慢性呼吸器疾患死が世界的に増加、死亡率は低下/BMJ

19902017年の期間に、慢性呼吸器疾患による年間総死亡数は18%増加したが、年齢標準化死亡比は年間2.41%低下し、社会人口統計学的特性(SDI)と慢性閉塞性肺疾患(COPD)、塵肺症、喘息による死亡率との間には負の相関がみられ、SDIが低い地域は疾病負担が多大であることが、中国・華中科技大学のXiaochen Li氏らによる195の国と地域のデータの解析で示された。研究の成果は、BMJ2020219日号に掲載された。慢性呼吸器疾患による死亡や健康損失に関するこれまでの研究は、限られたデータに基づいており、地域も限定的だという。

GBD 2017のデータを系統的に分析

 研究グループは、19902017年の世界195の国と地域の年齢別、性別の慢性呼吸器疾患による死亡と障害調整生命年(DALY)の経時的、空間的な傾向を評価する目的で、系統的な分析を行った(National Key R&D Program of Chinaなどの助成による)。

 ベイズメタ回帰分析のツールであるDisMod-MR 2.1を用いて、「世界疾病負担研究(GBD2017」のデータから、慢性呼吸器疾患の死亡率とDALYを推算した。ガウス分布による一般化線形モデルを用いて、年齢標準化死亡比の推定年間変化率を算出した。

 死亡率とDALYは、社会人口統計学的特性(SDI)で層別化した。SDIは、国民1人当たりの所得と学歴、合計特殊出生率による複合指標であり、5つの段階(高、高中、中、低中、低)に分けた。スピアマンの順位相関係数を用いて、SDIと死亡率の関連の強度と傾向を評価した。また、曝露データから、慢性呼吸器疾患のリスク因子を解析した。

喫煙、環境汚染、高BMIへの曝露の抑制が喫緊の課題

 19902017年の慢性呼吸器疾患による年間DALYは、9,720万~11,230万にわたっていた。この間に、喘息や塵肺症ではDALYが改善したが、COPDや間質性肺疾患/肺サルコイドーシスでは悪化した。

 慢性呼吸器疾患による年間総死亡数は、1990年の332万人(95%不確定区間[UI]301万~343万)から、2017年には391万人(379万~404万)まで、18.0%増加した。

 一方、同時期の慢性呼吸器疾患による年齢標準化死亡比は、平均で年間2.41%(95UI2.282.55)減少し、1990年と2017年の双方で男女間に大きな差が認められた。27年間で、年間年齢標準化死亡比は、COPD2.36%(2.212.50)、塵肺症で2.56%(2.442.68)低下したのに対し、間質性肺疾患/肺サルコイドーシスは0.97%(0.921.03)増加した。

 慢性呼吸器疾患による死亡数および年間死亡率の変動には、195の国と地域でかなり大きなばらつきが認められた。

 27年間の死亡率とDALYの地域差、および改善の不均衡な分布の原因となる要因の評価では、SDICOPD、塵肺症、喘息による死亡の間に負の相関が認められた。低SDIの地域は、死亡率とDALYが最も高かった。

 喫煙は、この間一貫してCOPDおよび喘息による死亡の主要なリスク因子であった。粒子状物質による環境汚染は、低SDI地域においてCOPDによる死亡の主要な寄与因子であった。2013年以降は、高BMIが喘息の最も重要なリスク因子となった。

 著者は、「死亡率やDALYには、喫煙、環境汚染、高BMIなどのリスク因子が寄与していると推定され、これらへの曝露を抑制するために緊急の取り組みが必要である」としている。

1日1個の卵で心疾患リスクは上昇しない

11個の卵は健康に良いのか悪いのか――。長年議論されてきたこの問題に終止符が打たれるかもしれない。卵を11個食べても心臓に悪影響はないことが、マクマスター大学(カナダ)公衆衛生研究所(PHRI)の研究チームが実施した大規模研究で示された。この論文の筆頭著者であるMahshid Dehghan氏は「ほとんどの人において、たとえ心血管疾患や糖尿病の既往歴があっても、11個程度の卵の摂取で心血管疾患リスクや死亡リスクが増大することはない」と述べている。詳細は「American Journal of Clinical Nutrition121日オンライン版に掲載された。

