ワルファリンの最適な服用時間帯は?

抗凝固薬のワルファリンは、夕食後または就寝前の服用を指示されることが多い。しかし、アルバータ大学(カナダ)家庭医学准教授のScott Garrison氏らが実施した研究で、ワルファリンは朝夕の服用時間帯で効果に差は見られないことが明らかになった。同氏は「ワルファリンは、それぞれの患者が飲み続けられやすい時間帯に服用するのがよい」と述べている。研究の詳細は「Annals of Family Medicine1/2月号に掲載された。

 ワルファリンは、血液を固まりにくくして、脳卒中や心筋梗塞、血栓症の原因となる血栓ができるのを抑えるように働く薬剤だ。心房細動と呼ばれる不整脈の治療にも用いられている。ワルファリンは、服用量が多すぎると出血の原因になるが、少なすぎても十分な抗凝固効果が得られない。そのため、ワルファリンを服用中は、定期的に「血液凝固能検査」と呼ばれる血液検査を受けて、用量を調節する必要がある。

 ワルファリンを夕食後または就寝前に服用するよう指示する医師が多いが、この理由には同薬の用量調節のしやすさが関係している。Garrison氏は「ワルファリンを朝ではなく夜に服用すると、血液検査の結果が出てから用量を調節するまでの時間が短縮できる」と説明している。

 Garrison氏らは今回、ワルファリンを3カ月以上、夕食後または就寝前に服用している患者217人を対象に、同薬を朝食後に服用する群(109人)または夕食後あるいは就寝前に服用する群(108人)にランダムに割り付けて7カ月間追跡した。ワルファリンの抗凝固効果が目標治療域の範囲外にあった時間の割合を比較した結果、同薬の効果は、服用する時間帯で有意な差は見られないことが分かった。

 今回の研究には関与していない、米レノックス・ヒル病院で脳卒中プログラムのディレクターを務めるSalman Azhar氏は「ワルファリンの血中濃度は、食べ物や他の薬剤による影響で大きく変動しやすく、用量調節が難しい」と話す。例えば、色の濃い葉物野菜やブロッコリーには、血液凝固を促進するビタミンKが多く含まれている。また、抗菌薬は肝臓におけるワルファリンの代謝に影響を及ぼすことが知られている。

 Azhar氏によると、これまでの研究で、ワルファリンの血液凝固効果が目標治療域に入る時間帯は全体の約55%にとどまることが報告されている。つまり、残りの時間帯はワルファリンの十分な効果は得られていないことになるという。

 「管理の難しさから、抗凝固薬をワルファリンからリバーロキサバンやアピキサバンなどの比較的新しい薬へと切り替える医師も増えている」とAzhar氏はいう。新規の抗凝固薬は頻繁な血液検査などのモニタリングを必要とせず、血中濃度も他の薬剤の影響を受けにくいという利点がある。同氏によれば、特に心房細動患者にはこれらの新しい抗凝固薬が選択されることが多いという。ただ、ワルファリンも依然として重要な治療選択肢であり、「人工心臓弁を植え込んだ患者や遺伝的に血液がより固まりやすい体質の患者などにはワルファリンが適している」と同氏は付け加えている。

[2020117/HealthDayNews]

子どもの行動に「腸内細菌叢」が影響か

学齢期の子どもの行動上の問題には、腸内細菌が関与している可能性があることが、米オレゴン州立大学微生物学准教授のThomas Sharpton氏らによる研究で示唆された。行動上の問題を抱える子どもと問題がない子どもとでは、腸内細菌叢の組成に違いが見られたという。一方、このような腸内細菌叢の違いには、食べ物だけが影響するわけではないことも示された。研究結果の詳細は「mBio121日オンライン版に掲載された。

 Sharpton氏らは、子どもの行動と腸内細菌叢の関係を調べるため、57歳の40人の小児から採取した便検体を分析し、腸内細菌叢の組成を調べた。その結果、腸内細菌叢の組成は学齢期の子どもの行動と強く関連することが分かった。

