長引く痛みによる抑うつ状態に、過剰なCRFが関与

痛みが長引く「慢性痛」では、しばしば気分が落ち込む「抑うつ状態」になることはよく知られている。あたかも当然と思われがちな両者の関係は、実はこれまで詳細なメカニズムが不明だったが、脳内で分泌されるCRF(コルチコトロピン放出因子)という物質が脳内報酬系を抑制するために引き起こされることが新たな研究でわかった。北海道大学薬学研究院薬理学研究室の南雅文氏らの研究グループが明らかにしたもので、詳細は「The Journal of Neuroscience826日オンライン版に掲載された。

 CRFは、さまざまなストレスを受けた時に脳内で分泌されるペプチドで、ストレスホルモンの遊離を促し、全身性のストレス反応を引き起こすことが知られている。また扁桃体などで分泌されるCRFは、不安や恐怖などのネガティブな情動の発生にも関与している。

 研究グループはまず、慢性痛のモデルラットを作製。それを用いた検討から、慢性痛によって脳内の分界条床核という部分の神経情報伝達に乱れが生じることを見いだした。そしてこのモデルラットでは、分界条床核、および分界条床核と機能的に関連している扁桃体中心核という領域で、CRFの遺伝子発現が増えていることを確認した。

 続いてラットの分界条床核にCRF受容体拮抗薬を投与し、CRFの働きを抑制する実験を行った。すると、CRFを抑制すると慢性痛により生じていた神経情報伝達の変化が回復することがわかった。このことから、慢性痛によって生じる分界条床核内の過剰なCRFが神経情報伝達の乱れの原因であることが示唆された。

 次に、分界条床核内のCRFによって乱れた神経情報伝達を遮断し、脳内報酬系への影響を検討した。脳内報酬系は、ヒトや動物が報酬を与えられた時などに活性化する神経系で、その活性化にはドパミン神経が重要な役割を果たしている。今回の検討の結果、乱れた神経情報伝達の遮断によって、ドパミン神経の活動が上昇することが明らかになった。

 ドパミン神経の活動低下はうつ病と関連すると考えられている。また、慢性痛によってドパミン神経活動が低下することが報告されている。研究グループでは、これらの知見と今回の検討結果をあわせて考察し、慢性痛時に分界条床核内でCRFが引き起こす神経情報伝達の乱れが、脳内報酬系で中心的な役割を担っているドパミン神経を持続的に抑制し、抑うつ状態が引き起こされると考えられるとまとめている。

 脳内報酬系は「快情動」や「やる気」を司っており、うつ病では脳内報酬系の機能が低下するために、楽しいはずのことが楽しくなくなる(快情動の喪失)、やる気がなくなるといった状態が引き起こされると考えられている。CRFをターゲットとした今後の研究により、慢性痛による抑うつ状態だけでなく、うつ病の新規治療薬の創薬も期待される。

[2019107/HealthDayNews]



β遮断薬によるCOPD増悪抑制、初の無作為化試験/NEJM

 中等度~重度の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、β遮断薬メトプロロールの増悪予防効果は、プラセボと同等であることが判明した。米国・アラバマ大学バーミングハム校のMark T. Dransfield氏らが、532例の患者を対象に行った前向きプラセボ対照無作為化試験の結果で、増悪による入院の頻度がメトプロロール群のほうが高かったことも示されたという。これまで観察試験では、β遮断薬が中等度~重度COPD患者の増悪および死亡リスクを低減することが示されていたが、無作為化試験では検証されていなかった。NEJM誌オンライン版20191020日号掲載の報告。

初回COPD増悪までの日数をプラセボと比較

 研究グループは、米国26ヵ所の医療機関を通じて、4085歳のCOPD患者を対象に試験を行った。被験者は、中等度気流制限があり増悪リスクが高い(前年に増悪歴または酸素補給処方歴があることを根拠として判定)患者で、β遮断薬の服用歴がある患者、あるいは使用の適応がある患者は除外した。

 被験者は無作為に2群に分けられ、一方にはメトプロロール徐放錠を、もう一方にはプラセボをそれぞれ投与した。投与量は最終的に125mg50mgまたは100mgに調整された。

 主要エンドポイントは、治療期間中の初回COPD増悪までの日数だった。治療期間は最終投与量により異なり、25mgの患者は336日間、50mg100mgだった患者は350日間だった。