 この研究は、PHRIが実施した3件の大規模国際研究のデータを解析したもの。解析対象者は、6大陸50カ国の総計177,000人以上に及んだ。

 その結果、卵の摂取量と死亡リスクや心血管疾患リスクとの間に有意な関連は認められなかった。また、卵の摂取量と血液中の脂質やその構成成分、あるいはその他のリスク因子との関連も認められなかった。これらの結果を受けてDehghan氏は「対象者の大半で卵の摂取量が1日に1個以下だったことを考えると、この程度の摂取量は安全だと言えるだろう」とし、「これらはゆるぎない結果であり、健康な人にも血管疾患のある人にも当てはまる」と話している。

 卵は必須栄養素を安価に摂取できる食品だが、一部の栄養ガイドラインは、卵により心疾患リスクが増大し得るとして、摂取量を週3個未満に抑えるよう助言している。しかし、卵と健康に関するこれまでの研究では、統一見解は得られていない。その理由について、研究チームの一人であるPHRISalim Yusuf氏は、「従来の研究は、ほとんどが相対的に小規模ないし中規模のものであった上に、対象者の国籍も限られていたからだ」と説明する。それに対し、今回の研究は、50カ国のさまざまな所得水準の人々を対象にしているため、得られた結果も多くの人に当てはまるのだという。

 なお、今回の研究は、さまざまな州政府保健機関や心の健康に関係する非営利団体の支援を受けたが、卵業界からの資金援助は受けていないという。

 今回の研究結果の報告を受けて、米サンドラ・アトラス・バス心臓病院のGuy Mintz氏は、「非常に大規模な研究から、卵を11個食べても心血管に影響はないことが明らかになった」と述べる。同氏は、卵は優れた栄養源であるとし、今回の研究において、既に心疾患のある人や服薬中の人にも有害な影響は認められなかった点を強調している。

 一方、米コーエン小児医療センター小児内分泌学部門の管理栄養士であるAudrey Koltun氏は、「これまでは、卵の栄養価について患者から質問を受けても答えるのが難しかった」と振り返る。そして、「確かに卵のコレステロール値は高いが、その一方で、必須ビタミンやミネラル、非常に良質のタンパク質などが豊富に含まれている。その上、安価であり、砂糖や着色料、保存料、人工香料も加えられていない」と卵の長所を挙げ、「今回の研究により、卵が心血管に悪影響を及ぼさないことが科学的に示された。今後は、卵に関する質問にきちんと答えることができる」と話している。

[202023/HealthDayNews]



加工肉や赤身肉は、やはり健康に良くない

加工肉や未加工赤身肉の摂取量が多い人は心血管疾患や死亡のリスクが高いとする、米ノースウェスタン大学のNorrina Allen氏らの研究結果が、「JAMA Internal Medicine23日オンライン版に掲載された。昨秋、「Annals of Internal Medicine」誌に「赤身肉や加工肉によって、がんや2型糖尿病、心疾患が引き起こされるとは断定できない」とする報告が掲載されて話題になったが、今回の報告はそれと相反する結論だ。

 Allen氏らの研究は、米国で行われた6件の前向きコホート研究をプール解析したもの。19852002年にベースライン登録された対象者29,682人(平均年齢53.7±15.7歳、うち男性が44.4%)を2016831日まで19.0年(中央値)追跡し、加工肉、未加工赤身肉、鶏肉、魚の摂取量と、心血管イベント(冠動脈性心疾患、脳卒中、心不全、心血管死の複合エンドポイント)および全死亡との関連を検討した。

 まず心血管イベントとの関連について、各食品を1週間当たり2サービング(標準的な摂取量2回分)摂取した場合の相対リスクを見ると、ソーセージやベーコンなどの加工肉では7%、牛肉や豚肉などの未加工赤身肉では3%、鶏肉では4%の有意なリスク増加が認められた。魚の摂取量とは有意な関連は見られなかった。なお、Allen氏によると「鶏肉摂取量との関連については一貫性がないため、他の研究による追試が必要」という。