 また、家族と強い絆で結ばれている子どもと家族との絆が弱い子どもでは、腸内細菌叢に違いが見られることも明らかになった。このことから、Sharpton氏らは「腸内細菌と子どもの行動との関連には、家族との関係が大きく影響する可能性が示された」としている。

 ただし、Sharpton氏は「この研究は因果関係を証明するものではない」と強調。子どもの行動上の問題が腸内細菌叢を変化させている可能性もあると説明している。さらに、「この研究では、腸内細菌叢の変化は食事による影響では説明できなかった」と同氏は付け加えている。

 腸内細菌叢と小児の行動との関係に着目した研究は、これが初めてではない。例えば、20195月には、米テキサス小児病院のグループは、消化器症状のある自閉症の小児の腸内細菌叢は、自閉症ではない兄弟姉妹や血縁関係のない小児とは異なるという研究結果を報告している。ただし、この研究では、自閉症であることを示す明らかな腸内細菌叢のパターンは見つけられなかった。

 Sharpton氏は「今後、今回の研究結果が大規模研究でも確認されれば、腸内細菌叢から得られる情報に基づいて子どもの行動上の発達を予測する方法を見つけられるかもしれない」と説明。また、このような情報を活用することで、早期からのより効果的な介入につなげられる可能性があるとしている。

 この報告を受けて、米ノーザン・ウエストチェスター病院の小児科部門長であるMaryann Buetti-Sgouros氏は「脳と腸内細菌は関連するという説を支持する研究結果だが、今回は決定的な答えは得られなかった。ただ、今後の研究課題は見えてきたといえる」と話している。

 また、同じく専門家の一人で、米コーエン小児医療センターの発達・行動部門長のAndrew Adesman氏も「学齢期の子どもであっても、腸内細菌叢の影響は消化管だけにとどまらないとする新たな根拠が得られた」と述べている。一方、同氏は、これらの因果関係は明らかになっておらず、今後さらなる研究が必要とした上で、「腸内細菌叢の研究はまだ始まったばかりだ。特に小児における腸内細菌叢の臨床的な重要性を明らかにするためには、少なくとも10年はかかるだろう」と話している。

[2020120/HealthDayNews]







肥満は「運命」ではない!?

肥満は遺伝によって定められた運命ではないことを示唆する報告が「JAMA Cardiology18日オンライン版に掲載された。

 遺伝子の研究が進歩したことで、さまざまな病気の発症と遺伝子の関連が明らかになった。そのような情報が社会に広がるにつれ、過体重や肥満はDNAのせいであって逃れることはできないと多くの人が考えるようになってきた。しかし今回の報告によると実際はそうでなく、はるかに大きな役割を果たしているのは日常生活の送り方だという。

 この研究は、若年成人の冠動脈疾患リスク因子を探索している「CARDIA研究」のデータを用いて行われた。19852010年にわたり20歳代の米国人2,517人(白人1,608人、黒人909人)を25年以上追跡して、遺伝的背景が肥満リスクに及ぼす影響を検討。遺伝的背景の評価には、DNA情報と疾患発症の事例を多数検討することでその関連の強さを遺伝統計学的に点数化した「多遺伝子リスクスコア(PRS)」という指標を用いた。

 ベースラインにおける平均BMI24.2±4.5であったものが、25年後には29.6±6.9に増加していた。このBMIの変動に関連する3つの因子(年齢、性別、および親の過体重・肥満歴)にPRSを追加し、白人のデータを用いて解析すると、ベースライン時のBMI11.9%、25年目のBMI13.6%を説明すると計算された。黒人はPRS追加による説明力の上昇が白人よりも少なかった。

 一方、PRSのかわりにベースライン時のBMIの値を前記3因子に追加すると、25年目のBMI52.3%まで説明できることが分かった。さらにBMIの経時的な変化を情報として追加した場合、25年目のBMIを最大80%程度まで説明可能と計算された。

