片頭痛に対するubrogepantの痛み消失効果は?

前兆症状の有無にかかわらず、片頭痛に対してubrogepant投与はプラセボ投与と比べて、2時間後に痛みが消失した人の割合は有意に高率であり、最もつらい片頭痛関連の症状がなかった人の割合は有意に低率だった。米国・メイヨー・クリニックのDavid W. Dodick氏らが、1,672例を対象に行った無作為化二重盲検プラセボ対照パラレル群間比較試験の結果で、NEJM2019125日号で発表した。ubrogepantは、経口小分子カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬で、急性期の片頭痛治療に有効であることが示されていた。

ubrogepant 50mg100mg vs.プラセボの有効性を評価

 研究グループは、前兆症状の有無にかかわらず片頭痛を有する成人1,672例を対象に、ubrogepantの有効性、安全性、副作用プロファイルを評価する試験を行った。

 被験者を無作為に1113群に分け、プラセボ(559例)、ubrogepant 50mg556例)、ubrogepant 100mg557例)をそれぞれ単回投与した。

 有効性の主要エンドポイントは2つで、初回投与後2時間時点での痛みの消失と、最もつらい片頭痛関連症状がないこととした。副次エンドポイントは、痛みの緩和(投与後2時間時点)、痛みが緩和した状態の持続(224時間)、痛みのない状態の持続(224時間)、2時間時点で片頭痛関連の症状(羞明、音過敏、悪心)がないこととした。

2時間後の痛み消失、プラセボ群12%に対し、ubrogepant19.221.2

 投与後2時間時点で痛みが消失したのは、プラセボ群11.8%に対し、ubrogepant 50mg19.2%(多様性補正後のp0.002、)、ubrogepant 100mg21.2%(同p0.001)と、いずれのubrogepant群とも有意に高率だった。

 投与後2時間時点で、最もつらい片頭痛関連の症状がなかった人の割合も、プラセボ群27.8%に対し、ubrogepant 50mg38.6%、ubrogepant 100mg37.7%と有意に高率だった(いずれも、p0.002)。

 初回投与後、または任意による2回目投与後48時間以内の有害事象発生率は、プラセボ群12.8%、ubrogepant 50mg9.4%、ubrogepant 100mg16.3%だった。なかでも発現が高頻度だったのは、悪心、傾眠、口内乾燥で(0.44.1%)、これらはとくにubrogepant 100mg群での発現頻度が高かった(2.14.1%)。

 両ubrogepant群で投与後30日以内に発生した重篤な有害事象としては、虫垂炎、自然流産、心嚢液貯留、痙攣発作が報告されたが、いずれも投与後48時間以内の発生報告例はなかった。

鉢植え植物は室内の空気をきれいにする?

鉢植え植物に室内の空気の質を良くする効果は期待できないようだ。一般に空気清浄効果があると考えられている観葉植物だが、自宅やオフィスの空気の質を良くするには、室内に植物を置くよりも自然換気を行う方がはるかに高い効果が得られることが、米ドレクセル大学建築環境工学准教授のMichael Waring氏らによる研究で示された。この研究結果は、「Journal of Exposure Science and Environmental Epidemiology116日オンライン版に掲載された。

 今回の研究は、過去30年間に実施された、鉢植え植物が室内の揮発性有機化合物(VOC)量に及ぼす影響を検討した12件の研究結果を分析したもの。Waring氏らは、これらの研究から得られたデータをクリーンエア供給率(CARD)と呼ばれる空気清浄機の性能を表す指標に換算した。

 分析の結果、自然換気か換気装置によるものかにかかわらず、換気によって室内のVOC濃度が低下する速度は、植物が空気中からVOCを除去する速度を大幅に上回っていることが明らかになった。

 結果を受けてWaring氏は、「鉢植え植物が部屋の空気をきれいにするというのは、かねてより信じられてきたよくある誤解の1つだ。植物に優れた力があるのは確かだが、自宅やオフィスの空気の質に効果をもたらすほど素早く室内の空気を清浄化することはできない」と述べている。

 研究チームによると、鉢植え植物には空気清浄効果があるという誤解は、1989年にNASAが発表した「植物は発がん性化学物質を空気から除去するのに役立つ可能性がある」とする研究結果がきっかけで広まったのではないかという。しかし、この研究でもその他の同様の研究でも、実験が行われたのは締め切った空間であり、実際のオフィスや家庭の環境とは共通点がほとんどないものであった。

