ICU患者の重篤症状、カフェインなどの離脱の可能性

集中治療室(ICU)に入室後、患者がコーヒーや紙巻タバコを急激にやめると、離脱(禁断)から重篤な疾患に似た症状が引き起こされ、誤診や必要のない検査の実施につながりやすいことが、クイーン・ジョアンナ大学病院(ブルガリア)准教授のMaya Belitova氏らのレビューで明らかになった。研究結果の詳細は、欧州麻酔学会(ESA 2019613日、オーストリア・ウィーン)で発表された。

 Belitova氏らは今回、計483人の成人ICU患者を対象に、タバコやコーヒーにそれぞれ含まれるニコチンやカフェインの離脱症状と治療状況との関連を調べた12件の研究のレビューを行った。

 その結果、喫煙者では非喫煙者に比べて、ICU入室後にニコチンの離脱により興奮症状を呈した患者の割合が多く(喫煙者64%対非喫煙者32%)、それに関連した気管チューブや静脈ラインの脱落例も多い(14%対3%)ことが分かった。

 また、この研究では、ニコチン代替療法が「ICUせん妄」と呼ばれる重度の混乱や見当識障害の一因となることも示された。ICUせん妄があると気管内挿管が長引いたり、入院期間が延長したりすることに加えて、死亡リスクの増大にもつながると考えられている。

 さらに、ICU患者のカフェイン離脱は眠気や吐き気、嘔吐、頭痛を引き起こし、ICUせん妄の発生率の増加にもつながることが明らかになった。Belitova氏らによると、頭痛の治療に用いられる安息香酸カフェインに関して、ICU患者における有効性に関するエビデンスは限定的なものだったという。

 ニコチンやカフェインは、現代社会では日常的に摂取される物質だが、依存性が高いことでも知られている。しかし、Belitova氏は「ICUに入室後に、急激にこれらの使用を中止すると離脱症状が引き起こされることは、診療の現場では見逃されやすい」と指摘している。

 Belitova氏によれば、吐き気や嘔吐、頭痛、せん妄などの離脱症状は2週間続くこともあるという。「このような症状は髄膜炎や脳炎、脳内出血といった重篤な疾患に伴う症状と似ていることから、臨床診断の混乱を招き、不要な検査を行うことで患者を危険にさらしたり、医療コストや時間の浪費にもつながりかねない」と同氏は説明している。

 また、Belitova氏は「ICU患者の離脱症状の緩和には、ニコチン代替療法やサプリメントによるカフェイン補充が有益な可能性があるが、それらの有効性に関するエビデンスはほとんどなく、治療する医師の判断に委ねられているのが実情だ」と述べている。

 なお、学会で発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。

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