 この研究を主導した米ミシガン大学のVenkatesh Murthy氏は、「われわれは、日常診療で手軽に入手できる臨床データに遺伝子データを追加することの効果を知りたかった。結果として、肥満の発症に対して遺伝子がある程度影響することは明らかだが、影響力は他の因子の方がより強いことが分かった」と結論づけた。つまり、若年期のBMIが肥満リスクの最良の予測因子だということだ。同氏はまた「BMIの計算は、遺伝子検査よりはるかに容易であり安価である」とも語っている。

 研究指導著者である米ハーバード大学のRavi Shah氏は、「遺伝的リスクは、肥満の原因となる希少な遺伝子を受け継いだ人においてのみ重要なのかもしれない。大多数の人にとっては健康的な食事や活動的な生活などの普遍的な推奨事項の方が重要だ」と述べている。

[202018/HealthDayNews]



日本人男性の食事と死亡率、60年でこう変わった

日本人の食事の欧米化が進んでいるが、過去60年間の食事パターンはどの程度変化しているのだろうか。また、それは冠動脈疾患の死亡率に関連しているのだろうか。久留米大学の足達 寿氏らは、Seven Countries Studyの中の日本人コホートである田主丸研究(久留米大学による久留米市田主丸町住民の疫学調査)において、栄養摂取量の変化と冠動脈リスク因子または死亡率の関係を調査した。Heart and Vessels誌オンライン版2020129日号に掲載。

 本研究では4064歳の男性すべてを登録し、被験者数は、1958628人、1977539人、1982602人、1989752人、1999402人、2009329人、2018160人であった。195889年は24時間思い出し法、195889年は食事摂取頻度調査票を用いて、食事摂取パターンを評価した。

 主な結果は以下のとおり。

1日当たりの総エネルギー摂取量は、2,837kcal1958年)から2,096kcal2018年)に減少した。
・炭水化物摂取量の全体に対する割合は84%から53%に著しく減少したが、脂肪摂取量の割合は5%から24%に大幅に増加した。
・年齢調整後の平均コレステロール値は167.9mg/dLから209.4mg/dLに急激に上昇し、BMI21.7から24.4に増加した。
・喫煙率は69%から30%に減少した。
・脳卒中およびがんによる死亡率は低下したが、心筋梗塞および突然死による死亡率は低いまま安定していた。

拡張期血圧、下がらなくても大丈夫。本当?

拡張期のみが高い高血圧患者(Isolated Diastolic HypertensionIDH)の降圧治療には、難渋したことのある医師は少なくないであろう。とくに4060歳の成人では、収縮期血圧は下げることはできても拡張期血圧をガイドラインで定めるレベルまで下げることは難しい。ガイドラインでも米国のJNC72003年)では140/90mmHg未満だったものが、14年後にJNC8に代わって公式発表されたACC/AHAガイドラインでは130/80mmHg未満を目標とせよ、というのだから、90mmHg未満でさえ難渋していたのが、さらに困難になったわけである。

 そこで朗報と思えるのが、この論文である。長期追跡コホート研究の結果、拡張期型高血圧が90mmHg80mmHgの患者では心血管系予後はそれほど変わりがないというのである。そこで一安心といいたいところだが、注意が必要だ。この結果はあくまでも長期追跡研究であり、「黙って観察」した結果の報告である。

 しかし実際には、対象となった症例は医療機関に行ってただ観察されていただけではなく、当然血圧が高ければさらなる降圧治療は強化されていたであろうし、塩分制限などの努力もしたであろう。そのように観察期間での治療内容が結果に反映されないのが観察研究の最大の欠点である。しかも、人間、歳をとると、血管の弾力性がなくなり、拡張期血圧が下がってくるという厄介な問題も内包する。

 本試験はあくまでも、観察を開始した時点での拡張期80mmHg90mmHgの症例群での追跡結果にすぎないのである。エビデンスとしての確実性を上げるためには、ランダム化試験が不可欠だが、今のところIDHに関するランダム化試験はまだ存在しない。