 次に全死亡との関連については、加工肉または未加工赤身肉を1週間当たり2サービング摂取した場合、それぞれ3%の有意なリスク増加が認められた。鶏肉や魚の摂取量とは有意な関連は見られなかった。

 今回の研究結果についてAllen氏は、加工肉や未加工赤身肉の摂取によって飽和脂肪や塩分の摂取量が多くなることや、肉をたくさん食べるほど野菜や果物の摂取量が不十分になることが影響しているのではないかと考察。赤身肉や加工肉の摂取を控えめにし、果物や野菜、全粒穀物を多く取ることを勧めている。

 昨秋「Annals of Internal Medicine」誌に掲載された、肉食の害悪は決定的なものでないとする論文に関しては、米国心臓協会(AHA)や米国がん協会(ACS)などの主要な医療関連団体が、多くの先行研究が赤身肉や加工肉による健康への悪影響を示唆していることから、「肉類を多く取っていた以前の食生活に戻るべきではない」との見解を表明している。また世界保健機関(WHO)は2015年の段階で、加工肉はがんの原因物質であり、赤身肉もそうである可能性が高いと発表している。

 今回の論文の査読者である米マウントサイナイ心血管健康センターのJeffrey Mechanick氏は、「生活習慣が健康的なものかどうかはたった1つの食べ物で決まるわけではない」として、Allen氏同様「野菜と果物をもっと摂取することに焦点を当てるべきだ」と述べ、1日当たり510サービングという摂取量を推奨している。また、「健康には食生活だけではなく、十分に運動することやストレスを減らす取り組みも重要だ」と述べている。

[202023/HealthDayNews]



認知症に対する園芸療法の有効性~メタ解析

認知症の患者数は、急速に増加しており、園芸療法などの非薬理学的介入が、これらの患者に対する第1選択治療として推奨されている。園芸療法には、参加型と観賞型があり、過去20年間の多くの研究において、その有効性が検討されている。しかし、これらの研究では、介入方法、アウトカム、測定法が異なっていた。中国・北京大学のYajie Zhao氏らは、認知症患者の認知機能、興奮、ポジティブな感情、エンゲージメントに対する園芸療法の有効性について検討を行うため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Clinical Nursing誌オンライン版202024日号の報告。

 本システマティックレビューは、PRISMAガイドラインに基づいて実施した。201971日までに、認知症患者に対する園芸療法を評価したランダム化比較試験(RCT)および疑似実験を各種データベースより検索した。バイアスリスクは、CochraneおよびJoanna Briggs Instituteを用いて評価した。リファレンスリストと関連文献の検索を行った。メタ解析には、RevMan 5.3を用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・認知症患者411例を対象とした14研究(RCT4件、疑似実験:10件)が抽出された。
・メタ解析の結果、認知機能、興奮、ポジティブな感情、エンゲージメントの合計スコアに対する参加型園芸療法の有効性に有意な差が認められた。
・興奮、ポジティブな感情に対する観賞型園芸療法の有効性は認められなかった。

 著者らは「これまでの研究では、認知症患者の認知機能、興奮、ポジティブな感情、エンゲージメントに対する参加型園芸療法の有効性が示唆された。この結果をより明らかにするためには、質の高いオリジナルな研究が必要とされる」としている。