 また、これらの研究では植物がVOC濃度を徐々に低下させることがデータとして示されたが、自然換気が行われる室内や換気設備の備わった室内に実際に植物を置いた場合はどうなるのかまでは検討されていなかった。研究チームが計算したところ、建物の空気処理システムによる空気清浄能力、あるいは単に家の窓をいくつか開けるだけの換気に匹敵する効果を鉢植え植物から得るには、床面積1平方メートル当たり1001,000鉢が必要であるという。

 Waring氏は「このことは、科学的知見がいかに誤解につながりやすいかを示す一例である。それと同時に、科学研究において、身の回りで実際に起こっていることの理解につながる確かなデータに近づくためには、常に結果に疑問を持ち、検討を重ねていく必要があることを示す好例でもある」と話している。

[20191112/HealthDayNews]

スタチンは高齢者の脳に有害ではない?

コレステロール低下薬のスタチン系薬(以下、スタチン)が思考力や記憶力の低下をもたらすのではないかという広く行き渡った懸念には根拠がないことを示唆する新たな研究が、セント・ビンセント病院(オーストラリア)のKatherine Samaras氏らにより発表された。研究では、認知症リスクのある一部の人では、アトルバスタチン(商品名リピトール)やロスバスタチン(同クレストール)などのスタチンにより記憶力や認知機能が改善する可能性も示された。詳細は「Journal of the American College of Cardiology1118日オンライン版に発表された。

 心疾患や脂質異常症などの治療でスタチンを使用している人は何百万人もいる。しかし、スタチンが記憶力の低下をもたらすことを示唆する複数の研究結果が報告されたことを受け、米食品医薬品局(FDA)は2012年、全てのスタチンに対し黒枠警告の表示を指示した。

 Samaras氏らは今回、高齢者の認知機能に関する研究(Sydney Memory and Aging Study)に参加した7090歳の男女1,037人のデータを用いて、スタチンの使用と記憶力や認知機能の低下との関連を調べる研究を実施した。対象者のうち約600人がスタチンを平均9年にわたり使用していた。

 研究開始時に全ての参加者が情報処理速度や言語能力などの記憶力や認知機能の検査を受けていたが、スタチンの使用者と非使用者の間に差は認められなかった。また、一部の参加者はMRI検査で脳容積を測定したが、2年にわたってスタチンの使用者と非使用者の間に脳容積の有意差は認められなかった。さらに、6年にわたってスタチンの使用者と非使用者の間に記憶力や認知機能の有意差は認められなかった。

 一方、研究期間中にスタチンの使用を開始した99人では、スタチンは記憶力低下の抑制に関連していることが明らかになった。また、予測通りの結果ではあるが、心疾患患者ではスタチン使用により心筋梗塞リスクが低下していた。さらに、心疾患患者では、スタチンの非使用者と比べて使用者で記憶力の低下が緩やかであることも示された。

 そのほか、心疾患や糖尿病など認知症のリスク因子を有する高齢者において、スタチンの非使用者と比べて使用者では認知機能低下の進行が遅いことも分かった。また、アルツハイマー病リスクを高める因子であるAPOE4遺伝子を有する高齢者においても、スタチンは認知機能の低下を有意に遅らせることが示された。なお、心疾患のない高齢者における記憶力の低下率は、スタチンの使用者と非使用者で同程度であった。

 こうした結果を受けSamaras氏は、「高齢者の大規模集団において、6年にわたって記憶力を含むさまざまな側面で認知機能の低下は見られなかった」と結論付けている。ただし、同氏らは、この研究が観察研究であることを強調。「強い関連が認められても決定的な結果とみなすことはできない」として慎重な解釈を求めた上で、「スタチンを使用している人で、同薬が記憶力や認知機能に悪影響を与えるのではないかと不安に感じている人がいれば、かかりつけ医に相談すべきだ。ただ、全般的に今回の研究では極めて心強い結果が得られた」と話している。

 この研究の付随論評の著者の一人で、米ウェイル・コーネル・メディシンのCostantino Iadecola氏は、脳は80%が脂質であるため、脂質の変化に非常に敏感であるとし、「コレステロールを調節すれば脳に影響が及ぶのは驚くべきことではない」と話す。ただし、同氏は「スタチンの認知機能に対する保護作用に関しては、さらなる研究で検証する必要がある」との見解を示している。

[20191118/HealthDayNews]