 それでは、現実的に拡張期血圧だけが80mmHg以上あるいは90mmHg以上の高血圧患者にはどう対応すべきか? まず収縮期血圧を十分130mmHg以下に下げることを第一目標とし、それでも拡張期血圧がガイドラインレベルまで下がらないようであれば、収縮期血圧の低下によりめまいなどの低血圧症状の発現に注意しつつ、減塩や体重減少指導を強化し、非サイアザイド系利尿薬を追加するなど降圧療法を強化する。それでも下がらなければ、高血圧は血管に対する負担(負荷)であることを考えると、当然収縮期血圧のほうが拡張期血圧よりも数字が高い分血管への負荷が大きいことを考慮しつつ、多剤服用による降圧副作用や低血圧症状に注意しながら、あるレベルで妥協するのが現実的であろう。

救急AF患者、薬物+電気ショックvs.電気ショック単独/Lancet

急性心房細動で緊急部門に搬送された患者に対する、薬理学的除細動+必要に応じた電気的除細動(薬物ショック)と、電気的除細動のみ(ショック単独)はいずれも、洞調律の回復において高い有効性、迅速性、安全性を示し、再入院の必要性も回避することが、カナダ・オタワ大学のIan G. Stiell氏らが396例を対象に行った無作為化比較試験「RAFF2試験」の結果、示された。薬物ショック群では、薬理学的除細動が約半数に作用し電気的除細動に必要なセデーションを回避できたこと、また、電気的除細動のパッド貼付位置(前後方vs.前外側)による有意差がないことも示された。結果を踏まえて著者は、「緊急部門に搬送された急性心房細動患者では、即時の除細動が、優れたアウトカムに結び付く」とまとめている。Lancet202021日号掲載の報告。

カナダ11病院の緊急部門で無作為化試験

 RAFF2試験は、薬物ショックとショック単独の洞調律への転換の比較を第1の目的とし、また電気的除細動の2つのパッド位置の有効性の比較を第2の目的とした。

 2013718日~20181017日に、カナダ11ヵ所の病院の救急部門を通じて、成人の急性心房細動患者396例を登録し、2つのプロトコールによる無作為化比較試験を行い、薬物ショックとショック単独のアウトカムを比較した。

 プロトコール1(無作為化盲検化プラセボ対照比較)では被験者を無作為に2群に分け(11、登録病院でも層別化)、一方にはプロカインアミド(15mg/kg30分)静脈投与による薬理学的除細動を行い、その後必要に応じて最大3回まで電気的除細動(いずれも200J以上)を行った。もう一方の群には、プラセボ投与後、電気的除細動を行った。無作為化は、登録病院の研究員がオンライン電子データキャプチャーシステムを用いて行った。

 プロトコール2(無作為化非盲検化ネステッド比較)では、電気的除細動の際に、パッドを右胸部・後背部に付ける群と右胸部・左前腋窩部に付ける群に無作為に割り付け比較した。被験者は、薬物投与30分時点で洞調律への転換が認められなかった患者を無作為化し、登録病院およびプロトコール1の割付による層別化も行った。

 主要アウトカムは、無作為化後30分以降のあらゆる時点、および3回ショック直後の時点までの洞調律への回復とした。プロトコール1についてはITT解析を行い、プロトコール2では電気的除細動を受けなかった被験者は除外した。

洞調律回復は同等、電気的除細動のパッド位置の違いでも有意差なし

 洞調律を回復したのは、薬物ショック群が204例中196例(96%)、ショックのみ群は192例中176例(92%)で有意差は認められなかった(絶対差:4%、95%信頼区間[CI]09p0.07)。

 自宅への退院者も、それぞれ97%(198例)、95%(183例)と同等だった(p0.60)。また薬物ショック群では、106例(52%)が薬物投与のみで洞調律を回復した。フォローアップ中に重篤な有害イベント発生は報告されなかった。

 プロトコール2の電気的除細動時のパッド位置の比較については、前後方(右胸部・後背部)と前外側(右胸部・左前腋窩部)の比較において、洞調律回復率はそれぞれ92%(108/117例)と94%(119/127例)と同等だった(p0.68)。