低線量CT検査により肺がん死亡率は低下する

本試験は、低線量CTによるスクリーニング検査によって、高リスク群の肺がんの死亡率の影響をみる大規模無作為化比較試験の結果である。2000年より20151231日まで最低10年以上の経過をみた。年齢中央値は58歳で(5074歳)、男性13,195例、女性2,594例が登録され、1年、3年、5.5年にCTを受けるスクリーニング群とコントロール群に無作為に分けられた。結果として、肺がん発症率はスクリーニング群で5.58/1,000人年、コントロール群では4.91/1,000人年で、スクリーニング群ではIAおよびIBの患者は58.6%であったが、コントロール群ではそれぞれ14.2%と13.5%であり、III/IV期が70%であった。
死亡率はそれぞれ2.50/1,000人年、3.30/1,000人年であった。10年時点で男性では累積生存率比は0.76で女性は0.67であった。以上より、著者らはCTスクリーニングを推奨している。
本試験に先立ち2011年に、米国よりNLSTの約53,000例のハイリスク患者においてCT検診で20%の死亡率が減少するとの有用性の結果が報告されていたが、それ以外の大規模試験での肺がん全死亡率の低下を示す有用性の報告はなかった。この試験の結果は、CT検診を進める根拠となりうる重要な論文と考えられる。
ただし著者らもコメントしているが、女性については人数が少なかったので今後の検討が必要である。
本邦において検診のシステムは比較的充実しているが高齢者では受診率が低く、低線量CT検診を導入するに当たり、被ばく、費用および要精密検査率の増加等の不利益もあるので、CT検診の適応症例には十分な検討が必要である。



最適な抗うつ薬投与量~システマティックレビュー

固定用量で行われる抗うつ薬の試験では、承認された用量の中でも低用量で有効性と忍容性の最適なバランスが実現されている。副作用が許容される範囲内での抗うつ薬の増量がベネフィットをもたらすかについて、京都大学の古川 壽亮氏らが検討を行った。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版20191231日号の報告。

 急性期うつ病治療に対するSSRI、ベンラファキシン、ミルタザピンを検討したプラセボ対照ランダム化試験をシステマティックにレビューした。主要アウトカムは治療反応とし、うつ病重症度の50%以上減少と定義した。副次アウトカムは、有害事象による脱落および何らかの理由による脱落とした。抗うつ薬の承認最小用量を超える漸増をプラセボと比較した試験および固定用量とプラセボを比較した試験におけるオッズ比(ROR)を算出するため、ランダム効果メタ解析を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・公開および未公開のランダム化比較試験123件(29,420例)を解析した。
・抗うつ薬の漸増に、固定低用量を超える有効性は認められなかった。
 ●SSRIROR0.9695CI0.731.25
 ●ベンラファキシン(ROR1.2495CI0.961.60
 ●ミルタザピン(ROR0.7795CI0.331.78
・ベンラファキシンの75mg固定用量と比較し、75150mgの漸増において優れた有効性が認められたが(ROR1.3095CI1.021.65)、それ以外では、忍容性またはサブグループ解析において、重要な差は認められなかった。

 著者らは「有効性、忍容性や受容性の観点から、SSRIまたはミルタザピンの承認最小用量を超えた漸増の効果は認められなかった。ただし、ベンラファキシンでは、最大150mgまで増量することで効果が期待できることが示唆された」としている。

新型肺炎は母子感染するのか?妊婦9例の後ろ向き研究/Lancet

中国・武漢市を中心に世界規模で広がっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。これまでの研究では一般集団における感染ルートの検証が行われてきたが、妊婦のデータは限定的だ。武漢大学中南医院産婦人科のHuijun Chen氏らは、新型コロナウイルス陽性と確認された妊産婦について、臨床的特徴と垂直感染の可能性について検証した。Lancet誌オンライン版212日版に掲載。

 本研究では、2020120日~31日、武漢大学中南医院に入院した患者のうち、COVID-19と診断された妊産婦9例について、臨床記録、検査結果および胸部CT画像を後ろ向きにレビューした。垂直感染を裏付ける根拠として、羊水、臍帯血、新生児の咽頭スワブおよび母乳サンプルが採取された。

 主な結果は以下のとおり。

・妊産婦9例は26歳~40歳で、いずれも持病はなく、全例が妊娠第3期に帝王切開で出産した。
・全例で出生が確認され、新生児仮死は見られなかった。
・新生児9例はいずれも1分後アプガースコア(AP)が895分後AP910で正常だった。
・妊産婦9例中7例で発熱が見られたほか、咳(4例)、筋肉痛(3例)、咽頭痛(2例)、倦怠感(2例)といった症状が確認された。
24日の段階で、妊産婦9例についてCOVID-19重症例および死亡例は確認されていない。
9例のうち6例について、羊水、臍帯血、新生児の咽頭スワブ、および母乳サンプルのウイルス検査が行われ、すべて陰性だった。
26日の段階で、新生児1例について、出生36時間後にウイルス検査で陽性反応を示した。
・ただし、本症例については出生30時間後に採取されたサンプルであるため、子宮内感染が発生したかどうかは不明である。