縫合糸に代わる「両面テープ」を開発

手術などでできた傷口をふさぐ際、針や糸を使わず両面テープを貼るだけでよい時代が来るかもしれない――。米マサチューセッツ工科大学(MIT)機械工学・土木環境工学准教授のXuanhe Zhao氏らは、傷口の縫合処置に用いる医療用両面テープを開発。動物実験で、テープを貼ると傷口の組織が数秒で接着するという有望な結果が得られたと「Nature1030日号に報告した。この両面テープは、縫合糸に取って代わることが期待されるという。

 Zhao氏によれば、世界で行われる外科手術は年間23000万件以上に上り、その多くでは傷口を縫合糸で縫い合わせる処置が施されているという。しかし、同氏は「針と糸を用いて縫合すると組織にストレスを与えるほか、感染症や痛み、瘢痕の原因となることがある」と指摘。「われわれは、縫合糸とは根本的に異なるアプローチを提案している」と説明している。

 Zhao氏らが開発した両面テープは、生体高分子(ゼラチンまたはキトサン)とポリアクリル酸から成るもので、クモが濡れた状態の獲物を捕らえるのに用いる粘着性物質に着想を得た。同氏らがマウスやラット、ブタの組織を使った実験を行った結果、傷口に両面テープを貼ってから5秒以内に、肺や腸などの組織はしっかりと接着することが分かった。

 外科用縫合糸は、一部の組織の縫合には適さず、患者によっては合併症を引き起こすこともあるという。今回の研究結果を踏まえ、Zhao氏らは「この両面テープが縫合糸に代用される日が来るかもしれない」と期待を寄せる。

 また、従来の液状組織接着剤は接着するまでに数分かかり、体の他の部位に液が漏れるといったデメリットがあったが、この両面テープを使うと、組織ははるかに速く接着する。さらに、実験の結果、両面テープは、心臓などの臓器に医療機器を植え込む際にも活用できる可能性も示された。

 論文の筆頭著者を務めた同大学のHyunwoo Yuk氏は「私たちが開発した両面テープは、組織にダメージを与えたり、二次性の合併症を引き起こしたりすることなく、さまざまな部位で利用できる。そのため、植え込み型心電計や薬物送達デバイスの適用を広げ、より簡便かつ効率的な方法でこれらを使えるようになるだろう」と述べている。

 Zhao氏らは今後も、動物実験を続けていくとともに、医師との共同研究でこの両面テープの新たな可能性を探っていく予定だ。ただし、基礎研究で得られた結果は、ヒトに適用できるとは限らない点に注意が必要だとしている。

[20191031/HealthDayNews]

血液1滴で13種のがん検出、2時間以内に99%の精度

東芝は1125日、血液中のマイクロRNAを使ったがん検出技術を開発したと発表した。同社によると、独自のマイクロRNA検出技術を使った健康診断などの血液検査により、生存率の高いStage 0の段階でがんの有無を識別することが期待できるという。早期の社会実装に向け、来年から実証試験を進めていく。

 リキッドバイオプシーの解析対象となるマイクロRNAを巡っては、2014年に「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクト」が始動。国立がん研究センターや国立長寿医療研究センターが保有するバイオバンクを活用し、膨大な患者血清などの検体を臨床情報と紐づけて解析。血中マイクロRNAをマーカーとした検査システムの開発が進んでいる。この研究成果をベースに、国内メーカー4社が、日本人に多い13種のがんについて、血液検体から全自動で検出するための機器や検査用試薬、測定器キットなどの開発に取り組んでいる最中だ。

 東芝も本プロジェクトに当初より参画。東京医科大学と国立がん研究センターとの共同研究において、このほど膵臓がんや乳がんなど13種類のがん患者と健常者について、独自の電気化学的なマイクロRNA検出技術を活用し、2時間以内に99%の精度で網羅的に識別することに成功した。この中には、Stage 0の検体も含まれていたという。本研究により、13がん種いずれかのがんの有無について、簡便かつ高精度に検出するスクリーニング検査の実現が期待される。独自のマイクロRNAチップと専用の小型検査装置を用いることで、検査時間を2時間以内に短縮し、即日検査も可能になるという。

頭痛の裏に失明リスクのある眼疾患/日本頭痛学会

眼の痛みがあったとしても診断時にその訴えがあるとは限らず、併存疾患の多い高齢者ではとくに鑑別が困難だが、頭痛診療で頭に留めておきたい眼疾患がある。第47回日本頭痛学会(111516日)の「頭痛診療のクロストーク・連携」と題したワークショップで、川崎医科大学附属病院眼科の家木 良彰氏が頭痛診療と眼疾患について講演した。