米国2019-nCoV感染1例目、発熱・咳症状9日目に肺炎

中国・湖北省武漢市でアウトブレークが始まった新型コロナウイルス「2019-nCoV」は、瞬く間に拡大し複数の国で新たな感染例の確認が報告されている。米国疾病管理予防センター(CDC)のMichelle L. Holshue氏らは、2020120日に米国で確認された1例目の感染例について、疫学的および臨床的特徴の詳細をNEJM誌オンライン版2020131日号で発表した。その所見から、「本症例で鍵となるのは、パブリックな注意喚起を見た後に患者が自発的に受診をしたこと、患者の武漢市への渡航歴を地域の医療提供者および郡・州・連邦の公衆衛生担当官が共有し、感染拡大の可能性を認識して、患者の迅速な隔離と検査および入院を許可したことだ」と述べ、「本症例は、急性症状を呈し受診したあらゆる患者について、臨床家が最近の渡航歴または病人との接触曝露歴を聞き出し、そして2019-nCoVのリスクがある患者を適切に識別し迅速に隔離して、さらなる感染を抑制する重要性を強調するものである」とまとめている。

渡航歴を考慮し、ただちにクリニックからCDCへと報告が上がる

 米国の2019-nCoV感染1例目は、119日にワシントン州スノホミッシュ郡の緊急ケアクリニックを受診した35歳男性。咳、主観的発熱の既往は4日間。クリニックに入ると待合室でマスクを着け、約20分待った後、診察室に入った。患者は、家族に会いに武漢市に行き15日に帰ってきたことを申し出、米国CDCの注意喚起を見て、自身の症状と渡航歴を鑑み受診したと話した。高トリグリセライド血症歴はあったが、健康な非喫煙者だった。

 診察の結果、熱は37.2度、血圧134/87mmHg、心拍110/分、酸素飽和度96%。ラ音を認めたため胸部X線検査を行ったが異常は認められなかった。迅速インフルエンザウイルス検査(AB)の結果は陰性。鼻咽頭スワブ検体を採取し(あらゆる結果が48時間以内に判明する)、渡航歴を考慮してただちに郡・州の保健当局に通知。州当局は臨床担当医とともにCDCの緊急オペレーションセンターに通知した。患者が武漢海鮮卸売市場には行っておらず病人との接触もないと話したが、CDCは「persons under investigation」を基に要検査例と判断。ガイダンスに従い、鼻咽頭および口咽頭スワブ検体を収集。患者は退院したが家族とは隔離し郡保健所がモニタリングにあたった。

 翌120日にリアルタイムPCR検査の結果、2019-nCoV陽性が確認された。患者は郡医療センターに隔離入院となった。

入院時も入院後もバイタルはほぼ安定、しかし入院5日目に肺炎を呈す

 患者は入院時、持続性乾性咳嗽と2日間の悪心および嘔吐の既往を認めたが、息切れ、胸痛の訴えはなく、バイタルサインは正常範囲を示していた。入院後、支持療法(悪心に対する2Lの生理食塩水とオンダンセトロン投与)を受けたが、入院25日目(疾患69日目)のバイタルサインはほとんどが安定していた。

 入院2日目に腹部不快感と下痢症状を呈するが翌日に回復。入院3日目に胸部X線検査を行ったが、異常所見を認めなかった。しかし、入院5日目(疾患9日目)の夜から呼吸器症状に変化がみられ、胸部X線検査で左肺下葉に肺炎の所見を認めた。入院6日目に酸素吸入を開始、バンコマイシン、セフェピムの投与も開始。その日の胸部X線検査で両肺に陰影、ラ音を認める。担当医は他施設での報告例を参照し、7日目の夕方に治験中の抗ウイルス薬remdesivirの静脈投与を開始。有害事象は観察されなかった。同日夕方にバンコマイシン投与は中止、セフェピムは翌日に中止している。

 入院8日目(疾患12日目)に患者の臨床症状は改善し、支持療法も中止となった。入院11日目の130日現在も入院は続いているが、熱は低下(36度台)し、重症度が低下した咳を除き、あらゆる症状が改善した。

日焼けマシンの論文、業界と関連あると肯定的?