メトプロロール群202日、プラセボ群222日で有意差なし

 計532例の患者が無作為化を受けた。平均年齢65.0±7.8歳、平均FEV1値は41.1±16.3%だった。

 本試験は、主要エンドポイントに対する無益性と安全性の観点から、予定より早期に中止となった。

 初回増悪までの日数中央値は、メトプロロール群202日に対しプラセボ群222日と、両群で有意差はなかった(ハザード比[HR]1.0595%信頼区間[CI]0.841.32p0.66)。入院を要する増悪リスクは、メトプロロール群がプラセボ群よりも高いことが認められた(HR1.9195CI1.292.83)。

 メトプロロールに関連していると思われる副作用の発現頻度、および全非呼吸器系の重篤有害イベントの発生率は両群間で差はなかった。治療期間中の死亡は、メトプロロール群11例、プラセボ群5例が報告された。

統合失調症や双極性障害の認知機能に対する睡眠の影響

精神疾患患者では、精神病性障害だけでなく睡眠障害や認知機能障害を併発し、機能やQOLに影響を及ぼす。ノルウェー・オスロ大学のJannicke Fjaera Laskemoen氏らは、統合失調スペクトラム障害(SCZ)および双極性障害(BD)において睡眠障害が認知機能障害と関連しているか、この関連性が睡眠障害のタイプ(不眠症、過眠症、睡眠相後退[DSP])により異なるか、この関連性が健康対照者と違いがあるかについて検討を行った。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2019105日号の報告。

 対象は、ノルウェー精神障害研究センター(NORMENT)研究より抽出された797例(SCZ457例、BD340例)。睡眠障害は、うつ病症候学評価尺度(IDS-C)の項目に基づき評価した。いくつかの認知ドメインとの関連は、別々のANCOVAを用いてテストした。認知障害との関連性が睡眠障害のタイプにより異なるかをテストするため、three-way ANOVAを実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・いくつかの共変量で調整した後、睡眠障害を有する患者では、睡眠障害のない患者と比較し、処理速度や認知抑制が有意に低いことが明らかとなった。
・睡眠障害と認知機能との関連性は、SCZBDで類似しており、不眠症と過眠症のいずれにおいても、処理速度や認知抑制への有意な影響が認められた。
・健康対照者では、睡眠障害と認知機能に関連性は認められなかった。

 著者らは「精神疾患患者における睡眠障害は、認知機能障害の一因となりうる。精神疾患患者の治療では、睡眠障害の治療が認知機能を保護するために重要であることを示唆している」としている。

遠隔オリゴ転移再発乳がんの予後および予後因子/日本癌治療学会

進行乳がん(ABC)のガイドラインの定義によるオリゴ転移がん(OMD)がNon-OMDNOMD)と比べて有意に予後良好であり、通常の再発乳がんの予後因子である「遠隔転移巣の根治切除の有無」「転移臓器個数」「転移臓器部位」「無病期間(DFI)」「周術期の化学療法の有無」がOMDにおいても予後因子であることが示唆された。がん研有明病院/隈病院の藤島 成氏が第57回日本癌治療学会学術集会(102426日)で発表した。

 一部の進行乳がんにおいて長期予後が得られる症例があり、そのような症例としてOMDHER2陽性乳がんが挙げられる。ABCのガイドラインにおけるOMDの定義は、転移個数が少なくサイズが小さい腫瘍量の少ない転移疾患とされており、その転移個数は5個以下となっているが、転移臓器の個数は定義されていない。OMDの転移臓器の個数は1つにすべきというドイツのグループからの意見もあり、その定義について議論されている。今回、藤島氏らはABCのガイドラインの定義によるOMDの予後を評価し、さらにOMDの予後因子を検討した。

 対象は、がん研有明病院で原発性乳がんの手術を受け200514年に遠隔再発を来した患者612例のうち、重複がん、両側乳がん、追跡不能例を除いた437例。ABCのガイドラインに基づき分類したOMDNOMDの予後を比較し、さらにOMDの予後因子を分析した。脳転移および転移個数5個以下でも根治切除不能と判断した症例はNOMDに分類した。