長期間高眼圧が続くと、視神経のダメージは不可逆

 はじめに家木氏は、突然の嘔吐と頭痛を訴え受診した80代女性の症例を紹介した。精査加療のため入院し、他疾患による頭痛として退院。退院後も吐き気、頭痛、眼痛が持続するため、10日以上経過後に初めて眼科を受診した。眼圧を測定したところ右眼圧60mmHgで、急性閉塞隅角緑内障と診断。同日中に白内障手術が施行された。

 翌日には眼圧が正常化し、頭痛・眼痛・吐き気は改善したが、視力は光覚弁(暗室にて眼前で照明を点滅させ明暗を弁別できる視力で、失明に含まれる)となった。高眼圧が続くことによる視神経のダメージは不可逆であり、「もっと早い眼科受診で失明を回避できた可能性がある。このような症例は、12年に1例くらいの頻度で残念ながら遭遇することがある」と同氏。一方で、最初の受診時に眼の痛みや不調に関する訴えがない場合は、眼科疾患の診断が難しいと指摘した。

緑内障のなかでも特殊な病態、急性閉塞隅角緑内障の所見とは

 緑内障患者の主な特徴としては、眼圧が高い(ただし眼圧が正常である正常眼圧緑内障患者は日本では多い)、年齢が高い(40歳以上で要注意)、近視が強い、初期には自覚症状がほとんどない、などが挙げられる。40歳以上の日本人における緑内障有病率は約5%とされ、日本人の失明原因の第1位となっている。

 このうち、急性閉塞隅角緑内障の病態は少し特殊である。高度眼圧上昇(多くは40mmHg以上)がみられ、症状としては眼痛・頭痛・悪心・嘔吐などがある。緑内障の他の病型と異なり近視よりも遠視の人がなりやすく、虹輪視(電球などを見たときに、その周囲に光の輪のようなものが見える)や霧視(かすみがかって見える)、高度の視力低下がみられる。しかし、とくに高齢者では患者側から自主的にそれらの申告がないこともあり、内科的あるいは脳外科的疾患の誤診につながってしまうことがあるという。

 家木氏は、急性閉塞隅角緑内障の鑑別の参考に、近視の場合はほとんどが開放隅角、白内障手術が済んでいたら開放隅角、遠視で背の低い高齢女性に閉塞隅角が多い、といった情報を紹介。診断は眼圧を測定すれば可能であり、たとえ結果が眼科と関係なかったとしても除外診断には役立つため、疑わしい場合は積極的に眼科医にコンサルトしてほしいと話して講演を締めくくった。



人工神経で脳の障害部位をバイパスして手に接続――脳卒中後遺症に光

本来は手の動きを司らない脳部位と手の筋肉を人工神経接続システムでつなぎ、麻痺した手を動かせるようにする技術が開発された。公益財団法人東京都医学総合研究所の西村幸男氏らによる研究の成果によるもので、詳細は「Nature Communications」に1016日オンライン掲載された。

 西村氏らが開発した人工神経接続システムは、脳の神経細胞と似た役割をするコンピューターを用いて、脳に近い側の神経細胞の情報を受け取り(入力)、その情報を末梢側の神経細胞へと伝える仕組み。脳表面の複数の領域からの電気信号を記録し、記録された信号から特定の脳活動を見つけ出して、脳活動パターンを検出。その脳活動パターンを電気刺激に変換し、筋肉へ伝えることができる。

 今回の研究では、脳梗塞を発症したモデル動物を作成。上下肢の片麻痺のある状態で、神経経路が損傷している部位を人工神経接続システムによってバイパスし接続させた。すると、システムを使い始めてからおよそ10分で、麻痺した上肢(手)を自分の意思で動かすことができるようになった。

 さらに、顔や肩の運動を司る脳領域から人工神経接続システムに入力しても、手の運動をコントロールできた。また、もともとは運動機能を持たずに感覚機能を担う体性感覚野という領域に接続しても同様に、手を動かすことができた。これは、脳のどの領域であっても運動野手領域として、新たな役割を担わすことができることを意味する。

 このほか、このような変化の過程において、人工神経接続システムへの入力の源になる大脳皮質の脳活動は、麻痺した手の運動が上達するのにあわせて手の運動を司る脳領域が小さく集中するような適応が起こることも観察された。西村氏らは脊髄損傷モデル動物を用いた以前の研究で、人工神経接続システムの有効性を確認しているが、今回の研究では脳自体を損傷した脳梗塞モデル動物でもこのシステムが神経経路の代わりになることが示された。