日焼けマシンに関する論文の大半は業界の資金提供を受けていないが、日焼けマシン業界と経済的関係が認められる論文は、日焼けマシンを支持する傾向が認められるという。米国・スタンフォード大学のLola Adekunle氏らが、日焼けマシン業界との経済的関係および日焼けマシンに関する論文の結論との関連性を検証したシステマティックレビューの結果を報告した。日焼けマシンに関する科学的論文で、危険性や有益性に注視したものはあるが、資金源と論文の結論との関連性については十分検証されていなかった。結果を踏まえて著者は、「公衆衛生専門家や研究者は、日焼けマシンに関するエビデンスを解釈する際、業界からの資金提供を考慮する必要がある」と提言している。BMJ202024日号掲載の報告。

日焼けマシンに関する論文691報について解析

 研究グループは、PubMedEmbaseWeb of Scienceのデータベースを用い、2019215日までに発表された論文を検索した。論文の種類は問わず(原著、システマティックレビュー、総説、症例報告、論説、論評、短報はすべて適格)、日焼けマシンと健康について考察している論文を適格とした。基礎研究、日焼けマシンの普及状況のみを述べている論文、英語以外の論文および全文を入手できない論文は除外した。

 解析に組み込まれた論文は691報で、このうち357報(51.7%)が経験的論文(例:オリジナル論文またはシステマティックレビュー)、334報(48.3%)が非経験的論文(例:論評[コメンタリー]、レター、論説[エディトリアル])であった。

資金提供がない論文は約9割が批判的、ある論文は約8割が支持

 全体で、日焼けマシン業界との経済的関係が認められた論文は7.2%(50/691報)だった。日焼けマシンを支持する論文は10.7%(74/691報)、中立は3.9%(27/691報)で、85.4%(590/691報)は日焼けマシンに批判的であった。

 日焼けマシン業界の資金提供を受けていない論文(620報)において、日焼けマシンを支持する論文は4.4%(27/620報)で、中立が3.5%(22/620報)であり、92.1%(571/620報)が批判的であった。

 一方、日焼けマシン業界と経済的関係がある論文(50報)では、78%(39/50報)が日焼けマシンを支持し、中立は10%(5/50報)、批判的であったのは12%(6/50報)だった。

 日焼けマシン企業からの支援は、日焼けマシンの支持と有意に関連していることが確認された(リスク比:14.395%信頼区間:10.020.4)。

 なお、著者は研究の限界として、資金源が非公開の論文は解析に組み込まれていないこと、使用したデータベースが限られていたこと、英語の論文に限定していたことなどを挙げている。

SGLT2阻害薬で痛風リスクが低下する可能性

血糖降下薬であるSGLT2阻害薬により痛風のリスクが低下する可能性が、トロント大学(カナダ)のMichael Fralick氏らが実施した新たな研究から示された。詳細は「Annals of Internal Medicine114日オンライン版に発表された。

 SGLT2阻害薬を使用している人では、他の血糖降下薬(GLP-1受容体作動薬)を使用している人と比べて、痛風を発症するリスクが36%低かった。Fralick氏は「SGLT2阻害薬は2型糖尿病患者にとって最も効果的な薬剤の1つであり、痛風のリスク低減につながる可能性もある」と述べている。

 SGLT2阻害薬は、成人2型糖尿病患者に使用される血糖降下薬としては比較的新しいクラスの薬剤である。この薬は腎臓に作用し、体内の糖を尿とともに体外へ排出する。薬剤の名称(一般名)としては、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジンなどが該当する。

 2型糖尿病の人は血中の尿酸値が高いことが多い。その状態が長引き、尿酸の結晶が関節に蓄積すると痛風を引き起こす。痛風の症状はまず足の親指に現れることが多く、激しい関節痛や腫れを生じる。米国では数百万人が痛風に罹患しているとされる。