 主な結果は以下のとおり。

OMD133例、NOMD304例であった。
・再発時年齢中央値、DFI中央値、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体、HER2の発現は両群に有意差はなかった。
・サブタイプ別では全体として両群に有意差はなかったが、トリプルネガティブ(TN)についてOMD10.5%、NOMD20.4%と、OMDのほうが少なかった。
・転移部位について、肝転移、肺転移では両群に差はなかったが、骨転移、遠隔リンパ節転移はNOMDよりOMDで少なかった(どちらもp0.01)。
・再発後の初回全身療法はNOMDで化学療法が有意に多く(p0.01)、OMDは内分泌療法が有意に多かった(p0.01)
OMD症例の14例(10.5%)に遠隔転移巣の根治切除術が実施されており、14例中13例が1臓器のみの転移であった(肺転移:9例、肝転移:3例、骨転移:1例、子宮・卵巣:1例)。
・追跡期間中央値は40ヵ月(範囲:0150)、遠隔再発後の全生存期間(OS)中央値は、OMD76ヵ月)がNOMD33ヵ月)よりも有意に予後が良好だった(p0.01)。
OMDにおけるサブタイプ別のOS中央値は、luminal92ヵ月、luminal/HER2126ヵ月と、HER259ヵ月、TN52ヵ月より予後良好な傾向が認められた。
OMDにおけるOSに関する単変量比例ハザードモデル解析によると、ER陽性(p0.02)、周術期の化学療法なし(p0.01)、遠隔転移巣の根治切除あり(p0.04)、1臓器のみの転移(p0.01)、DFI 2年以上(p0.01)、肝転移なし(p0.04)、サブタイプがluminalもしくはluminal/HER2p0.03)が有意な予後良好因子であった。再発時年齢が50歳未満も予後良好な傾向がみられた(p0.07)。
・多変量比例ハザードモデル解析によると、周術期の化学療法なし(p0.04)、遠隔転移巣の根治切除あり(p0.03)、1臓器のみの転移(p0.01)、DFI 2年以上(p0.01)、肝転移なし(p0.05)が有意な予後良好因子であった。
・予後良好因子が2個以下と3個以上で分類すると、遠隔転移後のOS中央値は3個以上が106ヵ月で、2個以下の34ヵ月に比べて有意に予後が良好であった(p0.01)。

 藤島氏は、「ABCのガイドラインに基づいてOMDNOMDに分類すると、OMDは有意に予後良好である。しかし、OMD患者の予後は臨床的因子によって異なるため、OMD患者の中でも臨床的因子を考慮した異なる治療戦略が必要ではないか」と述べた。

大手術時の麻酔深度、1年死亡率と関連する?/Lancet

大手術後の合併症リスクが高い患者において、浅い全身麻酔は深い全身麻酔と比較して1年死亡率を低下しないことが示された。ニュージーランド・Auckland City HospitalTimothy G. Short氏らによる、高齢患者を対象に検討した国際多施設共同無作為化試験「Balanced Anaesthesia Study」の結果で、著者は「今回の検討で、処理脳波モニターを用いて揮発性麻酔濃度を調節した場合、広範囲にわたる麻酔深度で麻酔は安全に施行できることが示された」とまとめている。麻酔深度の深さは、術後生存率低下と関連することがこれまでの観察研究で示されていたが、無作為化試験でのエビデンスは不足していた。Lancet誌オンライン版20191020日号掲載の報告。

術後合併症リスクが高い高齢者で、浅麻酔と深麻酔での1年全死因死亡率を比較

 研究グループは7ヵ国73施設において、明らかな併存疾患を有し手術時間が2時間以上かつ入院期間が2日以上と予想される60歳以上の患者を登録し、大手術後の合併症リスクが高い患者を、bispectral indexBIS)を指標として浅い全身麻酔(浅麻酔群:BIS50)または深い全身麻酔(深麻酔群:BIS35)の2群に手術直前に無作為に割り付けた(地域別の置換ブロック法)。なお、患者および評価者は、割り付けに関して盲検化された。また、麻酔科医は、各患者の術中の平均動脈圧を適切な範囲に管理した。

 主要評価項目は、1年全死因死亡率で、解析にはlog-rank検定およびCox回帰モデルを使用した。

1年全死亡率は両群で有意差なし

 20121219日~20171212日の期間に、スクリーニングされ適格基準を満たした18,026例中、6,644例が登録および無作為化された(intention-to-treat集団:浅麻酔[BIS50]群3,316例、深麻酔[BIS35]群3,328例)。

 BIS中央値は、浅麻酔群で47.2(四分位範囲[IQR]43.750.5)、深麻酔群で38.836.342.4)であった。平均動脈圧中央値はそれぞれ84.5mmHgIQR78.091.3)および81.0mmHg75.487.6)であり、浅麻酔群が3.5mmHg4%)高かった。一方、揮発性麻酔薬の最小肺胞濃度は、それぞれ0.620.520.73)および0.880.741.04)であり、浅麻酔群が0.2630%)低かった。