 今回の研究の成果について同氏は、「コンピューターと脳とを融合させる医工学によって新たな治療の可能性が開かれた」とし、「今後は、長期にわたる人工神経接続システムで脳損傷・脊髄損傷から免れた神経のつながりを強化し、人工神経接続システムがなくても身体を自分の意思で動かせるように回復できるかどうかを検証する必要がある」と述べている。

[20191028/HealthDayNews]

少量飲酒の影響は脂肪肝の有無で異なる

少量の飲酒は体に良いと言われるが、脂肪肝の有無でその影響が異なる可能性を示す研究結果が「Biomedical Reports11月号に掲載された。男性において脂肪肝がある人では少量の飲酒に良い面がある一方で、脂肪肝のない人では高血圧のリスクが高くなるかもしれないという。

 市立福知山市民病院消化器内科の原祐氏らは、定期健康診断の受診者データを基に、少量の飲酒習慣の影響を脂肪肝の有無別に検討した。対象者は20171年間の男性の健診受診者2,096人から、酒類を1日にアルコール換算で20g以上摂取している人や肝炎患者などを除いた1,190人。このうち505人(42.4%)が非飲酒者、685人(57.6%)が少量飲酒者で、腹部超音波検査により561人(47.1%)が脂肪肝と判定された。

 まず、非飲酒者と少量飲酒者を単純に比較すると、年齢やBMI、喫煙者率、高血圧の有病率、尿酸値、ASTALT(肝機能の指標)などは有意差がなかった。脂質異常症やIGT(糖尿病予備群)、脂肪肝、CKD(慢性腎臓病)、MetS(メタボリックシンドローム)の有病率、HbA1c(糖尿病の指標)、Fib-4(肝臓線維化の指標)、および蛋白尿を有する割合などは、少量飲酒群が有意に低かった。定期的な運動習慣のある人の割合は少量飲酒群が有意に高かった。

 次に、脂肪肝の有無別に非飲酒者と少量飲酒者を比較検討。すると、脂肪肝のない群では飲酒習慣の違いによる年齢やBMIに有意差はないものの、高血圧の有病率は、非飲酒者26.6%、少量飲酒者が35.3%で、少量飲酒者の方が有意に高かった。

 一方、脂肪肝のある群では、脂質異常症、MetSIGTの有病率は少量飲酒者の方が低く、群間に有意差があった。CKDの有病率も有意でないが少量飲酒者の方が低かった。年齢やBMIに関しては飲酒習慣の違いによる有意差はなかった。

 年齢、定期的な運動習慣、喫煙、使用中の薬剤で調整しオッズ比(OR)を見ると、脂肪肝のない群において少量飲酒者の高血圧のOR1.7395%信頼区間1.042.88)だった。脂肪肝のある群の少量飲酒者においては、脂質異常症0.640.440.95)、MetS0.630.440.92)、IGT0.570.370.88)、CKD0.580.360.94)だった。

 これらの結果を踏まえ原氏らは、「脂肪肝の有無により少量飲酒の影響が異なることが示された。脂肪肝のない人では少量飲酒で高血圧のリスクが上昇し、脂肪肝のある人ではMets関連因子の有病率を低下させる可能性がある」と結んでいる。なお、脂肪肝のある群で少量飲酒がMets関連因子に好影響を及ぼす機序については、「脂肪肝はMetsの肝臓における表現型であり、実際に本検討でもMets有病率は脂肪肝のある群で高かった」という事実に着目し、有病率が高いために少量飲酒によって生ずるアディポネクチンレベルの上昇などの良い面が、脂肪肝のない群よりある群でより明確に表れた可能性があるとしている。

[2019115/HealthDayNews]

降圧薬と認知症リスク

認知症は、予防や治療戦略が難しい健康問題である。認知症を予防するうえで、特定の降圧薬使用が、認知症リスクを低下させるともいわれている。米国・国立衛生研究所のJie Ding氏らは、特定の降圧薬による血圧低下が認知症リスクに及ぼす影響について検討を行った。The Lancet. Neurology誌オンライン版2019116日号の報告。

 198011日~201911日までに公表された適格な観察研究より参加者データを収集し、メタ解析を実施した。適格基準は、コミュニティーの成人を対象としたプロスペクティブコホート研究、参加者2,000人超、5年以上の認知症イベントデータの収集、血圧測定および降圧薬の使用、認知症イベントに関する追加データを収集するための対面試験、死亡率のフォローアップを含む研究とした。ベースライン時の高血圧(SBP140mmHg以上またはDBP90mmHg以上)および正常血圧において、5つの降圧薬クラスを用いて、認知症やアルツハイマー病との関連を評価した。降圧薬服用確率に関連する交絡因子を制御するため、傾向スコアを用いた。研究固有の効果推定値は、変量効果のメタ解析を用いてプールした。