 今回の研究は、SGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬を新たに処方された約30万人の2型糖尿病患者(平均年齢54歳)を対象に実施された。その結果、SGLT2阻害薬を処方された約152,000人のうち636人が痛風を発症した。一方、GLP-1受容体作動薬が処方された約144,000人のうち、痛風を発症したのは836人だった。1,000人年当たりの罹患率は、SGLT2阻害薬4.9GLP-1受容体作動薬7.8であり、SGLT2阻害薬がハザード比0.64で有意に低かった。

 このように血糖降下以外の作用が見られたSGLT2阻害薬だが、リスクが全くないわけではない。米食品医薬品局(FDA)は同薬に、骨密度の低下や骨折リスクの増加に関する警告表示を義務付けている。また重篤な感染症や下肢切断のリスクが増加するとの報告があることも明らかにしている。

 米ニューヨーク州に拠点を置くノースウェル・ヘルスの家庭医療部門副責任者であるBarbara Keber氏は今回の研究について、解釈上の制限はあるものの大規模で比較的質の高い研究だと評価している。その一方、「痛風リスクのある患者に対し、そのリスクの低減を目的として日常診療でSGLT2阻害薬を使用するには、さらなる研究が必要である」と指摘している。

 前出のFralick氏はこの研究を実施した当時、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院の薬剤経済学部門に所属していた。同氏は、「自分が診察している2型糖尿病患者の一人一人について、常にリスクとメリット、薬剤コストを比較検討している。SGLT2阻害薬は非常に高額ではあるが、低血糖や体重増加を来すことがない。かつ今回の研究データから、痛風患者や痛風リスクの高い人では、SGLT2阻害薬によってそのリスクが低下する可能性が示された」と述べている。

[2020113/HealthDayNews]

「平熱37度」はもはや常識ではない?

欧米では長らく、平熱の目安は摂氏37度と考えられてきた。しかし、米スタンフォード大学医学部教授のJulie Parsonnet氏らの研究で、米国成人の体温は19世紀から下がり続けていることが明らかになった。同氏は「子どもの頃に教わった“平熱37度”は、もはや常識ではない」と述べている。研究の詳細は「eLife17日オンライン版に掲載された。

 平熱の目安は、1851年にドイツの医師が37度とすることを提唱して以来、それが一般的とされてきた。しかし、近年では、その基準は高すぎるとする研究報告が相次いでいる。例えば、約35,000人の英国成人を対象とした最近の研究では、平均体温は約36.6度であると報告されている。

 今回の研究は、南北戦争の退役軍人の兵役記録や医療記録から収集した18621930年のデータと、19711975年に実施された米国国民健康栄養調査(NHANES)データ、米スタンフォード大学病院の患者データベースから収集した20072017年のデータを用いたもの。1862年から2017年の間に測定された計677,423件の体温データを分析した。

 その結果、2000年代に生まれた男性の平均体温は、1800年代初期に生まれた男性よりも0.59度低かった。一方、2000年代に生まれた女性の平均体温は、1890年代に生まれた女性よりも0.32度低いことが分かった。全体として、米国人の体温は10年ごとに0.03度低下していることが明らかになったという。

 Parsonnet氏らは、米国人の平均体温が下がった理由の一つとして、代謝を上げる炎症が減ったことを挙げている。「感染症などで炎症が起こると、代謝を上げて体温を上昇させるタンパク質やサイトカインが産生される」と同氏は説明する。しかし、過去200年の間に、医療の進歩や衛生状態の改善、食生活や生活水準の向上により、公衆衛生面が劇的に改善したことで、こうした炎症を起こすことが減ったと考えられるとしている。

 また、住環境が快適になったことも、体温が低下した一因である可能性がある。19世紀とは違い、現代の住居では、セントラルヒーティングやエアコンがあたりまえのものとして設置されており、快適な暮らしが送れるようになった。そのような環境では、体温を維持するために、より多くのエネルギーを消費する必要もなくなったことは大きいという。

 Parsonnet氏は「200年前と比べ、室温や微生物との接触、入手できる食品などを含めた生活環境は大きく変化した。われわれ人間は、生理学的な変化を遂げていると言える」と話している。

[202018/HealthDayNews]