった。

 1年全死因死亡率は、浅麻酔群6.5%(212例)、深麻酔群7.2%(238例)であった(ハザード比:0.8895%信頼区間[CI]0.731.07]、絶対リスク低下:0.8%[95CI:-0.52.0])。

 Grade3の有害事象は、浅麻酔群で954例(29%)、深麻酔群で909例(27%)に、Grade4の有害事象はそれぞれ265例(8%)および259例(8%)に認められた。最も報告が多かった有害事象は、感染症、血管障害、心臓障害および悪性新生物であった。

 なお、著者は、両群で目標BIS値に到達していなかったこと、1年全死因死亡率が予想より2%低かったこと、揮発性麻酔薬で維持した全身麻酔に限定され、プロポフォール静脈投与による麻酔の維持に関する情報がないことなどを研究の限界として挙げている。



肥満は動脈壁に直接ダメージを与える?

肥満が動脈壁に直接ダメージを与え、心疾患の発症につながるメカニズムの一端を、英オックスフォード大学心臓血管内科教授のCharalambos Antoniades氏らが明らかにした。肥満の心疾患患者では、動脈周囲の脂肪組織で「WNT5A」と呼ばれるタンパク質が多く産生され、血管内に有害な影響を与えている可能性があることが分かったという。同氏らは、新たな治療法につながる知見だと期待を示している。詳細は「Science Translational Medicine918日号に掲載された。

 この研究結果はまだ初期段階のものだが、Antoniades氏は「心疾患の治療や予防戦略でWNT5Aは新たな標的になり得る」とし、「脂肪細胞におけるWNT5Aの産生を抑制したり、WNT5Aが血管壁に与える有害な影響を阻害したりする治療法を開発できれば、肥満を抑え、心筋梗塞や脳卒中を予防できるかもしれない」と話している。

 これまで数多くの研究で、肥満の人は、やせた人と比べて心疾患リスクが高いことが明らかにされてきた。米国心臓病学会(ACC)によると、肥満は心疾患の原因となる2型糖尿病や高血圧、睡眠時無呼吸などのリスクを高めるため、間接的に心疾患リスクを上昇させると考えられてきた。それに対し、今回の研究は、肥満が血管に直接ダメージを与えている仕組みの一端を明らかにしたものだとAntoniades氏は説明している。

 Antoniades氏らは今回、心臓手術を受けた1,004人の心疾患患者から採取した血液と組織サンプルを分析した。その結果、肥満患者では血中のWNT5Aレベルが著しく高いことが分かった。また、同氏らは、WNT5Aは特に動脈周囲にある脂肪組織から大量に放出されていることを突き止めた。さらに、WNT5Aレベルが高い患者では、その後35年の間に、動脈内にプラークがより速く蓄積することも明らかになった。

 この研究結果からは、WNT5A自体が心疾患の原因であると断定はできないが、Antoniades氏らは実験室でより直接的なエビデンスを得ることができたと話す。血管細胞をWNT5Aに曝露させたところ、「より有毒な物質が産生され、プラークの蓄積を促進する状態に変化した」のだという。

 今回の報告を受けて、米ノースウェル・ヘルス傘下のサンドラ・アトラス・ベイス心臓病院のBenjamin Hirsh氏は「このタンパク質は、肥満患者で多く産生されるだけではなく、血管に損傷を与えてしまうものだ」と話し、「肥満によって血管が損傷を受ける経路は、おそらくWNT5Aを介した経路だけだろう」と考察。その上で、「この研究結果は、肥満が有害な影響をもたらすメカニズムの解明を前進させる重要な一歩となるものだ」としている。

 一方、米退役軍人医療センター・ヒューストンの循環器医で、ACCの予防部門とリーダーシップ評議員会のトップでもあるSalim Virani氏は、「新たな治療につながる可能性があるため、肥満と心疾患が関連するメカニズムの解明は重要だ」とした上で、薬物治療よりも健康的な生活習慣を重視すべきだと強調している。

 また、Virani氏は「肥満は一部のがんを含む他の疾患のリスク上昇にも関連するため、体重管理は重要だ」と説明。ただ、どれだけ減量できたかにかかわらず、定期的な運動を含めた健康的な生活習慣を心掛ければ身体的および精神的な健康が増進されるとし、「肥満で運動不足の生活よりも、肥満でも活動的な生活を送っている方が良い」と話している。

[2019919/HealthDayNews]



ハッカーが医療機関を狙う理由

ハッカーたちが医療機関のデータベースを攻撃するのは、患者の医療記録ではなく、個人情報や財務情報が狙いであることが、米ミシガン州立大学と米ジョンズ・ホプキンス大学の共同研究で明らかになった。研究の詳細は「Annals of Internal Medicine924日オンライン版に掲載された。

 米ミシガン州立大学会計・情報システム学教授のJohn Xuefeng Jiang氏らのチームは今回、過去10年間に全米の医療機関で発生した1,461件の情報漏洩事例について調べた。情報漏洩の被害にあった患者数は、計16900万人を超えていた。