 本研究の9例は、妊婦が感染していたCOVID-19の母子感染リスクが不明であったため、帝王切開による分娩が選択されたという。著者らは、「この9例に限っては、妊娠後期にCOVID-19を発症した妊婦からの子宮内垂直感染を直接示すエビデンスがないことを示唆している」としながらも、「経腟分娩による母子感染リスクや、母体の子宮収縮がウイルスに及ぼす影響については、さらに調査する必要がある」と述べている。

鉄欠乏性貧血への静注鉄剤

経口鉄剤に不耐・不応の鉄欠乏性貧血患者における静注鉄剤による治療では、iron isomaltosideIIM、現在はferric derisomaltoseと呼ばれる)はカルボキシマルトース第二鉄(FCM)と比較して、低リン血症の発生が少ないことが、米国・デューク大学のMyles Wolf氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA202024日号に掲載された。静注鉄剤は、鉄欠乏性貧血の迅速な改善を可能にするが、これらの製剤は線維芽細胞増殖因子23FGF23)に関連する低リン血症を誘発する場合があるという。

同一デザインの2つの無作為化試験

 研究グループは、静注鉄剤であるIIMFCMとで、低リン血症のリスクおよびミネラル骨恒常性のバイオマーカーへの影響を比較する目的で、2つの同一デザインの非盲検無作為化臨床試験を行った(Pharmacosmosなどの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、鉄欠乏性貧血(ヘモグロビン値≦11g/dL、血清フェリチン値≦100ng/mL)で、経口鉄剤が1ヵ月以上不耐または不応の患者であった。腎機能低下例は除外された。

 被験者は、IIM1,000mg1回[Day0])またはFCM750mg2回[Day07])を静注投与する群に無作為に割り付けられた。Day0178142135に、血清リン濃度とミネラル骨恒常性のバイオマーカーの評価が行われた。

 主要エンドポイントは、ベースラインから35日までの期間における低リン血症(血清リン濃度<2.0mg/dL)の発生とした。

臨床的重要性を評価する研究が必要

 201710月~20186月の期間に、米国の30施設で245例(試験A123例[平均年齢45.1歳、女性95.9%]、試験B122例[42.6歳、94.1%])が登録された。試験A(治療完遂率 95.1%)では、IIM群に62例、FCM群には61例が、試験B(同93.4%)では両群に61例ずつが割り付けられた。

 2つの試験を合わせた35日の時点での低リン血症の発生率は、IIM群がFCM群に比べ低かった。試験AではIIM群が7.9%、FCM群は75.0%(補正後発生率の群間差:-67.0%、95%信頼区間[CI]:-77.4~-51.5p0.001)であり、試験Bではそれぞれ8.1%および73.7%(-65.8%、-76.6~-49.8p0.001)であった。

 血清リン濃度は、ベースライン以降のすべての測定日において、IIM群に比べFCM群で低値であった(p0.001)。尿中リン排泄分画は、試験期間を通じて、IIM群に比べFCM群で高く、Day14が最も高値であった(p0.001)。

 生物学的活性を有するintact FGF23の平均値は、FCM群では46.2pg/mLから151.2pg/mLに上昇し、Day82回目の投与[Day7]の24時間後)に頂値(343.6pg/mL)に達した後に漸減したが、すべての測定日でIIM群よりも有意に高かった(p0.001)。また、C末端FGF23の濃度は、両群とも投与から24時間以内に低下したが、Day821には、FCM群がIIM群に比べ再上昇した(p0.001)。

 活性型の1,25-ジヒドロキシビタミンDは、両群とも低下したが、FCM群のほうが低下の程度が大きく、試験期間を通じて一貫していた(p0.001)。また、非活性型の24,25-ジヒドロキシビタミンDは、Day7以降、IIM群よりもFCM群で有意に増加した(p0.001)。