 1年全死因死亡率は、浅麻酔群6.5%(212例)、深麻酔群7.2%(238例)であった(ハザード比:0.8895%信頼区間[CI]0.731.07]、絶対リスク低下:0.8%[95CI:-0.52.0])。

 Grade3の有害事象は、浅麻酔群で954例(29%)、深麻酔群で909例(27%)に、Grade4の有害事象はそれぞれ265例(8%)および259例(8%)に認められた。最も報告が多かった有害事象は、感染症、血管障害、心臓障害および悪性新生物であった。

 なお、著者は、両群で目標BIS値に到達していなかったこと、1年全死因死亡率が予想より2%低かったこと、揮発性麻酔薬で維持した全身麻酔に限定され、プロポフォール静脈投与による麻酔の維持に関する情報がないことなどを研究の限界として挙げている。



スボレキサントの睡眠改善効果と聴覚刺激による目覚め効果

不眠症患者の夜間の反応性に対するデュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)スボレキサントの安全性プロファイルについて、米国・Thomas Roth Sleep Disorders and Research CenterChristopher L. Drake氏らが、二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験により検討を行った。Journal of Clinical Sleep Medicine2019915日号の報告。

 不眠症患者(DSM-5診断)12例を対象に、スボレキサント10mg群、スボレキサント20mg群、プラセボ群にランダムに割り付けた。薬物最大血中濃度に達した時点で、安定期N2睡眠中に聴覚刺激音を再生し、目覚めるまで5デシベル(db)ずつ増加した。覚醒時のdbを聴覚刺激覚醒閾値(AAT)とし、群間比較を行った。また、85db超の割合についても比較を行った。最終的に、閾値周辺(80db90db)を用いて感度分析を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・スボレキサント群は、プラセボ群と比較し、平均AATに有意な差は認められなかった。
AAT85dbで覚醒しなかった患者の割合についても、差は認められなかった。
・スボレキサント20mg群では、プラセボ群と比較し、中途覚醒の減少および総睡眠時間の増加が認められた。

 著者らは「スボレキサントのようなDORAは、不眠症改善効果が期待できる一方で、夜間の聴覚刺激に対する覚醒を可能とすることが示唆された」としている。



肥満は動脈壁に直接ダメージを与える?

肥満が動脈壁に直接ダメージを与え、心疾患の発症につながるメカニズムの一端を、英オックスフォード大学心臓血管内科教授のCharalambos Antoniades氏らが明らかにした。肥満の心疾患患者では、動脈周囲の脂肪組織で「WNT5A」と呼ばれるタンパク質が多く産生され、血管内に有害な影響を与えている可能性があることが分かったという。同氏らは、新たな治療法につながる知見だと期待を示している。詳細は「Science Translational Medicine918日号に掲載された。

 この研究結果はまだ初期段階のものだが、Antoniades氏は「心疾患の治療や予防戦略でWNT5Aは新たな標的になり得る」とし、「脂肪細胞におけるWNT5Aの産生を抑制したり、WNT5Aが血管壁に与える有害な影響を阻害したりする治療法を開発できれば、肥満を抑え、心筋梗塞や脳卒中を予防できるかもしれない」と話している。

 これまで数多くの研究で、肥満の人は、やせた人と比べて心疾患リスクが高いことが明らかにされてきた。米国心臓病学会(ACC)によると、肥満は心疾患の原因となる2型糖尿病や高血圧、睡眠時無呼吸などのリスクを高めるため、間接的に心疾患リスクを上昇させると考えられてきた。それに対し、今回の研究は、肥満が血管に直接ダメージを与えている仕組みの一端を明らかにしたものだとAntoniades氏は説明している。

 Antoniades氏らは今回、心臓手術を受けた1,004人の心疾患患者から採取した血液と組織サンプルを分析した。その結果、肥満患者では血中のWNT5Aレベルが著しく高いことが分かった。また、同氏らは、WNT5Aは特に動脈周囲にある脂肪組織から大量に放出されていることを突き止めた。さらに、WNT5Aレベルが高い患者では、その後35年の間に、動脈内にプラークがより速く蓄積することも明らかになった。

 この研究結果からは、WNT5A自体が心疾患の原因であると断定はできないが、Antoniades氏らは実験室でより直接的なエビデンスを得ることができたと話す。血管細胞をWNT5Aに曝露させたところ、「より有毒な物質が産生され、プラークの蓄積を促進する状態に変化した」のだという。