 主な結果は以下のとおり。

・フォローアップ期間722年間(中央値)のコミュニティーベースプロスペクティブコホート研究6件より得られた、55歳超の非認知症成人31,090人を解析対象とした。
・認知症診断は3,728件、アルツハイマー病診断は1,741件であった。
・高血圧群(15,537人)では、降圧薬を使用している患者は、使用していない患者と比較し、認知症発症リスク(ハザード比[HR]0.8895CI0.790.98p0.019)およびアルツハイマー病発症リスク(HR0.8495CI0.730.97p0.021)の低下が認められた。
・認知症リスクに対して、降圧薬のクラス間で有意な差は認められなかった。
・正常血圧群(15,553人)では、降圧薬使用と認知症またはアルツハイマー病との間に関連は認められなかった。

 著者らは「高血圧患者に対する降圧薬使用は、認知症リスクを低下させる。しかし長期の観察では、特定の降圧薬が、他の降圧薬と比較し、認知症リスク低下に効果的であることは示唆されなかった。このことから、今後の高血圧臨床ガイドラインでは、認知症リスクに対する降圧薬の有益な効果を考慮すべきである」としている。

電子タバコ関連の肺疾患が1,888件まで急増

米疾病対策センター(CDC)は1031日、電子タバコの使用に関連した重篤で死に至る可能性もある肺疾患の報告が1,888件に達したと発表した。1週間前の1,604件から急増し、アラスカ州を除いた全ての州から症例が報告されているという。

 報告によれば、電子タバコ関連の肺疾患による死亡者数もこの1週間で3例増加し、24州およびコロンビア特別区から累計37例の報告があった。死亡者の年齢は1775歳で、平均年齢は49歳であった。

 今回はこれらの肺疾患を引き起こす要因に関する新たなデータは発表されなかったが、CDCは先週、報告された症例の86%が大麻の主な有効成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)を含有する製品を使用していたことを明らかにしている。特に若い男性の症例が多く、全体の70%が男性で、79%が35歳以下だった。

 CDCの調査からは、THCが電子タバコ関連の肺疾患の最も疑わしい要因と目されているが、最近の研究では別の要因が関与している可能性も示唆されている。例えば、米メイヨー・クリニックのBrandon Larsen氏らは10月初めに、17人の重症例(うち2人は死亡)を対象とした研究結果を「New England Journal of Medicine」で報告。この研究では、ほとんどの症例に電子タバコのリキッドに含まれる汚染化学物質や有毒な副産物などの有害物質が関与していた可能性が高いことが示されたという。

 なお、CDC副所長のAnne Schuchat氏は「THCを含まないニコチン含有製品も、肺疾患の原因にはならないとは言い切れない。したがって、CDCは引き続き、全ての電子タバコ製品の使用を控えることを推奨する」と強調している。

 現時点で明らかなのは、こうした肺疾患は突然、重篤な状態に陥る可能性があるということだ。主な症状は咳や息切れ、胸痛など。患者の中には呼吸困難のため酸素吸入や人工呼吸器が必要になった人もいた。

 CDCによる今回の新しいデータが公表される2週間前には、米国で最も売れている電子タバコ製品「Juul」のうち、フルーツなど一部のフレーバー付き製品の販売が中止されることが発表された。AP通信によれば、このような企業側の決断の背景には、フレーバー付きのニコチン製品が、ティーンエージャーのニコチン中毒や電子タバコ蔓延のきっかけとなっているとの批判が広がったことが挙げられる。また、トランプ政権も、ほぼ全てのフレーバー付き電子タバコ製品の販売を禁止する方針を発表している。

 ただ、「Juul」で販売中止となるのはマンゴーやクリーム、フルーツ、キュウリのフレーバーが付いた製品のみで、人気のミントやメントールについては引き続き販売されることが決まっている。このような対応について、反タバコ団体「キャンペーン・フォー・タバコフリー・キッズ」のMatthew Myers氏は「若者の電子タバコの使用に対し、企業は真剣に向き合っていない」と批判。政府に対し、タバコを除く全てのフレーバー付き電子タバコ製品の販売禁止を強く求めている。

[20191031/HealthDayNews]