 同氏らは漏洩した情報を、(1)氏名や連絡先のほか、社会保障番号、運転免許証番号、生年月日などの個人情報、(2)医療費や請求日、クレジットカードや銀行口座の番号などの情報を含む財務情報、(3)診断や治療に関する医療記録の3つのカテゴリーに分類して分析した。

 その結果、情報漏洩の71%は、なんらかの個人情報や財務情報が標的であったことが明らかになった。Jiang氏によれば、これらの情報は個人情報の不正使用や金融詐欺などに使われていることが多かったという。一方、医療記録に関する情報を盗まれた患者は約200万人で、情報漏洩全体に占める割合は2%程度に過ぎないことも分かった。

 Jiang氏は、「被害者の話によれば、こうした情報への不正アクセスから経済的な損失や信用問題につながった事例がほとんどだった」と説明。また、「犯罪者たちは、医療機関のデータベースから漏洩した患者の社会保障番号や生年月日を使って、不正に税金の還付申告を行ったり、クレジットカードを申し込んだりしている可能性がある」と付け加えている。

 これらの結果を踏まえ、Jiang氏らは「情報漏洩の被害にあった医療機関には、盗まれた情報の種類について公表することを義務付けるべきではないか」と主張している。また、Jiang氏と共同で研究を行った米ジョンズ・ホプキンス大学ビジネススクール会計学准教授および同大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のGe Bai氏は、「敵の狙いを理解しなければ、戦いに勝つことはできない。ハッカーたちがどのような情報を狙っているのかを知ることが、患者情報を保護するための取り組みを強化するのに不可欠だ」と述べている。

[2019924/HealthDayNews]



抗うつ薬は抑うつ症状より不安症状の軽減に効果あり?

抗うつ薬のセルトラリン(日本での商品名ジェイゾロフト)を使用した人の多くは、以前よりも気分が良くなったと報告する。しかし、こうした効果は、抑うつ症状ではなく不安症状を軽減する同薬の作用によるものである可能性が高いことが、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)疫学精神医学教授のGlyn Lewis氏らが行った臨床試験により明らかになった。研究の詳細は、「Lancet Psychiatry919日オンライン版に掲載された。

 今回の試験は、英国4都市のプライマリケアの医療機関の患者653人を対象に、2015年から2017年にかけて実施された。対象者は1874歳(平均年齢39.7歳、59%が女性)。罹病期間はさまざまであったが、臨床面接スケジュール改訂版(Clinical Interview Schedule -RevisedCIS-R)を用いた評価では、54%がうつ病、46%が全般性不安障害、15%が混合性不安抑うつ状態の基準を満たしていた。

 Lewis氏らは、対象者の半数をセルトラリンを12週間使用する群に、残る半数をプラセボを使用する群に割り付けた。セルトラリンは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と呼ばれる抗うつ薬の一つである。対象者には、試験開始から2612週間後に質問票を用いた抑うつ症状の評価を行い、全般性不安障害のスクリーニングも実施した。

 その結果、試験開始から6週間の時点では、セルトラリン使用群では抑うつ症状は5%しか軽減しておらず、統計学的に有意な効果は示されなかった。それに対し、不安症状は6週間後に21%軽減し、12週間後には23%軽減した。

 抑うつ症状に対しても、12週間後にはセルトラリンの効果が現れることが示唆されたが、Lewis氏らはその効果は弱いものだとしている。ただし、同氏らは、抑うつ症状を抱える患者のほとんどに不安症状もあることを指摘。また、セルトラリンを使用した患者は、精神面に関連した生活の質(QOL)の大幅な改善も実感していたという。さらに、全般的に気が楽になったと報告する患者は、プラセボ群に比べてセルトラリン使用群は2倍に上り、重篤な副作用もみられなかった。

 こうした結果を踏まえLewis氏らは、「セルトラリンを使用しても6週間以内では抑うつ症状の軽減は期待できないようだ。しかし、不安症状に対しては早期から軽減効果が見られた上に、QOLや自己評価による精神面での健康についても改善が見られた。これは臨床的に重要な意味を持つだろう」と結論付けている。さらに、「研究結果は、本格的なうつ病や不安障害とは診断されないような、軽症から中等症までの抑うつ症状を有する患者も含め、これまで考えられていたよりも幅広い患者層にSSRIを処方することを支持するものである」とした上で、「抑うつ症状の治療としてセルトラリンなどのSSRIを処方することを医師は躊躇すべきでない」と主張している。

 今回の報告を受けて、専門家の一人で米ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のTurhan Canli氏は、「結局のところ、広く使用されている抗うつ薬の多くは、抑うつ症状に対してそれほど効果がないのかもしれない。しかし、この試験ではセルトラリンによって不安症状の軽減やQOLの向上が確認されており、特に不安症状を抱えている患者では同薬が有益である可能性がある」と話している。

[2019923/HealthDayNews]