 今回の報告を受けて、米ノースウェル・ヘルス傘下のサンドラ・アトラス・ベイス心臓病院のBenjamin Hirsh氏は「このタンパク質は、肥満患者で多く産生されるだけではなく、血管に損傷を与えてしまうものだ」と話し、「肥満によって血管が損傷を受ける経路は、おそらくWNT5Aを介した経路だけだろう」と考察。その上で、「この研究結果は、肥満が有害な影響をもたらすメカニズムの解明を前進させる重要な一歩となるものだ」としている。

 一方、米退役軍人医療センター・ヒューストンの循環器医で、ACCの予防部門とリーダーシップ評議員会のトップでもあるSalim Virani氏は、「新たな治療につながる可能性があるため、肥満と心疾患が関連するメカニズムの解明は重要だ」とした上で、薬物治療よりも健康的な生活習慣を重視すべきだと強調している。

 また、Virani氏は「肥満は一部のがんを含む他の疾患のリスク上昇にも関連するため、体重管理は重要だ」と説明。ただ、どれだけ減量できたかにかかわらず、定期的な運動を含めた健康的な生活習慣を心掛ければ身体的および精神的な健康が増進されるとし、「肥満で運動不足の生活よりも、肥満でも活動的な生活を送っている方が良い」と話している。

[2019919/HealthDayNews]



ハッカーが医療機関を狙う理由

ハッカーたちが医療機関のデータベースを攻撃するのは、患者の医療記録ではなく、個人情報や財務情報が狙いであることが、米ミシガン州立大学と米ジョンズ・ホプキンス大学の共同研究で明らかになった。研究の詳細は「Annals of Internal Medicine924日オンライン版に掲載された。

 米ミシガン州立大学会計・情報システム学教授のJohn Xuefeng Jiang氏らのチームは今回、過去10年間に全米の医療機関で発生した1,461件の情報漏洩事例について調べた。情報漏洩の被害にあった患者数は、計16900万人を超えていた。

 同氏らは漏洩した情報を、(1)氏名や連絡先のほか、社会保障番号、運転免許証番号、生年月日などの個人情報、(2)医療費や請求日、クレジットカードや銀行口座の番号などの情報を含む財務情報、(3)診断や治療に関する医療記録の3つのカテゴリーに分類して分析した。

 その結果、情報漏洩の71%は、なんらかの個人情報や財務情報が標的であったことが明らかになった。Jiang氏によれば、これらの情報は個人情報の不正使用や金融詐欺などに使われていることが多かったという。一方、医療記録に関する情報を盗まれた患者は約200万人で、情報漏洩全体に占める割合は2%程度に過ぎないことも分かった。

 Jiang氏は、「被害者の話によれば、こうした情報への不正アクセスから経済的な損失や信用問題につながった事例がほとんどだった」と説明。また、「犯罪者たちは、医療機関のデータベースから漏洩した患者の社会保障番号や生年月日を使って、不正に税金の還付申告を行ったり、クレジットカードを申し込んだりしている可能性がある」と付け加えている。

 これらの結果を踏まえ、Jiang氏らは「情報漏洩の被害にあった医療機関には、盗まれた情報の種類について公表することを義務付けるべきではないか」と主張している。また、Jiang氏と共同で研究を行った米ジョンズ・ホプキンス大学ビジネススクール会計学准教授および同大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のGe Bai氏は、「敵の狙いを理解しなければ、戦いに勝つことはできない。ハッカーたちがどのような情報を狙っているのかを知ることが、患者情報を保護するための取り組みを強化するのに不可欠だ」と述べている。

[2019924/HealthDayNews]



抗うつ薬は抑うつ症状より不安症状の軽減に効果あり?

抗うつ薬のセルトラリン(日本での商品名ジェイゾロフト)を使用した人の多くは、以前よりも気分が良くなったと報告する。しかし、こうした効果は、抑うつ症状ではなく不安症状を軽減する同薬の作用によるものである可能性が高いことが、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)疫学精神医学教授のGlyn Lewis氏らが行った臨床試験により明らかになった。研究の詳細は、「Lancet Psychiatry919日オンライン版に掲載された。

 今回の試験は、英国4都市のプライマリケアの医療機関の患者653人を対象に、2015年から2017年にかけて実施された。対象者は1874歳(平均年齢39.7歳、59%が女性)。罹病期間はさまざまであったが、臨床面接スケジュール改訂版(Clinical Interview Schedule -RevisedCIS-R)を用いた評価では、54%がうつ病、46%が全般性不安障害、15%が混合性不安抑うつ状態の基準を満たしていた。