 有害事象の頻度は、IIM群よりもFCM群で高かった(試験A7/63例[11.1%]vs.27/60例[45.0%]、試験B14/62例[22.6%]vs.28/57例[49.1%])。また、副甲状腺ホルモン上昇(IIM3.2vs.FCM5.1%)、頭痛(3.2vs.4.3%)、悪心(0.8vs.6.8%)の頻度が高かった。

 著者は、「これらの知見の臨床的重要性を評価するために、さらなる検討を要する」としている。

AIによる大腸がん転帰の予測マーカーを開発/Lancet

ノルウェー・オスロ大学病院のOle-Johan Skrede氏らは、ディープラーニング(深層学習)を用いて、従来の病理組織画像から大腸がんの転帰を予測するバイオマーカー(DoMore-v1-CRC)を開発し、その臨床的有用性を確認した。研究の成果は、Lancet202021日号に掲載された。早期大腸がん患者を層別化して補助療法を適切に選択できるようにするには、より優れた予後マーカーが必要とされる。この研究で確立されたマーカーは、StageII/IIIの患者を十分に明確な予後グループに層別化した。これにより、きわめて低リスクのグループの治療を回避し、より強力な治療レジメンから利益を得る患者を特定することで、補助療法の選択の指針として有用となる可能性があるという。

1,200万枚以上の従来画像を使用

 研究グループは、深層学習を用いて、原発性大腸がんの切除後の患者転帰を予測するバイオマーカーを開発する目的で、トレーニングコホート、チューニングコホート、試験コホート、検証コホートにおいて検討を行った(Research Council of Norwayの助成による)。

 対象は、切除可能な腫瘍(StageIIII)を有する患者であった。従来のHE染色されたホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織切片をスキャンした。

 4つのコホート(ノルウェーの2つと英国の2つ)から、明らかに転帰が良好または不良な腫瘍を有する患者の1,200万枚以上に及ぶ組織病理画像を用いて、合計10個の畳み込みニューラルネットワーク(CNN)をトレーニングした。10個のネットワークを統合し、転帰が不明な患者において予後バイオマーカーを確定した。

 確立されたマーカーは、英国で作製された920例(試験コホート)のスライドでテストされた。次いで、ノルウェーで作製されたスライドを用い、事前に規定されたプロトコールに準拠して、カペシタビンで治療された1,122例(検証コホート)で検証が行われた。主要転帰は、がん特異的生存とした。

多変量解析でも、強力な予測能が保持

 ノルウェーと英国の4つのコホートから、転帰(良好、不良)が明らかな828例(年齢中央値69歳、女性49%)を選出し、確実な真値(ground truth)を得るためのトレーニングコホートとして使用した。1,645例(70歳、42%)は転帰が不明であり、チューニングコホートとして用いた。

 確立されたバイオマーカー(DoMore-v1-CRC)は、検証コホート(1,122例、年齢中央値65歳、女性43%)において、がん特異的生存の優れた予測能を示した。不明な予後と良好な予後のハザード比(HR)は1.8995%信頼区間[CI]1.143.15)であり、不良な予後と良好な予後のHR3.842.725.43p0.0001)であった。

 また、同じコホートの単変量解析で確立された予後マーカー(pN stagepT stage、リンパ管浸潤、静脈血管浸潤)で補正した多変量解析でも、強力な予測能が保持されていた(不明な予後と良好な予後のHR1.5695CI0.922.65p0.10、不良な予後と良好な予後のHR3.042.074.47p0.0001)。

 DoMore-v1-CRCによる良好な予後の3年がん特異的生存を、不明/不良な予後と比較した場合の感度は52%(95CI4163)、特異度は78%(7581)、陽性適中度は19%(1425)、陰性適中度は94%(9296)、正確に分類された患者の割合(accuracy)は76%(7379)であった。同様に、良好/不明な予後を不良な予後と比較した場合は、それぞれ69%(5878)、66%(6369)、17%(1321)、96%(9497)、67%(6369)だった。

