HbA1c基準では糖尿病は見逃されやすい

 糖尿病患者の血糖コントロール指標として汎用されるHbA1c検査の診断精度は、従来の経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)には及ばない可能性があることが、米シティー・オブ・ホープ国立医療センターのMaria Mercedes Chang Villacreses氏らが行った研究で示された。OGTTで糖尿病と診断された患者の4分の3は、HbA1c検査では見逃されていることが分かったという。研究の詳細は、米国内分泌学会(ENDO 201932326日、米ニューオーリンズ)で発表された。

 Chang Villacreses氏らは、米国国民健康栄養調査(NHANES)の20052014年のデータを用いて、糖尿病の診断歴のない成人(20歳以上)9,000人を対象に、HbA1cOGTTの基準を用いた糖尿病の診断精度を比較検討した。

 その結果、糖尿病の診断精度はOGTTHbA1cを上回り、OGTT基準で診断された患者の約73%がHbA1c基準では見逃されていることが分かった。逆に、HbA1c基準で診断されても、OGTT基準では見逃された患者の割合は約15%にとどまっていた。また、HbA1c検査の精度には人種や民族差が見られ、非ヒスパニック系の黒人やヒスパニック系よりも非ヒスパニック系の白人の方が、血糖異常が検出される確率が高かった。

 Chang Villacreses氏らは「これら2つの検査で、これほど大きな解離が見られた理由については明らかになっていない」と述べている。しかし、HbA1c検査については、これまでにも結果に人種差が見られることや、貧血や血液障害がある人では診断精度が低いといった問題点が指摘されていたという。

 HbA1cが国際的に糖尿病の診断基準に採用された2010年以降、絶食が不要といった利便性もあり、この検査はさらに広く普及している。しかし、Chang Villacreses氏は「HbA1cだけに頼っていると、糖尿病の早期発見、早期治療の機会を逃してしまうかもしれない。糖尿病のリスク因子があったり、糖尿病が疑われる場合には、まずはOGTTを行うべきだ」と述べている。

 一方で、専門家の誰もがHbA1cの使用に懸念を抱いているわけではないようだ。その一人で、米モンテフィオーレ医療センター臨床糖尿病センター長のJoel Zonszein氏は「HbA1cは糖尿病の診断と管理の指標として承認されている検査法だ。きわめて実用的な反面、診断精度は完璧ではないが、ランダムに行うことで診断に十分な情報が得られる有用なツールだ」と話している。また、同氏は「糖尿病の診断や管理で行う検査にはそれぞれ長所と短所があるが、優劣はない。それぞれの検査から異なる情報を得ることができる」と説明している。

 米国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIDDK)によると、OGTTの測定では、患者は8時間以上絶食した後に医療機関を受診して空腹のまま採血し、血糖値を測定する。その後、ブドウ糖を摂取し、30分、1時間、2時間後に採血して血糖値を測定する。検査には13時間程度かかるほか、患者の費用負担も大きいことから、Zonszein氏によれば、OGTTは主に妊娠糖尿病の診断や臨床試験の中で用いられているという。

 なお、米国糖尿病学会(ADA)は、空腹時血糖とHbA1cOGTTはいずれも糖尿病の診断基準として適切とする勧告を繰り返している。ADAの科学・医療部門の最高責任者を務めるWilliam Cefalu氏は「2型糖尿病の主な診断法として、HbA1cOGTTのどちらが適切なのかは長年にわたり議論の的となっている」としながらも、「今回の後ろ向き研究の結果を踏まえてADAの勧告に変更を加えることはない。この結果は、過去の複数の研究結果を裏付けるものにすぎない」と述べている。

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