 Lewis氏らは、対象者の半数をセルトラリンを12週間使用する群に、残る半数をプラセボを使用する群に割り付けた。セルトラリンは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と呼ばれる抗うつ薬の一つである。対象者には、試験開始から2612週間後に質問票を用いた抑うつ症状の評価を行い、全般性不安障害のスクリーニングも実施した。

 その結果、試験開始から6週間の時点では、セルトラリン使用群では抑うつ症状は5%しか軽減しておらず、統計学的に有意な効果は示されなかった。それに対し、不安症状は6週間後に21%軽減し、12週間後には23%軽減した。

 抑うつ症状に対しても、12週間後にはセルトラリンの効果が現れることが示唆されたが、Lewis氏らはその効果は弱いものだとしている。ただし、同氏らは、抑うつ症状を抱える患者のほとんどに不安症状もあることを指摘。また、セルトラリンを使用した患者は、精神面に関連した生活の質(QOL)の大幅な改善も実感していたという。さらに、全般的に気が楽になったと報告する患者は、プラセボ群に比べてセルトラリン使用群は2倍に上り、重篤な副作用もみられなかった。

 こうした結果を踏まえLewis氏らは、「セルトラリンを使用しても6週間以内では抑うつ症状の軽減は期待できないようだ。しかし、不安症状に対しては早期から軽減効果が見られた上に、QOLや自己評価による精神面での健康についても改善が見られた。これは臨床的に重要な意味を持つだろう」と結論付けている。さらに、「研究結果は、本格的なうつ病や不安障害とは診断されないような、軽症から中等症までの抑うつ症状を有する患者も含め、これまで考えられていたよりも幅広い患者層にSSRIを処方することを支持するものである」とした上で、「抑うつ症状の治療としてセルトラリンなどのSSRIを処方することを医師は躊躇すべきでない」と主張している。

 今回の報告を受けて、専門家の一人で米ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のTurhan Canli氏は、「結局のところ、広く使用されている抗うつ薬の多くは、抑うつ症状に対してそれほど効果がないのかもしれない。しかし、この試験ではセルトラリンによって不安症状の軽減やQOLの向上が確認されており、特に不安症状を抱えている患者では同薬が有益である可能性がある」と話している。

[2019923/HealthDayNews]



統合失調症の治療反応とグルタミン酸およびGABAレベルとの関連

ドパミン作動性抗精神病薬に対する治療反応不良は、精神疾患の治療における大きな課題であり、初発時に治療反応不良患者を特定するマーカーが求められている。これまでの研究で、初発時の治療反応不良患者では治療反応患者と比較し、グルタミン酸(Glu)およびγ-アミノ酪酸(GABA)レベルが増加していることがわかっている。しかし、健康対照群の参照レベルを用いて、治療反応不良患者を特定できるかはよくわかっておらず、デンマーク・コペンハーゲン大学のKirsten B. Bojesen氏らが検討を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2019916日号の報告。

 抗精神病薬未使用の初回エピソード精神疾患患者群39例、マッチさせた健康対照群36例を対象に、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)および3T磁気共鳴分光法を用いて、繰り返し評価を行った。Glu/総クレアチニン(Cr)レベルは、前帯状皮質(ACC)および左視床で測定し、GABA/CrレベルはACCで測定した。6週間後、アリピプラゾール単独療法患者群32例および健康対照群35例を再検査し、26週間後に、自然主義的な抗精神病薬治療患者群30例および健康対照群32例を再検査した。治療反応不良の定義には、Andreasenの基準を用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・治療前では、患者群全体において視床におけるGlu/Crレベルが高かったが、治療後には正常化した。
ACCにおけるGlu/CrおよびGABA/Crレベルは、すべての評価時で低く、治療による影響は認められなかった。
・健康対照群と比較すると、6週目(19例)および26週目(16例)の治療反応不良患者は、ベースライン時の視床におけるGlu/Crレベルが高かった。
・さらに、26週目の治療反応不良患者は、ベースライン時のACCにおけるGABA/Crレベルが低かった。
・治療反応患者と健康対照群では、ベースライン時のレベルに違いは認められなかった。

 著者らは「抗精神病薬未使用の精神疾患患者におけるGlu作動性およびGABA作動性の異常は、抗精神病薬に対する治療反応不良を引き起こすと考えられる。このことは、初回エピソード精神疾患患者の臨床的予後を予測するために役立つ可能性がある」としている。