 著者は、「深層学習は、従来の組織病理画像から直接的に、患者転帰を自動的に予測するバイオマーカーの開発に使用可能である。大腸がんでは、このマーカーは、最新のがん治療を受けた大規模な患者集団の解析において、臨床的に有用な予後マーカーであることが示された」としている。

神経疾患は自殺死のリスクを高めるか

19802016年のデンマークでは、神経疾患の診断を受けた集団は、これを受けていない集団に比べ、自殺率が統計学的に有意に高いものの、その絶対リスクの差は小さいことが、同国Mental Health Centre CopenhagenAnnette Erlangsen氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA202024日号に掲載された。神経学的障害は自殺と関連することが示されているが、広範な神経学的障害全体の自殺リスクの評価は十分に行われていないという。

730万人で、神経疾患の有無別の自殺死を評価

 研究グループは、神経疾患を有する集団は他の集団に比べ、自殺による死亡のリスクが高いかを検証し、経時的な関連性を評価する目的で、後ろ向きコホート研究を行った(デンマーク・Psychiatric Research Foundationの助成による)。

 19802016年に、デンマークに居住していた15歳以上の730395人を対象とした。19772016年に、頭部外傷、脳卒中、てんかん、多発ニューロパチー、筋神経接合部疾患、パーキンソン病、多発性硬化症、中枢神経系感染症、髄膜炎、脳炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、認知症、知的障害、その他の脳疾患で受診した1248,252例のデータを用いた。

 主要アウトカムは、19802016年の期間に発生した自殺死とした。Poisson回帰を用い、社会人口学的因子、併存疾患、精神医学的診断、自傷行為で補正した発生率比(IRR)を推算した。

ALSとハンチントン病で自殺死率が最も高い

 16,1935,233人年の期間に、730万人以上の集団(男性49.1%)で35,483人(追跡期間中央値:23.6年、IQR10.037.0、平均年齢:51.9SD 17.9]歳)が自殺死した。

 自殺死の77.4%が男性で、14.7%(5,141人)が神経疾患の診断を受けていた。自殺死の割合は、神経疾患群が10万人年当たり44.0、非神経疾患群は10万人年当たり20.1で、補正後IRR1.895%信頼区間[CI]1.71.8)であり、神経疾患群で有意に高かった。診断からの期間によって、補正後IRRには違いがみられ、診断後13ヵ月が3.195CI2.73.6)と最も高く、10年以降は1.51.41.6)であった。

 自殺死の補正後IRRが最も大きい疾患は、ALS(補正後IRR4.995CI3.56.9)およびハンチントン病(4.93.17.7)であった。多発性硬化症の補正後IRR2.21.92.6)、頭部外傷は1.71.61.7)、脳卒中は1.31.21.3)、てんかんは1.71.61.8)だった。

 非神経疾患群と比較して、認知症(補正後IRR0.895CI0.70.9)、アルツハイマー病(0.20.20.3)、知的障害(0.60.50.8)は、自殺死の補正後IRRが低かったが、認知症では診断から1ヵ月以内の補正後IRR3.01.94.6)と高い値を示した。

 また、神経疾患群では、神経疾患による受診回数が増えるに従って自殺率が上昇した(受診回数1回の補正後IRR1.795CI1.61.7]、23回:1.81.71.9]、4回以上:2.11.92.2]、p0.001)。

 神経疾患群の自殺死は、198099年の10万人年当たり78.6から、200016年には10万人年当たり27.3に減少し、同様に非神経疾患群では26.3から12.7に低下した。

 他の死因による競合リスクを考慮すると、アルツハイマー病を除く神経疾患群は非神経疾患群に比し、診断から13ヵ月に自殺死の累積発生率(絶対リスク)が増加していた。神経疾患群における30年間の自殺死の絶対リスクは0.64%(95CI0.620.66)であり、そのうちハンチントン病は1.62%(1.042.52)、筋神経接合部/筋疾患は1.19%(1.111.27)だった。

 著者は、「ALSとハンチントン病の自殺死リスクが最も高いが、より頻度の高い疾患である頭部外傷や脳卒中、てんかんでも高い値を示した。認知症の診断直後のリスク増加は、引き続き注目に値する」としている。